とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part11

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生き方、在り方、考え方[ふたりの道]


~次の日~


―――それはぬくもり


布団の柔らかさと仄かに香る匂いが混ぜ合わさった安らぎに包まれている。
こんなにも温かい環境で寝るのは生まれて初めてだ。
いつもの寮のベッドはこんなに安心できただろうか?
枕もとにあるはずの携帯電話を手探るも―――見つからない。
違和感を覚えて重い目蓋を開く。するとそこは見覚えの無い部屋だった。
電気もついていないので少々暗く、詳しい様相はわからない。

「(……えっ……と?)」

寝起きのせいか上手く頭が働かない。
どこからか物音が聞こえてきた。それは騒がしいものではなく幼いころに何度も聞いたことのある音。
それが何だったかは霞みがかった思考ではわからない。
ふと、台所のほうが若干明るい事に気付いた。目蓋を擦りながら見ると

「おっ。悪いな。起こしちまったか。おはよう、美琴」

―――――なにやらツンツン頭の男性がエプロンを着けて料理をしていた。
男性、という表現はおかしいかもしれない。知っているのだから、彼を。
何度も夢で、空想で、現実で見た愛しい人―――上条当麻。
でも、なんでエプロン姿で料理しているのかがわからない。


………テン………テン………テテーンッ!


理解した。思い出した。つまり…これはっ―――――

私が当麻の部屋に泊まってとうまが私を上条宅に泊めて一緒の部屋でベッドで布団で寝て起きたらそこにとうまがいて当麻は私の恋人で彼はエプロン姿で料理していてなんでエプロンしているかと言うと私を料理していてちがう私を朝ご飯にしようとこれも違うだから一緒の部屋で生活していてつまり当麻は彼氏ででも同じ場所に住んでいるってことは結婚していて結婚してるなら私はお嫁さんでとうまは旦那さんで要するに夫婦になるのよねだってだってとうまったら昨日あんなプロポーズみたいな告白してくれたしふにゃぁぁああだから主夫として当麻は朝ご飯を用意してくれていてEPURON装備TOMAを朝食に食べていいというわけでふにゃだけど私は中学生でとーまは高校生でそういう風な事をするにはまだ早いし道徳にも倫理にも反しているかもしれないけどそれでもこの気持ちは止められないというかだから結婚にはまだ早いかもしれないけど婚約だったらいいかなーってよってフィアンセで婚約者だからあと何年かすれば式をあげられるということで教会でドレスを着て当麻はもちろんタキシード姿で私を迎えに来てくれるってことよねふにゃあそうなれば私は御坂から上条になってつまるところこれからは上条美琴って自己紹介していいことになるわけでふへへけど御坂当麻も捨てがたいなだってそれは当麻が御坂の物になるわけででもダメ上条美琴のほうがなんか響きが良いしそうなればもちろん子供の名前はみことうまことってことで上条麻琴かなでも麻美も良いよね男の子の名前はどうしようこういうのは家族で相談したほうが良いのよねだったら当麻の両親にも挨拶したほうがいいのかしらいけない変な方向に考えが向かっている取りあえず先の事は置いて話を元に戻そうだから当麻がエプロン装備で料理しているってことは私より先に起きてでも起きたときは一緒に寝てて欲しいなだって朝起きた時に最初に見るのはとうまがいいじゃないえへへいやいかんいかんいかんまた脱線してしまった……………

―――――どうやら先に起きて、朝ご飯を用意してくれているらしい。

「当麻。起きるの早いのね」

時刻を確認すると、起床するには早すぎる時間帯だった。
外を見るとまだ夜が明け始めたばかり。

「美琴は一度寮に戻らないといけないからな。それまでに間に合わせたかったんだ」

ほれ、と青いハンカチに包まれた物を渡される。
これは……弁当?出来立てなのかまだ温かい。

「………これは?」

「今日からは普通に授業があるだろ?不味かったり量が多かったら、残しても構わねえから」

照れくさそうに頬を掻いている。
堪え切れなくなったのか、そのまま背を向けて台所のほうに行ってしまった。

「ッ~~~~~ッ!!」

彼は自身のやっている事の意味が分かってやってているのだろうか?
恐らくわかっていない。だからこそ余計にタチが悪い。
これではまるで………まるで新婚さんだ。
そこまでされて何故かイラッときた。やられっぱなしではいられない。
渡された愛夫弁当をテーブルに置き、私も台所に向かう。

