とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part29

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―あれから一週間―


 同日15時20分、1―F教室

「―――それでは帰りのホームルームは終わります。皆さん気をつけて帰るのですよー」

 本日最後の授業を終え、帰りのショートホームルームを終える言葉が担任の口から放たれると、静まり返っていたクラスが一気に活気を帯びる。
 今週末の部活動の本入部に備えて目当ての部活の見学に向かおうとする者、仲良くなった友人とこれから遊びに行こうとする者、はたまた真っすぐ家に帰ろうとする者。
 他にも勉強で学校に残っていくなどという勤勉な者もいたりもするが、とにかくこのクラスの者達は放課後の予定の話で持ちきりだった。
 そんな中、上条と美琴は特に入ろうと思っている部活もなく、これといった予定もないということで一致し、とりあえず帰路につこうとしてした。

「色んな意味で今日は特に疲れたぞ…」
「まぁ、アンタは今日は特に色々な事があったからね……色々…」

 二人とも疲れたような顔をして、小さいため息をもらす。
 美琴に関して言えば、昼休みの時間以外の事は何も起きていない。
 ただ上条は違い、昼休みの間に決着が着いたかに見えた事件が終わっていなかったようで、五限目と六限目の間の休みにまた災難に見舞われた。
 恐らく発信元は昼休みの二人なのだろうが、上条帰還の情報と彼女ができたという情報、そしてまた一年生からという情報を手にした上条の元級友達が、上条の下に押し寄せてきたのだ。
 その際には、時には上条に罵倒を浴びせ、時にはスキンシップという名の軽い暴行を受けた。
 中には久しぶりの再会を喜ぶ者も見られたが、それは押し寄せてきた者達の中の一握りの者だけ。
 大半はからかいにきただけで、時間になると各自の教室へと引き返していった。

「……い、色んな意味でなかなかハードな一日だったけど、もう過ぎたことじゃない。ほら、元気出して」
「もう上条さんの心身は限界を迎えてますよ…」

 きつかったと言えば軽い暴行もそうだが、それは当然のことながら本気でのやり合いではない。
 むしろ上条に最も応えたものは、何よりも留年したということを触れられたこと。
 別に頭が悪いという評判は慣れっこな部分もあったので、別段気にしてもいなかったのだが、留年となるとまた事情は違ってくる。
 高校ならばよほどのことをしない限りは、留年などまず有り得ないからだ。
 ましてやそれが上条が気にしていたことならば、尚更。

「あーもう、鬱陶しいわね。打ちひしがれるなら家ですればいいじゃない。とりあえず今は帰りましょ」

 机に突っ伏し、その場から動こうという素振りを見せなかった上条を引っ張り、二人は教室を後にした。


 同日15時30分、帰り道

「ねぇねぇ、そういえばさ」
「ん~?」

 二人の通う高校から出て歩くこと10分。
 少しだけ寄り道をしていこうという話になり、本来の帰路から少しずれた繁華街を二人は歩いていた。
 そして今は下校時間真っ只中ということもあり、ここは人で溢れかえっている。

「あの金髪サングラスの……土御門さん?あの人ってよくわかんないけど、その……魔術の事件にも関係してるんじゃないの?一週間前の時にも一緒にいたし」
「あぁ、まぁそうだけど。それがどうした?」

 美琴にはちょっとした疑問があった。
 それは大したことはないと言えば大したことはないのだが、放っておいておくのもまた気になる。

「当麻は事件やらなんやらで一年間イギリスにいたから留年、そしてあの人もそれにも関係してるでいいのよね?」
「……そうですね」

 美琴の質問に対して少し暗い様子で上条は生返事。
 何度聞いても彼にとって留年という言葉は不快でしかなく、その度に憂鬱になるため。
 その上条の心情を知ってか知らずか、美琴は返事を聞くと、うーんと唸り始める。

