とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part17

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だれでも歓迎! 編集


見知らぬ記憶


「キミ、可愛いねぇ。うっひょー、何?このドレス。もしかしてお姫様?」

「今からオレたちと遊びに行かない?」

「帰りはオレたちが送ってやっからさぁ」

「まぁ、いつ帰れっかわかんねぇけどぉ~」

「「「「「ヒャッヒャッヒャ」」」」」

「ふぅー……」

(しっかし、私に声を掛けてくるなんてバカな連中よね。ま、あんまりしつっこいようならいつものように追っ払えばいいし……)

(それにしても、この町の連中と来たら……ホント、見て見ぬふり……だわね)

(別に彼らが薄情って訳じゃない。それは分かってる)

(実際、ココに割って入ってきても何かができる訳じゃないし、ケガをするだけ)

(誰だって自分が可愛いし、それが普通)

(見ず知らずの人間のためにそんなことをするヤツが居たとしたら、ソイツはただのバカか……)

「おー、居た居た!」

「こんなトコにいたのかー。ダメだろ、勝手にはぐれちゃー」

「へっ?」

「イヤー、ツレがお世話になりました。では、チョイと失礼……」

「ちょっと……誰よ、アンタ?」

「……ハイ?」

「『ハイ?』じゃなくってさ」

「おっ、おまっ……『知り合いのフリして自然にこの場から連れ出す作戦』が台無しだろっ!!空気読んで合わせろよっ!!!」

「何でそんなめんどくさいコトしなきゃなんないのよ?」

「オイ!!」

「なんだテメェ?ナメたマネしやがって。何かモンクでもあんのか?アアァン」

「ハァ……しゃーねぇーなぁ……ああ、そうだよ。恥ずかしくねーのかよ、お前ら」

「何だと、コノやろう」

「こんな大勢で女の子一人囲んで情けねぇー」

(へぇ~……コイツ……)

「大体お前らが声かけた相手を良く見て見ろよ。まだ子供(ガキ)じゃねーか」

(ピクッ)『パリッ……』

「さっきの見ただろ?年上に敬意を払わないガサツな態度」

(ピクッピクッ)『バチッ!!』

「見た目はお姫様かお嬢様でも、まだ反抗期も抜けてねーじゃん」

(ピクッピクッピクッ)『バチバチバチッ!!!』

「お前らみたいな群れなきゃガキも相手に出来ねぇようなヤツらはムカつくんだよっ!!!」

「……私が……一番ムカつくのは……オマエだぁぁぁあああああ!!!!!!!!」

『バリバリバリッ、ズドォォォオオオオオン!!!!』

「「「「ギャッ、ぐわぁぁぁああああ!!!!!」」」」

「……ったく……アーア、こんなザコに『力』使っちゃって……」

「……っぶねぇ~……な、何だ?今の……」

「……何で?」

「ヘッ!?」

「……何で、アンタは無事な訳?」

「ハァ?」

「何でアンタだけ無事な訳?って聞いてンのよっ!!!」

『バチバチバチィッ!!!』

『パキィィィン!!』

「何でオレまで攻撃する訳?助けに入っただけだけどっ?」

「んなもん頼んだ覚えはない!!!」

「……」

「……」

『バッチィィン!!!』

『パキィィィン!!』

(こ、コイツ……私の電撃を打ち消した?)

(こ、このままだともっとインネン付けられそうだ……とりあえず……逃げよう!!)