「なにしてるの?」

「少し早いけど朝飯を作ろうと思って……お前も食うか?」

当麻はベーコンを焼いていた。あとは卵を投下して、ベーコンエッグを作ろうとしているっぽい。
その無防備に料理を続けている背中は――――誘っているようにしか思えない。

「(ごめん…舞夏の言ってたことは……男だけじゃ………ないみたい…)」

込み上げてくる欲望のままに背後から抱きつく。

「美琴っ!!?」

驚愕の声は無視して彼の感触を楽しむ。
私が寝ている間に軽くシャワーを済ませていたのか、少し温かい、ほっこりしてくる。
そして朝食の香りと愛しい人の匂いが混ぜ合わさって、何とも言えない。頭がクラクラしてきた。

「料理してるからっ!危ないからっ!」

まだ抵抗する気らしい。学習しないヤツだ。

「とうま」

「なっ……なんでせうか?」

無理やり振りほどくことは出来るのに……それをしない。

「私は半熟が良い」

「この格好でっ!?」

ということは体は正直で、口が素直で無いだけだろう。

「うん」

「……無茶苦茶だ」

当麻の両脇から手を差し込んで、エプロンの内側の胸元に通す。抱き付きからしがみ付きにチェンジ。

「とうま」

「………………」

彼は諦めて耳を真っ赤にしたまま無言を貫こうとしている。
抵抗しなくなったのは許す。だが、何も反応がないとそれはそれで面白くないではないか。

「朝ごはん………食べていい?」

「へ?ああ、いいぞ。レンジがなんでか壊れてるからトーストは出来ないけど、食パンならそこにあるから…」

了承をもらった。食べて良いそうだ。
こんなにも美味しそうなごはんを前にして、耐えられるだろうか?いや耐えられるハズがない。

「いただきます」

踵を浮かせ、爪先立ちに背伸びをする。
今日の献立は食パン、ベーコンエッグ、そして―――――――――トウマ

「美琴ォォ~~~~~~~ッ!!」

悲痛な叫びを余所に、食事を続ける。
折角用意して貰ったごはんを残すわけにはいかない。完食するのが礼儀だろう。

そのまま料理が終わるまで、私はオードブルにして、メインディッシュにして、デザートを堪能した。


________________________________________________________________________________


食事を終え、制服に着替え、登校するまでの時間、のほほんと過ごす。
先ほどまでの戦闘は思い出したくもない。
料理をしている最中の美琴の悪戯によって上条はだいぶ精神力を消費してしまった。
そして妨害されたせいで、彼女のリクエストからは程遠い物を作ってしまったのだ。
その事実を指摘され、何故か罰ゲームの流れになってしまい、またもや暴虐の限りを尽くす美琴。
おかげさまで上条はゲッソリ、美琴はツヤツヤしている。
何度か上条のほうも理性が飛びそうになって危ない思考に陥りそうになったが、理性を以てガード…出来た…よ。

「ふにゃぁ~♪」

「美琴」

「ん~♪なあに~♪とうま~♪」

胡坐をかいている上条の膝の上に座り、電気猫がじゃれている。

「もうそろそろ戻らねーと」

「聞こえな~い♪はふぅ♪」

はふぅ♪じゃねーよ、と言いたい。
美琴が外泊してしまったことを彼女の同居人は心配しているだろう。

「とうま?」

まして上条の部屋に泊まったことがバレてしまったら………殺される。

「とうま」

インデックスもいつ戻ってくるかはわからない。
今すぐかどうかは不明だが、この状態を見られたら………噛み砕かれる。

「…」

そういえば、美琴と付き合うようになった事はどう説明しようか?
もしかしたら変に気を遣わせてしまうかもしれ―――――

「 と う ま !! 」

いきなり耳元で叫ばれて驚いてしまった。
見ると、頬を膨らませてなにやら拗ねている。

「今……他の女を………考えてたでしょ」

それは疑問形では無く、断定系だった。
ちょっと、いや、かなりこわい。

「へー、私というモノ〈恋人〉が有りながら、別のコト〈女〉を考えてたんだ。ふーん」

「おいまてなんでそうな…ごめんなさい謝るから機嫌直して下さい…」

上条さんが悪いのでせうか?嗚呼理不尽ナリ。

「―――――――えいっ」

「ちょっ」

突然、何の脈絡も無く、体重をかけられて押し倒された。
馬乗りになる美琴。彼女の両手によって上条のソレも封じられる。

「(近い近いです近すぎます美琴さんっ!??)」

いつの間にか、美琴の端正な顔が接近している。
重力に引かれるままに彼女のキレイな髪が下がってきた。
彼女から伝わる柔らかさとか甘い匂いとかで、またしても侵略される上条の理性。
果たしてこのままいつものように貪られてしまうのか。
そこで上条ネットワークに2つの物体が現れた。

