とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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抱き心地

キャラ替えしよう」の続きです。


「いやぁ~カミやんもホント不幸だにゃ~。あんな所で災誤なんかに見つかるだなんて」
「でもワイはカミやんに感謝やで~。カミやんのおかげで今日の昼食はギョーサン手に入ったんやから」
「…俺はな、好き好んで囮なんかやった覚えなんてないんだ!!吹寄の野郎、『これで完璧だ』とか言ってたくせに!
 校門出た瞬間に災誤と黄泉川にぶつかるだなんて、完璧に俺をハメる作戦だったんだろ!?」

一月下旬の土曜日の学園都市 第7学区のとある病院
不幸な少年上条当麻はいつもの病室のベッドに寝ている。
そばには同級生の土御門元春と青髪ピアスが見舞いに来ている。
青髪ピアスはやや申し訳なさそうに苦笑いしているが、土御門は勝ち誇ったように笑っている。

「はっはは!!カミやんよ、やはり弁当を持ってこないでコンビニで食料調達なんてするからだぜよ。
 俺みたいに妹の特製弁当を作ってくれば良かったんだにゃ~」
「てめぇ…俺達がコンビニ行くって決めたとき、『弁当なんて持ってくるんじゃなかったにゃーー!!』とか言ってたくせに何を言うか!」
「そやでツッチー!!カミやんが体を張って災誤と黄泉川センセを止めなかったら他のコンビニ組が救われなかったんやで!
 災誤の背負い投げを受けて黄泉川センセに押さえつけられて時間を稼いでくれたおかげで裏口から出たワイらは食料を確保できたんや。
 あ…でも黄泉川センセにギュッーと押さえつけられて羨ましいなあ~。胸の感触とかしっかり味わったんやろ?」
「お前は人の心配しておいてそれか!!災誤の背負い投げ喰らって意識ぶっ飛んだのに覚えてる訳ねーだろが!!
 大体俺以外の全員が裏口に回るだなんて聞いてなかったぞ!変更したんならそう教えろよ!!」
「それは無理やカミやん。
 元々不幸体質のカミやんを正面において邪魔者を引きつける作戦やったから、カミやんが気づいて裏口に回ったらみんなやられていたんやで。
 あ~ホンマ、今日カミやんが弁当を忘れたくれたおかげやで」
「てめぇ、ふざけんじゃ――ッ!!…痛つつ……ぜってぇ骨にヒビ入ってるよこれ…災誤の野郎、思いっきし背負い投げしやがって……」ジンジン
「そういえば、なんで弁当忘れたんだにゃ~?いつも彼女が作る愛妻弁当を持ってきてたんじゃなかったのかにゃ~?」
「……美琴は友達と一緒に出かけるって言って朝早くに自然公園に出かけたから作ってくれなかったんだ。
 それを昨日のセールが始まる前に知っていれば、簡単におにぎりでも作ってきたのに……」
「考え直してみたらカミやん!!リア充化した君は既にこうなる運命だったんや!!そう思ったら見舞いに来ることも謝ることもなかったなあ?」
「貴様…退院したら覚えてろよ。ぜってーぶっ飛ばしてやる」イライラ

上条がいくら吠えても腰を痛めている以上起きあがることすらできない。
そんな上条をあざ笑う二人は餅つき大会での美琴のカミングアウトを忘れてはいなかった。
酔っぱらっているとはいえ惚気ながら上条の部屋で過ごした甘い一夜をベラベラと喋った美琴に、
青髪ピアスと土御門が呆然としてしまい沸き上がる怒りを溜め込んでいたところだったのだ。
だから最初は申し訳ないような顔をしていた青髪ピアスであったが、いつの間にか土御門と同じようなドヤっとした顔に変わっていた。