『バビューン』

「あっ、コラッ、待ちなさいよっ!!!……ああ、行っちゃった……」

「姫様ッ!!」

「ああ、クロコ。どしたの?」

「『どしたの?』ではありません。ちょっと目を離すとまたこの様に街をうろつかれて……クロコの身にもなって下さいまし」

「ハイハイ、分かりました」

「ハァ……姫様……もう少し、タビカケ城の姫様としての自覚をお持ち下さいませ!!」

「だから、こうして町に出て様子を見回っているんじゃない」

「それはそうでございますが……」

「それに、今はそんなコトに興味はないの。……それより、さっきのヤツ……」

「ハァ……さっ、姫様。まずお城にお戻り下さいませ」

「えっ!?何で?」

「今日は、『シン老師』がお見えになるとのこと。父上様からも必ず同席するようにと今朝からあれほど……」

「分かった、分かったわよ……とりあえず戻ればイイ訳ね」

「左様でございます。ささ、お早く」

(さっきのヤツ……今度見つけたら、タダじゃおかないんだから……)

 そんなことを思いながら、ミコトは用意された馬車に乗り込み、城への帰路につくのだった。

「コレはコレは『シン老師』長旅お疲れ様にございます。ささ、コチラに」

「いやいや、タビカケ殿にそのようなことまでして戴くなど……畏れ多い」

「何を仰います。先代王の時代の大戦ではこの国の勇者達を率い、大国『ロ』の国と闘い勝利に導かれた英雄であらせられますのに……」

「遠き昔のこと。今はタダの老いぼれにございますれば……どうぞ、お気遣い無く」

「イヤイヤ、コチラこそわざわざ私どもの土地にお越し下さるとは、恐悦至極に存じます。……して、今回はどのようなご用件で?」

「ホッホッホ。イヤイヤ古き友に会いたくなりましてな。年を取るとどうも堪え性が無くなりまして……思い立ったが吉日……という訳でして」

「それはそれは。……これ、何をしておる。歓迎の支度を早ようせぬか!」

「イヤイヤ、タビカケ殿。ホンに旅の途中に寄らせて戴いただけにござりますれば……どうぞ、お気遣い無く」

「イヤイヤ、そう言う訳には参りません。……ところでシン老師。コチラの少年は?」

「おお、紹介が遅れ申し訳ござりませぬ。これは今、わたくしが育てております弟子の一人で、トーマと申します。これ、トーマ。ご挨拶を」

「トーマにございます。以後お見知りおき下さいませ」

「うむ。良い目をされていますな」

「ありがとうございます」

「シン老師に仕えられるとは……また、この子もそれなりの『力』を?」

「確かに『力』もございますが、この者何よりも心根が好うございます。オツムの方は少々弱いところがあるのですが……真っ直ぐなところが気に入りましてな。今は弟子として鍛えておるトコロにございます」

