とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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美琴の弱点



 『おはつ三日』という言葉をご存知だろうか?
 関西、特に京都の囃子詞で、散髪したての子供の頭を軽く叩いて(漫画的擬音で現すのなら『ペシッ』程度の強さ『!』も付かない軽い感じ)言う言葉なのだが……。
 正確には『おはつ三日 盆三日』という。

 我らが主人公、上条当麻はこの風習をエセ関西人である青髪ピアスから知ることになるのだが、何せ元がエセなのだから、間違った知識をモロに教わることとなった。

「あっ、ナンや上やん。散髪行って来たんかいな?」

「何だよ、青ピ。確かに上条さんは貧乏ですがね、ヘアスタイルにはうるさい男なんですよ」

「そやない、そやない。関西では散髪してきたら「おはつ三日」って言うてなこうすんねん」

 と言って、いきなり青ピは上条のうなじをギュッと掴むとモミモミとその部分を揉み出した。

「オオッ……気持ちいいぞ、青ピ~」

「そやろ、そやろ。で……この後……」

 首筋を揉み解され、気持ち良くなりかけたその場所にいきなり

「ふう~~~~~~~~~~~」

 と息を吹きかけられたのである。

「どわぁぁああ!!!コラッ!!青ピッ!!!テメエ何しやがる!!!!!」

「ヘッ!?何言うてんねん、関西やったらみんなやってるコトやで?」

(注:やってません!!!)

「ホントかよ……それ……」

「ホンマ、ホンマ。ウソやと思うんやったら、関西行って見てきたらエエがな」

 わざわざそんなコトを現地に行って調べる人間はいない。
 もし、本当にそんなコトをやっていたら、今頃は某番組で取り上げられて、この奇っ怪な風習は世間の話題を独占しているはずだ。
 だが、根が正直で、おバカな上条さんはその事をモロに信じ切ってしまった……。

 その日、御坂美琴はご機嫌だった。
 冬の間に伸びた髪を、常盤台中学指定の美容院に行って切り揃えてきたのだ。
 まだまだ寒い日が続く訳だが、季節は春に向かっている。
 少々重くなった髪を切って、スッキリし軽くなった気分を味わいたかった。
 そして、何となくウキウキした気持ちになっていた。
 美容院で毎回アフロを薦めてくる店長、坂島道端の相手をするのには少々疲れたが……。

 それに、少し期待するところがあった。
 恋人となった上条がその事に気付いてくれるかを確認したかったのである。
 まあ、過度の期待はしていないが……。
 鈍感だし……デリカシーもないからね……。誰かさんは……。

 で、いつものようにいつもの場所で待ち合わせ……である。

「待ったぁ~?」

「イヤ、オレも今来たところ……だけど……」

「はい、良くできました。……って、どうしたの……当麻?」

「ん~……美琴……オマエ、何か変わってない?」

「えっ!?(うそっ!?この超鈍感が髪を切ったのに気付いてる?……うそっ!?……そんなに私のこと、見ててくれてる……メチャクチャ嬉しい!!!)」

「ドコが変わったかってのはイマイチ分かんねぇんだけど……何か違う……」

(ハァ……髪を切ったって事までは気付いてないのか……でも、違うって事に気付いてくれただけでも、コイツにしてみれば大きな進歩よね!!!)

「なぁ……美琴……何か変えたのか?」

「ハァ……そういうことを直接聞くってトコは当麻らしいわ……」

「ヘッ!?」

「まあ、いいわ。髪が伸びたのでちょっと揃えてきたのよ」

「へぇ……そうなのか?それだけで変わるモンなんだなぁ……」

「アンタが気づかなさ過ぎだと思うんだけど……」

「なっ……何で怒っておられるんでせうか?」

「別に怒ってはいないけど……もうちょっと気づいて欲しかったかな……って……思ってさ……」

 そういって、ピトッと上条の横に寄り添い、肩の上に頭を載せる美琴。
 思わず『ドキッ!』とする上条さん。
 こういう女性の何気ない仕草ってのは、男心を刺激するもんなんですな。

 ところが『ドキッ!』としちゃったことを変に誤魔化そうとしたコトが、この後二人を『不幸』へと導いてしまう。

「ん?……どしたの?当麻」

「い、イヤ……別に……」

「そう?……でも、何か顔……赤いわよ」

「そ、そうか?……あ、ところでさ」

「ん?なになに?」

「『おはつ三日』って知ってっか?」

「『オハツミッカ』……何それ?」

「チョット前に、クラスのヤツに教わったんだけど……散髪した後にこうするらしいぜ」

 そう言うと上条は、美琴のうなじを右手で『ギュッ』と掴んだ。
 その瞬間……

「ピギッ!!!」

 と、変な声を出して美琴が一瞬で固まった。

「ヘッ!?」

 上条は何が起こったのか、全く理解していない。
 一体何が起こったのか。
 詳しくは『長編』の『見知らぬ記憶』を読んで下さい。

 ……って……ダメ?
 そりゃ、そうですよね。^^;

