とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

17-13

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匿名ユーザー

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翌日の午前六時、建宮は朝練の生徒の炊き出しの為に早くも友愛高校に出勤していた。
 しかし建宮の表情には一切嫌がってる雰囲気は見受けられず、それどころか周りが引くほどにウキウキしていた。

「まさかこんな朝っぱらから飾利姫にお見送りされるとは思いがけずハッピーなのよね♪ しかも球技大会が終わるまで出来る限りお見送りしてくれる、くーっ! わしは何と果報者か!」

 初春は出来る限りとは言っていたが彼女は毎日このくらいには起きているので球技大会中の見送りは欠かさず行われることは彼は知らない。
 早朝からテンションMAXの建宮、校門前で光り輝く『何か』を目撃した。
それは吹寄のオデコ。その後ろにはぞろぞろとそのクラスメイト達がついてきていた。

(朝練か……青春なのよね)

健宮はなにかうんうんとうなずいているが、呼び出された生徒達はそれどころではない。
今ここにいる生徒達は昨日の夜、連絡網を使い、強制的に来たものである。
だが上条と一方通行は姿が見えない。
健宮はどうしたのだろうかと首を傾げるが、吹寄の指示に従いそれぞれの競技場に向かっていったのであった。

――――――――――――

「さーて情報屋、お前さんは今日から特別メニューでガンガン鍛えてやっから覚悟するぜよ」
「な、何だよ特別メニューって!」
「まーその辺はおいおい話してやるぜよ。まずは野球で優勝して吹寄にアピール、その為にスーパー情報屋に生まれ変わるんだにゃー!」

 野球組、といっても当麻と一方通行は居ないが情報屋のパワーアップが優先事項な土御門は気にせず張り切っていた。
 それを見ていた翔太は土御門に対する好感度を上げていたが、土御門が吹寄と情報屋のデート(予定)を観察しようとしていることは知らない。

「ところで土御門くん、上条くんと一方通行くんを待たなくてもいいの?」
「あの二人は待つだけ無駄ぜよ。どーせ今頃眠りこけてるし、ここに着いたら吹寄の頭突きと説教があるんだ。待ってたら朝練どころじゃないですたい」

 翔太は深く聞くことは出来なかった、当麻と一方通行に一体全体何が起ころうとしているのかを。

―――――――――

「……井ノ原くん、そろそろ井ノ原さん起こしてもいいと思うよ」
「そうしたいんだけどね……。結局色々やっても真昼さん、起きないんだよ。多分7時にならないと無理」

 サッカー組、おはようのキスをしても起きなかった真昼をおんぶしている真夜を心配している月夜。
 ちなみに真昼は制服姿で着替えさせたのは赤音、真夜は最初からジャージ姿で登校していた。

「そっか、じゃあそれまでは東原くんのキーパー練習相手になってあげてよ。私はその間に雪の翼でシュート出来るかどうか試してるから」
「(それって反則じゃないのかな?)分かった。東原、俺達先にゴール前で待ってるからさ、早く着替えて来てくれよ。大丈夫、朝練だから力はセーブする」
「お、おぅ……(い、井ノ原弟がああ言ってくれてんだ、そんなにきつくはならないだろうな。多分だけど……」

 昨日のうちに世界中の名ゴールキーパーの映像を見て、模倣もほぼ完璧な東原だが真夜のシュートに体の方が耐えられるか心配だった。

――――――――――

「吹寄さんは上条君とアクセラ君待ちだから今日は私が野原君にガンガンスパイク決めるから頑張ってね~」
(よっし! 吹寄じゃないからまだマシだ! 昨日は楽しむ余裕は無かったが今日は茜川の揺れる巨乳をしかとこの眼に焼き付けてやるぜ!)