「トーマ殿。シン老師の弟子になれるとは羨ましい限りだ。しっかり勤められよ」

「はいッ」

「うむ。良き返事だ……トコロで、姫はどうした?」

「そ、それが……」

「……ハァ……、また町に行ったのか……。困ったものだ」

「ホッホッホ、ミコト姫ですな。相変わらず……ですか……」

「お恥ずかしい限りで……。お転婆ぶりに手を焼いております。一度、シン老師からキツく言っていただかねばと思っていたところでして……」

「わたくしのような老いぼれの説教など、姫様には効きもしますまい。ホッホッホ」

「お、遅くなりました……」

「ミコト。また町に行っていたのだな。前にもあれほど申したのに……」

「も、申し訳ありません。でも……お城の中は……」

「ホッホッホ、お久しゅうございます。ミコト姫様」

「コチラこそ、ご無沙汰いたしております。シン老師。お元気そうで何よりです」

「有り難きお言葉、いたみいります。姫様もお元気そうで……」

「ありがとうございます。トコロで、そちらの方は?」

「あ、イヤイヤ、ご挨拶が遅れて申し訳ありませぬ。コチラに控えておりますのはわたくしの弟子の一人で……」

「トーマと申します」

「……あっ、アンタッ!!!」

「ヘッ!?……あっ、さっきのビリビリ娘!?」

「だっ、誰がビリビリ娘よっ!!!……でも、見つけたわよ。ココであったが百年目。さあ、勝負よ勝負!!!」

「百年目って、さっき会ったばかりだろうが!!」

「いちいち、そう言うトコ突っ込まない!!!」

「第一勝負、勝負って、さっき決着ついたじゃねぇか。オマエの電撃はオレには効かないって見せたろう?」

「……うっ、うっさいわねぇ。あたしだって一発も食らってないんだし、それにアンタは逃げたんだから、さっきのはせいぜい引き分けってトコよ」

「じゃ、じゃあ、どうすりゃ終わるんだよ?」

「そ、……そりゃ、もちろん……私が勝ったらよ!!!」

「ハァ~~~~~~~~~~~~~」

「そこッ!さっきより大きい溜息つかない!!!!!」

「コレッ、ミコト姫!!!」

「トーマも、タビカケ殿の御前じゃぞ!!!」

「でも、パパ……あっ!ヤバッ……」

「ジッちゃん、だってよぉ~……あっ!イケねッ……」

「「ハァ……」」

「タビカケ殿、我が弟子トーマが大変失礼をいたしました」

「いえ、ウチのミコト姫こそ不躾なマネをいたしまして……」

「……とは言え、この二人……このままでは収まりそうにありませんな」

「ウーム、それは確かに……。何せミコト姫は大の負けず嫌いでして……城の兵士達を相手にするなど日常茶飯事で……」

「ホッホッホ、それはまた勇ましいことで」

「シン老師、笑い事ではござりませぬ」

「イヤイヤ、コレは失礼。ホッホッホ」

「フッ、フハハハハハ」

「……さて、ミコト姫様」

「ハッ、ハイ。シン老師」

「姫様は、我が弟子トーマとの勝負をお望みですかな?」

「エエ、もちろん!!」

「だそうじゃが……どうする?トーマ」

「どうするったって……勝負しなきゃ結局追いかけ回されそうだし……こんなガキ相手に本気になるつもりもねぇけどさ……」

「だっ誰がガキよっ!!!」

「……ハァ、まぁ、向こうが挑んで来るってんなら、受けてやってもイイぜ」

「コレ、トーマ。言葉遣いにはあれほど気をつけろと言うたではないか!」

「もう、イイじゃんか。どっちにしたってバレてんだしさ、あのまま喋ってたら、舌噛んじまうよ」

「しょうのないヤツじゃ……まったく。……申し訳ありません。タビカケ殿」

「イヤ、なかなか元気があって宜しいかと。ハハハハハ……ところで一つお尋ねしたいのですが……」

「ハイ、何なりと……」

「先程からずっと思っておったのですが、彼とは何処かで会ったように思うのですが……」

「ホッホッホ、さすがにお気付きになられましたか。この子はトーヤ殿とシーナ殿の子でしてな」

「何と!?あのトーヤ殿のご子息!?」

「先の『コ』の国との闘いの時には、共に闘われたとか。トーヤ殿よりお聞かせいただいております」

「ハイ。彼のお陰であの闘いに勝てたようなもの。本当に素晴らしい戦士です」

「トーヤ殿もタビカケ殿が居られなければ、あの闘いに勝利することはなかったと仰っておられましたぞ。良き友誼を結ばれておられるようですな」

「ありがとうございます。イヤ、それにしても世の中広いようで狭いものですな」

「ホッホッホ。この世は探すには広うござりまするが、偶然が起きるにはちと狭すぎるようでしてな……ホッホッホ」

「なるほど、なるほど……ハハハハハ」

「さて……タビカケ殿、申し訳ありませんが中庭の競技場をお貸し頂けませぬか?」

「ま、まさか……ミコトとトーマ殿を勝負させると?いくら何でもそれは……」

「ああ、ご心配には及びませぬ。トーマには一切の『力』の行使を禁じます故」

「ちょっと待て、ジッちゃん。そんなんでどーやって勝てってんだ!?」

「何を言って居る。ワシは一切の私闘は禁じて居るはずじゃが?」

「あっ!」

「だからコレは勝負ではなく、手合わせじゃ。またそうでなければ許可することは出来ん」

「エエ~~ッ!!!」

「ミコト姫様も聞き分けていただかねばなりませぬぞ。第一にトーマは既に実戦経験のある勇者にござりまする」

「うっ……」

「姫様が如何にお強くとも、《龍氣》を使いこなす勇者には敵いませぬ」

「そっ、そんな……私だって……」

「コレ、ミコト……」

「あ……ハイ……」

「《龍氣》とは、この世を創造された創造主がこの世界を安定・調和に導くために配された力のことにござります。見える者にはその力が形を持って見えまするが、多く者の眼にはそれが『龍』のように見えるため、《龍氣》と呼んでおります」

