とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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時は少し遡り学舎の園正門前、授業を終えた美琴が合流した黒子と帰ろうとした時、正門前に居る少女に気付いた。
 その少女は美琴と黒子に気付いて傍まで駆け寄ると、頭を下げて真剣にお願いしてきた。

「御坂さん、白井さん、お願いがあるの。初春さんを連れて行こうとする神裂先生を説得して欲しいの」
「え、え~っと春上さん。と、とりあえず場所、移しましょ。黒子、あんたの部屋に行くわよ」
「わ、分かりましたお姉さま……。仕方ありませんが○○様にはお断りの電話を…………っ!」

 少女こと春上衿衣の真剣な様子に美琴はもちろん、黒子も青ピとの買い物をキャンセルしようと電話をかけようとした。
 しかし目に飛び込んできた青ピの姿に黒子は柄にも無く携帯を取り落とすほどに動揺した、春上の危機という意味で。

(はっ!!このままでは春上さんにトラウマを植えつけてしまいますわ!!)

そう判断した黒子は、二人をすぐさま空間移動で上琴の新居の庭に移動した。

「黒子!!何で私の家に空間移動するのよ!?」
「すいませんお姉様。しかし近くに○○様がいたものですから……」
「……ああ、それは仕方ないわね」

状況を把握した美琴は、素直に黒子に同情した。
そして肝心の春上は周りをキョロキョロ見回し、驚いているようだった。

「……ここが御坂さんのお家……、とっても広いの」
「あれ?春上さんうちに来るの初めてだっけ?」
「うん、初めてなの」

春上はそう言って上琴の家を眺める。が、本来の目的を思い出し頭をぶんぶん回す。
春上が落ち着くと、美琴は春上に話しかけた。

「……とりあえず、うちに入る?」
「……お邪魔するの」

そう言って三人は上琴の家に入っていった。

――――――――――

上琴ハウスに上がった春上、リビングに通されても落ち着かない様子でキョロキョロしていると美琴が紅茶を淹れてくれた。
 美琴の紅茶を一口付けたことで落ち着きを取り戻した春上を見て、美琴は先程の話の続きを再開させる。

「ところで春上さん。飾……初春さんを神裂さんが連れて行くってどうゆうことなの?」
「御坂さん、神裂先生とお知り合いなの?」
「えっ? え、ええ、ちょっとね。それで、どうして神裂さんが初春さんを連れて行くことになってるの?」

 美琴もそうだが当麻も仲間内以外では義妹トリオとの関係を隠している、理由は何かと面倒になりそうな予感がするので。
 春上によれば神裂が初春と同じ寄宿舎で暮らすように促す理由、それは初春の将来の為というアバウトなものだった。
 しかし授業中の神裂の初春に対する態度からそれを信じられない春上、ゆえに初春の教会寄宿舎引越しに反対しているのである。

「神裂先生は毎日ほどんと初春さんばっかり問題を解かせてるの。正解でもそうじゃなくても頭を押さえつけてグリグリしてるの。きっと引っ越し先でも……」
(おそらく初春を可愛がる手段の一つに過ぎないのでしょうけど、確かにそれではいじめられてると思っても不思議ではありませんの)
「(これは神裂さんに問題有りね。春上さんのこの調子だと飾利でも説得出来てないんでしょうね……。でも)春上さん、他に神裂さんが初春さんを引越しさせる理由って聞いてない?」
「えっと、初春さんの安全の為とも言ってたような気がするの。でもあたしはそれが全く信用できないの……」

 いくら神裂が初春バカといっても私情だけで教会寄宿舎入りを勧めるとは思わなかったので、春上にその辺りを尋ねた所、的中したようである。
 初春の今のポジションを考えると敵も危険も多い、でも教会寄宿舎ならば危険は激減するので神裂の判断は正しいと思う美琴だった。

「佐天さんはいくら言っても気にしなくていいの一点張りだったの。だからこんなことを頼めるのは御坂さんと白井さんだけなの。お願いなの、神裂先生を説得して欲しいの」
「分かりました。確かにいくら神裂さんでも初春と春上さんを引き離すなんてやり過ぎですわ。お姉さまもそうは思いませんか?」
「そ、そうね……。仕方ない、わ、私も手伝うわ……(この空気で断るなんて出来ないわよ! 仕方ない、神裂さん説得の時に何とかして……)」

 初春の身の安全を考えた神裂の考えに賛同していた美琴だが、黒子と春上の間に流れる空気を読んで仕方なく協力する羽目に。
 それから一時間ほどティータイムを満喫した黒子と春上はそれぞれの寮に帰る為に立ち上がった。

「御坂さん、白井さん。今日はあたしの相談に乗ってくれて本当にありがとうなの。説得する日はまた後で教えるからそれまで待ってて欲しいの」
「ではお姉さま、黒子もこの辺で失礼しますわ。それとこの件は他の方には内緒にした方が良さそうですの。余計な揉め事の種を増やしたくは有りませんし」

 黒子の提案をもっともだと受け入れた美琴、黒子と春上が帰った後でどうやって春上側に居ながら初春の寄宿舎入りを成立させようか考え始めるのだった。
 なお、当麻が帰って来たのはそれから一時間後のことである。

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