 バレー組はリーダーの吹寄が居ないことで野原が邪な願望を抱いていたが、それを見透かすような赤音の提案が簡単に打ち砕く。

「最初は普通に打つだけだけど慣れてきたら衝撃波で打ち出すからそのつもりでね~」
「はあっ! ちょっと待ってくれ茜川! あんなもん喰らったら確実に三途の川見えるんだけど! ていうか何で急にそんなこと言うんだよ!」
「ん~とね~、野原君のいやらしい視線が私の胸に集中してたから。真夜君はそんな視線送らないけど私の胸をジッと見ていいのは真夜君だけ♪ 加減はするから安心してね~」

 野原は思った、無事に授業に出られるのか、というか生き残れるのかどうかと。

――――――――――

「あ~、くっそ~吹寄のやつ~。何も血が出るまで頭突きすることねーじゃねーかっ! ……痛たっ」
「大丈夫、はまづらがどんな怪我をしてもわたしが一生懸命看病してあげる」
「ああっ! 浜面氏と滝壺氏がいちゃついてます! 半蔵様、私達も!」
「私達もじゃねーよ! 郭、お前と滝壺は別のクラスだろ!」

 バスケ組では吹寄の頭突きで怪我をした浜面を労る滝壺、それに触発された半郭がのっけからいちゃついていた。

「浜面くんも服部くんも。朝から浮ついてる。ここは私が。キャプテンの私が。ガツンと言わないと。キャプテンの私が」
「(何で姫神はん、二回もキャプテンゆうこと言ったんや?)まあまあ姫神はん。ここは温かく見守ったろうやないの」
「○○様の仰るとおりですわよ。仮に彼らがいかがわしいことをしようものならジャッジメントたるこの黒子が即座に対応しますので」

 浜滝、半郭、姫神、そして青ピは驚愕した、この学校の生徒でない黒子が混ざっていたことに。

「あら? どうかなさいまして? ○○様の居る所に黒子が居るのは至極当然。驚くことではございませんの」
*1))
(青髪くんとこの子。浜面くんと滝壺さん。服部くんと郭さん。そして私だけ。一人ぼっち。くすん)

 自分の登場に声にならないほどに驚いたと解釈した黒子、浜滝&半郭はそうなのだが姫神だけは違うことを考えているようだ。
 そんな中、青ピだけは驚きよりもある感情が勝っていた、それは焦りである。

(あかん! どうせ今日の朝練もゴリラ相手に当たりの強化特訓や、無様なとこばっかり見せることになってまう! ここは姫神はんに)
「おうっ、待っとったぞ青髪! 今日は昨日よりは耐えてみせろよ!」
「まあっ! ○○様、あのような屈強な教師相手に頑張っておられるのですね! 素敵ですわ♪ 安心なさいまし、黒子が一生懸命応援いたしますの!」
「が、頑張るで!(あーっ! 完全に逃げ場塞がれてもうたーっ! ……こうなったらやるだけやったるわ!)」

 青ピの嫌な予感通り、朝練も災誤のマンツーマン特訓が決定し、しかも黒子からの熱烈応援に逃げ場を失った青ピ、覚悟を決めたようだ。
 こうしてバスケ組の朝練は始まりを迎えるのだった。

――――――――――

 クラスメート達が解散して10分、それほど時間は経っていないのだが吹寄の我慢は早くも限界を突破していた。
 とはいえ昨日のことと今日の朝練の集合にも駆けつけないことも重なっての限界突破なので切れるのは早くは無いのかもしれないが。

「おっ、吹寄、朝から元気そうじゃん」
「お、お早うございます黄泉川先生。あの、一方通行はどうしてますか?」
「一方通行? ああ、あいつなら上条の家に泊まるって言ってたじゃん。それがどうかしたか?」
「いえ、気になったものですから。情報提供ありがとうございます、黄泉川先生」

 そこに出勤してきた黄泉川(芳川はまだ寝てる)に慌てて理性を取り繕い、一方通行の情報を聞き出す辺りは抜け目無い吹寄。
 黄泉川が去った後、携帯に電話をかけても無駄だと感じた吹寄は上琴ハウスの電話に直接かけた(電話番号は連絡網から把握済み)。

『もしもし上条ですけど♪ あっ、間違えちゃった御坂』
「上条貴様、私を前にふざけるとはいい度胸してるわね。さっさと一方通行連れて朝練に来なさいよ」
『誰よアンタ? 私の当麻に対してそんなふざけた物言いするなんて何様のつもりよ』