「まあカミやん落ち着け。今日はお詫びといっちゃ何だが、幾度となく続く入院生活をより快適に過ごすための超便利グッズを持ってきたんやで~」
「どうせ変態度の高い写真集かDVDだろ。ここには美琴だってお見舞いに来るんだから間違っても置いてくんじゃねーぞ」
「ところがカミやん、今回はいたってシンプルな物やで。その名も『大精霊の夢見心地抱き枕』!!二つ合わせて二千円のお買い得品やで~!!」
「…青髪君?一つしかないように見えるのですが?」
「一つはカミやんのでもう一つはワテのやで。闇の通販って言われる所で売られてる限定品なんやでぇ~」
「青髪君!!お前は腐っても学級委員だろーが!!勝手に犯罪に手を染めるのは勝手だが、クラスメイトを共犯者にすんな!!」
「まあまあカミやん、これは合法的なマジカルグッズやで。
 なんと二つの内の片方には『抱き枕の大精霊』が宿っていて、その大精霊が夢の中で好きな女の子を抱かせてくれるんやって!!これはもうたまらへんでぇ~!!!」
「…でもどちらか一方なんだろ。ならお前に来ないで俺に来るかもしれないじゃん」
「そこはカミやん、君の不幸体質によってもう決まったも同然や!!今回君に送ったのもこういう計算があって―――」
「ふざけんじゃねえこの変態野郎!!!俺をダシにすんのもいい加減にしろ!!――ッ!!痛てててて……」ジンジン

思わず激高した上条は青髪ピアスにグーパンチしようとしたが、腰におもいっきり響き、うずくまってしまった。

「まあ落ち着けカミやん。ほらこの抱き枕をこうして、こうやって、こうすると、どうだ!少しは楽になったぜよ?」
「ああ、確かに腰が固定されるし抱き心地も悪くないからだいぶ楽になった。ありがとな土御門」
「礼なんていらんぜよ。それじゃあカミやん、そろそろ帰るにゃ~。今日は舞夏が夕飯作ってくれるから早く帰らんとにゃ~」
「んじゃ、ワイも帰ってパソコンで爆乳シスターと戯れてこよーと。カミやん明日その抱き枕の感想聞きに来るからな~」
「爆乳シスターって誰だよ……じゃあな」

二人が病室を出ていき静かになった。二人が来る前に診察が終わってしまったので今日は何もなければ誰も来ることはない。
いや、先ほど美琴にメールを送ったので、もしかしたら見舞いに来るかもしれない。
そんなことを考えているとだんだんとウトウトしてきた。青髪ピアスが残した抱き枕のおかげで腰の痛みも感じなかった。
目を閉じてしばらく何も考えないでいると、すぅーっと意識を落として夢の世界に入って行った。

