とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part08

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「さあ、遠慮なくボコボコにされなさい」

ゲーセンに到着すると、邪悪な笑みを浮かべた美琴はそう吐き捨てる。
だが、妹の財政状況や尾行のお詫びを兼ねて費用は全額持つことにしたようだ。
…実際は、そうする事で妹の逃げ場をなくし、遠慮なく叩きのめせるという算段があったりするのだが…。

「妹ー、あんたこの中で出来そうなのって何かあるの?」
「一応知識としてはあったりなかったりですが…どれもやった事は無いですね、とミサカは返答します」
「ん~そっか、じゃあ無難にレースゲームからとかどうだ?」

ざっと店内を見て回った三人はどれから始めるのか決めていたのだが、10039号…というか妹達は初めての経験らしくできる物が無いようだ。
ならば片っ端からやってみようというノリでレースゲームを選択をした。
当麻が簡単に操作の説明をすると、それをふむふむと聞く10039号。そして準備が出来ると美琴VS10039号の戦いの火蓋は切って落とされる。

―――――――

―――

「な、なんですかこれは!?車が真っ直ぐ走りません!!とミサカは、ミサカは―――――」
「おー…、ミニ四駆を彷彿させるようなその走り…神業だ…」
「もー、何やってんのよー」

アクセル全開で走り続ける10039号のマシンは壁に沿うようにゴリゴリと音を出しながら進んでいく。
美琴は横目でその荒業を見てクスクスと笑いながらも安定した走りを見せる。すると、

「ったく…、ちょっと手伝ってやるから頑張ろうぜ」

あまりの惨状を見かねた当麻が横からハンドルに手を添えて手助けを始めた。
そして画面を見ながら10039号にアクセル、ブレーキの指示を出していく。
すると、その甲斐あってまともに走れるようになってきたのだが、

「あ!こら!ちょっとあんた等!」

今度はその様子が気になってしまった美琴の走りが安定しなくなってきた。

「おお!?これがドリフトというやつですね!?とミサカは回転する車を見てどうしようか考えますがどうしていいかわかりません」
「これはただのスピンだ!とりあえずアクセルは一旦離せ!立て直すぞ!」

しかし、夢中になってしまった二人は美琴の異変に気付かない。
その後、見事なコンビネーションを見せた二人は、最終ラップで美琴を抜いてゴールをしていた。

「ミサカが勝ちました、とミサカはお義兄様の助力に感謝しつつ勝利を宣言をします」

オオオ――っと画面に表示された『Winner』の文字を見て声を上げる10039号。彼女はグッジョブと言わんばかりに当麻に向かって親指を立てている。

「ありゃ?本当だ、どうしたんだ美琴?」

当麻もこの意外な結果に目を丸くして美琴の方を見ると、ジト目で見つめてくる彼女と目が合う。

「…あんた等が気になってそれどころじゃなかったわよ…っていうか距離が近いのよ!」
「あー、そういう事か。悪い、ほっとけなくてさ…」
「もう!本当しょうがないわね…」
(つーか前も思ったんだけど、この子(10039号)に限っては何も企んでない時の方が怖いわね…)

普段何でもそつ無くこなす10039号が時折見せる抜けた所。どうやらそれが当麻の中の何かを突っついてしまっているようなのだ。
どうしたもんかと考える美琴だったのだが、目の前には両手を上げ、勝利に喜ぶ10039号の姿がある。
その無邪気な姿を見つめる美琴は、両手を腰に手を当ててふーっと息を一つ付くと、
『ま、いいわ』と呟き、次の戦いへと向かう事にするのだった。

―――――――

―――

~格闘ゲーム~

「手加減無しかよ…」
「…体力ゲージが溶けました、とミサカは…」
「ご、ごめんね?」

操作が全く分からず、ほぼ棒立ちで手も足も出ない10039号はフルボッコになる。
美琴の勝利だが、なんだか弱い物いじめをしたみたいになってしまい、呆然としている10039号に謝る結果となる。

~クレーンゲーム~

「物体の重心を計算して…、とミサカはミサカネットワークを駆使してクレーンを操作し…オオオ―――、取れました」
「凄いな~、俺なんてどれだけやっても取れませんよ…」
「…ちょっと羨ましい」

