「………………」
「な、なぁ、ホント悪かったって」
数分後、二人は例の教室を後にして長点上機学園の廊下を歩いていた。
煙を上げ始めた装置に一瞬「弁償ですか!?」などと焦った上条だったが、布束によるとあのくらいなら何とか直せるから大丈夫らしい。
そして何度も謝り、機械は布束に任せてここに至るわけだ。
煙を上げ始めた装置に一瞬「弁償ですか!?」などと焦った上条だったが、布束によるとあのくらいなら何とか直せるから大丈夫らしい。
そして何度も謝り、機械は布束に任せてここに至るわけだ。
しかし美琴の機嫌は相変わらずだった。
それでも上条の腕に抱きついているのが、また可愛いところなのだが……。
それでも上条の腕に抱きついているのが、また可愛いところなのだが……。
「…………じゃあ、これで許したげる」
「…………はい??」
「ん……」
そう言うと美琴は目を閉じ、上条の方に顔を上げる。自分からやっておきながらその顔は真っ赤だ。
そしていくら上条でもこれが何を待っている体勢なのかくらいは分かる。
しかしここでそのままソレをやってしまうなどという考えは浮かばない。
女の子の唇はそんなに軽いものではないはずだし、なにより今もどこかで監視しているはずの土御門に大公開する事になるからだ。
そしていくら上条でもこれが何を待っている体勢なのかくらいは分かる。
しかしここでそのままソレをやってしまうなどという考えは浮かばない。
女の子の唇はそんなに軽いものではないはずだし、なにより今もどこかで監視しているはずの土御門に大公開する事になるからだ。
まぁそれ以前に周りのギャラリーにはこの状態を絶賛大公開中なのだが。
(こんな所でやっちゃうのか!?)
(いいぞーやれやれー!!)
(リア充爆発しろ!!)
そんな声も聞こえており、上条はさらに追い詰められる。
美琴も周りをよく見てくれれば我に帰るはずなのだが、今はそんな余裕もないようだ。
美琴も周りをよく見てくれれば我に帰るはずなのだが、今はそんな余裕もないようだ。
『やっちまえ、カミやん!!』
(テメェは黙ってろおおおお!!)
たまたま土御門による周囲の監視報告の為にこっそりと通信用霊装を起動していたので、そんなからかいの言葉まで頭の中に入ってくる。
上条はすぐに通信を切ると、改めて美琴の方に向き直る。
彼女はまだ同じ体勢のままじっと何かを待っていた。
上条はそんな美琴の唇を見つめ、生唾を飲む。手っ取り早くこの状況を終わらせられる方法が一つだけある。
上条はすぐに通信を切ると、改めて美琴の方に向き直る。
彼女はまだ同じ体勢のままじっと何かを待っていた。
上条はそんな美琴の唇を見つめ、生唾を飲む。手っ取り早くこの状況を終わらせられる方法が一つだけある。
(い、いやいやダメだろそれは! そんな軽い気持ちで女子中学生の唇を奪うなんてどこのクズ野郎ですか!?)
しかしこんな出来の悪い頭では他の方法も思い付かない。
さてこれはホントにまずいぞ、と割と真剣に悩み出す上条だったが……。
さてこれはホントにまずいぞ、と割と真剣に悩み出す上条だったが……。
その時、何やら後ろのほうからバタバタというやたらと騒がしい足音が聞こえてくる。
「わぁーお久しぶりー!!ってミサカはミサカはその背中に全力ダイブ!!」
「!?」
突然背中に飛び込んできた謎の物体に、堪えきれずに前によろける上条。
そしてそんな上条の目の前には、例の体勢のままじっと待っていた美琴がいて……。
そしてそんな上条の目の前には、例の体勢のままじっと待っていた美琴がいて……。
チュッっとそんな音がした。
その瞬間、上条は背中に謎の物体を引っ付けたままズザザ!と後ろに身を引く。
一方美琴はポーっと真っ赤な顔をして呆然としながら、自分の顔のある一点を片手で押さえていた。
そこは唇……ではなく額だった。
一方美琴はポーっと真っ赤な顔をして呆然としながら、自分の顔のある一点を片手で押さえていた。
そこは唇……ではなく額だった。
「あ……えとその……私は口が良かったな……」
「い、いや……事故ですよ!? てかお前、こんな大衆の面前で……」
「……え?」
そんな上条の言葉に幾分か冷静になった美琴が改めて辺りを見回す。
そして二人の周りに大勢いる、ニヤニヤとしているギャラリーを確認すると、顔をさらに真っ赤にさせてプルプルしながら俯いてしまった。
そこにさらに追い討ちをかけるのは上条の背中の物体だ。
そして二人の周りに大勢いる、ニヤニヤとしているギャラリーを確認すると、顔をさらに真っ赤にさせてプルプルしながら俯いてしまった。
そこにさらに追い討ちをかけるのは上条の背中の物体だ。
「あちゃーお邪魔しちゃったみたい……ってミサカはミサカはちょっと反省してみたり。ごめんね、お姉様」
次の瞬間、耐えきれなくなった美琴は上条の手を引いて猛ダッシュを始める。
上条は「またですかー!?」と引きずられていくしかなかった。
上条は「またですかー!?」と引きずられていくしかなかった。
「は!? ここに一方通行(アクセラレータ)がいんの!?」
数分後、上条、美琴、それに上条の背中に引っ付いた物体の正体、打ち止め(ラストオーダー)は先程よりも上の階の廊下を歩いていた。
そんな時、何故ここにいるのかという質問に対する打ち止めの返答に上条は目を丸くする。
そんな時、何故ここにいるのかという質問に対する打ち止めの返答に上条は目を丸くする。
「うん、最近はちゃんと学校にも行ってるんだよ! ってミサカはミサカは不登校の子供を抱える親のごとく喜びを表してみる!」
「…………まぁアイツがここにいるのはいいんだけどさ」
そこで口を開いたのは美琴だ。やはり今も上条の腕に抱きついている。
一方通行とは以前に色々あったが、妹達(シスターズ)経由で現在の彼の事は知っており、一応ケンカしない程度に話せるようにはなっている。
しかしそれでも美琴が今不機嫌なのは、打ち止めの現在位置によるものだった。
一方通行とは以前に色々あったが、妹達(シスターズ)経由で現在の彼の事は知っており、一応ケンカしない程度に話せるようにはなっている。
しかしそれでも美琴が今不機嫌なのは、打ち止めの現在位置によるものだった。
「なんでアンタは当麻の背中に引っ付いているのかしら?」
「だってここはミサカの定位置だもん!ってミサカはミサカはここに宣言してみたり!」
