とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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 当麻達がステイルをフルボッコしている中、ハイドマン&クレイウーマンの前にちょこんと腰を下ろした初春。
 今の今まで上琴にさんざんな説教をされていたせいもあって、目の前の少女に変な癒しを感じている二人に驚きの提案が成される。

「えっと、初めましてハイドマンさんとクレイウーマンさん。私、科学側の人間でネセサリウスのサポートをさせてもらっています初春飾利といいます」
「……驚いた。噂には聞いていたけどあなたの様なお子様だと思わなかったわ」
「騙されるなクレイウーマン。ここに居る時点でこの子供も常人とは離れた存在なんだぞ。……俺達に何か用か?」
「実はあなた達の今後についてなんですけど、夏の戦争が始まるまでこちらの教会で働きませんか?」

 学園都市の教会で働く=ネセサリウスに寝返って欲しい、そう解釈してもおかしく無い初春の提案に絶句するハイドマンとクレイウーマン。
 当然ながら二人が猛反対するのは目に見えていたので、初春が先手を打つ。

「教会で働くというのは文字通りの意味です。ネセサリウスに入れとかいう意味ではありませんよ?」
「それってつまり……教会で下働きしろってことかしら?」
「クレイウーマンさんは察しが良くて助かります。ですがあくまでも捕虜という名目ですからある程度の自由は……ステイルさんが許さないでしょうけど」

 初春の提案は捕虜の身として考えるならいい待遇だが、ステイルからの尋問はあるだろうと覚悟も決めた二人。
 クレイウーマンはほぼ受け入れ態勢を整えていたが、ハイドマンだけはまだ猜疑心を持っていたので初春に尋ねる。

「一つ聞かせろ。どうして俺達にそんな待遇を提示した? 俺達を懐柔でもするつもりか?」
「……えっ? 夏の戦争が来るまで尋問漬けの生活は体に悪いって思っただけですよ? 悪いことをしたなら体で返すのが基本ですし。あと、可哀想かな……って」
「「は…………?」」

 魔術師になって、生まれで初めて出会う善意の塊のような少女に唖然とするハイドマンとクレイウーマン。
 初春がこのような提案をしてきた理由を聞くことになる二人、それが二人にとっての止め(?)となる。

「私、お二人が根っから悪い人には見えないんです。だから今後もこうゆう風に接していけば分かり合えるのかなって。……こちら側に入っているのに甘いって分かってるんですけど」
「……もしもの話だけどさ。あんたは私達が教会の下働き中に逃亡するって考えたりしないの?」
「全く考えないって言えば嘘になります。でも、私はお二人のことを信じてますから♪ 夏の戦争が始まるまで逃げたりしないって」
「…………まったく、ここまで信じられては断るわけにも逃げるわけにもいかないな。分かった、君の提案を呑もう。クレイウーマン、お前もいいな?」

 裏の企みとか一切無い初春の提案を受け入れたハイドマンとクレイウーマン、目の前の少女だけは裏切らないようにしようと密かに決意する。
 しかしその後で初春が申し訳無さそうに二人にあることを告げる。

「ありがとうございます。……ですがステイルさんの尋問が無くなることは無いと思います。お二人は捕虜なことには変わりないですから。時間は極力減らしてもらうように頼みますけど……」
「そこまでしてもらわなくてもいいわよ、別に。あんた、って言うのは失礼ね。初春の気持ちだけで充分よ」
「クレイウーマンの言う通りだ。それに俺達の持っている情報など微々たるもの。むしろ尋問するだけ無駄というものだ」
「はぁ、そうなんですか。あ、最後に言い忘れていました。当麻お兄ちゃんと美琴お姉さんのことなんですけど」

 上琴の名前を出した途端に怯え出した魔術師二人に心から同情した初春、そんな二人を安心させる言葉を口にする。

「当麻お兄ちゃんと美琴お姉さんには私からお二人のことを許してもらうように説得します。私が頼めば少しは怒りを収めてくれるでしょうし。でも条件を提」
「お願い! 是非ともあの悪魔二人を説得して! 尋問よりもあの二人のが私達は怖いっ!」
「俺からも頼むっ!」
「お、お二人とも、ち、近いです! そ、それにまだゆ、許してくれると決まったわけじゃないですし、条件付きって可能性が高」