『上条さん』
『……ん…もうちょっと…』
『上条さん!』
『…もうちょっとだけ……この抱き心地を……』
『ああもうっ!!上条さん!!!』ビシャ!!
『うわっ!!なんだこのおしぼりは!!』
『やっと起きましたね上条さん』
『あれ…!?お前は五和!?てかなんなんだそのチラメイド服は!!?』
『わわわっわ私は五和でもなければ大精霊チラメイドなんかでもありません!!抱き枕の妖精です!!』
『…いやでも妖精と言うにはあまりにも体が発達しているように見えるのですが?』
『そそそ、その辺は気にしないでください!気にしたら負けってやつです!
 ところで上条さん、あなたがこの抱き枕を抱いているという事はこれが何なのか知っていますよね?』
『いや、青髪ピアスからの贈り物だしよくわかんないんだけど、抱き枕の精霊が現れて願いを叶えてくれる物だとかナントカ……』
『なんかよくわかってなさそうですね…この抱き枕はあなたが一番大切にしたい物を抱きしめさせる物なのです。
 私がこれからあなたの大切にしたい物ベスト3を猫に変えてしまいますので、あなたはそれらの内どれか一つを抱きかかえてください。
 あなたの直感で選んだ猫があなたが一番大切にしたい物になって抱きしめられるというわけです』
『大体わかったんだが、俺がどういう人間だか五和は知ってるだろ?
 この右手のせいで不幸しか掴めない男なんだぜ。直感だけじゃ一番大切なものを抱けないんじゃないか?』
『自信を持ってください!!あなたの直感で選んだ物というのは、右手で掴む物じゃなくて頭で感じて掴む物なんです!!
 もしその一番大切なものと心が通じ合えば、きっと大丈夫です!!それと私は五和ではなく抱き枕の妖精です!!!』
『そうか!なら一発で掴み取ってやるぜ!!俺の一番大切な物をな!!!』
『その意気ですよ上条さん!!それでは今あなたの大切な物ベスト3を猫に変えて出現させます。
 制限時間がありますのでしっかりと掴んで離さないでいてくださいね』
『よっしゃ!!来い五和!!!』
『だから五和じゃありません!!!いきますよ!!イモ!ジョウ!!チュ~!!!』ボン!ボン!!ボン!!!
『それ酒だろうが!!てかなんですかこのカラフルな猫ちゃんは!!?』
『それぞれの特徴を色で表しているんです!それよりもほら!!逃げ出し始めましたよ!早く捕まえてください!』
『くっそ~!あの黄色の猫は早すぎる!!すごく欲しい物の色だけどあんなに俺を嫌うならたぶん違う!!
 んでもって、この白い猫はなんかフード被っているけど、何で体よりもフードを遠ざけてる訳?――って痛てえーー!!』ガブッ!!ガジガジッ!!
『シスターのようですが妙に攻撃的ですね。なんか恨みでもあったのでしょうか』
『痛てて…やっぱ違うよな。じゃあこっちのブラウンのかな?でもなんか可愛いけどビリビリしてるな。
 どれ、上条さんの幻想殺しでなだめてみますか。ほれほれ、よーしよし、お前は可愛いやつだにゃ~』ゴロゴロ~
『喉をゴロゴロ鳴らしてますね。悔しいけど可愛すぎです~』
『ほーれほれ、なでなで、うりうり、そしてトドメにムギューッ!!』
ふにゃぁ!!
『よっしゃあ!!これでゲット…ってコラッ!!暴れんなよ!!』ジタバタッ!
ふにゃ!!ふにゃにゃ!
『制限時間を過ぎるまでしっかりと捕まえておかないといけませんよ。がんばって押さえつけてください!』
『んなこと言ったって!こいつ元気良すぎだろ!!こんの~!!逃がさねえぞ!!』アタマギュッー!!
にゃん!にゃにゃあ!!ふみゅ…
『あと五秒です!逃がさないでください!!』
『ってあれ?なんか落ち着いてきたような?この猫大丈夫か?』ナデナデ
ふみゅみゅ……ふにゃー

「……よし、いつわ~これでいいんだろ~……ってなんだ、夢か…猫がいっぱいでなんか疲れたな~」

午後六時半
土御門たちが退出して三時間経過していた。既に日が落ちて窓の外は真っ暗になっていた。
まもなく夕食の時間であろうと上条の経験で予測し、机を出すためにベッドを傾けようとした。

「えっとこのリモコンだったはず………ん?なんだ?」

ベッドの中になにやら違和感を感じた。確かベッドの中には抱き枕しか入れてないはずだ。上条はまず手を使って違和感の感触を確かめる。
サラサラとした髪の感触。ムニムニとした柔らかいほっぺの感触。そして布地越しに感じるマシュマロのように柔らかで………。

ふにゃっ!!

突然中から猫のような奇声が発せられて上条は飛び上がった。掛け布団を退かしてみるとそこには丸く固まってる御坂美琴がいた。
どうやら最後に触ったのは彼女の胸だったようで、驚いてビクビクと震えていた。

「わわわわ!みみみ美琴!?何で俺の布団の中に美琴が居るんだ!!?」
「ふふふふふふ、ふにゃ~~」ビクビク
「おい、どうしたんだ!?さっきから猫語になってるぞ!?」
「ふにゃあ、ふにゃにゃにゃ、ふににゃ、ふにゃあ~」アセアセドキドキ
「…………まあ落ち着くまでじっとしてろよな?日本語OK?」
「にゃあ………」デレデレ

