とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part27

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―あれから一週間―


 同日12時40分、1-F教室

「ふぃー。ようやくお昼の時間ですか…」

 時間は12時、まだ高度の低かった太陽はその高度を上げ、今では空も高いところで燦々とその光を遺憾なく発している。
 そんな中、今はこの高校に限らず全ての学生達にとって一日の楽しみの一つであるお昼休みということ、一時的に授業から解放されるということで高校全体が賑わっていた。
 上条もその開放感に浸り、机に突っ伏している。

「あれくらいの授業でなんでいつもそんな疲れてんのよ」

 その隣の席に座っている美琴は、少々呆れ顔でだらけている上条に声をかける。
 かくいう美琴は常盤台在学中に今授業でしていたところは全て修めているのだが、寝るようなことはしていない。

「授業は眠いし、退屈だからだろ?」
「……なんでそんなに成績が悪いのかがわかった気がする。普通は真面目に聞くもんでしょ?そもそも一年の内容は"二度目"なんだから簡単でしょ?」
「わー!お前声が大きい!」

 上条は留年してこの学年このクラスにいる。
 正味な話、大学ならともかく高校での留年はよほどのことがない限り有り得ない。
 だが上条はその有り得ないことを成し遂げてしまっている。
 一年間無出席というよほどのことをしているから仕方ないとは言え、二年からではなくまた一年からというところが上条が上条たる所以。
 無論、そのあり得なさは本人も自覚している。
 なので、そのことに関してはこのクラスの人間にバレないように努めていた。

「いつかはバレることなんだから、別にいいんじゃないの?」
「それでも少しくらいの抵抗くらいしてもいいだろ!もしかしたらバレないってことも…」
「ないわね」
「……ですよね」

 上条自身の運のなさ、そしてかつての友人が誰でどんな性格をしているを考えれば、自ずとその解は導かれる。
 それこそどうしようもないくらいの確率の高さで。

「どうして上条さんはこんな不幸の星のもとて生まれてしまったのでしょう…」
「またそんなこと言って……私の存在はどうなるのよ?」

 以前、上条は美琴といれて幸せだと言った。
 言うまでもなく、美琴も彼と一緒にいれて幸せだと思っている。
 だからこそ、事情がどうであれ彼が不幸不幸と言うのを美琴はあまりおもしろく思わない。

「それはそれ、これはこれ。幸せ者ですけど不幸なんです。あぁ不幸…」
「じゃあそんなに不幸に浸ってたいのなら弁当もいらないわよね?誰かにあげてこよっかなぁー」
「それはちょっとずるくないか!?というか、上条さん餓死してしまうのでそれだけはご勘弁を…!」

 美琴が視線を上条から外して周りの人へ向けると、彼はそれに対して即座に降伏。
 まだまだ若い彼にとって、昼食はなくてはならないものなのだ。

「それじゃ屋上いきましょ。ここで食べるのはなんだし、ね…」

 今度は先ほどのものとは違い、少し疲れたような表情で美琴は視線をチラリと周りのクラスメートへと向ける。
 このクラスにおいて、間違いなく彼女は他の女子よりも群を抜くほどの容姿をもっている。
 そんな彼女を思春期真っ盛りの男子達が狙わないわけはなく、まだ入学して一週間にもかかわらず、かけられた声は数え切れない。
 最近美琴はそれを少々うんざりしつつもある。
 対して上条も負けじと持ち前のフラグ体質により、早くもフラグをこのクラスの女子に数本築き上げていた。
 つまり、昼食という絶好の機会を狙って、二人に近づこう、仲良くなろうと目論む輩も少なくはない。
 実際、二人の会話を少し聞いていたのか、弁当の件で美琴が視線を周りへ移す際何人にも目があっていた。
 しかし、二人で食べたい美琴にとっては間に誰か入られてはたまらない。
 持ち前の性格で、ある程度クラスメートと仲良くなりつつある美琴でも、やはりそこだけは誰にも譲れない、譲るわけにはいかない。