 初春が全てを言い終わる前に彼女と魔術師二人の間に七天七刀が突き立てられ、初春と二人は引き離された。
 こんなことを仕出かすのは神裂とシェリーしか居ないわけで、初春はシェリーに抱きかかえられながら神裂とシェリーの説得方法を考え始めた、ちょっと面倒と思いつつ。


そして初春が二人の事を考えている時、ステイルは開放されていた。

「……酷い目にあった」

ステイルがタバコを取り出すと、美琴を引き連れた上条が現れた。

「ステイル、自業自得って言葉をお前にくれてやる」
「うるさい。大体君の不幸体質が僕に乗り移った気がするんだけど気のせいかな?」
「何よ?自分が悪いのに当麻のせいにしないで!!」
「さあな?俺自体よくわかんないし。……それよりさっきの重要参考人がフルボッコにされているんだが?」
「まあ五体満足であれば何でもして良いって向こうが言ってたし、夏までに治ればいいんじゃないかな?」

ステイルがタバコの煙を吐きながらそう答えると、二人はすかさずつっこんだ。

「いや!!それ良くないでしょうが!!」
「しかもそれ傷付ける前提じゃねえか!?」
「……いやいやいや、それさっきの君達が言えることじゃないと思うんだけど?」

ステイルがそう言うと、上条と美琴はうっ!!とうめき声を上げて何も言えなくなってしまう。
そんな沈黙の中、最初に口を開いたのはステイルだ。

「これから魔術的な作業をしなくてはならないんだ。
君の右手は作業の邪魔になるし、今日はお疲れみたいだから帰れ」
「ああ、わかった。じゃあな」
「さようなら」

二人はステイルに挨拶を一応すると、愛しい人と共に家に帰るのだった。


「待つんだ上条。君、いや君達は自分達のしたことに反省をしてもらわなくてはいけない。たとえそれが襲われたからだとしてもね」
「闇咲……先生。それってやっぱりみんな揃って生活指導ということでせうか?」
「そうなるな。ああそれとステイル、魔術的作業はしなくてもいい。どうやら魔術そのものを見られたことは無さそうだし、被害は私の学校の生徒が起こしたものが大きいからな」

 正直、作業が面倒だと思っていたステイルは闇咲の言葉に感謝していたが、言われてみて確かにその通りだと思ってしまった。
 グラウンド、一部の校舎破壊はハイドマン&クレイウーマンの仕業だが、その他の場所は当麻達と新入生達の戦いによって破壊とかされている。
 そして当麻は闇咲と共に半壊状態の校舎にある生徒指導室へと向かう羽目に。

「おっ、闇咲が戻ってきたようぜよ。んじゃちょっとばかし面倒だが大人しく生活指導を受けるとするぜい」
「だなァ、マジ面倒だが。で、雪で埋まってる弟はどうすンだァ? 気絶してたはずだが寝息立ててンぞ」
「私、赤音ちゃんに聞いたことあるよ。井ノ原くんって能力使用中に眠ると半日は絶対に起きないって。理論はまだ解明されてないって話だよ」
「しゃーない、新入生達を何割か片付けてくれた礼として運んでやるかにゃー」

 土白、一方通行、土御門に背負われた真夜は闇咲の生徒指導を受けるべく校舎へと戻って行ったが、寝ている真夜を真昼たちに預けるという考えは無いようだ。
 美琴は当麻が居なくなったので仕方なく家へと帰ろうとするが、

「お、お姉さま、大変心苦しいのですが……」
「ゴメン美琴ちゃん、さっき寮監さんから電話があってこっちに来いって……。何でか分からないけど美琴ちゃん達がここでやらかしたこと、知ってるみたいで……」
「う、浦上さん、それはキャンセルしたいんですけど……ダメですよね?」
「残念ながらね。でも心配しないで。あれ(魔術的要素)はバレてないし、私も一緒にお説教みたいだから」