「何言ってんのよ! 当麻の体は全部私の定位置よ!!」
「ちょ、お前が何言ってんの!?」
始めはこの姉妹喧嘩を傍観していた上条だったが、何やら無視できない事を言い始めたので口を挟む。
しかし二人はそんな上条を無視して「降りなさい」「嫌だ」と終わりのない言い争いを始めてしまう。
上条は小さくため息をつくと、首を少し回して背中の打ち止めに向かって口を開く。
しかし二人はそんな上条を無視して「降りなさい」「嫌だ」と終わりのない言い争いを始めてしまう。
上条は小さくため息をつくと、首を少し回して背中の打ち止めに向かって口を開く。
「あーそうだ、打ち止めは一人か? 確かウチの学校の先生のとこに居候中じゃなかったっけ?」
「うん、さっきまでヨミカワに番外個体(ミサカワースト)と一緒にいたんだけど、ミサカが走り回ったせいではぐれちゃったみたいってミサカはミサカは毎度の展開に我ながら少し呆れてみたり」
「そっか。まぁ一人にするわけにもいかねーし、とりあえず一方通行のとこ行ってみっか。
その連れの人もそこにいるかもしれねーし」
その連れの人もそこにいるかもしれねーし」
「うん! それには大賛成!ってミサカはミサカはさらにあなたの背中に抱きついてみたり!」
「おいコラ」
そんな上条と打ち止めの様子をドス黒いオーラを撒き散らしながら見る美琴。
上条の腕に抱きつく力も自然と増し、ミシミシと不穏な音が響く。
さすがに上条もそんな状態を放っておくことはできない。
上条の腕に抱きつく力も自然と増し、ミシミシと不穏な音が響く。
さすがに上条もそんな状態を放っておくことはできない。
「み、御坂さん!? 上条さんの腕が何やら嫌な音をあげてるんですが!!」
「何よ何よ!! アンタはそうやっていつも妹の方を贔屓して!!
そんなに妹って響きがいいのかコラァァァァアアアアアアアア!!!!!」
そんなに妹って響きがいいのかコラァァァァアアアアアアアア!!!!!」
「うわわ、なんかこの人の腕が洒落にならない音をあげてるよってミサカはミサカはお姉様の力は能力だけじゃないっていう新事実にブルブルしてみたり!」
「いてててて!! お、お前はお姉ちゃんだろ!! ちょっとは我慢しろって!!」
己の腕の危機に思わず上条は兄、姉が良く言われる、そして良い思い出がない言葉を放つ。
元々一人っ子だった美琴はそういった言葉に耐性がなく、少し俯くとプルプル震えだした。
上条はまたビリビリか!? ととにかく背中の打ち止めだけは守ろうと身構えるが、
元々一人っ子だった美琴はそういった言葉に耐性がなく、少し俯くとプルプル震えだした。
上条はまたビリビリか!? ととにかく背中の打ち止めだけは守ろうと身構えるが、
「…………私にも構ってよ……」
「へっ? お、おい?」
「………………」
美琴の行動は予想に反して、そうポツリと呟いただけだった。
しかし急にここまでしおらしくなられても上条としてはかなり気まずい。
それは打ち止めも同じなのか、上条の背中から俯いたままの姉を少し申し訳なさそうに見ている。
しかし急にここまでしおらしくなられても上条としてはかなり気まずい。
それは打ち止めも同じなのか、上条の背中から俯いたままの姉を少し申し訳なさそうに見ている。
「えっと、お姉様? もし良かったらここ変わろうかってミサカはミサカは提案してみたり……」
「い、いやいや打ち止めはともかく御坂にそこは無理だろ……。色んな意味で。
おーい御坂? ごめんな、ちゃんとお前にも構うからさ。な?」
おーい御坂? ごめんな、ちゃんとお前にも構うからさ。な?」
「………………」
上条の言葉にも打ち止めの言葉にも反応を示さない美琴。なおも俯いたままだ。
これに困り果てた上条と打ち止めはコソコソと相談を始める。
これに困り果てた上条と打ち止めはコソコソと相談を始める。
「(これはどうすればいいんだ……?)」
「(うーん、ミサカだったらこういう時は頭なでなでされると嬉しいかもってミサカはミサカは主張してみる)」
「(あ、頭なでなでですか……。 確かにクローンならそういう所も似ているかも知れねえけど……)」
打ち止めの提案に頭を悩ませる上条。
頭をなでるくらいなら上条にも出来そうだが、それが上手くいくとも限らない。
元々子供扱いを嫌がっていた様な気もするし、そんな簡単に機嫌が直るとも思えない。
だが他に方法も思い付かないのでとりあえず試してみることにする。
頭をなでるくらいなら上条にも出来そうだが、それが上手くいくとも限らない。
元々子供扱いを嫌がっていた様な気もするし、そんな簡単に機嫌が直るとも思えない。
だが他に方法も思い付かないのでとりあえず試してみることにする。
「み、御坂、元気出せって」
「…………!!」
そう言いながらぎこちない手つきで美琴の頭を撫でる上条。
予想以上にサラサラな髪に少しドキッとしてしまうが、手を止めずに続けてみる。
するとその頭なでなでに美琴はピクッと反応を見せる。
予想以上にサラサラな髪に少しドキッとしてしまうが、手を止めずに続けてみる。
するとその頭なでなでに美琴はピクッと反応を見せる。
「…………えへへ」
「お?」
「ま、まぁ可愛い妹だし、少しくらいは我慢してあげてもいいかなー!」
「まさか本当に上手くいくとは……ってミサカはミサカはお姉様の子供っぷりに……むぐっ!?」
余計なことを言おうとする打ち止めの口を慌てて塞ぐ上条。
だが美琴はそれには気付かずに、頬を染めてとても幸せそうに顔を緩めていた。
そんな予想以上の効果に上条と打ち止めは少し驚くが、とにかく上手くいったからいいかと安心する。
しかしそこで上条が撫でるのを止めた瞬間、美琴はバッと不満げにこちらを見る。
だが美琴はそれには気付かずに、頬を染めてとても幸せそうに顔を緩めていた。
そんな予想以上の効果に上条と打ち止めは少し驚くが、とにかく上手くいったからいいかと安心する。
しかしそこで上条が撫でるのを止めた瞬間、美琴はバッと不満げにこちらを見る。
「な、なんで止めちゃうの!?」
「えっ? あ、悪い悪い」
「えへへ…………ふにゃ」
上条が再び撫で始めると、幸せそうな顔に戻る美琴。
しかし当の上条はいつまでこれを続ければ良いのか不安になってきていた。
既に少し腕が疲れ始めてきている。
