小ネタ 美琴は通い妻状態
Xヶ月後 (美琴は通い妻状態)
トントントントンとリズム良く野菜を刻む音に、上条は目を覚ました。
上条「ふわーっあ。あー、おはよう美…………………こと?」
美琴「………………………………………お、おはよう…当麻」
その台所はいつもと何かが違っていた。
何が違うのだろうか。上条は冷静に分析し始める。
まず美琴が付けているエプロンがおかしい。
いつも使っているのは上条宅に元々あった黒い無地のものであったが、今美琴が付けている
のは薄いピンク色で、フリルがふんだんに散りばめられたものである。
なるほど。エプロンを替えることによっていつもの見慣れた光景が新鮮に………って違う!
と上条はかぶりを振る。
美琴の細い肩が丸見えである。
美琴の滑らかで柔らかなカーブを描いた背中が丸見えである。
美琴の程よく引き締まったかわいいお尻が丸見えである。
つまり……
上条(裸エプロンだ。男の夢。裸エプロンだ。裸エプロンン…………!!!)
上条はまず言葉を失い、次に美琴に感謝の弁を述べたくなった。素晴らしい贈り物をありがとうと。
しかしあまりの感動で言葉が出ない。
とりあえずどうにか伝えるべく美琴を見つめると、美琴の顔は不自然なまでに上条の反対側を
向いていた。
もっとよく観察してみると、さっき切っていたであろうキュウリは全て切り終えられていて、
包丁を持った手は所在なく宙に浮いている。
更に更によく観察すると、美琴の耳がじんわり紅くなっていき、しまいには全身が小刻みに
震えだしてきたのが分かった。
上条は悩む。一体この状況で何て声を掛けて良いのか。
ツッコミを入れればいいのか、ボケればいいのか、素直に礼を言うべきか……………
と、上条が色々考えている内にも美琴の震えはさらに強くなっていく。
正直今にも電撃が飛んできそうでちょっと怖い。
上条(……………………見なかったことにしよう)
上条「さ、さーて、新聞でも…」
美琴「くぉーらぁー!!スルーしてんじゃないわよ!!」
上条「うおおおおおおおい!!人に包丁を向けるなー!!」
とか何とか言いつつ見事に包丁を白刃取りする上条。
美琴「ひ、人がこんな格好してるんだから何か言いなさいよ馬鹿。死ぬ程恥ずかしいんだから!!」
上条「いや、いきなりそんなことされても上条さんはリアクションに困るというか何というか。
そもそも何だってこんなことになってんだ?」
上条が尋ねると、美琴は床に座り込み指でエプロンのフリルを弄り始める。
ちなみにそのエプロンの前面には、可愛らしいうさぎのキャラクターが刺繍されており、どう見ても
裸エプロンには不釣り合いな代物だった。(ただし上条の友人なら逆にこれは良い!と言いそうだと
上条は一瞬思う)
美琴「………べ、別にたまたまかわいいエプロン買ったから。こ、こう言うのも、良いかなって……
その………あんたが、嫌いじゃないなら………だけど。って何泣いてるわけ?」
上条「ありがとう。ありがとう美琴。俺は何て素晴らしい恋人を………、もう美琴の愛で前が見えない」
美琴「あ、愛とか!そういうんじゃなくて………わ、んっ」
感極まって上条は号泣したまま美琴を抱きしめ、キスをする。
もちろん漏電対策に右手でそっと頭の後ろを触ってやるのも忘れない。
美琴「い、いきなりびっくりするじゃないのよ馬鹿」
上条「お前が悪いんだろ馬鹿」
右手を頭に置いたまま、唇をわずか数センチ、互いの息が掛かるくらいの距離を離して文句の言い合いをする。
しかしそれが囁きであるせいか、両者の顔が真っ赤であるせいか、言葉とは裏腹に二人の息はますます熱く
荒くなる。
そうしてる間に、どちらからともなく再び唇を重ねる。
上条「………あー、ところで美琴さん?朝飯の準備はもう良いんだっけ」
美琴「んんー?もう全部できちゃってるけどー?」
徐々にフニャフニャしてきた美琴を支えるため、上条は右手の力を強める。
上条「……あれ?じゃぁあのキュウリは」
美琴「………………………………………」
ゴンッ!と突然美琴が頭突きしてきたが、距離が近いのでそれ程痛くはない。
上条「ならいいや。美琴」
美琴「………なによ」
上条「上条ジュニアさんが限界です」
キリッと真顔でそんなことを言う上条に対して、
美琴「………………ばか」
と美琴は美琴で抑えようにも抑えきれないニヤケ面で返すのだった。