「あいよ、じゃあ行こうぜ」

 鈍感な上条がその周りのことに気づいているかとうかは知る由はない。
 それでも、周りの視線が少し痛いというのは流石に感じていた。
 なので、屋上に行くことを多少面倒には思っても、特に断る理由もなかった。
 二人はそれぞれ自分自身のカバンを手に持ち、クラス中のほとんどの視線を浴びながら教室の外に出た。
 一年生の教室があるのは一階であり、二階三階にはそれぞれ二年三年の教室、そして屋上はその上。
 教室から出た後に真っ先に向かった場所は上の階へと繋がる階段。
 二人は肩を並べてその階段を上っていく。
 流石に校内で手を繋ぐようなことはしない。
 ここは普段歩く閑散としている場所ではなく、人目は普段よりも格段に多く、そういうことはかなり目立つ学校。
 そんなところで、わざわざ付き合ってますよというアピールをするようなことは、二人を狙う周りの人間に諦めさせるという効果があること以外を除けば、ただ恥ずかしいだけ。
 今なら確実に後者の方が明らかに勝っている。
 二人きりの時はある程度慣れている二人でも、まだ不特定多数の人間の前でベタつく程の勇気はまだない。
 とは言え、学校での空き時間は八から九割方、二人は一緒にいるのだが…

「あぁーー!!カミやんやないか!!」

 屋上への階段を上っている最中、そろそろ三階に着くであろうという時に、その三階から突如として声をかけられた。
 それも、上条にとってひどく懐かしく、とても特徴的な声を。

「げっ…!あ、青ピ!」
「久しぶりやないのカミやん!今までどうしっとったん?」
「あ、あぁ…久しぶり、だな…」
「どないしたんそんな気まずそうにして。と言うか去年は本当に何しとったん?それにその隣の可愛らしい女の子はどちらさん?ま、まさか…」

 正直、上条が今会いくない人物トップ3に入る人物に、聞かれたくない質問トップ3の内二つを立て続けに聞かれた。
 そして何故気まずそうにするかと聞かれれば、気まずいことこの上ないに決まっている。
 二人の目の前にいる青い髪をした大阪弁の大男は、以前上条が一年の時のクラスのクラスメートで、上条と同じくデルタフォースの一角、青髪ピアス。
 特徴的な青髪に、ピアスをしていることからこの呼び名がついた。
 そんな青髪は、上条の隣にちょこんと若干居辛そうにしている美琴を見て固まっている。
 上条にとっては、できればあまりこのことには触れてほしくない。
 深入りされて本当のことを知られると面倒なことになるとわかりきっているからだ。
 ここは穏便にことを済ませ、さっさとこの大男の前から立ち去るのが得策。

「あ、あーとこいつはだな…」
「その子は元常盤台中学の超能力者、超電磁砲の御坂美琴ぜよ。今はカミやんの彼女をしてるはずだけどにゃー」
「「!!」」

 大阪弁の青髪とはまた違い、突然横からまたもや特徴的な口調をした男の声がかけられた。
 上条が隠そうとしていた事実を全て暴露しながら。

「な、なんやってー!?この子があの…?それより、カミやんに彼女やとー!?そ、それは本当なんかカミやん!」
「そ、それはだな…」
「カミやんを見るより、女の子の方を見た方がわかりやすいぜよ?青髪」

 土御門が指摘した通り、青髪がその視線を上条から美琴へと移すと、美琴は顔を赤に染め、俯いている。
 二人は今まで散々街やらどこへやらへと外出したりすることには慣れており、別にその点で美琴は恥ずかしさを覚えることは徐々に少なくなってきていた。
 さらに言うと、上条と恋人関係であることも彼女の友人には少しは伝わっているので、知られることにも耐性はついた……はずだった。
 しかしそれはあくまでも美琴の友人の中だけでであり、上条はいない時。
 上条といるときで、上条の友人に知られることは初めてのこと。
 もう恋人騒動に関しては、あまり感じることはないであろうと思っていた恥ずかしさは、今この時舞い戻ってきた。