緻密な計算を持って大きめのぬいぐるみ(キツネ)をゲットした10039号はそれを高々と持ち上げる。それを横目でちらちら見ている美琴だったが…

「おや、このぬいぐるみが欲しいのですか?…ならば差し上げましょう、とミサカは別れを惜しみつつも『たぬき』を手放します」
「ありがとーおねぇちゃん!」

そのぬいぐるみを物欲しそうな目で見ていた少女にプレゼントしてしまった。
10039号は少し名残惜しそうにしていたが、少女の満開の笑顔を見て、やわらかく微笑む。
端から見ればまさに感動の瞬間だったのだが…

「…あんたのそのネーミングセンスで台無しね…」
「美琴だって大概だと思う――って痛い!痛い――!!」

感動の瞬間に聞こえた『たぬき』という名前に愕然とする美琴。
その横で、お子様センスのお前だって…といった感じで突っ込む当麻だったが、言葉の途中で思いっ切り足を踏まれる事となる。

~ダンスゲーム~

「待った待った!見えてる!見えてるから!」
「む、上手く出来ませんね…、とミサカは意外な難易度の高さに苦戦します」
「とにかくストップ!当麻も見てんじゃない!!」

10039号がプレイを始めた直後、スカートからちらちらと覗く縞々パンツが当麻に見られるというハプニング発生。
美琴が強制的に中断させ、当麻に鉄拳制裁を加える。

「むぅ…あれくらい平気です、とミサカは途中で止められた事に不満を感じます」
「あんたも女の子なんだから少しは恥じらいってものを持ちなさい!」

もう!といった感じで10039号に注意をする美琴。それでも不満げな態度を崩さない妹にどうしたもんか…と真剣に頭を悩ませる。
…その後、華麗なステップを披露した美琴が勝利したのだが、
当麻の頭の中では今も縞パンがちらついている事だろう。そう思うと微妙に敗北感のある美琴だった。


――――――――――

―――――

…ここまで2勝2敗という五分の戦い(?)を展開する二人は次なる勝負。銃を使用した射撃ゲームの前に立つ。

「これはあんたの得意分野だろうからいい勝負が出来そうね」

店内を見て回った時に見落としていた…いや、美琴がわざと見せなかったゲームだ。何故ならこのゲームは銃を使用するから。
妹達がサブマシンガンを使用している事は知っている為、彼女達の得意分野であろうと踏み、残しておいたのだ。

「おお、銃を使えるのですか!?とミサカは興奮を隠し切れません。
 お姉様には申し訳ありませんがこれはミサカの領分ですね、とミサカは余裕の笑みを零します」
「御坂妹、油断しない方がいいぞ?美琴はベストスコアの保持者なんだぜ?」

既に勝った気でいる10039号に美琴の腕前を教えるが、彼女は自信満々といった様子で美琴を見ると、

「ならばそのスコアを超えましょう、とミサカは宣言します」

ビシィ!と人差し指を美琴に向けた10039号は高らかに宣言する。
それに対して美琴はニヤリと不敵な笑みを浮かべと、

「言ってくれるわね、じゃ、私からやらせてもらうわよ」

そう言うと美琴はコインを投入し銃を取る。そして、開始と共に見事な銃捌きで敵を撃破していく。
一度も攻撃を受ける事無くステージをクリアして行き、そのままあっさり全ステージを攻略すると銃を元に戻してどんなもんよ?といった表情で10039号を見る。

「ま、こんなもんね。じゃあ次はあんたの番よ?」
「フフフ…そうでなくては面白くありません、とミサカはお姉様の腕前に驚愕しつつも闘志を燃やします」

思わぬ強敵の出現に身震いする10039号。だが、その顔はやる気満々といった感じだ。
そして、コインを入れて、銃を取ると10039号の戦闘が始まる―――――!!