しかし当の上条はいつまでこれを続ければ良いのか不安になってきていた。
既に少し腕が疲れ始めてきている。
「(とりあえずお姉様が満足するまでそのまま頑張って! ってミサカはミサカは応援してみる!)」
美琴が、腕の限界を迎えた上条の「もう勘弁してください!」という言葉を聞き入れるのはそれからしばらく先の事だった。
それから少し経って、上条達はようやく目的の教室までやって来た。
上条の腕には常盤台のお嬢様、背中にはそのお嬢様と同じ顔をしたさらに小さい女の子が貼り付いている。
そんな一目見れば少し奇妙に見える三人組だが、本人達はあまり気にしていないようだ。
なぜなら、今は目の前の学園都市最強を大笑いすることに大忙しなのだから。
上条の腕には常盤台のお嬢様、背中にはそのお嬢様と同じ顔をしたさらに小さい女の子が貼り付いている。
そんな一目見れば少し奇妙に見える三人組だが、本人達はあまり気にしていないようだ。
なぜなら、今は目の前の学園都市最強を大笑いすることに大忙しなのだから。
「いらっしゃいませェェ!! 最強の能力で作ったヤキソバはいかがですかァ!?」
「ぶっ!! アハハハハハハハ、やっぱアンタそれヤバイって!!」
「いやーこんなあなたの一面もいいもんどすなーってミサカはミサカは……ぷっ!!」
「いやいやお前ら笑いすぎだから、一方通行だって頑張って……くくっ!」
「テメェら帰れェェえええええええ!!!!!」
そんな笑いすぎて涙目になっている三人。そして教室前でヤキソバを売っているのはレベル5の第一位、一方通行だ。
白い肌に白い髪に赤い目、さらには全体的に線の細い体は、あまり似合ってもいない長点上機の制服によって包まれている。
しかしその白い髪は今や全て上げられ、あらわになった額には手拭いが巻かれている。
そしてその手元には巨大な鉄板に二本のヘラがあり、そこでは大量の野菜に肉に麺が踊っていた。
どうやら持ち前の『ベクトル操作』を使って調理しているらしいのだが、正直どうなっているのか一般人には良く分からない。
ただし、あり得ないくらい高く麺や肉が打ち上げられたり、驚異的なスピードでかき混ぜられているのにも関わらず、麺の一本もその鉄板から飛び出していない。
そんなあり得ない現象が起きている事くらいならかろうじて理解できる。
白い肌に白い髪に赤い目、さらには全体的に線の細い体は、あまり似合ってもいない長点上機の制服によって包まれている。
しかしその白い髪は今や全て上げられ、あらわになった額には手拭いが巻かれている。
そしてその手元には巨大な鉄板に二本のヘラがあり、そこでは大量の野菜に肉に麺が踊っていた。
どうやら持ち前の『ベクトル操作』を使って調理しているらしいのだが、正直どうなっているのか一般人には良く分からない。
ただし、あり得ないくらい高く麺や肉が打ち上げられたり、驚異的なスピードでかき混ぜられているのにも関わらず、麺の一本もその鉄板から飛び出していない。
そんなあり得ない現象が起きている事くらいならかろうじて理解できる。
「クソったれが、だいたい黄泉川に番外個体のヤロウどもは何やってンだよ? なんでクソガキがこのレベル0や超電磁砲(レールガン)と一緒にいやがンだ?」
「迷子になってる所を見つけたのよ。てか超電磁砲じゃなくて御坂美琴!」
「テメェだって一方通行って呼んでンじゃねェか」
「アンタはそう呼ぶしかないじゃないのよ」
割と仲良さげに話すレベル5の第一位と第三位。
一度は本気で殺し合った事もある二人だが、ここまで関係が修繕されたのはほとんど奇跡に近いのかもしれない。
一度は本気で殺し合った事もある二人だが、ここまで関係が修繕されたのはほとんど奇跡に近いのかもしれない。
「そンで? テメェら延々とここで笑い続けるつもりか?」
「いや、とりあえず打ち止めをどこかに預けようと思ってな」
「あァ? ここにかァ?」
「えぇ、ダメなのーってミサカはミサカは必殺上目使いで聞いてみたり!」
「ほら可愛い妹の頼みなんだから何とかしなさいよ。第一位でしょ」
すると一方通行は小さく舌打ちをすると、首を回して教室の中の様子を眺める。
そんな様子を打ち止めがウルウルとした目で見つめており、上条は思わず可愛いと思ってしまう。
もちろんそれは、小さい子供に対するものなので、恋愛感情などまったくの皆無だ。
しかしやはりと言うべきか、そんな上条を見ていた美琴は、腕に抱きつく力を強めて不満を表していた。
そんな様子を打ち止めがウルウルとした目で見つめており、上条は思わず可愛いと思ってしまう。
もちろんそれは、小さい子供に対するものなので、恋愛感情などまったくの皆無だ。
しかしやはりと言うべきか、そんな上条を見ていた美琴は、腕に抱きつく力を強めて不満を表していた。
「はァ、しょうがねェなァ。まだ時間も時間で客もそこまで入ってねェから、中でアイツら待ってろよ」
「ホント!? って聞きながらもミサカはミサカは教室に突入してみたり!!」
「おいコラ、クソガキィィ!! 中では大人しくしてやがれェ!!」
まるで親子のような二人。
そんな二人の様子を見て自然と頬を緩める上条。
そして隣の美琴も同じような顔をしており、おそらく大切な妹がこうやって笑顔でいれることに満足しているのだろう。
そんな二人の様子を見て自然と頬を緩める上条。
そして隣の美琴も同じような顔をしており、おそらく大切な妹がこうやって笑顔でいれることに満足しているのだろう。
「ンでェ? そこのバカップルはいつまでいやがるんでしょうかァ?」
「なっ、バカって何よ! 普通のカップルよ!!」
「いやカップルでもねーから」
隙あらば既成事実として成立させようとする美琴に冷静にツッこむ上条。
美琴はむう、とむくれているが、上条が言ってることは正しく、言い返すことはできない。
しかしそのへんの事情を知らない一方通行は首をかしげるしかない。
ベッタリと上条の腕に抱きついて離れない美琴を見れば、どこからどう見ても二人は恋人同士だ。
美琴はむう、とむくれているが、上条が言ってることは正しく、言い返すことはできない。
しかしそのへんの事情を知らない一方通行は首をかしげるしかない。
ベッタリと上条の腕に抱きついて離れない美琴を見れば、どこからどう見ても二人は恋人同士だ。
「じゃあ、俺らは行くけど、その前に一方通行。ちょっと話いいか?