 最初に「上条」と名乗ったので反射的に当麻が電話に出たと思った吹寄、しかし相手が美琴だと分かり困ってしまうが今さら引くわけにもいかない。
 美琴は美琴で名前を名乗らない吹寄を無礼な人間と思い、早くもケンカ腰状態である。
 かくして美琴VS吹寄の口喧嘩の火蓋は切って落とされるのだった。

――――――――――――――――――――

そんな口喧嘩が繰り広げられているなか、サッカーゴールの前で
どうにか雪の翼でサッカーボールを飛ばそうとしている月夜がいた

「う~ん、なかなかあたらないな~」

何度も当てようと考えたのだが翼の命中率が低くて試行錯誤しているところだった

「翼を増やそうかな?そういえばハワイで会った第二位さんは翼が6枚だったような?」

そう言いながら翼を増やして当ててみた

「おお!これはよく当たるよ!移動も速くなりそうだし、なにより見栄えがいいから今度からこれでいこっ!」

などとそれから一人で練習を続けていた

―――――――――――――

 一方、当麻と一方通行は友愛高校へと急いでいた、美琴と打ち止めは連れずに。
 美琴と吹寄の口喧嘩はつい先程終わったばかりで美琴は絶対に付いて行って吹寄をぶっ飛ばすと息巻いていたのだが、

「あの状態の御坂をディープキス、しかも3分間激しいので怒りを鎮めさせて、あまつさえ言うこと聞かせるたァやるじゃねェか上条」
「ま、まあな……。でもこっちもメロメロで少しでも油断したら腑抜けそうなんだよ、マジで。あの美琴だと下手したら吹寄を病院送りにしかねねぇし……」

 当麻の愛に溢れたディープキスで骨抜きにされてしまい、登校時間まで打ち止めのお守りを頼まれて有耶無耶のうちに流れてしまった。
 美琴と打ち止めのことは一先ず置いて、当麻と一方通行はこれから自分達の身に起こる不幸を考えて憂鬱になった。

「しかし吹寄のやつ、昨日集まりに参加しなかっただけで怒んなくてもいいだろ。こっちだって止むを得ない事情ってモンがあんだからさ」
「いや、てめェのはどう考えてもてめェが悪ィぞ上条。堂々とデートで参加出来ねェって言うなンざバカとしか言いようがねェだろ」
「バカ言うなよ! 俺にとっては美琴とのデートほど重要な用事は……それなりにあるけど少なくとも今回は美琴とのデートが遥かに大事だった、そんだけだ」
「キッパリ言うなバカ。俺みてェにちゃんとした用事でも考えりゃあ……無駄か。結局てめェと同じ扱いなンだからよォ」

 揃ってため息を吐いた当麻と一方通行、気付けば友愛高校の校門が見える所に到着していた。
 ふと校門に視線をやる二人だが太陽の光とは違う別の光に眼が眩んでしまう。

「クッソがァ! ンだよ今の光はよォ! 学園都市には太陽が二つがあるンですかァ!」
「んなわけねぇだろ! この光は間違いない、吹寄のおでこに太陽の光が反射したんだ! さすが吹寄、伊達にでこが広いわけじゃ……っ!」

 自分達の目に凄まじいほどの光を浴びせたのが吹寄だとすぐに分かった当麻、しかしすぐに絶句した。
 絶句した理由、それは吹寄の唇が「ど・た・ま・か・ち・わ・る・か・ら・さっ・さ・と・こ・い」と動いていたから。
 一方通行も当麻同様に吹寄の唇を読んで、顔色を悪くさせながら当麻と一緒に今まで以上の駆け足で吹寄の元へと駆けつけるのだった。

――――――――――

 その頃、昨日に続いてリベロの特訓をしている野原だが彼は地獄を見ていた。
 理由は簡単、赤音が最初から普通に打たずに【鼓膜破砕】の衝撃波で打ち出されたバレーボールをレシーブしているのだから。