「『龍』の形をした力……」

「我ら《龍氣》を使う者は、その力を借り受け、自らの器を通して顕在化させまする。そこが姫様達が使われる『力』とは大きく異なります」

「なるほど、なるほど」

「皆様が使われる『力』に比べ、《龍氣》は創造主の『力』。故に『力』そのものの大きさが異なります。本来なら人がその全てを使うことなど到底出来ぬほどのモノなのです」

「……」

「その創造主の『力』の一部を借り受け、我が身を器として取り込み、自らの『力』と融合させ、顕在化させる。……と、口で言うのは容易きこと……なのですが、コレがなかなか……」

「そうでしょうなぁ……」

「皆様が使われる『力』と《龍氣》の一番の違いは、様々な『力』を行使することが出来ると言うことにございます」

「様々な『力』?」

「先程ご覧になられたでしょう。トーマの『力』を。姫様の電撃を打ち消したのも《龍氣》にございます」

「それって、……コレのコト?」

『バッチン!!』

『パキィィンッ』

「なっ!?……アッブねぇなぁ……いきなり何しやがる!!!」

「イイじゃない。どうせ打ち消せるんでしょ?」

「やっぱ、コイツ、可愛くねぇ!」

「何ですって!!!」

「何だよ!!!」

「コレコレ、二人とも……。ホッホッホ」

「「あ……スミマセン……」」

「今、トーマが見せたのは『浄化』の《龍氣》にござります。この『力』はなかなか使いこなせぬモノなのですが、トーマはこの『力』を使うのが得手のようでしてな」

「だったら、さっき私を助けようとした時も、『知り合いのフリしてこの場から自然に連れ出す作戦』なんてコトしなくても良かったんじゃない。その《龍氣》でパパッとやっつけちゃえば済んだのに……なによ、カッコ付けちゃってさ……」