そんで悪いけど御坂は先に出ていてくれ。すぐに終わるから」
そんで悪いけど御坂は先に出ていてくれ。すぐに終わるから」
「? あァいいけどよォ」
「えー何男だけで……もしかしてヤラシイ話?
だから私なら当麻とだったらいつでもいいって……」
だから私なら当麻とだったらいつでもいいって……」
「ちげえから!! どこの発情期の男子中学生ですか!?」
美琴の言葉に全力でツッこむ上条。
その後美琴は少しの間不満そうにしていたが、とりあえずは上条の言うことを聞いてくれて、一旦別れる。
一方通行の方は一瞬見せた上条の真剣な表情に、何か事件の気配を感じ、大人しく上条に従う。
そして一旦ヤキソバを他の学生に任せると(有名校らしくその学生もレベル4の発火能力者(パイロキネシスト)と派手な能力者だったが)、二人は空いていた研究室に入った。
その後美琴は少しの間不満そうにしていたが、とりあえずは上条の言うことを聞いてくれて、一旦別れる。
一方通行の方は一瞬見せた上条の真剣な表情に、何か事件の気配を感じ、大人しく上条に従う。
そして一旦ヤキソバを他の学生に任せると(有名校らしくその学生もレベル4の発火能力者(パイロキネシスト)と派手な能力者だったが)、二人は空いていた研究室に入った。
「あんまり御坂を一人にしておく訳にはいかねえから、手早く済ますな。
土御門から魔術師が侵入した……ってのは聞いてるか?」
土御門から魔術師が侵入した……ってのは聞いてるか?」
「あァ、だがどうせ狙いはオマエの方なンだろ?
オマエの関係者って事で俺も狙われるかもしれねェってのも聞いたが、その時は蹴散らすだけだ」
オマエの関係者って事で俺も狙われるかもしれねェってのも聞いたが、その時は蹴散らすだけだ」
一方通行は首筋にあるチョーカーに手をかけると、堂々とした表情でそう告げる。
どうやらバッテリー稼働時間は変わっていないようなのだが、充電機能が上がったらしい。
それにより、先程なんかは充電しながら能力を使用しており、バッテリー自体はまったく消費していない。
そうでなければ、学園都市第一位という立場を考える限り、あんな風に能力の無駄遣いなど出来るわけがないのだ。
どうやらバッテリー稼働時間は変わっていないようなのだが、充電機能が上がったらしい。
それにより、先程なんかは充電しながら能力を使用しており、バッテリー自体はまったく消費していない。
そうでなければ、学園都市第一位という立場を考える限り、あんな風に能力の無駄遣いなど出来るわけがないのだ。
「はは、お前は心配してねーって。それより打ち止めの事だよ」
「…………アイツが魔術なんてもんに狙われるのか?」
「詳しくは知らねえけど、科学天使は打ち止めがカギなんだろ?
そんで向こうの奴等の中にはあれを魔術世界への冒涜だと思う奴もいる」
そんで向こうの奴等の中にはあれを魔術世界への冒涜だと思う奴もいる」
「………………」
もちろん一方通行は打ち止めを放っておく事などしない。
しかし今回は自分が狙われる可能性の方が高いということで、打ち止めを巻き込まないように離れていることにしていた。
そしてその代わりに打ち止めの側には番外個体を置いたのだが……。
しかし今回は自分が狙われる可能性の方が高いということで、打ち止めを巻き込まないように離れていることにしていた。
そしてその代わりに打ち止めの側には番外個体を置いたのだが……。
「魔術とやりあうなら、それを知っている奴の方が何倍もいい。
だから一方通行、お前は打ち止めの近くに居た方がいいと思う。念のためな」
だから一方通行、お前は打ち止めの近くに居た方がいいと思う。念のためな」
「…………分かった」
一方通行が側につくことで、打ち止めは危険にさらされるかもしれない。
上条もそれくらいは分かっているだろう。
しかしそれでも上条がそう言ったのは今の一方通行なら、絶対に守りきれると思ったからだ。
そして一方通行自身も出来ないわけがないと思っていた。
大切なもの一つも守れないで、何が学園都市最強だろうか。
上条もそれくらいは分かっているだろう。
しかしそれでも上条がそう言ったのは今の一方通行なら、絶対に守りきれると思ったからだ。
そして一方通行自身も出来ないわけがないと思っていた。
大切なもの一つも守れないで、何が学園都市最強だろうか。
「ギャハハハハハハハハハ!! 死ぬ!! ミサカ死ぬ!!」
「いやいや、そっちの方が高校生らしくていいじゃん?」
「………………」
ようやく現れた黄泉川愛穂と番外個体の二人だったが、すっかり学園祭モードの一方通行に対する反応はだいぶ違っていた。
もちろん番外個体の方は見た瞬間大爆笑。あまりにも笑いすぎて軽く呼吸困難になっている。
しかし黄泉川の方はどこか母親のような微笑を見せてウンウンと頷いている。
当の本人、一方通行からすればどちらも不愉快極まりないのは同じなのだが。
もちろん番外個体の方は見た瞬間大爆笑。あまりにも笑いすぎて軽く呼吸困難になっている。
しかし黄泉川の方はどこか母親のような微笑を見せてウンウンと頷いている。
当の本人、一方通行からすればどちらも不愉快極まりないのは同じなのだが。
「ハァハァ……やっと治まってきたよ……。
しっかしミサカもお姉様に会いたかったなー。さっきまでいたんでしょ?」
しっかしミサカもお姉様に会いたかったなー。さっきまでいたんでしょ?」
「残念でしたーってミサカはミサカは勝利のピースサインを見せつけてみたり!」
「まぁ一端覧祭中だし、歩いてればその内会うんじゃん? てか番外個体のお姉さんって事は大学生くらいなわけ?」
「いや、中学生」
「はぁ?」
「どォでもいい」
そんな三人の会話に割り込んだのは一方通行。
別に番外個体がお姉様探しをするのを止める気はないが、その前に言わなければいけないことがある。
別に番外個体がお姉様探しをするのを止める気はないが、その前に言わなければいけないことがある。
「別にテメェらがどこ歩こうが構わねェが、そこのクソガキは置いてけ。ここの呼び込みを手伝ってもらう」
「………………」
そんな一方通行の言葉に三人の反応はそれぞれ違っていた。
打ち止めはその言葉を聞いた瞬間、飛び上がらんばかりに目を輝かせ、黄泉川はどこか呆れたように溜め息をつく。
そして番外個体はどうやらまた笑いが込みあげてきたらしい。
打ち止めはその言葉を聞いた瞬間、飛び上がらんばかりに目を輝かせ、黄泉川はどこか呆れたように溜め息をつく。
そして番外個体はどうやらまた笑いが込みあげてきたらしい。
「ギャハハハ!!! やっぱり第一位は小さいのが大好きなんじゃない!!