「……?結局何が言いたいんだよ」

 いつまて経っても返事を返さず唸り続ける彼女にしびれを切らし、上条は美琴に対しても一つ質問。

「いやさ、同じ事件とかに関係してるなら、なんでアンタは留年して、あの人は留年してないのかなーって思ってさ」
「あぁ、その事か」

 彼女が疑問に思っていたこと、それは今日あった二つ上の先輩の土御門元春についてだった。
 彼は一週間前、帰ってきた上条と共にその姿を現した。
 そしてあの時、彼が上条と魔術関連の事件についてほぼ対等に話していたことを考えれば、彼もまた外国に行っていたと考えるのが自然。
 そうなれば、それは至極当然とも言える疑問。

「別に、単にあいつがずっと日本にいて、学校にもちゃんと通ってた……はず、だからだろ?あいつが日本にいたから俺は帰れるめどがたった時に高校に連絡ができたわけで…」
「……は?連絡?連絡ってどういうこと?」

 上条が"外"にいる間、毎日のようにしていた連絡は三月に入ると同時に、突然途絶えた。
 結局帰ってきた時にその理由を聞いてみれば、携帯が壊れたから、という予想通りの結果だった。
 だが、それなら上条は携帯で日本の誰かと連絡はとれないはず。
 電話番号さえ覚えていれば連絡はとれただろうが、初登校の日に担任教師の電話番号を紙でわざわざ確認していたことを考えれば、電話番号を暗記していたことも恐らくない。
 事実、ほぼ毎日見ていたはずの美琴の番号さえ覚えていなかったのだから。

「んーとだな、あの時のあいつの話にも名前だけでてたんだが、向こうに神裂っていう俺と土御門の知り合いがいて、そいつに連絡してもらったんだ」
「………」
「まぁ帰るって言っても、ちゃんとした日付はわかってなかったから、先生にそろそろ帰りますからよろしくお願いしますって言伝を頼んだだけなんだけどな。……ってお前どうしたんだ?」
「別に、何も…」

 ムスッと不機嫌な顔をして、美琴はしらをきる。
 百歩譲って携帯が壊れたことで連絡を取れなくなったことについては許すとしよう。
 しかし、今の話を聞いて、若干許し難いことができた。
 そういった、例えば学校に対して他の連絡手段を思いつくなら、自分に対しても他の連絡手段を思いつかなかったのかと。
 手紙でも、その連絡のとれた土御門を利用して二人共通の知人である土御門舞夏を経由した方法でも。
 あの時はとにかく情報が欲しかったから。

「いや、その顔はなんかあるだろ」
「過ぎた話だし、もういいの」
「中途半端なとこまで言われたら逆に気になるだろう?」
「………」
「美琴さーん」
「……別に、他に手段があったのなら私にも何らかの手段で連絡してほしかったなって話よ」

 それは1カ月ほど前の話、言ってしまえば今更何を言っても変わらない。
 それでも、美琴は彼の配慮のなさには少なからずの憤りを感じずにはいられなかった。
 多少の事情があるのは認めるが、できる限り自分を優先してほしかった、と。
 それがどうしようもなくわがままで、醜い独占欲であることは理解してはいる、してはいるが、やはり自分はずっと彼の一番でありたい。
 それは美琴の中では以前でも、少しは心身ともに成長したと思える今でも変わらないこと。

「あー、そうだな、悪かった」
「……本当にそう思ってる?」
「当たり前だろ、こんなことで嘘ついてどうすんだよ」
「そう、ならいいけどさ」

 美琴は口では納得したようなことを言っても、その表情、目つき、そして態度は完全に怒り、もしくは不満を示していた。
 今更過去のことをとやかく言っても、過去のことは所詮過去のことでしかない。
 例え上条に何かを言って、どれだけの謝罪を聞いたとしても、過去のことに何ら変化は起きない。
 美琴はそれを承知しているにも関わらず、行き場のなくなった感情を、その元凶たる上条へと撒き散らす。