―――――

―――


…開始1分後

「むむ!弾が狙い通りに放たれません!とミサカは誤差を修正してみますが上手くいきません!」
「銃を向けた所の円の中に敵を入れて打てばいいんだぞ?」
「何故なのですか!?とミサカは微妙なズレが修正できません!」

パン!パン!っと弾を撃つも、上手く照準に入っていない。その事を当麻が指摘するが、どうやら聞こえていないようだ。

「弾切れです!とミサカは緊急報告します!」
「リロードは銃を画面の外へ向けて打てばいいのよ」

カチ!カチ!と音を出し、画面にはRELOADの文字が出ている。
すると、何故か自分の持っている銃の底を見始めた10039号に『実弾を装填しようとでもいうのか?…というかさっき見てたんじゃないの?』
と思いつつも、その事には触れず、勤めて冷静にリロードの仕方を教える美琴。

「おお!?あんな所から敵が!?とミサカは思わぬ伏兵に驚きを隠しきれません!」
「あ、あ~…終わった。予想以上に早かったな…」

…開始3分と持たずにゲームオーバー。想定外の事態に言葉を失う当麻と美琴。
10039号はブルブルと震えだすと、

「…このままでは終われません、とミサカは再戦の要求をします」

金を!金を寄越せ!といった感じで美琴に手を出す10039号。だが、その顔は美琴の方には向いていない。

「いいけど…色々と教えなくていい?」

まさかの事態に圧倒された美琴だが、このままでは同じ轍を踏むと直感した彼女は10039号にアドバイスをしようとするのだが…

「フフフ…ミサカを怒らせましたね、とミサカはこのクソ野郎(ゲーム)を睨みつけます」

既に聞こえていない。10039号は目元をひくつかせながら機械を鋭く睨みつけている。
そして、その様子を見ていた当麻が思わず口を開く。

「御坂妹?な、なんかキャラ変わってないか?」
「なんか変なスイッチが入っちゃったみたいね…」

10039号の豹変ぶりに動揺する二人だが、当の本人は既にコインを入れ臨戦態勢を取っている。
そして開始直前、おでこに付けていた軍用ゴーグル(新品)を下ろすと画面に向かう。
が、ゴーグルをした事で益々状況が掴めなくなった彼女は、あっさりとゲームオーバー。

「「「……」」」

三人はその無様な結果に沈黙する。10039号はそっと銃を元に戻すと…
――ガチャ!と何処から取り出したのか、自分のサブマシンを構える。
突然サブマシンガンを取り出した10039号に驚き、飛び掛る二人。

「ま、待て待て待て!それで何するつもりだ!?つーか何処から出した!?」
「止めても無駄です!ミサカはミサカのプライドにかけてこの野郎(ゲーム)をクリアするのです!とミサカはサブマシンガンを構えつつ訴えます!」
「それ絶対クリア違いだから!とにかく落ち着けー!」
「いいからやめなさいってば!それにこんな所でそんな物騒なもん使おうとするんじゃない!」

どうやら完全にキレてしまった10039号は、もう今にもサブマシンガンを乱射しようかという勢いでコインを入れようとする。
そんな彼女を当麻が羽交い絞めにし、美琴がサブマシンガンを取り上げると、そのまま引きずるようにして10039号を休憩スペースへ連行していくのだが…
その途中も10039号は納得がいかずにぎゃあぎゃあと喚き続けるのだった。

―――――

―――

「全く…熱くなり過ぎよ。銃は人を変えるって言うけど本当みたいね…」
「落ち着いたか?」
「…申し訳ありません、とミサカは反省と謝罪の言葉を述べます」

得意分野での惨敗と、完全に我を失ってしまった事が余程ショックだったのか、10039号はため息を付いてしょんぼりしている。
その姿を見かねた二人はそれぞれフォローを開始する。

「まあ、そのゴーグルは映像に対しては意味無いと思うからしょうがないわよ」
「ゲームだしな、そんなに気を落とすなって」
「…そうだ!パンチングマシーンやらない?それでさっきの鬱憤を晴らしましょ?ね?」

美琴は10039号の手を引きパンチングマシーンの前に連れて行く。そして簡単にルールの説明を済ませると早速始める。
一番手は…今まで二人のバトルを見守っていた当麻。彼は10039号に見本を見せるつもりのようだ。