でもこんなのに引き込まれる客なんて、あなたみたいなロリコンしかいないって!!」
でもこんなのに引き込まれる客なんて、あなたみたいなロリコンしかいないって!!」
「むっ!? 何か聞き捨てならぬ言葉を耳にしたかもってミサカはミサカは歯を剥き出してみる!!!」
とりあえずこんな感じの反応は予想できていたので、両方共無視する一方通行。
そして早く連れていけと言わんばかりに黄泉川の方を見るが、彼女は彼女で呆れているような顔のままだ。
そして早く連れていけと言わんばかりに黄泉川の方を見るが、彼女は彼女で呆れているような顔のままだ。
「あのな一方通行、さすがにちょっと過保護じゃん? ていうか私も一応自分のクラスがあるし、いつまでも見ていられないじゃん」
「えーミサカは一人でも大丈夫だよ? どっかのガキンチョじゃあるまいし」
「テメェを一人にしたら何やらかすか分かンねェだろォが。大体芳川の奴は何してやがる」
一方通行は番外個体の言葉に再び怒り狂う打ち止めを片手で抑えながら、黄泉川に尋ねる。
彼女のマンションの居候には一方通行達以外に一人、元研究員の幼なじみがいたはずだ。
彼女のマンションの居候には一方通行達以外に一人、元研究員の幼なじみがいたはずだ。
「桔梗は太陽が苦手だから家で待機」
「ヴァンパイアか。早く引きずり出せ」
一方通行はそれだけ言うともう話は終わりだと言わんばかりにシッシッと手を振る。
それを受けた黄泉川は再び溜め息をつくと、番外個体に目で合図をしてここから去ろうとする。
そして打ち止めはブンブンと手を振って二人を送って、やっと話がまとまったと一方通行が一息ついたとき、
それを受けた黄泉川は再び溜め息をつくと、番外個体に目で合図をしてここから去ろうとする。
そして打ち止めはブンブンと手を振って二人を送って、やっと話がまとまったと一方通行が一息ついたとき、
「それじゃ、打ち止めは任せたじゃん、親父さん」
「任せたよ、ア・ナ・タ」
そんな言葉が聞こえてきた。
黄泉川の言葉はそこまで問題はなかったはずだ、しかしその後の番外個体の言葉……それがまずかった。
その瞬間、隠れて様子を伺っていた同じクラスの生徒たちがヒソヒソと何かを話し始めるのが分かる。
そしてその目線は廊下を歩いて行く番外個体の後ろ姿、その姿をそのまま小さくした感じの呼び込み役の少女、最後に一方通行と順番に移っていく。
そこで一方通行の耳に、クラスメイトから発せられた確かな言葉が一つ入ってきた。
黄泉川の言葉はそこまで問題はなかったはずだ、しかしその後の番外個体の言葉……それがまずかった。
その瞬間、隠れて様子を伺っていた同じクラスの生徒たちがヒソヒソと何かを話し始めるのが分かる。
そしてその目線は廊下を歩いて行く番外個体の後ろ姿、その姿をそのまま小さくした感じの呼び込み役の少女、最後に一方通行と順番に移っていく。
そこで一方通行の耳に、クラスメイトから発せられた確かな言葉が一つ入ってきた。
『子持ちレベル5』……と。
(あのヤロォ……!!)