そのままの体勢で5分間、深呼吸を繰り返して頭の中を整理して、美琴はだんだんと落ち着きを取り戻していった。
美琴は時折下半身の辺りをモジモジとさせながらも、だいぶ落ち着いたので上条が話しかけてきた。

「…落ち着いたか?」
「……うん…なんとかね…」
「えっとさ、確認するけどお前が自分から入ってきたんだよな?」
「………うん」
「あー、たぶん何らかの偶然が重なってこうなったんだと思うから一から順に言ってみな?」
「……わかった、あのね実は―――」


午後5時頃
美琴は自然公園からの帰りの電車の中で、上条からのメールを見て入院していることを知った。
一緒にいた白井や初春、佐天に断って病院の最寄りの駅で途中下車した美琴は上条が喜びそうなお菓子やジュースを買って見舞うことにした。
病院に入って受付で上条の部屋を確認してもらっていたそのとき聞き覚えのある声が聞こえた。

「あれ?こんな短パンを履いてる妹達なんていたっけってミサカはミサカはスカートめくりながらネットワークに照会してみたり」ビラッ
「!!!ら、打ち止め!!?アンタ、何してんのよ!?」
「あ、お姉さまでしたか!ご無沙汰ですってミサカはミサカは挨拶してみたり!!」ペコリ
「挨拶はいいからスカートめくりはやめなさい!!公共の場なんだから恥ずかしいでしょうが!」
「でもこの前の餅つき大会の時にはみんなの前ですごいこと言ってなかったっけってミサカはミサカはモガッ!!」
「いいから黙りなさい。それと餅つき大会のことはいい加減忘れなさい。それで何でアンタがここにいるのよ?一方通行は?」
「モガモガ――プハッ、もうそんなに口を押さえないでよってミサカはミサカは要求しとく!
 ミサカは今日は検査入院で他のミサカと一緒に泊まるんだってミサカはミサカは女の園にあの人は呼んでないよと伝えてみる」
「同じ顔の娘達だけの女の園はちょっと不気味ね…
 私は当麻がまた入院したって言うから見舞いしに来たんだけど、先に妹達の方に行ってみますか。打ち止め、ちょっと案内してよ」
「おっけーってミサカはミサカはお姉さまを先導する!」

打ち止めの後に付いていき、妹達専用の病室まで来た。ドアを開けると、学園都市に残った妹達が十人ほどいた。
それぞれ見分けられるために病院服は別々の色の物となっていた。そしてそれぞれに名札が付けられていて番号を確認することもできた。
美琴が部屋に入ってくると妹達は一斉に美琴に詰め寄ってきた。

「お姉さま!!ここであったが百年目、これよりミサカが引導を渡しますとミサカは革命を宣言します!!」
「はい?なな、何でいきなりアンタ達にやられなきゃなんないのよ?!」
「自覚がないのは恐ろしいことですねとミサカはしらばっくれてんじゃねーと牽制します!」
「お姉さまは先日の餅つき大会の時に上条当麻と過ちを犯したことを堂々と宣言してしまいましたねとミサカは強制的に思い出させます!」
「あの瞬間ミサカ達9968人の怒りの感情に火を灯してしまったのですとミサカはヤケ食いに走った正月を思い出しながら話します!」
「そして私たちがミサカネットワークの演算能力を用いて導き出した答えこそ、
 お姉さまを(社会的に)亡き者にして上条当麻を私たちの物とする事ですとミサカは復讐方法を簡単に説明します!」
「都合の良いことにお姉さまとミサカ達は瓜二つ、
 そしてこちらには感覚共有という私たちにしかない武器がありますとミサカはお姉さまと入れ替わり既成事実を作って奪い取ることを説明します!」
「あとはお姉さまにしかない独自性を奪い取ってしまえば完璧ですとミサカはジリジリと詰め寄ります!」
「アアア、アンタ達!いい加減にしなさいよね!!
 確かにあのときは甘酒で酔っぱらってヤバすぎなことを喋ったかもしれないけど、当麻はもう私の彼氏なんだからアンタ達に渡さないわよ!!」