白い天使とロリ悪魔である。

天使は告げる。

『それで良いのかァ?三下ァ』

『確かに年下に翻弄されンのは男なら誰もが通る道かもしれねェ』

『だがなァ、されっぱなしでオマエは本当に満足なのかよォォ』

悪魔は告げる。

『往生際が悪いかもっ、てミサカはミサカは呆れてみる』

『お姉さまに食べられるほうがきっと書き易いんだよって、ミサカはミサカは筆者を盾にしてみたり』

『というか、ココのあなたは受け専門でしょ?ってミサカはミサカは現実を突き付けてみる』

身も蓋もね―な―オイ、と思ってしまった。
だが天使は良い事を言った。確かにやられっぱなしではいられない。

『むっ。なにやら旗色が悪くなってしまった、ってミサカはミサカは感づいてみたり』

『取りあえずあの人を黙らせないと、って――――――――

ロリ悪魔は猛然と白い天使に飛びかかった。

 ―――――――ミサカはミサカはフライングチッスをかましてみるぅぅーーーーーっ!!』

上条の脳内でもイチャつこうとする2つの物体。
いかん、このままでは上条さんは本当に受け専になってしまう。

『ハッ、甘いンだよクソガキがァァァアアアアーーーーッ!!』

その時、天使は飛びかかる悪魔の頭に高速チョップを叩きつけた。
崩れ落ちるロリ悪魔。消失する受け専説。
そんなやり取りを終わらせて、上条は現状を認識した。

「(急がねえとっ!)」

相手の射程距離に既に入ってしまっている。
悠長に悩んでいる暇は無い。動かせるのは首から上だけ。

ならば――――

「美琴っ」

なるべく唇を傷つけないよう優しく、しかし深く口づける。
唐突な反撃に戸惑ったのか、わずかに拘束が緩んだ。

「(いまだっ!!)」

そのまま勢いに任せ、逆に押し倒す。美琴が後頭部を打ち付けないよう手を添えて。
ここに攻守は逆転した。しかしこれで終わらせるわけにはいかない。

「美琴」

彼女は認識が追いついていないのか、え?え?え?と顔を赤くして混乱している。
好機、という文字が浮かんだ。その通りだ。このチャンスを不意にするつもりは―――無い。


確かに上条は恋愛において“攻め”に出るレベルはゼロかもしれない。
なぜなら彼はそういう風に行動することをあまり経験してないのだから。
目の前の少女が重ねてきたモノに比べれば微々たるモノかもしれない。
しかし同時にそれは“受け”に回ってきた経験を重ねてきたとも言える。
故にある程度冷静に状況を確認することができるのだ。

“攻め”のパターンは少女に比べれば決して多くはない。
総合的に考えれば彼は“受け”なのかもしれない

だからこそ。

この少年は“受け”から“攻め”に回るために行う努力の意義を知っている。


「みこと」

もう一度名を呼び、至近距離まで顔を近づけて額同士を合わせる。
逃がさないように右手を添えて彼女の頭を固定。
真っ直ぐに見詰めて、気持ちを、想いを伝える。

「あのな、お前は事あるごとに他の女って言ってるけどよ……」

「俺は既にお前のモノになってんだよ」

「こんなにも可愛くて、綺麗で、愛しい恋人がいるのに浮気なんてするわけないだろ。出来るわけがない」

「俺はこれからもずっと美琴一筋に生き、在り続ける」

「これだけは絶対に変わらないし、変えるつもりは無いんだ」







……………………アレ?

かなり恥ずかしいことを言ったのに何も反応が無い。
依然として顔は紅いままだ。気絶しているわけでもなさそう。だって開いてるもん。目が。
あるぇ?上条さんはまた空回りをしてしまったんですかー?
すると美琴はブルブルと震えだした。かなりの速さで揺れている。

「ふ」

「………ふ?」

「ふにゃぁぁぁああああああーーーーーーっ!!!」

「おいぃぃぃぃいいいいいいーーーーーーーーーーっ!!」



そのまま美琴は気絶してしまい。昼前まで起きなかった。
当然、上条は彼女を置き去りにするわけにもいかないので、学校にも行けない。
その状態でインデックスが帰ってきてしまい、いつもの洗礼を受けて死にかけたのは、また、別の話。


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