「か、カミやん…!こんな可愛い子にこんな可愛い顔をさせよって…!わいらとの友情はどこにいってしまったんやー!!」
「んなもん知るか!って、どわっ!てめ、危ねえだろ!離しやがれ!」
「カミやんだけ抜け駆けは許さへん!わいの怒りを食らえー!!」

 階と階との間の踊場で、上条と青髪の取っ組み合いが開始された。
 昼休みが始まって間もないこの時間、もちろん学食や購買へと向かう学生は少なくない。
 そんな彼らにとって、階段の踊場で取っ組み合いをする二人の存在は邪魔でしかない。
 その証拠に、通り過ぎる人達の中には鬱陶しそうな顔をして通り過ぎる者達が多々見受けられた。
 だがそれは共通して、上条という人間を知らない人達。
 一方で一年の頃の上条を知っている人は何食わぬ顔で通り過ぎていく。
 あいつなら仕方ない、と言わんばかりの顔で。

「ちなみに一週間前カミやんは公園でその子といちゃついてたにゃー」
「はぁ!?お前あん時の状況知ってるだろ!!あれは……あだだだ!!」
「言い逃れは許さへんでカミやん!!公園でなんていい度胸しとるやないかー!」

 青髪による上条への攻撃がさらに激しさを増す。
 もちろん、土御門はあの時の事情を知っている。
 なので先ほどの発言は無論わざとであり、青髪のあたりを強くすれば面白いであろうと思ってのこと。
 そして当事者の一人である美琴はただその場に立ち尽くすばかり。
 襲われている上条を助けたいと心の中で思っても、それを実行に移すことで起こる結果が怖くて、前に踏み出せない。
 彼女の隣でニヤニヤと取っ組み合う二人を眺める土御門が、また何かを言い出すかわかったものではないからだ。
 さらに、ここはあまりに人目がありすぎる。
 変に行動を起こすことで、周りにそういう噂が流れてしまうのも避けたい。
 ではどうすれば、など、超能力者の頭脳をもってしても、動揺した今の状態では導き出せる解答も導き出せない。

「ちょっといいかにゃー?カミやんの彼女さん?」
「は、はひっ!?」

 そんな中、土御門は混乱している美琴へ声をかけた。
 美琴にとってこの声かけは予想外なのもあって、声が若干裏返る。

「そんな緊張する必要はないぜよ?ただちょっとした質問をしたいだけ」
「質問…?」
「そう、一体カミやんのどこを好きになったのかにゃー?ってな」
「!!」

 突然の質問をすると言ったかと思えば、美琴がされた質問は上条を好きになった理由。
 いくらなんでも、これはいきなりとびすぎている。

「そ、そそそんなの、いきなり、いいい言えるわけないじゃない!……です」

 いくら恋人である上条と仲もよく、一週間前の出来事から裏事情も少しは知っていそうな彼でも、まだまだ会って間もないことには変わりはない。
 そもそも仲の良い友人にも話していないことなのに、そんな赤の他人とも言える彼に言える道理はないのだ。

「ちょっとくらい言っても罰は当たらないと思うぜい?」
「ちょっとって何ですか!?」
「ちょっとはちょっとにゃー。全部は言わなくても、切れ端くらいは聞きたいぜよ。あんな奴だからな」

 そう言って土御門は未だに激しい取っ組み合いを繰り広げている二人を指差した。
 恐らく彼も上条の不幸体質、そしてフラグ体質の凄さを知っているのだろう。
 何しろ自分自身もそれらには本当に手を焼いたから。
 だからこそ知りたいのかもしれない、上条のどこが好きで、何故惹かれたのかを。
 しかし普通に、常識で考えれば、これは他人には絶対に教えないレベルの機密事項。
 全くの他人ではないにしても、やはりそれは揺るぎない……はずだった。