「コツはパンチの中間点にミットがあるってイメージで、ポケットに押し込むように衝撃を与えるんだぞ…こんな風に!」

そう言うと当麻は体重の乗った右を放つ。『ドォォン!』という大きい音と共にミットが倒れる。
…スコアは133。成人男性の平均よりも少し高い数値を軽々と出す。「こんなもんか」と当麻が言うと、今度は美琴が前に出る。

「私もコツは教えてもらってるからね。見てなさいよ~」

トントンと軽くステップした後、構えを取ると「ちぇいさー!」という掛け声と共にパンチを繰り出す。
左足で強く踏み込み、腰の回転も使った鋭いパンチはミットを捉え『ドォン!』という音を出す。
『ふぅ』と息を付くとスコアを確認する。…104。とてもお嬢様のパンチ力とか思えないスコアが表示される。

「おお、何気に記録更新か?」
「本当だ!…ふっふっふ、これなら私の勝ちは揺るがないわね。じゃあ最後はあんたの番よ?力みすぎて怪我しないようにね」
「…コツは分かりました。ではミサカの力をお見せしましょう、とミサカは全力で挑みます」

マシーンの前に立った10039号は二人のイメージと自分の体のイメージを重ね、叩く最適のポイント、力の方向を計算する。
そして大きく息を吸い込み「ふっ!」という声と共に大きく踏み込み、左手を引きながら腰を回転させる。
そのまま全体重+回転の力が加わった鋭いパンチがミットを捕らえ、そのまま斜め下に押し込む。
『ドォン!』という音が聞こえ、10039号のその流れるような動きに見とれていた二人がスコアを見る。
…112。美琴のパンチ力を軽々超え、既に男子高校生の平均に届こうかというスコアだ。

「うそ…。負けた?」
「マジか…女の子でこんなスコア出してる奴ってあんまり見ないぞ?やったことあるのか?」

意外なスコアに驚きを隠せない二人に対して、10039号はキョトンとした顔をしている。そして、

「?いいえ、今のが初めてですが、とミサカは二人の反応に疑問を抱きつつも返答します」
「平然としてるけど、同年代の子達は90も無いのよ?なんであんたがそんなパンチ力を持ってるのよ!?」

美琴の言葉に首を傾げる10039号。何でと言われても…といった感じでうーんと考える素振りを見せると、

「さあ…、お二人の動きを見てミサカネットワークで演算して最適な叩き方をしたらこうなりました、とミサカは説明します。
 素の力がお姉様より強いのは日頃の訓練の賜物かもしれません、とミサカは予想します」
「訓練?筋トレでもやってるの?」
「日によってメニューは違いますがそんな所です、とミサカは返答します」
「へーそうなのか、でもなんでまたそんな事を?」

10039号の言葉に感心する当麻は、妹達が何故トレーニングをしているのか気になるようだ。すると、

「今のミサカの力では守れる物が少ないからです、とミサカは回答します。
 ミサカは能力者としてのレベルが低いので、それを補う為に基礎スペックの強化が必要なのです、とミサカは己の力の無さにしょんぼりします」

当麻の問いに答える10039号は肩を落としはぁ…とため息を付く。
それを聞いていた美琴が思い出したかのように「そういえば」と10039号に話しかける。

「昼間のあの子(10032号)の動きもかなり訓練されてたように見えたけど、もしかしてそれも?」

美琴の問いに頷く10039号。

「元々、妹達には戦闘行為に対してあらゆるプログラムが入力されているのですが、
 最近は模擬戦等を行って更に経験を積んでいるのです、とミサカは懇切丁寧に説明しました」
「模擬戦!?ちょ、ちょっと、危ないことしてないわよね!?」

淡々と話す10039号の言葉の中にあった『模擬戦』という単語に驚きを隠せない美琴。
その慌てように10039号がやれやれといった感じで言葉を続ける。

「あくまでも模擬戦ですので安心してください、とミサカは安全第一であることを伝えます」
「でも万が一ってのがあるだろ?あんまり無茶な事はするなよ?」

安全を期した上でも予想外の事態は起こるもの。その事を指摘する当麻。
そこに美琴が不安そうな顔で「それに」と続ける。

「街で自分より強い奴が相手だったらどうすんのよ?」

妹達の能力は強く見てもレベル3。という事は同レベル以上の相手では危険が生じる可能性が高い。
それに、武器…特に銃などを使用されてしまえば彼女達の能力ではどうにもならないはずだと美琴は考える。
その言葉を聞いた10039号は、