「別にカッコ付けてる訳じゃねぇよ。この《龍氣》はジッちゃんが言ったようにこの世の安定と調和のためにある『力』なんだ。あんな程度のことにおいそれと使えるか!」

「コレ、トーマ……」

「あ……申し訳ありません」

「それに、姫様も……」

「あ……ご無礼、お許し下さい……」

「やれやれ、話の途中じゃが……ホンに収まりがつかんようじゃ。仕方無いのぉ……」

「じゃ、じゃあ、老師様。コイツと勝負させてくれるの?」

「ホッホッホ、但し、先程も申しました通り、コレは【勝負】ではなくあくまで【手合わせ】にござりまするぞ。勇者の私闘は絶対に認められませぬ故」

「どっちでも良いわ。とりあえずコイツをやっつけられるんだから!!」

「何で、オマエが勝つ前提になってんだよ!!!」

「当然じゃない。私が負ける訳無いもん」

「さっき負けたじゃねぇかよ……」

「何か言った!?」

「……い、いえ……何も……ハァ、不幸だ……」

「ホッホッホ、ところでトーマ……」

「はい?」

「姫様がいくらお強いとはいえ、オマエが《龍氣》を使ったのでは【手合わせ】にならぬ。そこでじゃ、使う《龍氣》は『浄化』の《龍氣》に限定する。よいな」

「ま、まぁ、コレがありゃあ何とかなるし……」

「先に言うておくが、基本の『加速』『神速』『縮地』も禁止じゃぞ。《力幅》や《龍覇氣》もじゃ」

「ええっ!?そんなんじゃ、使えるワザねぇじゃんか!?」

「そうでなくば勝負にならんわ。『気合い』で何とかせい。ホッホッホ」

「不幸だ……」

「では、タビカケ殿。中庭を拝借つかまつります」

「ハァ……仕方無いようですな……」

 何が何だか分からぬままに、決まってしまった【手合わせ】であったが……。
 ブツブツ言い続けているトーマと、コレからの勝負にやる気満々のミコトは中庭の闘技場にやってきた。
 闘技場は、一遍20メートルくらいの正方形の武舞台で、周囲より1メートルくらい盛り上がっている。
 ま、早い話が某鳥○明氏原作の龍玉に出てくる武闘会の武舞台だと思って下さい。w