ギリギリと歯を食いしばる子持ちレベル5、一方通行。
しかしいつまでもその怨念を静かに撒き散らしていることもできなかった。
一応まだ少し昼飯時には時間があるのだが、小腹がすいた客がチラホラやってき始めたからだ。
しかしいつまでもその怨念を静かに撒き散らしていることもできなかった。
一応まだ少し昼飯時には時間があるのだが、小腹がすいた客がチラホラやってき始めたからだ。
「あ、そこのお兄さん、ちょっと寄っていかない? 楽しい事しましょー? ってミサカはミサカはヤラシイ呼び込みをしてみる!」
「おっ、可愛い子だぜい! じゃあヤキソバ一つちょうだいにゃー!」
「ヘイ毎度ォォおおおお!! …………あ?」
一方通行が威勢良くそう叫びながら客の方を向くが、その体勢で完全に固まる。
そこにいたのは、かつてグループという暗部組織で血みどろの仕事を共にした男、土御門元春だった。
そこにいたのは、かつてグループという暗部組織で血みどろの仕事を共にした男、土御門元春だった。
「……楽しそうだな、一方通行」
「………………」
長点上機に数ある教室の一つ。
そこでは学園都市最強と天才陰陽師がなんとも微妙な雰囲気で佇んでいるという妙な空間が広がっている。
そんな中、打ち止めの明るい客寄せの声だけが空しく響いていた。
そこでは学園都市最強と天才陰陽師がなんとも微妙な雰囲気で佇んでいるという妙な空間が広がっている。
そんな中、打ち止めの明るい客寄せの声だけが空しく響いていた。
一方上条と美琴のラブラブカップル(美琴談)は再び第七学区に戻っていた。
時刻はもう正午になるところで、そろそろご飯でもという事になっている。
そしてどうやら美琴は予め昼食の場所は決めていたらしく、何も考えていなかった上条は黙って美琴の言う通りに歩いて行く。
上条としては美琴が先に歩いてくれると助かるのだが、彼女は上条の腕に抱きついているという状態を崩したくないらしい。
時刻はもう正午になるところで、そろそろご飯でもという事になっている。
そしてどうやら美琴は予め昼食の場所は決めていたらしく、何も考えていなかった上条は黙って美琴の言う通りに歩いて行く。
上条としては美琴が先に歩いてくれると助かるのだが、彼女は上条の腕に抱きついているという状態を崩したくないらしい。
行き先をまったく教えられていない上条は、もしかしたらこのまま学舎の園なんかに連れ込まれて、ありえない金額の昼食をとる事になるんじゃないだろうかと少し不安になってくる。
もちろん正直に厳しいと言えば、美琴は上条の分まで払ってくれるだろう。レベル0とレベル5の奨学金は文字通り天と地程違う。
しかし高校生の男が中学生の女の子に奢ってもらうなんていうのは、どう考えてもみっともない光景であり、なけなしのプライドぐらいは持っている上条としては何としても避けたい。
もちろん正直に厳しいと言えば、美琴は上条の分まで払ってくれるだろう。レベル0とレベル5の奨学金は文字通り天と地程違う。
しかし高校生の男が中学生の女の子に奢ってもらうなんていうのは、どう考えてもみっともない光景であり、なけなしのプライドぐらいは持っている上条としては何としても避けたい。
そんな時、美琴の「ここよ」という言葉と共に二人は足を止める。
学舎の園の門を潜る前に止まってくれて内心かなりほっとする上条は、とりあえず目の前にあるごく普通の学校を見上げ、そして校門近くに書いてある学校名に目をやる。
学舎の園の門を潜る前に止まってくれて内心かなりほっとする上条は、とりあえず目の前にあるごく普通の学校を見上げ、そして校門近くに書いてある学校名に目をやる。
「柵川中学……か」
「うん、友達がいるの」
そんな事を話しながら校門を潜る二人。
どうやら特に有名校といった感じではないらしく、ごく普通の中学校だ。
こんな普通の学校に通う子と常盤台のエースがどう知り合ったのか少し気になる上条だったが、あんまりそういう事を聞くのは良くないかなと思い、何も言わないことにする上条。
どんな学校に通っていて、どんなに強い力があっても、美琴は一人の中学生。どんな子と仲良くしようが勝手なはずだからである。
それこそこんなレベル0の高校生と一緒に一端覧祭をまわっているくらいなのだから。
どうやら特に有名校といった感じではないらしく、ごく普通の中学校だ。
こんな普通の学校に通う子と常盤台のエースがどう知り合ったのか少し気になる上条だったが、あんまりそういう事を聞くのは良くないかなと思い、何も言わないことにする上条。
どんな学校に通っていて、どんなに強い力があっても、美琴は一人の中学生。どんな子と仲良くしようが勝手なはずだからである。
それこそこんなレベル0の高校生と一緒に一端覧祭をまわっているくらいなのだから。
そんな事を考えていた上条はふと美琴がじっとこちらを見ていることに気付く。
その顔は不満げ……と思いきやうっすらと紅潮していて、緩んでいた。
その顔は不満げ……と思いきやうっすらと紅潮していて、緩んでいた。
「えーと、悪い御坂。ちょっと考え事してた」
「ううん、真剣な当麻の顔、カッコイイよ」
真っ直ぐ上条を見つめ、ニッコリと言う美琴。
そんな美琴に上条は一瞬思わずドキッとしてしまう。
さすがに、十人に聞けば十人が美少女だと判断するような子にそんな事を言われれば、誰だって同じような反応をするだろう。
そんな美琴に上条は一瞬思わずドキッとしてしまう。
さすがに、十人に聞けば十人が美少女だと判断するような子にそんな事を言われれば、誰だって同じような反応をするだろう。
「そ、その友達の教室ってどこなんだ?」
「え? うーんと、もうそろそろのはずだけど……あそこかな?」
動揺を隠すために慌てて尋ねる上条に、美琴はある一つの教室を指差す。
そこはどうやらカフェに近いものらしく、中は結構繁盛しているようで、多くの学生たちで賑わっている。
そしてカウンター代わりになっている廊下側にある教室の窓のところには、可愛らしいピンクのエプロンを付けた黒髪ロングの活発そうな女の子が立っていた。
そこはどうやらカフェに近いものらしく、中は結構繁盛しているようで、多くの学生たちで賑わっている。
そしてカウンター代わりになっている廊下側にある教室の窓のところには、可愛らしいピンクのエプロンを付けた黒髪ロングの活発そうな女の子が立っていた。
美琴はその女の子を見つけると、「あ!」と声を上げて駆け寄っていく。しかし上条の腕からは離れないので、必然的に上条は引きずられるような形になる。
どうやら彼女が美琴の言っていた友達らしい。
どうやら彼女が美琴の言っていた友達らしい。
「おいっすー、佐天さん! エプロン似合ってるわよ!!」
「御坂さん! ありがとうございますー! あ、ひょっとしてそちらのお方が……」