 寮を出たのに寮監に説教されるという理不尽を受けることとなり、心の中で自分の不幸っぷりを嘆くしかなかった。



 グラウンドから応接室に移動し、神裂による早とちりで酷い状態になっているハイドマン&クレイウーマンに回復魔術を施しているのは建宮。
 そこには建宮の他に治療されている二人、初春、神裂、シェリー、ステイル、インデックスが居た(応接室の人払いは完璧)。
 今現在、初春による神裂とシェリーへのお説教がされている所である。


「どーしてお二人はあんな酷いことをするんですかっ! 私はただ頼まれごとを聞いていただけなんですよっ!」
「で、ですが、飾利にあんなに接近して羨ま……ではなく、襲われてるのではと……」
「そ、そうだよ飾利。か、神裂きはべ、別に悪いことをしたわけじゃなくてだね、えっと……」

 初春とハイドマン&クレイウーマンの間に割って入った神裂、問答無用で二人の魔術師を七閃で滅多斬りにしてしまう。
 普通なら神裂だけが怒られるのだが、シェリーが全く止める所か推奨していた様子だったので彼女も怒られているのだ。

「言い訳なんて聞きたくないです! せっかくお二人が協力的になってくれたのに、これで心を閉ざしたらどうしてくれるんですか!」
「そ、その時は、ステイルが尋問して情報をき、聞き出しますよ……。全責任はす、ステイルが取ってくれます」
「汚いぞ神裂! ……だが初春、どんなに協力的になってくれると言っても捕虜は捕虜だ。断っておくが彼らの人権は……っ!」

 魔術師としては至極正しいステイルの発言だが、それが初春は神裂達の件も相俟って気に喰わなくなり、彼を黙らせるほどの鋭い視線を送る。

「ステイルさん、お二人への尋問は全面的に禁止して下さい。お二人は全てを話してくれると言ってくれました。協力的なら尋問の必要は無いですよね?」
「そ、それはそうだけど……。まあ、いいだろう、ただし取り調べは僕がさせてもらう。それでいいね?」
「ええ。それと取り調べが無い間は教会で下働きをしてもらいます。時間や行動の制約は当然してもらいますが、問題は無いですよね?」
「大有りだっ! どこの世界に捕虜を下働きでもそれなりの自由を与える組織が……うっ!」

 ステイル、そして魔術側の人間にしてみたら甘すぎる初春の提案だが、それを却下できないプレッシャーを初春が出していた。

「お二人は私のことを信じてくれています! 逃亡も反逆も絶対にしませんっ! もしお二人が問題を起こしたら全責任は私が取ります! い・い・で・す・ね?」
「わ、分かったよ……」
(あのステイルをやり込めるなんてやっぱりかざりは侮れないんだよ)

 結局、ハイドマン&クレイウーマンの処遇は初春の考え通りで受け入れられることに。

「良かったなお前さん方。ここに飾利姫が居なかったら人権皆無の扱いは必至だったよな。ま、後は飾利姫への恩義を忘れなければわしは文句無いのよね」

 建宮に治療されている二人はまだ喋れる状態では無かったので、彼の言葉に頷くことで同意を示した。
 初春に怒られてしょげている神裂とシェリーはその怒られていた初春から頭を撫でられながら慰められていた。

「まあ、今回のことは火織お姉ちゃんとシェリーさんの私に対する心配の表れとしてこれで許してあげます。でももし同じことがあったら私、しばらく口を利いてあげませんからね」
「やはり飾利はお姉ちゃん思いの優しいいい子ですね。大丈夫、私はもうあの二人に酷いことはしません。飾利と口を利けなくなるのは辛いですし……」
「私も。ま、飾利にここまで心配されてんだ。あいつらだって下手な考えは持ってないはずさ。あ、飾利、次はハグね♪」
「し、しませんからねっ! じゃあハイドマンさん達の治療が終わり次第、教会に帰りましょうか。火織お姉ちゃんとシェリーさんはお二人を運んで下さいね」

 内心では冗談じゃないと思っていた神裂とシェリー、しかし初春を怒らせるのはもっと嫌だったので仕方なく受け入れることに。
 それから30分後、治療が終わったので応接室に居た面々は建宮を除いて教会へと帰って行った(建宮は食堂へ)。