「ルールは単純じゃ。『まいった』と言えば負け。カウント10で立ち上がれなければ負け。気絶もダメじゃ。そして、その武舞台から出たり落ちたりしても負けじゃ。良いな」

「ハイッ!!!」

「へーへー」

「なによぉ~、そのやる気の無さは?」

「……あのなぁ、この状況でどーやってやる気を出せってんだよ!?第一、コレは勝負じゃなくって【手合わせ】だろ?」

「あたしに取っては、同じコトよ」

「……ハァ……不幸だ……」

「アーッ、お姉様が知らない男の方と勝負してるー。って、ラストはラストは叫んでみたり」

「あ……ラスト……それに、ママ」

「もう、ミコトちゃん、ママじゃないでしょ?ちゃんと『お母様』って呼ばなきゃダメじゃない……って、えっ!?シン老師!?……いつお越しになられたのですか!?」

「ホッホッホ、ご無沙汰いたしております。ミスズ殿。つい先程お伺いさせていただいたばかりなのですが、我が弟子が何やら姫様のご機嫌を損ねたようでして……」

「あー、老師様だー。ッてラストはラストは甘えてみたり」

「ホッホッホ、ラスト姫。大きゅうなられましたな」

「ねぇねぇ、また昔のお話を聴かせて欲しいなって、ラストはラストはねだってみたり」

「ラスト、今はそれどころじゃないのよ。さあ、老師様、始めて頂けます?」


「ミコトちゃん、始めるって何を?」

「コイツとの勝負に決まってんじゃない!!」

「勝負って……また、アンタ……」

「おお、ミスズ戻ったか?」

「あ、あなた……コレは一体……」

「……ああ……ミコトのヤツがまた……な……ハァ……」

「……ハァ……もう……もうちょっとお淑やかにって……いつも言ってるのに……」

「……ハァ……、ってラストもラストも付き合ってみたり」

「そこッ!!家族で変な溜息つかない!!!」

「……ハァ……、誰のせいでこーなったと思ってんだよ?」

「うっさいわねぇ……アンタはそこで黒こげになってりゃイイのよっ!!!」

『バチバチバチッ!!!』

「ほっ!」

『キュイン!!……パァアン!!!』

「姫様、コレはあくまでも【手合わせ】ですぞ。ちゃんと礼を尽くし、挨拶をしてからでなければ、手出しはなりませぬ」

「うっ……失礼しました……」

「この武舞台の周りに『護符』による『結界』を張りまする故、暫しお待ちを」

「『結界』?って、ラストはラストは首を傾げてみたり……」

「ホッホッホ。そうせねば、ミコト姫様の電撃がこの外に出てしまいますからな。トーマが出来る限り打ち消しはするでしょうが……ラスト姫様もお気を付け下さい」

「ちょっと待て、ジッちゃん。いつの間にかオレが電撃打ち消す役に回されてんだけどっ!?」

「ホッホッホ」

「笑ってゴマかすなっ!!!」

「さっきから、な~に余裕ブッこいてくれてんのかしら……」

「……わーったよ、それで気が済むってんなら……相手になってやる」

「よーやく、やる気になったみたいね」

「さて、結界もこれで良し。……ではッ、始め!!!」

「いつでもイイぜ、かかって来な」

「言われなくてもコッチはずっとこの時を、……待ってたんだからっ!!!」

『バチバチッ!!!ドンッ!!!!!』

「クッ……」

『パキィーンッ!!』

「(やっぱ電撃は効かない……か)……ならっ!!」

『パリッパリッ、……ビビビビビッ』

「なっ……えっ!?」

『ザザザザザザザザザ……ザーーーーブンッ!!!』

「ちょっ……おまっ……エモノ使うのは、ズルいんじゃ無いッ!?」

「『力』で作ったもんだもん。問題なしよん♪」

「え゛え゛ッ……」

「砂鉄が高周波振動してるからね。触れるとちょーっと血が出たりするかもねっ!!!」

「って……どう考えても、それじゃ済まないと思うんですけどぉっ!?」

『ブンッ!』

「オッ」

『ブンッ!!』

「ドワッ!?」

「ちょこまか逃げ回ってたって、コイツには……」

「とはッ!!」

「……こんなことも出来るんだからっ!!!」

(けっ、剣が伸びたッ!?)

(入った!!躱せるタイミングじゃ無いッ!!!)

「くぉっ!!」

『パキィィン!!』

「えっ!?(……強制的に砂鉄に戻された?)」

「ふぉぉおおお……」

(でも、ココまでは予想通り……)

「しょ、勝負あったみたいだな……」

「さあ、それはどうかしらッ!?」

「ンなっ!?お……オマエッ、風に乗った砂鉄まで操って……」

『ブウゥゥン!!!』

「こんなこと、何度やったって同じじゃねぇかっ!!!」

『パキィィン!!』

『ガシッ!(取った!!!)』

「ヘッ!?」

「飛んでくる電撃は打ち消せても……」

「……」

(……えっ!?……電流が流れていかない!?……何なのよ、コイツ!?)