「そりゃまぁお前の怒りはごもっともだけどさ、今はビリビリしないでくれよ」
「……別に、そんなことしないわよ」
「そうか?ならいいんだけどさ」
「……はぁ」

 上条の反応見て、美琴は一つため息。
 ごもっともとは言うが、自分の怒りを本当に理解しているのかと美琴は思う。
 上条が美琴と付き合ってからの実質的な時間は約一年、さらに美琴と出会ってからの時間は約二年。
 途中一年間会えない日々こそあったが、連絡が途絶えるまでは毎日連絡を取り合っており、時間だけを見ればそこそこの長さの時間共に過ごしてきた。
 そんな彼でも、未だに微妙な乙女心などはほぼ全くと言っていいほどに理解できない。
 いつもいつも美琴がそれを実感する場面になるたびに、そういうことを期待するのは無駄だ、などと思ったりもするが、やはり毎回淡い希望は捨てきれない。
 いつの日か、そういった繊細なところまで自分を理解してくれる日を夢見ながら。

「……と言うか、その辺はわかったけどさ、なんでアンタは"外"行きで、アイツは日本残留なの?」

 このままでいても話が進む気がしなかったためか、美琴は話題を元々していたものへと戻す。
 上条の友人、土御門元春についての話題に。

「それをちゃんと説明するのは色々と事情があって難しいと言うか、面倒くさいと言うか…」
「はぁ?何それ、ちゃんと言いなさいよ」
「ん~、つってもなぁ…」

 そう言いながら上条は空いている左手で、頬をポリポリとかいて、やや困惑した表情をみせた。
 彼がこういった態度をとるときは、説明する内容があまりに込み入っていて本当に説明できないか、事情があって説明できないかのどちらか。
 どちらにしても、彼の口を割らせるほどまでに彼の心を折ることは難しく、時間もかかる。
 しかし、美琴の心もまた折れるまでは時間がかかる。
 一度くらい言わないと言われた程度で、引き下がる彼女ではない。
 イマイチはっきりしない上条に対して、美琴はじろりと冷ややかな視線を向ける。

「そんな目をして睨まれても上条さん困りますよ……と言うか、なんとなくならわからなくもないが、ちゃんとした理由は俺も知らない」
「じゃあそのなんとなくの理由でいいから言ってよ。今更私に隠し事なんかする必要性はあるの?」
「でもですね、それとこれとは少し事情が違いまして…」
「言いなさい」

 二人の口論の辿る道はいつまでも平行線。
 上条が言うところのなんとなくの理由とは、土御門が魔術の世界と科学の世界をまたにかける多重スパイであるということ。
 魔術の世界を知っている美琴には、例え言ったとしても変な顔をされることはないだろうが、それでもやはり上条にとっては言いづらいものがある。

 さらに言えば、土御門の日本残留の理由の大方はそれで合っていた。
 そこにさらに―――これは上条は知る由もないのだが、土御門が学園都市暗部のグループの一員という一面ももつことも関係している。
 そういった一面をも持っているからこそ、あまり長くは学園都市を離れるようなことはなかったのだ。

「んーと…」
「もぉ!はっきり言いなさいよ!!……もし、アンタがどうしても言わないってのなら……って、あ」
「?」

 美琴が今にも電撃を撒き散らして、その怒りを露わにしようかという時、上条の後ろの方を見ながら突如として固まる。
 それも、少し顔を青ざめさせて。
 そのいきなりの変化を目の当たりにした上条もそれに疑問を抱き、その視線を背後へと移す。
 しかし、後ろを向いても上条には特にその後景で何もおかしいところはないように思えた。
 背後に見えるのはどこにでもあるようなファミレス、次から次へと往来する人の流れ、その中で二人から少しだけ離れた位置で立ち止まり、コソコソと内緒話をしている中学生らしき女の子が二人。
 内緒話をしている二人にしても、話している女の子の片方が頭に何やら派手な花飾りをしていること以外は、特に珍しくもない。
 そしてさらに言えば、その二人は時々こちらをチラチラと見てきてもいるが、上条はそこには特に気に留めていない。