「ほらほらどうしたの~? 朝練が終わるまでガンガンいっくよー♪ せーのっ、わっ!」
「ちょ、茜川、少しは加減してもぐぎゃっ! 痛ぇ! 【襲撃緩和(ディレイスピード)】使ってもすっげぇ痛ぇ! ちゃんと手加減プリーズ!」

 赤音の【鼓膜破砕】による衝撃波で撃ち出されたバレーボールをレシーブしている野原の腕は所々が赤くなっていた。
 泣き言を言って当然の野原に対して赤音は容赦なく責め立てる、言葉で。

「あのね~野原君、これでも出力は全力の二割程度だからね~。加減はしてるんだよ? 本当に。真夜君なら全力でもちゃんと返してくれるけどね、愛の力で♪」
「惚気ないでくれっ!」
「ごめんごめん、だって事実だもん♪ それにしても野原君の能力って名前はまともなのに中身の方は」
「そりゃお前はレベル4だからな、モノが違うからな! それにひきかえ俺はレベル2、威力も速度もせいぜい20%しか落とせねぇんだよ!」

 自分に向かってくる攻撃や物体の速度・威力を二割減させる、それが野原の能力【襲撃緩和(ディレイスピード)】である。
 効果範囲は自分を中心に半径50cmと狭い上に、たとえば自分が投げた物が効果範囲を抜けたからといって速度・威力が二割増にはならない。
 要は自分に対する攻撃などの防衛であって、攻撃には全く適さない能力なのだ(あくまでレベル2の現段階では)。

「ま、その辺も球技大会に向けて上げていく方向で。基礎はしっかりしてるようだからもう少し減少の幅も増えるかもだよ♪ じゃー続き、いってみよー♪」
「ちょ! せめて少しくらい小休止させてくれ!」
「大丈夫大丈夫♪ 私の胸をさりげなく見る余裕あるもんね~、スケベな野原君は」

 野原は何も言えなかった、赤音の指摘が図星だったことに加えて彼女が放つちょっとした怒りが怖くて。
 それから10分、吹寄が合流するまでこの地獄は続くのだが吹寄もまたスパルタなので野原の地獄は朝練が終わるまで続いたという。

――――――――――

「いつつ……。ったく吹寄のやつ、何十回も頭突きした上に説教まですることねーじゃねーか……」
「半分以上はてめェがふざけた理由でデコ女の呼び出しを断ったせいだからな、上条。くそっ、まだ頭が痛みやがるしデコ女の」
「言うなアクセラ。吹寄の鬼のような形相を嫌でも思い出しちまうだろ……。ううっ、思い出しただけでもゾッとする」

 朝練に遅刻&昨日の呼び出しに応じなかった当麻と一方通行、ようやく吹寄の折檻から解放された所なのだ。
 吹寄の頭突きによる痛みが走る度にその時の彼女の鬼面と呼んでも差し支えない表情を思い出し、ちょっとした寒気に襲われていた。

「ま、嫌なことは忘れてさっさと朝練に合流しようぜ。美琴の可愛い寝顔……よし、さっきの吹寄はすっぱり忘れた!」
(じゃ、じゃあ俺は打ち止めの太陽のような温かさを感じる笑顔でも……おおっ、俺もデコ女がさっきまでどンな顔してたかキレイさっぱり忘れたぜェ!)

 実に都合のいい思考の持ち主の当麻と一方通行、気持ちを新たに野球組と合流をするのだった。

「お~い、土御門~、翔太~」

上条はグラウンドに土御門と翔太に声をかけた

「カミやんにアクセラ……、案の定やられてるにゃー」
「うわー、おでこがひどい事に……」

土御門と翔太は思ったどう怒らせればあんなになるのかと

「わりぃ、わりぃ。アクセラのやつが長い事気絶しててさ」
「で、俺が起きた後、電話越しに御坂とデコ女が喧嘩しやがるからなァ」
「言い訳はいいからはやく練習始めるにゃー」
「「……ああ、そうだな(ァ)」」

遅れてきた二人がげそっりとしながら答え、それから練習が開始された

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野球の練習が始まった一方で、もうひとつのゴール前では東原のGK練習が開始されていた
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注釈

*1 ((ついさっきまで居なかったはず…………