「ハッ!?」

「え……えーっと……」

『バッ!』

「ビクゥッ!?」

「はー……」

「うっ……」

「ギャァァァアアアア……」

「ひっ!?……ううっ……」

「ま、まいりましたぁ~。……ガクッ……」

「……」

「……(チラッ)」

「ふ……」

「……(ン?)」

「ふ……ふ……」

「え゛……!?」

「ふ・ざ・け・ん・なぁ~!!!!!」

『ズドドドドドドン!!!!!』

「どわぁぁぁあああああっ!?」

「マジメにやんなさいよっ!!!」

「だって、オマエ……ビビってんじゃん」

「ビビってなんかないわよッ!!!」

「ウソつけっ!こーんな感じで涙目になって……ビクってしてたら……え゛……」

「死ねぇー!!!」

『ズッドォォオオオン!!!』

「どわぁ!?」

「に、逃げんなぁー!!!」

「だあああっ……オッ、オマエッ……今の直撃してたら普通死ぬぞッ!!!」

「どうせ効かないんでしょうがッ!!!」

「効こうが効くまいが、そんな攻撃を躊躇なく他人に仕掛けるなんて……どんな神経……」

「私だって、こんな『力』を人に向けて使ったコトなんて無いわよッ!!!」

「何で、オレだけぇ~っ!?」

「ちゃんと私の相手しろっ!!!」

「不幸だぁぁぁあああああ!!!!!!!」

「それまでッ!!!」

「「えっ!?」」

「トーマが武舞台から飛び出した時点で、ミコト姫様の勝ちじゃ。ホッホッホ」

「あ……」

「そ、そんなぁ……」

「この【手合わせ】はココまで。二人とも良いな!」

「……あ、ああ……」

「……うう、……(何か、納得いかないっ!!……でも……)ハイ……」

「ホッホッホ」

「お姉様が勝ったァ~!ってラストはラストは喜んでみるぅ~」

「しかし……ミコト姫様の実力、恐れ入りましたぞ。他の《龍氣》を使わせなかったとは言え、トーマに勝ってしまわれるのですから……」

「そ、そんな……」

「どうじゃな?トーマ」

「……ま、今日のところはオレの負けでイイよ。本気でやった訳じゃねぇしな」

「な……何ですってぇえええ!!!!!」

「コレコレ、二人とも……それにしてもタビカケ殿、ミスズ殿。お騒がせして申し訳ありませぬ。ホッホッホ」

「イヤイヤ、老師様だからこその采配。恐れ入りました」

「イヤイヤ、その場の流れに任せただけのこと。しかし、これ以上ご迷惑をおかけする訳にもまいりませぬので、今日のところはコレにて失礼をいたしまする」

「イヤ、それは困ります。せっかく老師様がお越し下さったのに、大した歓迎もせぬままお返しする訳には……」

「友と落ち合うのはこの町になっておりますので、しばらく滞在させていただきます。また機会をみて、伺わせていただきます故、今日のところは一先ずコレにて……では、トーマ。まいろうか?」

「あ……ハイ……」

「ココに滞在されると仰るのなら、ぜひこの城にお泊まり下さい。今、歓迎の支度もさせておりますし……」

「友と落ち合うのは町の宿と決めておりますので、お気持ちだけ有り難く頂戴させていただきます。では……」

 そう言ってシン老師とトーマは城を出て行った。

「行ってしまわれたか……それにしても……ミコト!!!」

「ハッ、ハイッ!?」

「後で、私の部屋に来なさい!!良いな」

「は……ハイ……」

「ワーイ、お姉様がお父様に怒られるー。ってラストはラストは喜んでみたりー」

「……ラスト……」

『ビクッ』

「アンタねぇ……」

「いやーん、お姉様コワいー。ってラストはラストはお母様に助けを求めてみたり」

「もう、ミコトちゃん。ラストちゃんを虐めないの!!」

「うう……」

「それにいつも、もう少しお淑やかにしなさいって言ってるでしょ?」

「だって……」

「それにしても……トーマ君だっけ?あの子。結構カッコ良かったんじゃない?……ン~?もしかして……惚れちゃったとかぁ~?」

「そ、そそそそそんなんじゃないわよッ!!!!!」

「あっれぇ~?何、真っ赤になってんのかなぁ~?」

「ホントだ、ホントだ。お姉様が真っ赤になってるー。ってラストはラストはお母様のツッコミに乗っかってみたりー」

「だあああ、もうっ!!ウルサい、ウルサいッ!!!アイツとはそんなんじゃないわよっ!!!!!」

「どーだかぁ~……ミコトちゃんって基本『ツンデレ』だもんね」

「『ツンデレ』『ツンデレー』って、ラストはラストは繰り返してみたり」

「ラ・ス・トォー……」

「ヤバいっ……。って、ラストはラストはこの場から退散することにしてみたりー」

「あっ、コラッ、待ちなさいッ!!!」

────────────────────────────────────────

「ヘッ!?……アレッ……」

(あ……ココ、当麻の部屋……そっか……昨夜……またお泊まりしたんだっけ……)

(こんな美少女が横で寝てるってのに……ホント、コイツの理性って……どんだけ鉄壁なのかしら……?)

(ホントは……さ、まだちょっと怖いけど……もうそろそろあっても……イイかな……何て……)

(夢の中じゃ、赤ちゃんまで……ん?アレ?……さっきの夢……)