「聞いて、どうするんです?」

 けれども、何故だかこの理由によっては別にいいようにも思えてきた。
 無論、全てを語ろうと思ったわけではない。
 話してもいいと思うのは、理由全体の切れ端の切れ端のそのまた切れ端くらいの内容。
 それならば聞いても全体は把握はできないと踏んで。
 それに何より、全てを語ろうとしたら昼休みの時間だけでは恐らく足りない。

「別に何も悪いようにはしないぜい。誰かに話すなんてことも絶対にしない」
「ぅ…」

 返ってきた返事は、決して悪いものではなかった。
 そして決して悪い返事ではないからこそ、迷う。
 一体どこまでを信じていいかのラインが未だにわからないけれども、別に何らかの形で広まってしまったからと言って、困るようなことは恐らくないはず。
 言うことに対して少なからずの気恥ずかしさは、言うまでもなく存在する。
 正直そこまでの恥ずかしさを感じてまで言わなければならないことではない。
 本当に断ろうと思えばいつでも断われるはず。
 ならば言わない方が良いようにも思えてくる。

「…………から」
「へ?」

 しかし口は勝手に動いた。
 何故だかはやはりわからない。
 強いて言うなれば、言わなければならないような衝動に駆られたような気がしたから。

「ある時、私を助けてくれたんです。もう死ぬしかないって時に、それこそ一週間前みたいに身の危険をさらしてまで……だから、だと思うんです」
「……な、なるほどにゃー」

 言い終えると、猛烈な羞恥に襲われた。
 そして気がつく、少し言い過ぎてやいないかと。
 本当は窮地を救ってくれたから、くらいのつもりだった。
 声の大きさは隣の彼しか聞こえない程度のものなので、道行く人達に聞こえてしまったなどのようなことは恐らくない。
 けれども口走ってしまったことは、それにさらに余計なものをつけてしまった。
 大意はどこも変わってはいないが、言うつもりがなかったことを言ったせいか、反動は大きい。
 土御門が何故だか口元が笑い、眉の辺りをヒクつかせているのを確認すると、すぐさま俯いて視線を床へと移した。
 すると、

「……一体、どんな方法をつかっていたのかと思えば、弱みをつけ込んだのか貴様ー!!いっぺん地獄見てこいやー!!」
「えっ?え、ええぇぇ!!??」
「おわっ!お前までくんのかよ!?ってか弱みをつけ込んだって何だよ!?」
「うるせえ!それに今日の朝だってエレベーターでいちゃいちゃしてたらしいじゃねえか!!」
「「!!」」

 その発言に、上条だけでなく美琴も反応を示す。
 今朝にそれを目撃した人物は一人しか存在しないはずだからだ。
 なのにその人物以外で今朝の出来事を知っている人物が、目の前の土御門元春。
 そして実際に目撃したのは土御門舞夏、これらから導き出されることは…

「舞夏の野郎喋りやがったな!?」
「人の義妹を野郎呼ばわりとはいい度胸ぜよカミやん!!とりあえず俺の諸々の怒りをくらっとけやー!!」
「せや!いい加減堪忍袋の緒が切れたで!」
「あぁもう!不幸だぁー!!」
「「どこが不幸だ!」」

 二対一の孤立無援の状態でやられる上条は、久々にそう叫んだ。
 しかし通行人達には邪魔だとしか思われていないのか、その惨状を目にしても、助けようと行動に移す者は誰一人としていない。
 唯一の味方のはずの美琴も、その場で先ほどの土御門の発言が原因で、俯き立ち尽くすだけ。
 彼女も彼女で心中はとてもではないが穏やかではない。
 上条を気にするゆとりが存在できるだけの余裕はなかった。
 この時、上条は確かに不幸だった。


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