部屋の隅に美琴は追いつめられてしまい、同じ姿をした女の子達に囲まれてしまった。そして首にネックレスを付けた10032号が両腕をガッチリと掴んでこう言った。

「ここは妹達専用の部屋ですが近くに普通の病室があるので電撃が使えませんとミサカは忠告しておきます。
 そして妹達は既に軍隊で使われる体術をマスターしているので完全にこちらの勝利ですとミサカは降伏を勧告します」ジリジリ
「ちょ、ちょっと待って!!一回落ち着いて話し合いましょ!説明すればアンタ達だって納得すると思うの!だからその手をまず離して―――」
「もうお姉さまの言うことは聞き入れられません!!これより拘束しますとミサカはベッドに押し倒します!!」ドサッ テアシギュッ!

きゃあーー!!!!

ミサカネットワークに繋がった妹達は素早い連携した動きで美琴の両手両足を拘束してベッドに寝かせた。
美琴はその素早い動きで何が起こったのか一瞬理解できなかったのだが、十人の妹達によって押さえ込まれてしまい悲鳴を上げた。
そして一人の妹がスカートの中に手を突っ込み、美琴の短パンを脱がした。

「本当ならお姉さまのパンツごと奪い取る予定でしたが、幸いその縞パンなら私たちも既に持っているので短パンだけで許しますとミサカは慈悲を与えます」
「返せー!!!それは私のなんだからーーー!!」
「フフフフ、お姉さまも能力が使えなければ只の女の子ですねとミサカはあざ笑います。
 それではあとはお姉さまをロッカーにでも縛り付けてミサカが常盤台の制服を着て短パンを装着して上条当麻の病室に向かえば完璧ですとミサカは早速着替えに入ります」
「待ってください13577号!!ここは一番あの人と接触のある私10032号が会いに行くべきですとミサカは短パンを奪い取ります!!」バッ
「10032号ばかりずるいですとミサカ10039号は短パンを奪います!!」バッ
「10039号はヤケ食いで増えた体重が適正に戻っていないから不適合ですとミサカ19090号は短パンを取り上げます!!」バッ
「19090号は抜け駆けのしすぎですとミサカが――!!」
「いえこのミサカが――!!」「あなたよりも私の方が――!!」「この短パンは私が――!!」
「いえこの私が――!!」「ミサカが――!!」「ミサカが――!!」

ミサカネットワークで美琴から独自性(短パン)を奪い取る方法を考えるまでは良かったのだが、どの妹が上条の相手をするかまで決めていなかった。
感覚共有でどの個体にも同じ感覚が伝わるのだが、やはり生で相手した方がいいので妹達は必死に美琴の短パンを争奪してケンカし始めた。
だがここで思わぬ伏兵が現れた。
今まで相手にされていなかった打ち止めがほかの個体がケンカしている隙に短パンを奪い取ったのだ。

「あっはっは!!バカな個体共め!欲に目が眩みすぎだぞってミサカはミサカは勝者のポーズ!!!」
「上位個体!!これは真剣な事なのです!!ガキの相手をしている暇はありませんとミサカは短パンの返却を要求します!!」
「上位個体!あとで何か美味しい物をあげますから短パンをこのミサカに渡してくださいとミサカは手を伸ばします!」
「上位個体!」「上位個体!」「上位個体!」

妹達は必死になって打ち止めから短パンを掴もうとした。
だが打ち止めは、

「ふっふっふ~、ミサカは誰の味方もできないからここで逃亡するってミサカはミサカは猛ダッシュ!!!
 奪い取ることができたミサカに短パンを与えようってミサカはミサカは鬼ごっこ開始~!!」ダダダッシュ!!