「んん……ううん……うん……あ……」

「あ……当麻、起きたの?」

「ん……ワッ!?……ビリビリ姫ッ!?」

「え゛……」

「えっ……あっ……ハァ……何だ、美琴か……」

「……ちょろっと……当麻……今、何て言ったの?」

「あっ、……いやっ……だからさ……そのッ……」

「確か……『ビリビリ姫ッ!』……とか、言ったわよね……」

「あ……あの……そ、それはぁ……」

「どういうコトよ。それはさっき私が見てた夢じゃないの?」

「ヘッ!?お前が見てた夢って?」

「え……もしかして……当麻も……」

「ああ……そうみたいだ……な……」

「お父さんとお母さんがお城の城主で、【打ち止め(ラストオーダー)】が妹で……」

「オレは、【シン老師】って言う変な爺さんの弟子で……」

「確か《龍氣》だっけ?その力を使って、【幻想殺し(イマジンブレーカー)】と同じ力を持っていて……」

「お前と勝負することになって……結局、オレの負けってコトに……」

「「……エエ~~~~~~ッ!!!???」」

「そ、そう言えば、この前私が妊娠した時も……」

「その発言は控えて下さい。思いっ切り誤解を招きますから……」

「あの時も当麻は『それは夢だろっ!?』って、言ってたわよね?」

「ああ、だって夢の中で美琴がオレに『二ヶ月ですって』って言ったんだぞ。それをお前が勘違いして……」

「勘違いじゃないもん……アレは昔ホントにあった『現実』だもん……」

「だから……それはそうだけど、今にそれを当てはめようとするなって言ってんだよ」

「でもさ、当麻が私を妊娠させた事実は消えない訳でしょ?」

「だから~、それは夢の中の話じゃないか!?今のオレたちはまだ……」

「何なら……今から……する?」

「バッ、バカ野郎!!あ……朝っぱらから何『トンでも発言』しちゃってるんですか?美琴さん!?」

「だってさ……さっきから……当麻の……当麻のが……(ゴニョゴニョ)」

「ヘッ!?……美琴さん……何を……何を見て……って、どわぁぁああ!!!」

「(ボンッ!!!)」

「こっ、こっ、こっコレはですね……男にとっては自然現象と言いますか……朝は必ずこうなっちゃうと言いますか……」

「当麻のえっち……」

「だぁぁぁあああああ!……不幸だぁぁぁあああ!!!!!」

(もう……当麻ったら……でも……この前といい、今日といい、当麻のところにお泊まりすると、同じ夢を見られる……ってコトは……)

「ねぇ……当麻?」

「うう……何ですか……美琴さん。上条さんは恥ずかしくて、そっちを向けないのですけれど……」

「そのネタはもういいわよ。今襲いかかってきても電撃浴びせてやるから……」

「ヘッ!?」

「それより、夢のコトよ、夢のこと」

「夢がどうしたんだよ?」

「前にも言ったけど、あの『夢』が『記憶』であるという仮説はほぼ間違いなさそうよね?」

「それはそうだろうな……コレだけオレたちが同じ『夢』を共有してるってコトは、そういうコトになるよな」

「この前も今日も、当麻のところにお泊まりしたら、二人で同じ夢が見られるってコトが分かったのよ」

「何だって?」

「この前に私が妊娠したことも、そして今日見た二人が出会った時のコトも……」

「二人で立場は違うけれど、同じ内容を見ている。……ってコトは……」

「当麻と一緒に寝たら、もっと昔の『記憶』が辿れるってコトじゃない!!!」

「ちょっと待て……今、もの凄い不安に駆られたんだけど……」

「ねぇ……当麻ぁ~……(スリスリ)」

『ギクッ!!』

「今日はお休みでしょ?だ・か・ら……お買い物行って……色んなもの買わなきゃ……ねっ♪」

「買い物って……何を……?」

「決まってるじゃない。お泊まりがちゃんといつでも出来るように……パジャマとか……洗面用具とか……あと(下着とか……ゴニョゴニョ)……」

「バッ、バカ野郎……そんなに何度もお泊まりされてたまるかよっ!?それでなくったって、オレの理性はもう崩壊寸前なんだぞっ!!!」

「そっちはまだダメ……記憶の方が先よ。そのウチ、二人が初めて結ばれた時の記憶も出てくるかも知れないし……それを見た後でも……イイかなって……」

「お、お前なぁ……」

「だから、イイでしょぉ~。お・ね・が・い……『チュッ』……」

「(ボムッ!!!)ふ……ふ……ふにゃぁ……」

「エヘヘ……当麻撃沈……ヤッタァ~、コレでお買い物決定ねッ♪」

 今日も完全に美琴の尻に敷かれている上条であった。
 それにしても、この二人。過去も今も出会いはあまり変わらないようで……。


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