とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part02

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 ―――と、不安でいっぱいな時も確かにあったのだ。
 それが一体どこでどうなって、何が変化の原因になったのかは私の頭脳をもってしても皆目見当もつかない。
 ただ一つだけ言えること、わかることがある。
 それは…

「アンタ、ちょっとうざい…」



My anxiety...?



「うざいって、それはちょっとひどくないですか!?」
「別にひどくないんじゃないの?」

 今少しだけ目線を下げた位置に彼はいる。
 なぜ目線を下げた位置に彼がいるのかというと、それは私の膝の上で彼が寝転がっているからだ。
 そう、所謂膝枕というやつ。

「やっぱりですね、上条さんはここが一番落ち着くわけですよ。だからですね、そんなことを言われると私は少々困るわけでして…」
「あぁはいはいわかった、わかりましたからわるいけどそこもう早くどいてくれない?」
「そんな流さないでくれよ…」

 私のことなどあまり興味がないとも言いたげだった彼はどこへやら、今や彼は私にべたべた。
 今私は大学四年生で、現在進行形で私の膝の上でごろごろしている彼は、これでもれっきとした社会人。
 あれから多くの年月が流れた。
 なぜ彼がここまでになったのかの詳細な理由は正直私にはよくわからない。
 わからないが、敢えて言うのであれば時間が一番理由の一つなのだと思う。
 彼だって、何もいくらここまでいきなり急変したわけではない。
 あれからはさらに二カ月ほどはあのままであり、変化がみられるようになったのはその頃。
 初めは珍しくこちらからではなく向こうの方から休日のデートに誘ってくれたことくらいの変化。
 それが非常にゆっくりな速さではあるものの、次第に彼から手を繋いでくるようになり、互いに互いを名前で呼び合うようになったりにまでなるといった確実な変化も起きていた。
 そして、キスにまで至るようになるのになったのは彼が高校三年に進級した時。
 もちろん私にとってそれは喜ばしいながらも、その速さはとてもじれったく、時にはこちらからどんどんしかけていこうかという考えが浮かんだ時もあった。
 しかし、彼はその時々に微小ながらもいい方向への変化を見せてくれる。
 だからその進展がみられるようになってからはじれったく思いつつも憎めず、とても幸せな気分の毎日であった。
 であった、と過去形ではあるが、無論今が幸せではないということではない。
 若かったあの時分で、それ相応の見合ったこと、ちょっと憧れていたことができたというあの時特有の今とはまた違う幸せ。

 そしてそれは段々エスカレートしていき、彼が私や教員の助けもあって、晴れてそこそこ上のレベルの大学に進学できたくらいの時に最後までいたしてしまってからはもう完全にべたべた。
 それが嫌というわけでは決してない。
 寧ろ甘えてくれる、私に対して心を開いてくれる、さらに彼の居場所が私のところという意味もあるのでそれは私にとって非常に喜ばしいこと。
 そんな彼でも私は大好きで、愛していると言える。
 ただ、流石にそのべたべたが少しだけ鬱陶しく感じる時もある。
 例えば今。
 私たちは長く付き合っていることから、私が大学に進学してからは一緒に生活をしている。
 そして彼は今日、というより昨日仕事場で持ち前の不幸体質によるちょっとしたミスをして上司にこっぴどく怒られたらしい。
 それでか残業をさせられ、夜の一二時を過ぎたときにようやく帰宅してきた。
 その疲れもあってか、癒しを求めて私のとこまできたまではよかったのだが、私は今まだ大学生であり、少し難度の高いテーマの論文を書いている最中。
 彼が帰ってくるまで絨毯がひいてある部屋の床に座り、小さく背の低いテーブルに向かってカタカタとパソコンのキーボードをたたいていた。
 ほどほどならまだ許したがそれが二十分ほど続くと流石に鬱陶しい。

「美琴、今日くらいいいんじゃないのか?この時間まであまり根詰めてやっても体によくないぞ?」
「……あのねぇ、っ!?」
「……な?」

 少し論文のほうに目を向けていた時、彼が声をかけてきたのでそっちへとやや不機嫌な顔をして視線を戻すと、彼に顔を引き寄せられて唇を奪われた。
 その彼がくれる感触はとても大好きで、暖かくて気持ちいい。
 論文は今日中にできるだけ進めておきたかったが、彼がここまでするようになればもう続けるのは至難。
 ……それは、私の気持ち的な意味で。

「……はぁ、仕方ないな……今日だけだからね」
「ぷっ、今日だけ今日だけって、いつもそれじゃねぇか。一体何回それ言ってんだよ」
「なっ!!…べ、別にいいじゃない!」

 それを聞いて、彼はふっとまた小さな笑みを浮かべた。
 そう、いくら私が彼は私にベタベタだなどと言っても、なんだかんだで結局私もまたベタベタに甘い。
 もし今回、疲れて帰ってきたのが私で、家で帰りを待っていたのが彼だったら恐らく今の立場は逆。
 今や私も彼も、この点では互いに遠慮する必要はどこにもなくなったからこその行動。
 そんなことでこの先やっていけるのかと、あの過去とはまた違う心配をしてみるが、それは何故だか別にいいと思えた。
 それが結局は私の幸せに繋がっているのだから。
 だから、時々うざいなどと思ってもそれはほんの片時だけの間だけで、今の関係が幸せではないことなんて、そんなことは有り得ない。

「じゃあもう寝ましょ?当麻も疲れてるでしょ?」
「………なぁ、美琴」
「んー?なぁに?」

 このやりとり、どこかで覚えがあった。
 確か……そう、あの時の私が彼に対して心配していた時のやりとりに似ている。
 彼がちゃんとこちらを見てくれていると分かった時には、次第になくなっていったやりとりに。
 そんな過去を懐かしんでいると、彼は何やら優しくも柔らかい表情でをしてこちらを見つめて少し黙った後、ポケットから小さい小箱取り出し、


「……これからも、俺だけを見て笑ってくれるか?」

 彼が取り出した小箱の中に入っていたものは、銀色に輝くとても綺麗な指輪。


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