打ち止めは猛スピードで病室を出て逃走した。
妹達はケンカを止めて急いでサブマシンガンの準備をした。その隙に美琴は拘束を逃れて妹達より一足先に打ち止めを追い始めた。

「あのチビッコめ~、短パンを変なとこに捨てたりでもしたら承知しないわよ!!」

美琴は近くの公衆電話のインターネット用の差し込み口に自分のPDAを差し込み病院内の監視カメラの映像にハッキングした。
すると三階の廊下を走る打ち止めの姿を見つけた。急いでPDAを外して、階段を上る。
三階に着き、病院の中だというにもかかわらず美琴の電波レーダーで打ち止めを探すと、奥の方の廊下にいた。その先は行き止まりになっているので追い込むのは容易かった。

「打ち止めちゃん♪もう逃げられないわよ~」ジリジリ
「お姉さまの微笑みが怖すぎるってミサカはミサカは逃げ道を探してみる……」
「残念だったわね。もう行き止まりだし、どう考えても私の方が強いから、余計な抵抗はしないでちょうだい」
「うううっ、しかし!!ミサカには最後の逃げ道があるってミサカはミサカは部屋にとっつげきぃ~~!!」ガラッ
「あっ、こら!!待ちなさ……いぃ!!?ここって当麻の部屋じゃない!?打ち止めめぇ~、容赦しないわよ!!」

美琴は打ち止めに続いて部屋に突撃した。
ドアを開けて部屋に入ると、打ち止めが上条の布団の中に入り込んで隠れようとしていた。上条はぐっすり寝ていて、打ち止めが入り込んでも気にせずいびきをかいていた。
仕方がないので美琴も上条の布団に入り込み打ち止めを引っ張り出そうとした。
ところがいきなり上条の手が動いて美琴を抱きしめてきた。予想外のことに美琴は猫のような奇声を出した。

「ふにゃぁ!?」
「よっしゃあ~、これでげっとぉ~」ダキシメギュッ-
「こ、こら!!アンタね、やめなさいよ!!打ち止めを逃がしちゃうでしょ!!」アセアセ

美琴は布団の中で必死にもがく。だが寝ぼけている上条はそんな美琴を逃がさないように、よりいっそう強く抱きしめた。

「ってこらぁ~暴れんなよぉ~」
「ちょっとやめてよ!!打ち止めも居るんだからこういうのはダメでしょ!!」
「あっはっは!!ここはミサカの大勝利ってミサカはミサカはスキップで華麗に脱走!!」

どうやって抜け出したのか知らないが、小さい体で布団から脱出した打ち止めが片手に短パンをヒラヒラさせながらバタバタと病室を出て行ってしまった。

「あ!!打ち止め、待ちなさい!!!短パン置いてってちょうだい!!アンタもいい加減放しなさいよ!!」ジタバタ
「んなぁこといったってぇ~、こいつ元気良すぎだろぉ~」
「アンタこそなんでそんなに抱きつくのよ!!うにゅー!!」グググッ
「こんのぉ~、逃がさねえぞぉ~」アタマギュッ-

美琴は渾身の力で上条の腕から抜け出そうとした。だが、いきなり美琴の頭を押さえつけられてギュッ~と腕の中に戻されてしまった。
さらに押さえつけた右手で美琴の頭を撫でたので、その感覚に酔ってしまい次第に力が抜けていった。

「や、止めてよ当麻!そんなに撫でないでよ!!こ、こんなに優しくされちゃったら私………もう、気持ちよくて……」フニャフニャ
「……ありぇ?なんか落ち着いてきたような?…この猫大丈夫かぁ?」ナデナデ
「大丈夫にゃ訳にゃいでしょバカ…もう、ナデナデしにゃいでよ……ふにゃー、気持ちぃ…」

寝ている上条に弄ばれた美琴。彼の腕の中で丸くなり、幻想殺しの宿った右手に撫でられて彼女は完全に堕ちていった。

「という訳だったの……」
「……………」

説明し終えたところでまだ当麻のベッドの中で二人は抱き合うようにしていた。
恋人となった二人の間に羞恥という物はなくなり、むしろまだまだ寒い一月の下旬、人肌が恋しくなり二人は離れたくはなかった。
もっとも告白した時にそのまま家にお持ち帰りして人生初の過ちを犯した二人にとって、抱き合って寝ることなどなんてことはなかったのだ。
美琴が説明を終えて、上条は夢の内容を思い出した。抱きついてから喋った寝言はまんま夢の中で話したことと一緒だったのだ。