 実は美琴の首筋、特にうなじの部分は能力的に後方の感覚センサーの役目をしていて。
 要するに電磁波を発信してソナーの役目を任せており、センサーなだけにかなり敏感に出来ているらしい。
 普段は能力でガードしている訳で、誰かが触れれば間違いなく感電するはず。
 だが、上条の右手には【幻想殺し(イマジンブレーカー)】が宿っており、それらのガードが一切通用しない。
 それだけならまだ良いのだが、その右手が宿す“浄化の力”が美琴の能力を中和する際に、美琴の能力が逆流するらしい。
 それは美琴が今までに味わったことのない感覚らしく、正に全身を電気が逆流し、全身が感電するような感じだという。
 その感覚を美琴は今、生まれて初めて体験している訳である。

「み……み……み……」

「ヘッ!?……美琴……どした?」

「み……み……み……」

「気持ちいいのか?」

 完全に勘違いして、首筋をモミモミし始める上条。
 だが、美琴にしてみたら堪ったものではない……。

「みみぃ!!みみみみみみみみみ……」

「何か良く分かんねぇんだけど……しゃぁねぇなぁ……」

 と言って、何も考えずに首筋に息を吹きかけた。

「ふう~~~~~~~~~~~」

 あのね、上条さん?自分がされてイヤだったんでしょ?
 それを恋人にしちゃうって、もうちょっと考えた方が良くありません?
 ホンット、デリカシーのカケラもないんだから……。

 全身を電気が逆流し、感電したような状態で、しかも敏感なセンサーであるその部分に息を吹きかけられたら……。
 誰だって、そりゃ怒りますって……。

「※∞≦≠⊇〓£ΣΨΩΛ§@#~~~~~!!!!!」

 この世のモノとは思えない叫び声を美琴があげたと思ったら、全身を震わせ上条の右手を振り解く。
 そして、完全に戦闘状態へと移行する。(BGMはもちろん『逆転(御坂美琴Version)』!!)

「と・う・ま・ぁ~」

「ひゃっ……ひゃいっ!!!」

「あ・ん・た・って・や・つ・は・ぁ~~~~」

「ひっ……ひぃぃぃぃいいいい!!!!!!!」

「白昼堂々、往来のど真ん中で、乙女の一番敏感な部分にィ……何しちゃってくれてんのよぉ~~~!!!!!!!」

「いっ、いやっ……コレはっ……オレがクラスメイトに教わったことで……関西じゃあ、みんなやってるらしいって……」

(だから、やってませんって!!!)

「そんなバカなこと、する訳がないでしょう!!!!!」

「ひぃぃぃぃいいいい!!!!!」

「覚悟はイイわね!?」

「はひっ!?」

「か・く・ご・は・イ・イ・わ・ね・!?」

「ガクガク(((( ;゚Д゚)))ガクガク(((( ;゚Д゚)))ガクガク」

 余りの美琴の迫力に、上条は言葉もなく、クビをブルブルと横に振ることしかできない。
 その時、いきなり空が暗くなってきたのが分かった。
 ふと空を見上げると……そこには季節外れの雷雲がモクモクと……。

「今日という今日は……もう……勘弁出来ないわ……」

「み、み、み、み……」

「前に一度だけやったけど、あの時とはちょろっとばかし訳が違うわよ……」

「ガクガク(((( ;゚Д゚)))ガクガク(((( ;゚Д゚)))ガクガク」

「私の全身全霊の攻撃に……」

「ブルブル(((( ;゚Д゚)))ブルブル(((( ;゚Д゚)))ブルブル」

「……乙女の怒りを掛け合わせた、【常盤台の超電磁砲(レールガン)】最大出力の攻撃……」

「ガクガク(((( ;゚Д゚)))ガクガク(((( ;゚Д゚)))ガクガク」

「止められるもんなら止めてみなさいよっ!!!!!!!」

「ブルブル(((( ;゚Д゚)))ブルブル(((( ;゚Д゚)))ブルブル」

「当麻のバカァァァァァアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!」

『カッ!!!!!!ッズッドォォォオオオオオオオオオオオオンンンン!!!!!!!!!!!!!!!!!』

「不幸だぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!」

 この恐怖の体験のあと上条は、美琴にこっぴどく怒られることになる。(そりゃそうだ……)

 そしてこの翌日、学園都市は季節外れの落雷により、大規模な停電に見舞われ、【風紀委員(ジャッジメント)】や【警備員(アンチスキル)】を始め、アレイスター統括理事長までがその対策に終われることになった……らしい。

 因みに……青ピがこの日、どんな目に遭ったのかは、皆さんの想像にお任せします……。


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