とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ 強まる疑惑

○○○疑惑」の続きのような違うような感じです。


 とある平日の午後。上条はテストが終わった直後だというのに清々しい顔をして歩いていた。
 それを見て、傍にいる二人は敢えて上条に聞かせるようにわざとらしく内緒話なんかしている。

「上やんが何かおかしいにゃー」
「もしかして上やんも目覚めたんとちゃう? 小萌先生の補習を受ける喜びに」
「それは間違いなくお前だけぜよ」
「えー、それじゃあ、採点する度に泣きそうになる小萌先生の顔を想像してるんとちゃう?」
「それも絶対にお前だけぜよ。つーかお前そんな事想像してたのかにゃー……」
「さっきから聞こえてるんだよ!」

 好き勝手言ってくれる二人(主に青髪)に上条もいい加減吠えた。
 吠えられた方は堪えた様子は一切なく、あまつさえ上条を挟み込み両肩に腕を乗せてきた。

「で、上やん。一体どうしたんですたい? デルタフォースの一角がテスト明けにそんな晴れやかな顔ってのはありえないぜよ」
「やっぱり目覚めたんやろ? 小萌先生が困ったり泣きそうになってる顔を想像してんねやろ?」
「だぁー! うるさい! つーか青髪はもう喋んな! 相変わらずだがやっぱりキモい!」

 土御門と青髪を振りほどき上条が再び吠える。
 しかし青ピはへこたれた様子は一切ない。もう予定調和と化しているこのやり取りに「あっはははー」と笑っていた。
 と、そこに後ろから姫神と吹寄が声を掛けてきた。
 男子寮と女子寮が同じ方向にあるので珍しい事でもなかった。

「確かに。上条くんがテスト後にそんな顔をしているのは。おかしい。なにしたの?」
「上条、貴様まさかカンニングなんてしてないでしょうね?」
「姫神に吹寄まで!? 俺は一体どんな目で見られてるの!?」

 ちょっぴり物悲しい叫びが少し入った上条の問いかけにその場の一同が口を揃えて一言を言った。

『馬鹿』
「まさかの唱和に上条さんもびっくりだよ! そしてテメェらには言われたくねぇ!」

 ズビシッ! と土御門と青髪を指さす。
 けれどやはり二人は笑い飛ばすだけ。この二人に突っ込みは意味を成さない気がしてならない。
 ほっといたらデルタフォースのどつき漫才が始まりそうだ。その前に吹寄が改めて聞きなおした。

「で、実際はどうなの?」
「俺だってたまには勉強するんだよ」
「嘘。それは無い」
「そんなきっぱりと!?」

 吹寄の隣ではうんうんと頷く姫神。その傍で土御門と青髪が頷いているのがとっても納得いかない。
 本当なんだけどなぁ……、と頭をかく上条の目に一人の少女の姿が目に入った。
 これはラッキー。そう思い上条は前を歩く少女へ大声で呼びかけた。

「おーい! ビリビリ姉ちゃーん!」

 しかしそれに返るは声に間髪いれず放たれた電撃。
 バチィ! と上条の右腕に雷撃が突き刺さる。突然の事態に驚く事も忘れ、ポカンと口を開ける上条のクラスメイト達。
 咄嗟に右腕で受け止めはしたものの、上条の心臓の鼓動は跳ね上がっている。

「ねぇ、ガキンチョ? アンタは一体何回言えばわかるのかしら?」

 そこら辺の不良なんて纏う雰囲気だけで圧倒しそうな少女が静かに歩み寄ってくる。
 均整の採れた顔は、こめかみに青筋が浮かび目も不機嫌そうに歪んでいた。
 上条も彼女の方へ歩み寄り、近付くなりいきなり怒る様な口調で叫んだ。

「だからっていきなり電撃撃つなって! 心臓に悪い!」
「アンタがビリビリって呼ぶからでしょ。私の場合はそう呼ばれて評判が悪くなりそうよ」
「ビリビリしてんだからビリビリ姉ちゃって痛ったぁ!?」

 上条の言葉をさえぎるように、美琴の拳骨が正確に少年の頭のてっぺんを捉えた。
 頭を抑え涙目で美琴を見上げる上条の横で、クラスメイト達がコソコソと何か話していた。

「(あの人が最近上条と仲が良いって言う女の人?)」
「(あの制服。確か長点上機)」
「(間違いないで。ボクの制服ノートにも載っとるからね)」
「(お前そんなの持ってるのかにゃー。さすがに引くぜよ)」
「(つっちーだってメイドさんノート持っとるやないの)」
「(脱線するから喋るなバカども)」
「(もしかして。フラグ建て済み?)」

 姫神の言葉で全員チラッと上条たちの方へ視線をやる。
 彼らの視線の先には、上条の涙目に耐えきれなくなった美琴が、顔を仄かに赤くして「あーはいはい、悪かったわねー。痛いの痛いの飛んでけー」「子供扱いするな!」と、若干緊張した素振りで上条の頭を撫でていた。
 これを見て一同は思った。間違いない。建築済みだ。

「で、今日はどうしたの?」
「お、そうだそうだ! ちょっとこっちに来てくれよ」
「ちょ!? い、いきなり引っ張らないの!」

 突然手を掴まれ思わずドキッとしながら上条に引っ張られる。
 その先ではこちらをニヤニヤと見上げるガキンチョのクラスメイトらしき中学生たち。
 初見にして何かを見抜かれた気がして「ぐっ……」と表情が詰まる。

(一体何なのよ……。こちとらショタコン疑惑に混乱してるってのに……)

 先日、自分で見つけてしまった見つけなくていい性癖に大いに混乱しているところにこの表情と視線だ。
 なんだか外堀を埋められている気分さえする。

「この姉ちゃんが俺に勉強教えてくれたんだよ。なっ、姉ちゃん」
「え、ええ……」

 こっちはこっちでいきなり訳のわからない事を言うし。
 イマイチどころか全く話しについて行けない美琴。

「これで信じてくれるだろ?」

 ふふん! と胸を張る上条の言葉、と言うより話しの中身は既にクラスメイト達には存在していない。
 そこで、やはりまだまだ子供な中学生たちは年上をからかってやろうと動き出した。

「それより上条」

 吹寄が右から上条に迫り、

「この人は。だれ?」

 同じように姫神が反対から上条に迫る。
 両手に花状態だ。
 何の反応も示さない上条の代わりに、美琴の表情が明らかに変わった。
 こめかみには青筋が浮かび、口角が僅かだが引きつっていた。

(なんか面白くない! すっごいムカつく!)

 ニヤニヤとこちらを見上げてくる悪ガキどものせいでさらにムカついていく。
 その雰囲気を素早く察知した上条は「どうしたんだ姉ちゃん。何かあったのか?」と、左右の二人を払い見上げながら聞いてきた。

「ちょっとこっち来なさい」
「お、おう……?」

 いきなりガシッ! と腕を掴まれそのまま引きずられていく上条の背を級友たちは、それはそれはとても爽やかな笑みを浮かべて送り出していた。

(って、ガキンチョ引っ張ってどうすんのよ私……)

 その場の勢いでガキンチョを引きずってしまったが、勢いだけなのでどうすればいいのか本人も悩む。
 自分から掴んでおいて、上条の手を掴んでいる事にドキドキしている自分に美琴は先日抱いた疑惑をさらに強く抱く。

(やっぱり、私ってショタコンなの……?)


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