とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

17-29

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匿名ユーザー

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 その頃、第一五学区にはパスワークの練習をしている真夜と真昼が到着していた。
 実はこの2人、友愛高校からここまで一度もサッカーボールを落とさず、一般人に触れることなく辿り着いたのだ。

「この調子なら本番も大丈夫かな。真昼さん、疲れたなら休んでもいいけどどうする?」
「へーきへーき♪ この練習も結構楽しいし、それより何より真夜と一緒だからな。俺としてはもっとこうしていたいぜ」

 屈託の無い真昼の笑顔を心から綺麗と思った真夜、内心でドキドキしながらも彼女の気持ちを汲み取り休憩を取り止めようとしたのだが、

「ゴメン真昼さん、ちょっと中断させて」
「ああ、それは別にいいんだけどよ、何かあったのか?」

 目に飛び込んできたものが気になってサッカーボールを手で持った真夜が練習を中断させた。
 気になった真昼が理由を尋ねると、真夜は言葉の代わりに指であるものを指した。

「ありゃあ浜面と服部じゃねーか。何キョロキョロしてんだ? それにあいつ等の少し前に居るのって」
「姫神さん、だよね。3人ともバスケ組だからきっと練習だと思うけど」
「とりあえず浜面がキョドって見えっから大人しくさせるか。真夜、ボール」

 井ノ原ツインズの視線の先に居たのは姫神の存在感を感じ取る特訓中の浜面と半蔵、その2人のやや前方にいる姫神だった。
 しかし事情を知らない真昼は浜面の必死で探す姿が不審者に見えてしまい、このままだと通報されかねないと思って浜面の頭目掛けてシュートした。

「ぐおっ! だ、誰だよ! 俺の頭に攻撃しやがって……い、井ノ原姉? それに井ノ原弟も。何やってんだ? ここで」
「俺と真夜はパスの練習だ。ここならもっとコンビネーションが鍛えられっからな♪ つーかお前らこそ何やってんだよ?」
「練習って言えば練習だな。俺と浜面は姫神の存在感を感じ取る特訓をしてんだよ。あいつの特性を活かす為にな。ちなみについさっき制限時間の一時間切った」
「マジかよ! だーっちくしょーっ! 俺と半蔵、2人がかりでも見つかんねーってどんだけ影薄いんだよ姫神のやつ!」

 浜面と半蔵は結局一時間以内に姫神を見つけ出すことは叶わなかった。
 悔しがってる浜面と半蔵を見て、井ノ原ツインズが2人にとって意外な言葉を投げかける。

「なあ浜面、半蔵。姫神さん探してるって言ってたけどさ……居るぞ、目の前に」
「……は? し、真夜、お前もしかして姫神のことが見えてるのか?」
「真夜だけじゃなくて俺にも見えてるぜ。今も俺と真夜に手を振ってるし」

 真昼が声を発した次に浜面の横から声が聞こえてきた

「お疲れ様。浜面。半蔵。結局。私を見つけられなかったね。ふふ。やっぱり。我スルーされる故に我あり。なのかな?」
「うおっ!!本当にいやがった!」
「特定の人間にだけ影が薄くなるようになったのか?まじで俺達には見つけられなかったぜ」

 いきなり現れた姫神に浜面と半蔵はただただ驚いた様子だった

「とりあえず、浜面たちに見つからないのは何故か考えるより、俺達は練習を続けるからがんばれよ」
「おう! がんばれよ。半蔵、姫神、俺達はどうするよ?」
「待て、浜面。また姫神がいなくなった」
「なにー!?めんどくせえぇぇぇ!」
「さっきメールで『これからもう1時間。続けてもらう』って言ってたぞ」
「めんどくせえよおおおおおおぉぉぉぉ!!」

 真夜と真昼は練習を続行、浜面と半蔵は姫神の存在感感知練習を1時間プラスして進めることになった
 特に存在感感知練習では浜面の絶叫が響いたとか



 浜面が絶叫を上げている中、エツァリの寝ている保健室に練習を中断してショチトルが来ていた

「エツァリ、生きてるか?」
「ん…その声はショチトルですね。
 どうかしましたか?」

 ショチトルが来た時にはちょうどよく起きていたエツァリは上半身だけ起こしてショチトルの方を向いた。

「とりあえず大丈夫そうだな。」
「ええ。
 ただ、上条当麻にまたトラウィ(略)を壊されてしまいましたが」
「そのことでひとつ話がある。」
「何ですか、ショチトル。」
「エツァリ、お前はこの学校にいる間、トラウィ(略)は持つな。」
「な…!
 そ、そうしたら、御坂さんを上条当麻から守れないじゃないですかぁぁ!」

 エツァリがあまりにも大きな声を出したのでショチトルは驚いたが、そのまま口調を変えずに自らの考えを告げた。

「私が見たところ、上条当麻はそんな男ではない。
 少しは信頼してやっても……」
「甘いです、ショチトル!
 そんなことを言っていたらいつかあの男は御坂さんと間違いを……」