「お二人とも心配性ですね、とミサカは過保護な二人に嘆息します。
 格上と遭遇した場合は番外個体か一方通行の救援が入るので大丈夫ですよ、とミサカは緊急時の対処法を説明しました」

それに、学園都市には風紀委員や警備員もいる。だから余程の事がない限り大丈夫だと答えるのだが、
それでも心配そうな表情を崩さない二人に、首を傾げてどうしたものかと考える10039号。
そして、しばし考え込んでいた彼女は何かを閃いたよう傾けていた顔を元に戻すと声を発する。

「ではお姉様とミサカで模擬戦をしましょう、とミサカは唐突に模擬戦の申し入れをします。
 そこでミサカの実力を証明し、お二人を安心させて差し上げます、とミサカは意気込みます」

両手の拳を握った10039号は美琴に模擬戦を申し込むのだが…

「嫌よ。私があんたに攻撃できるわけ無いでしょ?」

即却下。まあ当然といえば当然だろう。
その回答を聞いた10039号は、

「模擬戦ですよ?本格的な戦闘行為ではないのでそんなに深刻に考える必要は無いのです、とミサカは模擬戦の安全性をアピールしてみます。
 ミサカと模擬戦をすればミサカの実力が分かるはずです、とミサカは再考を促します」

二人の不安を払拭するには直接戦って実力を認めてもらわないと駄目だろうと考え、再考を迫る。
10039号としても模擬戦とはいえ、彼女が自分達に矛先を向けられないであろう事は理解しているのだが、
今後も活動を続けるにあたって、いらぬ心配をされては動きづらい。だからこそ10039号は食い下がる。
しかし、一向に首を縦に振らない美琴。

(お姉様は本当にお優しいですね…)

10039号はその頑なな態度に内心で喜ぶ。だが、ここで折れるわけにはいかない。

(このままでは平行線のままですね…ならば少々強引ではありますが…)

そう考える10039号はある決断をする。そして、

(お姉様、申し訳ありません…)

心の中でそう呟くと、恐らく美琴が、そして自分が一番望まない事を口にする。

「…では、模擬戦ではなく勝負にしましょう、とミサカは模擬戦を勝負に変更します」

勝負、そう言ってしまえばお姉様も考えざるをえなくなるだろうと予想した彼女は更に言葉を続ける。

「5分間の戦闘を行って、ミサカが耐えきればミサカの勝ち。このまま活動を続けさせてもらいます。
 5分以内でお姉様がミサカを行動不能、もしくは降参させればお姉様の勝ち。もう二度とあのような行為はしません、とミサカは勝敗条件について提案しました」
「!」

美琴は10039号の言葉に驚き、目を見開く。簡単に言ってしまえば、『自分達を止めたければ戦って止めろ』という事だ。
美琴は俯くと悩み始める。彼女と戦うのか、戦わないのか。当然戦いたいなんて思っていない。
だが、ここで戦わなければ今後も危険な場所に飛び込んでしまうかもしれない。
でも自分が守るべき大切な妹に力を向けるなんて絶対に出来ない。
でもこの勝負に勝てばこれからは安全な場所にいてくれる…。
そんな考えが頭をグルグル回る。そして逡巡の後、顔を上げると、

「…分かった」
「美琴…?」

搾り出したような美琴の言葉。とても険しいその表情からは苦渋の決断であったことが窺える。
その言葉と表情を見た当麻は思わず彼女に声を掛けようとする…が、その瞳は10039号に向けられたまま動かない。
そこには既に自分の入り込む余地など無い、そう思った彼は言葉を続けられず、二人を交互に見る。
しばし見つめ合っていた姉妹。そして10039号が口を開く。

「それでは早速行きましょう、とミサカはお二人を案内します」

一瞬悲しそうな瞳を浮かべた10039号が二人に背を向け歩き出すと、当麻と美琴もその後に続く。
外に出ると辺りは夕焼け空に染まっていた。そんな中、無言で歩く三人の距離はいつもとさほど変わらない。
しかしその心の距離は大きく開いてしまっているようだった。


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