そんな感じに軽く挨拶をする二人。
そして佐天は美琴の隣にいる上条を見ると同時にニヤニヤし始める。
上条はそんな佐天の反応にそこはかとなく嫌な予感がし、美琴に何か言ったのか尋ねようとする。
しかしその前に美琴が先に友人の質問に答える。
そして佐天は美琴の隣にいる上条を見ると同時にニヤニヤし始める。
上条はそんな佐天の反応にそこはかとなく嫌な予感がし、美琴に何か言ったのか尋ねようとする。
しかしその前に美琴が先に友人の質問に答える。
「うん、前から言ってある自慢の彼氏でっす!」
「ちょっと待てえええ!!」
自信満々に言い放つ美琴に、やはり全力でツッこむ上条。
そんな上条にむー! と可愛らしく怒りながら、抱きつく力を強める美琴。若干ミシミシという音を上げており地味に痛い。
しかし佐天はその上条の言葉を受けてもまだニヤニヤしている。
そんな上条にむー! と可愛らしく怒りながら、抱きつく力を強める美琴。若干ミシミシという音を上げており地味に痛い。
しかし佐天はその上条の言葉を受けてもまだニヤニヤしている。
「いやいや照れなくていいですよー! 私、御坂さんの友達やらせてもらっている佐天涙子っていいます!」
「あ、俺は上条当麻……じゃなくて! だから俺と御坂は別に……!」
そんな事を言って抵抗を試みる上条だったが、相変わらず佐天は「いやいやいや」とか言いながらニヤニヤとした表情を崩さない。
これは典型的な話を聞かない子だ……などとガックリする上条。
そんな上条を尻目に急に美琴がキョロキョロと辺りを見回しながら口を開く。
これは典型的な話を聞かない子だ……などとガックリする上条。
そんな上条を尻目に急に美琴がキョロキョロと辺りを見回しながら口を開く。
「あれ、初春さんと春上さんは?」
「あぁ初春は風紀委員(ジャッジメント)の警邏中で、春上さんは例の子達とまわっています」
例の子達という言葉を聞いた美琴は優しい笑顔を浮かべ「そっか」とだけ答える。
そんな美琴の気持ちが分かるのか、佐天も同じような笑顔を浮かべ、黙って美琴を見ていた。
一方何の事だか分からない上条は首を傾げるしかない。
そんな美琴の気持ちが分かるのか、佐天も同じような笑顔を浮かべ、黙って美琴を見ていた。
一方何の事だか分からない上条は首を傾げるしかない。
「……それでそれで! まずは出会いとかから聞いちゃいましょうか!? あれ、ていうか上条さん、どっかで会いませんでしたっけ?」
上条が油断した瞬間、佐天は急にバッと顔を輝かせると、一気に話しまくる。
そんな彼女に思わず押されてしまう上条だったが、美琴は彼女がこういう子である事はよく分かっているらしく、ただ苦笑いを浮かべるだけだ。
それでも美琴の助けは期待できないと思った上条は、さてこの暴走お嬢さんはどうしたらいいものかと悩み始める。
しかしその時、当の佐天はふと自分の格好に目をやると、しまったとばかりに手を額にあてる。
そんな彼女に思わず押されてしまう上条だったが、美琴は彼女がこういう子である事はよく分かっているらしく、ただ苦笑いを浮かべるだけだ。
それでも美琴の助けは期待できないと思った上条は、さてこの暴走お嬢さんはどうしたらいいものかと悩み始める。
しかしその時、当の佐天はふと自分の格好に目をやると、しまったとばかりに手を額にあてる。
「あちゃー、すいません私まだシフト中でした。もうすぐ交代の時間なんで、中で待っててもらえますか?」
それを聞いて内心ほっとする上条。
そしてサンドイッチに紅茶と、適当なものを購入すると、二人は佐天に一言労いの言葉をかけると教室に入る。
結構な数のテーブルがもう既に埋まっていたが、幸いまだ満席という事もなく、空いてるテーブルを見つけ、腰掛ける。
それと同時、上条は待ちきれないとばかりに勢い良くサンドイッチにかぶりついた。
そしてサンドイッチに紅茶と、適当なものを購入すると、二人は佐天に一言労いの言葉をかけると教室に入る。
結構な数のテーブルがもう既に埋まっていたが、幸いまだ満席という事もなく、空いてるテーブルを見つけ、腰掛ける。
それと同時、上条は待ちきれないとばかりに勢い良くサンドイッチにかぶりついた。
「な、アンタそんなお腹減ってたわけ!?」
そんな感じに目を丸くして驚く美琴だったが、別に上条は腹ペコキャラではない。
もしそうだったら暴食シスターの分も合わせて、上条家の家計はとっくに崩壊しているはずだ。
それでも珍しく上条がこうもがっつく理由。それは佐天に関係することだった。
簡単に言えば、彼女が来て根掘り葉掘り聞かれる前に食事を済ませ、ここを後にしたい。そういう事だった。
もしそうだったら暴食シスターの分も合わせて、上条家の家計はとっくに崩壊しているはずだ。
それでも珍しく上条がこうもがっつく理由。それは佐天に関係することだった。
簡単に言えば、彼女が来て根掘り葉掘り聞かれる前に食事を済ませ、ここを後にしたい。そういう事だった。
それを聞いた美琴は少し不機嫌そうな顔を浮かべる。
おそらく美琴の中には、佐天に二人はラブラブっぷりを見せつけて、公認カップルという事にしようとでも思っていたのだろう。
しかし苦し紛れに放った上条の「デ、デートなんだから二人で楽しもうじゃないですか!」という言葉に「ふにゃー」とノックアウトされる美琴だった。
おそらく美琴の中には、佐天に二人はラブラブっぷりを見せつけて、公認カップルという事にしようとでも思っていたのだろう。
しかし苦し紛れに放った上条の「デ、デートなんだから二人で楽しもうじゃないですか!」という言葉に「ふにゃー」とノックアウトされる美琴だった。
「いやしかし、あなたがまだそれを持っていたとは驚きです」
「……ふん」
同じく柵川中学のとある廊下。
アステカの魔術師、エツァリとショチトルはそんな事を話しながら堂々と歩いていた。
こう言うと奇妙な光景なのだが、もちろん二人は目立たない様に上手に溶け込んでいる。
現在エツァリの方は相変わらず海原光貴に化けており、ショチトルの方は素顔なのだが、服は独特の民族衣装ではなく、赤いセーラー服を着ていた。
そのセーラー服とはショチトルが暗部組織『メンバー』の一員として学園都市に潜んでいた時に着ていたものだった。
アステカの魔術師、エツァリとショチトルはそんな事を話しながら堂々と歩いていた。
こう言うと奇妙な光景なのだが、もちろん二人は目立たない様に上手に溶け込んでいる。
現在エツァリの方は相変わらず海原光貴に化けており、ショチトルの方は素顔なのだが、服は独特の民族衣装ではなく、赤いセーラー服を着ていた。
そのセーラー服とはショチトルが暗部組織『メンバー』の一員として学園都市に潜んでいた時に着ていたものだった。