 エツァリはその先の言葉を言えなかった。
 なぜなら、その先の言葉を言おうとした瞬間、ショチトルがエツァリの唇を塞いだからであった。

「本心ではお前もそんなことは思っていないはずだ。上条当麻の御坂美琴に対する想いが真摯なものだと解っているだろう」

 キスを終えたショチトルの言葉もエツァリの耳には入っていない、何せ不意打ちなのだから。
 ボーっとしてるエツァリの態度が気に食わなかったショチトルは容赦なく彼の頬をパンッパンッ! と平手打ちした。

「なっ、何をするんですか! そ、それに先ほどのキ、キスは……」
「別に初めてでもないだろう、いちいちオタオタするな。とにかくトラウィ(以下略)は持つな、分かったか?」
「……すみませんショチトル。こればかりは貴女の頼みでも聞けません」

 エツァリの態度に納得いかないショチトルが詰め寄ろうとするがエツァリがそれを手で制止させ、自分の決意を彼女に告げる。

「正直、自分は上条当麻を信用しています。だからこそ、この球技大会で見極めたいのです。本当に御坂さんを安心して任せられるのかどうかを」
「エツァリお前……」
「これで最後にします、上条当麻を敵視するのも御坂さんを想うのも。そしてショチトル、その時は自分は貴女の気持ちと向き合いたんむっ」

 エツァリの決意の跡に自分との関係を前進させる言葉を聞いたショチトル、ベッドに乗っかると彼の唇を優しく塞いだ。
 10秒ほどして唇を離したショチトルは花の咲いたような笑顔をエツァリに向ける。

「分かったよエツァリ。そうゆうことならトラウィ(以下略)を使うのを許可しよう。ただし人には向けるな、絶対に。それと……ありがとう」
「い、いえ、自分は別に……。それに人に向ける気なんて最初からありませんよ。言っておきますがショチトル、貴女も球技大会当日は使って下さいね」
「あんな物騒極まりないものを野球の為に使うというのか? 一体どのような使い道があるというのだ?」
「バッターの時にボールを打った後でそれとなくトラウィ(以下略)を使ってボールを分解するんですよ。相手がもたついている間にホームインするというわけです」

 エツァリの作戦に思うところはあれど、効果的だと判断したショチトルはエツァリの提案を受け入れた。
 なお守備の時はトラウィ(以下略)は使えないので普通にプレイすることを2人は確認し合うと、ショチトルからある提案がなされる。

「そうするとこちらの戦力は心許ないぞ。一番の敵であろう土御門のチームには土御門、上条当麻、一方通行、自称淡希の恋人、他の奴らも中々のものだった。勝つには厳しいぞ?」
「成程、クラスの皆さんを悪く言うわけではありませんが彼ら相手では頼りない……ショチトル、さっき妙な事を言いませんでしたか? 自称結標さんの恋人とか」
「ああ、それはあまり気にするな。それよりもエツァリ、あと1人くらいは奴らに抵抗できる人材を入れるべきではないか?」
「(あの露出狂ショタコンに恋人、自称だとしても気になりますね……)分かりました。気は全く進みませんが上条当麻が居るとなればあの人も参加してくれるでしょう」

 そう言うとエツァリはジャージのポケットから携帯を取り出して、嫌そうな表情をしながらもある人物に電話をかける。
 念の為、ショチトルが相手を確認するとエツァリの携帯に『五和さん』と表記されているのが見えた。



「ショチトル、おまけでエツァリ。ちゃんとやってる?」
「2人なら保健室に行ってるけど。あ、怪我とかじゃないから心配しなくていいよ」
「そ、ありがと」

 美琴が体育館にやって来たのを見た結標は避難ついでにエツァリとショチトルの様子見、そして翔太ウォッチングの為に野球場に来ていた。
 エツァリとショチトルの様子を確認し終えた結標は土御門を見つけると、【座標移動】で彼の近くへと飛んだ。

「うおっ! いきなり現れんで欲しいにゃー!」
「何よ、そんなに驚かなくてもいいじゃない、失礼ね。それより翔太は?」
「翔太なら疲れて休んでるぜい。あそこでベースランニングしてる奴以外は全員へばってるぜよ、アクセラも含めてな」

 結標が土御門の視線の先を追うと、そこにはへたり込んで休んでいる一方通行、翔太、その他の野球組の姿が見えた(情報屋以外)。
 ボロボロな翔太の姿に結標が殺気全開で土御門に詰め寄るが、今日の練習は終わりだと告げられると殺気を引っ込めた。