「……?美琴、どうしたんだ?」
「えっ?あ、えっと……とりあえずここから早く離れましょ」
「はぁ?お、おぃ、ちょっと…」

 上条を急かすように、美琴は上条の手を少し雑に掴み、強引に引っ張り、先に進もうとする。
 だが、またそれを遮るかのように、上条の手を掴んでいた美琴の腕を、さらに掴む第三者の手が二人の横から伸びてきた。
 上条がその手の主の方へ視線を向けると、それは先ほどまで内緒話をしていた女子中学生の片割れで、黒い長髪に白い花飾りが特徴の女の子。

「み・さ・か・さん?」
「………」
「へ?」

 状況をイマイチ把握できず、少し間の抜けた声をもらす上条。
 よくわからない内に美琴に腕を掴まれて急かされ、さらにそこから見知らぬ人が美琴の腕を掴んできたのだ。
 頭が一つ一つの状況を処理する間に次々にまた違う出来事が起き、頭の処理が追いついていない。
 その思考の追いつかない上条の頭が今判断できることと言えば、彼の目の前にいる美琴がすっかり固まってしまっていることくらいのもの。

「………はぁ」
「なんでそこでため息つくんですか!?」

 何かを悟り、観念したのか、美琴は小さくため息をもらす。
 上条にとっては美琴の手を掴んできた少女は見知らぬ人だが、掴まれた美琴にとってはそうではない。
 そしてため息をついたからといって、別に彼女達を美琴が嫌っているわけではなく、むしろ逆だ。
 彼女達は美琴にとって学園都市でも数少ない気心の知れる親友とも言える者達。
 ただ、上条と一緒にいる今この瞬間に会いたくなかっただけ。
 それ故のため息。

「なんで私達を見たら逃げようとするんですか!」
「そうですよ、ひどいじゃないですか!」
「え、えーと…」
「……あの、美琴さん?私めに少々状況を説明していただけると嬉しいのですが…?」
「あっ、ごめん…」

 美琴は今まで上条に対して背を向けていたが向き直り、二人の少女と上条の間の位置に立つと、

「……んと、この二人は私の友達で、この髪の長い子が佐天さん、大きい花飾りをしている子が初春さん」
「どうもー、佐天でーす!」
「はじめまして、初春です」
「あ、えっと……上条です、よろしく」

 美琴の紹介に対して、佐天は元気よく挨拶を、初春は仰々しくも礼儀正しい挨拶を、未だにこの状況に慣れない上条は少々無愛想な挨拶をした。
 そして互いの自己紹介が終わるや否や、佐天と初春の視線と興味は上条に向けられる。
 二人が話には何度も、嫌というほど聞いた美琴の恋人、上条当麻と正面向かって会うのは初めてだからだ。
 一度だけ二人とも姿のみは見たことあるものの、それはガラス越しで、しかも当の上条は二人には全く気づいていなかった。
 なのでこの二人がちゃんとした形で上条に会うのはこれが初めて。

「御坂さん、ちょっといいですか?」

 一旦初春の視線は上条から外され、美琴へと戻る。

「え?まぁいいけど…」
「じゃあちょっとだけこっち来て下さい。……あ、上条さんは少しの間そこで待ってて下さい」
「お?あぁ、わかった」

 連れていかれる美琴に一瞬ついていこうという素振りを見せた上条に、初春から静止の声がかかる。
 上条も心配だからついていこうとしたのではない。
 あの美琴が自分から"友達"、と言うのだから信頼できるということは保証されているからだ。
 ただ興味本位でついていこうとした、ただそれだけ。
 そのため、上条は素直に言うことを聞いて立ち止まり、その場で彼女達の帰りを待つ。
 二人の少女達が、美琴を引っ張って行く様を見つめながら。


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