「だがまぁ見事な程平和そのものだな。何が太陽の蛇(シウコアトル)に反応アリだ」
「ですから念の為です。おや、あそこのカフェは良さそうですね。行ってみましょう」
「おいコラ」
不満げに海原を睨むショチトルだったが、当の本人は笑顔を崩さずに近くにあった教室に近づいていく。
朝からこんな風にはぐらかされて、結局普通にこのお祭りをまわっているはめになっている。
ひょっとしたら太陽の蛇云々なんていうものは嘘っぱちなのでは? とも疑ってみるが、どうも最初にそれを話した時の海原の表情はそれでは流せないものだった。
そして心の何処かでどこかこの祭りを楽しんでいる自分、そんなものもショチトルをイライラさせる一因でもあった。
朝からこんな風にはぐらかされて、結局普通にこのお祭りをまわっているはめになっている。
ひょっとしたら太陽の蛇云々なんていうものは嘘っぱちなのでは? とも疑ってみるが、どうも最初にそれを話した時の海原の表情はそれでは流せないものだった。
そして心の何処かでどこかこの祭りを楽しんでいる自分、そんなものもショチトルをイライラさせる一因でもあった。
「大体、太陽の蛇を起動するのにだって子機が必要だろう。あれは全長100メートルを超す。それをどうやって……って聞いているのか!?」
「えぇ、そのチョコラータ・コン・パンナというものを二つ。それから……」
ショチトルの真面目な話を自然にスルーする海原。
そこでビキィ! とショチトルのこめかみから衛生上大変よろしくないような音が響く。
そしてここが学校であることも忘れて、思わず懐に隠し持つ黒曜石のナイフ、トラウィスカルパンテクウトリの槍に手を伸ばした。
屋内なので分解魔術は使えないだろうが、そのままナイフとして使うという手もある。
そんな危ない考えを浮かべてユラーと静かに海原に近づくショチトルだったが、
そこでビキィ! とショチトルのこめかみから衛生上大変よろしくないような音が響く。
そしてここが学校であることも忘れて、思わず懐に隠し持つ黒曜石のナイフ、トラウィスカルパンテクウトリの槍に手を伸ばした。
屋内なので分解魔術は使えないだろうが、そのままナイフとして使うという手もある。
そんな危ない考えを浮かべてユラーと静かに海原に近づくショチトルだったが、
「あれ、まさかそこにいるのって……ショチトル!?」
そんなひどく驚いた声で自分の名を呼ぶ声が聞こえたので、思わずそちらを見る。そして固まった。
なんとそこには学芸都市で出会った『大馬鹿野郎』がいた。自分と同じく相当驚いた表情をしている。
どうやら売り子をやっているらしく、先程から海原に対応していたのもこの少女だったようだ。
なんとそこには学芸都市で出会った『大馬鹿野郎』がいた。自分と同じく相当驚いた表情をしている。
どうやら売り子をやっているらしく、先程から海原に対応していたのもこの少女だったようだ。
「なっ、お前は……!!」
「やっぱりショチトルだ!! 元気だった!? あの後心配したんだよ!?」
「おや、あなたの知り合いでしたか」
学園都市のショチトルの知り合いというのは珍しいのか、海原は意外そうな声をあげる。
しかしショチトルの方にそんな海原に構っている余裕はなかった。
おそらくこの少女の事だ。これからあの後の事を根掘り葉掘り聞いてくるに決まっている。
大した事なかった、などと嘘をつくこともできるが、それでもこの少女は追及してくるだろう。
それならばここから逃げ出すのがいいのだが、以前のように勝手に自分の事を調べまくってトラブルに突っ込まれる可能性もある。
いっそ記憶が飛ぶくらい派手に気絶でもさせてやるかなどと、物騒な事を考え始めるショチトルだったが、当の佐天は教室の中に向かって何かを叫んでいた。
しかしショチトルの方にそんな海原に構っている余裕はなかった。
おそらくこの少女の事だ。これからあの後の事を根掘り葉掘り聞いてくるに決まっている。
大した事なかった、などと嘘をつくこともできるが、それでもこの少女は追及してくるだろう。
それならばここから逃げ出すのがいいのだが、以前のように勝手に自分の事を調べまくってトラブルに突っ込まれる可能性もある。
いっそ記憶が飛ぶくらい派手に気絶でもさせてやるかなどと、物騒な事を考え始めるショチトルだったが、当の佐天は教室の中に向かって何かを叫んでいた。
「御坂さん!!! ショチトル……ショチトルがいますよ!!!」
その言葉に反応したのは海原だった。
突然ビクゥ! と体全体を震わせると、おどおどと目を泳がせ辺りを警戒している。
そんな明らかに挙動不審な海原の様子を見たショチトルは、一瞬佐天の事で悩んでいたことを忘れ、目を細めて海原をじっと睨む。
突然ビクゥ! と体全体を震わせると、おどおどと目を泳がせ辺りを警戒している。
そんな明らかに挙動不審な海原の様子を見たショチトルは、一瞬佐天の事で悩んでいたことを忘れ、目を細めて海原をじっと睨む。
「……ほう。その『ミサカ』という奴が貴様が想いを寄せる女子中学生……ということでいいんだな?」
「あ、あははははは。そうだ、次は長点上機学園にでも行ってみましょう! あそこは学園都市最高峰の学校でして……」
ミサカという名前にどこか聞き覚えを感じながら、ジト目で尋ねるショチトル。
それに対し、海原はそんな事を言いながら慌ててこの場を去ろうとする。
しかしそれをショチトルが引き留める前に、教室から一つの影が飛び出してきた。
その正体は御坂美琴。海原が想いを寄せる女子中学生、その人だった。
それに対し、海原はそんな事を言いながら慌ててこの場を去ろうとする。
しかしそれをショチトルが引き留める前に、教室から一つの影が飛び出してきた。
その正体は御坂美琴。海原が想いを寄せる女子中学生、その人だった。
「ショチトル……!! それに、う、海原さん!?」
「おいエツァリ、まさかとは思うが、コイツが『ミサカ』か?」
ショチトルは顔を引きつらせながら、かつて自分の前に立ち塞がった敵を指して尋ねる。
一方美琴はショチトルと海原を交互に見ながら、目を丸くしていた。
一方美琴はショチトルと海原を交互に見ながら、目を丸くしていた。
……そして海原はというと、ただ呆然と立ち尽くしながら心のなかで、とある少年の良く言うお決まりの『あの台詞』を呟いていた。
こうして意外な所で交差した科学と魔術。
それは平和なこの学園都市にどのような影響を与えるのか、今はまだ何も分からない。
そんな中、科学と魔術の間を歩いてきた少年、上条当麻はひたすら目の前のサンドイッチと一人格闘していた。
それは平和なこの学園都市にどのような影響を与えるのか、今はまだ何も分からない。
そんな中、科学と魔術の間を歩いてきた少年、上条当麻はひたすら目の前のサンドイッチと一人格闘していた。