 一方の体育館裏、大満足状態の滝壺と麦野、幸せそうだがゲッソリしている浜面の姿があった。


「……麦野に……唇……守れきれた……二人に……息子もの初めても……死守……!!」

ふふふふふっ……と不適に笑う浜面。ナニが……いや、何があったかは聞かないでもらおう。
一方女二人は、

*1

十八禁的な、恐ろしい事を考えていた。

「さぁーてと、はーまづらー」
「……そろそろCをやろう」

その言葉にビクッ!!と浜面が震え、残酷な現実に引き戻される。
今まで何があったかは言わないが、浜面は今までの状況が嫌だった。それがもっと過酷な状況になるのは嫌だ。
浜面はこの状況から逃げるべく頭を回転させた。
と、その時、スピーカーから闇咲の声がした。

『二年の浜面くん、服部くん、滝壺さん、郭さん、今すぐ生徒指導室に来てください』

浜面がそれを聞いた瞬間。
滝壺を背負い、麦野から逃げる様に(と言うか逃げている)走った。

「待てよぉ、浜面ぁ!!」
「お前はさっさとカエレ!!」

そう言うと浜面はすぐに消えてしまった。



 生徒指導室に呼び出された当麻、土白、浜滝、一方通行、半郭、真夜(睡眠中)、青ピ(完全に巻き添え)は三時間もの間、こってりとしぼられた。
 優しさの欠片も無い災誤の説教、厳しさの中にも優しさが見える闇咲の注意は彼らを反省させるのには充分過ぎた。

「ふむ、まあこの辺で許してやろう。だがいいかお前ら。相手が悪いからと言っても限度があるぞ! 次はこんなもんじゃ済まさんからな!」
「災誤先生、彼らも反省していることですし今日の所はここまでにしましょう。それに」

 闇咲が何かを言い終える前に生徒指導室のドアが開くと、小萌と木山、そして結標が入ってきた。
 そして今回の件で暴れた当麻達の前に大量のあるものが結標の【座標移動】によって積み上げられる。

「みなさんには学校が休校の間、その課題を全部やってもらいますからねー♪ 大丈夫、一年生のみんなにも同じような課題を後日渡しますので」
「きゅ、休校? いや、それ以前に勉強が苦手な上条さんはこれはもはや拷問でしか……」
「校舎、体育館、グラウンドがあの有様では学校どころでは無いだろう。修繕が済むまで休校になったんだ」

 ちなみに休校の期間は10日、その間は学校側から出される課題が授業代わりとなり、当麻達の場合はそれプラス今回の罰の課題となるわけだ。
 なお月結の二人も対象となるはずなのだが、目撃者も密告者も出なかった上に保健室で小萌と木山と一緒だったことから免れていた。

「では今日はこれで解散。明日は通常の課題を渡さなくてはならないから学校には来るんだぞ」
「センセー、井ノ原弟がまったく起きる気配無いんですけどこのままでええんですか?」
「心配するな。外で真昼と茜川が待っている、二人に運んでもらうさ」

 罰課題を貰った面々は口々に不幸だの災難だの口にしながら生徒指導室を出て、各々の自宅へと帰って行った。
 生徒指導室に残っているのは土白、闇咲、木山である。

「すまないな土御門。君のお抱えの業者の力を借りることになってしまって」
「気にする必要は無いですたい。10日もあれば今回の件の反省を生かしてもっと頑丈な学校に生まれ変わらせることは難しくないからにゃー」
「……しかしまさかここまでの被害が出るとはな。夏に控えている戦争のことを考えると少し気が滅入りそうだよ」
「木山先生、気が滅入るのは私達ですよ……。通常の課題と罰の課題のせいで、元春といちゃつける時間が減っちゃうんですよ!」

 だったらいちゃつくことを我慢しろと思った木山と闇咲だが、バカップルの土白には言っても無駄だと分かってるので言わなかった。
 こうして多くの爪痕を残した今回の友愛高校の一件は終わりを迎えるのだった。

「結局。私の出番。少なかった。別に今さらだけどね。ふふふっ……」
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注釈

*1 ……そろそろ†♀%◆℃□しよう