「…あー、お前の邪魔しちゃったことは謝るよ。
 ただこれには夢の内容のことがあって、それに体がシンクロしたんだと思うんだ。だから少し俺の話を聞いてくれないか?」
「う、うん…」

上条は入院した原因から夢の内容まで漏らすことなく全て話した。その間もベッドに二人並んでいちゃいちゃしていた。
話し終えたところで上条は時計を見る。時刻は午後7時。
常盤台の寮の門限はまもなくであり、今から病院を出て走って帰ったとしても間に合わない。

「美琴、離れたくないのはわかるけど、一度寮に電話入れないとパニックだぞ。そろそろ帰り支度をしないと……」
「………くない」ボソッ
「え?今なんて…?」
「今日は…帰りたくない。当麻と一緒に寝る」テレテレ
「!!?いい、いやだって美琴さん!?既に恋人以上の仲になってる私達ですけど、まだ学生なんですよ!?
 いくらお前が帰りたくないって言っても、寮の他の子達が大パニックになるだろうし、第一明日だってあるんだから…」アセアセドキドキ
「……それなら大丈夫だから、明日日曜日(おやすみ)だから……その、一緒に寝ようよ…当麻ぁ…」ウルウル
「………わかったよ、美琴。今日は遅いからこのまま一緒に寝ような。
 でも上条さんは腰を痛めてますから、おイタなことはできませんよ?」チュウ

美琴の上目遣いで頼んでくることに逆らうことなどできなかった。上条は可愛く懇願してくる美琴の唇を奪いながら返事をした。

「もう、怪我人に無理させるほど私はひどくはないわよ。ねえ、それより当麻は夢の中でさ、なんでブラウンの猫を追いかけたの?」
「う~ん、まあ他の猫がすぐに逃げちまってブラウンのしか残らなかったからそいつを選んだんだけど……
 捕まえてからいくらか撫で回したら、ふにゃふにゃになってすごく可愛かったからかな?美琴にもすごく似てたし」
「ふ~ん……じゃ、じゃあさ他の猫の方が可愛かったり懐いてたりしてたらどうしてたと思う?ブラウンじゃなくてそっちの方にした?」
「…いや、たぶんブラウンのやつを選んでたと思うよ。
 あの夢の中で五和…じゃなくて抱き枕の精霊は自分の直感で一番大切な物を選べって言ったんだ。
 俺の直感はそのブラウンの猫を指していたし、他にも大切な物があったと思うけど、今じゃお前が一番大切な人なんだしそれで繋がっていたんだと思うんだ。
 だからお前が一番好きだぞ美琴」キリッ
「…わ、私も当麻が一番好き!今は一番大切にしたい人なのっ!!」ギュゥゥゥ
「痛い痛い!!腰に響くから止めて!!」ジンジン
「ご、ごめん!痛かった?」
「ああ、でもこの抱き枕のおかげで痛みが抑えられるし、美琴を抱いていると寂しくないし、抱き心地も最高だぞ」サラニキリッ
「!…もう、ばかぁ…」テレテレ

バカップルな二人はそのまま病院のベッドの上でいちゃいちゃと一晩過ごした。誰も邪魔することなく、二人にとって至福の一時が流れて行く。
お互いに愛している人の温もりを感じながら、二人同じ夢の中へと落ちていった。幸せな未来を送る最高な夢の中へと…。


「せっかく上位個体から短パンを奪い取ったのに、あの桃色空間では寝取ることができませんとミサカ10032号は悔しさを噛みしめます……」
「まあお姉さまも幸せそうだしいいじゃないってミサカはミサカは必死すぎる下位個体を労ってみたり」
「私もいつかあんな風に抱き合いたいですとミサカ19090号は抱かれやすい体型を目指すためにダイエットに励みます!!」

と、美琴と上条のラブラブな光景をドアの隙間から覗いている妹達は羨ましながら見つめていたとさ。


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