「じゃあ、私は翔太を連れて帰るわね」
「おぉ。行ってらっしゃいにゃー」

 結標は【座標移動】を使い、翔太の傍まで行くと驚いている翔太に何も言わず抱きしめて消えていった

「お、俺も帰っていいんだよな?」
「情報屋。お前は追加があるにゃー」
「やだー!俺も帰るんだー!」
「子供みたいに駄々こねてないでさっさと次移るぜい」
「やだー!」

 情報屋は叫んだが、結局、そこから1時間プラスの練習をすることになった



 食堂で建宮に飲み物をねだった白雪は体育館に来て驚くべき(?)ものを目の当たりにしていた

「な、なんでみんな、そんなに緩んでるのー!?」

 月夜が驚くのも無理は無い、何せ体育館の生徒全員が球技大会の練習をせずにまったりと休憩しているのだから。
 そこにこの事態を自覚は無いながらも作り上げた赤音が月夜に気付いて駆け寄るが、それが更に月夜を驚かせることになる。

「あー、づぎよぢゃんだー♪ どうじだの? もじがじでれんじゅうおわっだー?」
「あ、あああああ赤音ちゃんこそどうしたの、そのガラガラの濁声! いやそもそもこのまったり空間は何? もうワケ分かんないよ!」
「わだじのガラガラごえはボイズジャッドのいやじバージョンづがっだがらー。まっだりぐうがんもだぶんわだじのぜいだとおもう」
「説明ありがとう赤音ちゃん……って言いたいけどゴメン、濁声がひどすぎてよく分かんない」

 言いたいことが上手く伝わらずに落ち込んだ赤音を慰めている月夜の所に青ピ、滝壺、郭、麦野が合流。
 滝壺以外がいつもより穏やかというよりゆるく見えた月夜が不思議に思っていると、滝壺からこの状況と赤音の濁声の理由を聞かされた。

「ふーん、美琴ちゃんと吹寄さんのギスギスした雰囲気を無くす為に【鼓膜破砕】のヒーリング効果のある音を出して赤音ちゃんが声を嗄らして、その音の影響でみんなの闘争心静められたんだね」
「ビンボンビンボン~♪ づぎよぢゃんぜいがい~」
「赤音ちゃん無理しなくていいよ、ホント。言いたいこと滝壺さん経由で教えてくれればいいから。ところでこのまったり空間っていつ無くなるの?」

 月夜の質問に赤音は考えたことも無かったような表情を浮かべ、少し思案したあとで滝壺に耳打ちして滝壺が答えた。
 このやり取りを見ていた青ピ、郭、麦野が内心で「めんどくさっ」とか思っているのは内緒の話である。

「あかねがわ本人もよく分からないって。でも深刻に考えなくていいと思う。もう練習時間、終わってるもの」
「分からないんじゃしょうがない……ってもうそんな時間? 何だかんだでそんなに練習出来なかったな~。上条くんも同じ……ねえみんな、上条くんは?」
「カミやん? 来てへんけど?」

 自分よりも先に食堂を出たはずの当麻が来ていない事を不思議に思う月夜は、とりあえず事情をその場に居る全員に話した。

「吹寄氏と御坂氏の諍いを止めに出て行った上条氏が来ていないとは……。ここに来たら脱力するのは間違い無いですね」
「けど修羅場になるよりは遥かにマシだろうね。今の私だとビームすら撃つ気が無いし」
「私としてはかみじょうのリアクションが気になる。見た感じ、意気投合し始めてるみさかとふきよせはちょっと面白い」

 練習時間が終わったので緩んだ状態で帰る準備をし始めた生徒達、ちなみに明日には全員いつもの調子に戻っていたりする。
 生徒の大半が体育館を出て行く中、必死で体育館に入ってきた当麻の姿があった。

「だあっ! や、やっと着いた……。美琴、美琴は? まさか吹寄のおでこの餌食に……」
「カミやんカミやん落ち着きぃな。そないなことにはなっとらんから安心しい。てか何で白雪はんより遅く着いとんの?」
「白雪が? あ、ホントだ……って遅くなったのも元はと言えば青ピ! お前の彼女の白井とお前と白井のミニチュア共が……ちくしょう」
「あー、なんやよう分からんけどゴメンなカミやん。そないなことよりもやることがあるやろ?」

 遅くなった理由が黒子、それに赤見と白子にあったことが分かっただけだが、当麻の不機嫌そうな表情を見て不幸な目に遭ったんだろうとそこに居る全員が推測した。
 気を取り直した当麻が愛しの美琴を見つけ、すぐさま駆け寄ろうとしたが、

(あれ……? どうして美琴と吹寄が仲良くこっちを、しかも笑顔で見てるんだ? 吹寄はともかく美琴の笑顔……何で怖いって思ってんだ? 俺)

 自分に見せる美琴と吹寄の笑顔(特に美琴)に違和感というか明らかに怒りを孕んでいると感じて足を止めてしまう。
 そして足並み揃えて自分の所にやって来る美琴と吹寄を見て当麻は思った、久々に特大の不幸が待っていると。
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