とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part07-1

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EPISODE 3


  Scene_11  【第七学区内 常盤台中学学生寮前】

(上)「え? み、美琴?」
(琴)「え? あ……と、当麻……」

 常盤台の学生寮前で、今日初めて顔を合わせる二人。
 今日は会えないと思っていただけに、二人とも嬉しさがこみ上げてきて、顔が赤くなる。
 だが、そんな二人を無視するように、別の会話が進んでゆく。

(寮)「これが最新鋭の駆動鎧(パワードスーツ)なのか? 黄泉川」
(黄)「はい、先輩。本来ならこの前の戦争に投入される予定だった最新鋭の機体です。戦争が思ったよりも早く終わったのでお蔵入りになるところを今回、コマンダーのトコロに預けさせて戴くことになりましたので、皆さんをお送りするついでにお届けすることにいたしました!!!」
(寮)「ほう……。見た目はほとんど通常のパトカーと変わらぬのにな。さすがに『学園都市』の最新鋭技術だな」
(黄)「あ……、この機体は変形するのではなく、この形態で駆動鎧並みの防御力と攻撃力を有しています……」
(寮)「なる程な。それ以上は機密事項と言うことか……」
(黄)「はい……。申し訳ありません」
(寮)「気にする事はない。私はもうオマエ達とは違う任に着いているのだから」
(黄)「先輩……」
(寮)「だが、この子達を守ってやりたいという想いは同じだぞ」
(黄)「ハイッ!!! ありがとうございます!!!!!」
(寮)「ウム。……ところで、彼が上条当麻君だな?」
(黄)「はい、そうです。上条ご挨拶しろ」
(上)「あ……、は、初めまして。上条当麻です。……あ、あの……」
(寮)「上条君、よろしく。詳しい事はコマンダーからお話しがあるだろう。……では、黄泉川。行こうか?」
(黄)「あ、はい。では……」
(寮)「御坂は後部座席に。イイな」
(琴)「は、はい……」

 そう言うと寮監は助手席に治まり、シートベルトを着けた。
 その仕草は全く無駄というモノを感じさせない、慣れたモノだった。

(黄)「さすがですね。先輩」
(寮)「ハハ……、やはり染みついてしまっているのだろうな。それに……常盤台の寮監と言えど、やっていることは昔と変わらんよ」
(黄)「は? そ、それはどういうコトですか?」
(寮)「常盤台の生徒は最低でもレベル3。お嬢様学校とは言え、それなりに問題児は居るからな。特に後ろの御坂やその同室のヤツなどは……」
(琴)『ビクッ!!!』
(黄)「何を仰います。以前、暴走しかけていた第2位を素手で抑え込まれた方が……」
(寮)「アハハ、昔の話だ。それにアレはコマンダーからのご指示があったから出来たことだよ。私だけではとてもとても……。それより、昔話を興じていてはコマンダーをお待たせしてしまうぞ。黄泉川、急げ!!!」
(黄)「了解しました。あ……ですが……」
(寮)「気にする必要はない。オマエの運転に耐えられんようでは、私の相手は出来んよ」
(黄)「では、遠慮なく……」

 その黄泉川の言葉を聞いた上条は、慌てて車に乗り込みシートベルトを締める。
 全身にイヤな汗が噴き出てくるのが分かる。
 その様子を見て、既に反対側の座席に収まっていた美琴が『?』を浮かべた瞬間だった。

『ギャンッ!!!』

 タイヤの悲鳴と共に、再び市街地ジェットコースターがスタートした。

(上)「ふッ、不幸だぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 上条の叫びは、再びサイレンにかき消されていった。


  Scene_12  【喫茶店 エトワール】

『ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーン……』

 独特のモーター音が、闇に消える。
 HsSSV-03 機体名『ドラゴンドライブ』
 先日、新たに現れた『闇』の集団、『新入生』の一人を追う時に浜面仕上が輸送中のそれを拝借したのと同じ開発理念で作られた新型の駆動鎧(パワードスーツ)である。
 HsSSV-01『ドラゴンライダー』が『バイクを含めた駆動鎧』として開発されたのと同様に、コチラのHsSSV-03は『車を含めた駆動鎧』として開発されている。
 その開発の意図は簡単である。
 バイクや自動車ほど人間にマッチした乗り物はないからだ。
 駆動鎧を扱う場合、その操作技術の熟練に時間を要する点が問題となる。
 だが、バイクや自動車と言った普段から扱い慣れている機体ならば、その時間は大幅に削減出来るし誰にでも扱える。
 その上、機械的なサポートも受けられる訳だから、慣れる時間はもっと短縮出来る。
 基本的な二輪の操作しか知らなかった浜面が、その性能をフルに発揮させることが出来たのだ。
 黄泉川辺りの警備員が搭乗したら……結果は推して知るべしであろう。
 もし、この『ドラゴンドライブ』がサーキット場でF1マシンと対戦したら……。
 FIMは『世界最高峰の自動車レース』の看板を下ろさざるを得ないだろう。

 また、開発する側にとっても投入出来るノウハウが大量にある点も見逃せない。
 元々自動車の開発に人間工学は欠かせない。それだけに大量のノウハウを持っていることになる。
 その上に駆動鎧のノウハウを足すだけで開発が可能なのだから開発期間も大幅に短縮出来る。
 『ドラゴンライダー』が機動性を重視した機体であるのに対し、『ドラゴンドライブ』は装備性と機動性のバランスを取った機体と言える。
 2輪というバランスの乗り物には大量の装備は積めない。
 だが4輪なら話は別だ。
 各種の様々な装備を搭載することが可能だし、機動性では『ドラゴンライダー』に劣るとは言え、通常の駆動鎧とは比べものにならない機動性を誇る『ドラゴンドライブ』ならば、『ドラゴンライダー』のサポートに回ることも可能なのだ。
 作戦に応じては、『ドラゴンライダー』と『ドラゴンドライブ』の混合編制も可能となる。

 とは言え今、黄泉川が使っているのはあくまでも人間が操作出来る範囲内での仕様に納められている。
 何より、黄泉川自身がその装備を装着していないからだ。
 そういったセーフティも装備されており、通常の使い勝手も考慮されている点が『ドラゴンライダー』との最大の違いである。

(黄)「着きましたよ。それでは行きましょうか?」
(寮)「ぅ、うむ……。しかし、少々緊張するな。黄泉川……」
(黄)「あ、はい。私も久しぶりにお会いしますので……」
(寮)「こんなトコロで喫茶店をして居られるとは……。もしかしたら、とは思っていたのだが……」
(黄)「我々にはココの敷居は高すぎますからね……」
(寮)「そ、そうだな……。だが、お待たせする訳にもいかんしな。とりあえず行こうか?」
(黄)「あ、ハイ……」

 前の座席の二人は相当に緊張しているようだ。
 それに対して後部座席に座っていた三人の内二人は元気なのだが、一人だけは……。

(上)「ゼエ、ゼエ、ゼエ、ゼエ、ゼエ、ゼエ……」
(小)「だらしないですよー、上条ちゃん」
(琴)「そうよ、当麻ったら。ホントだらしないんだから……」
(上)「あ、あんなもんに乗せられたら、……誰でもこうなるだろうッ!?」
(小・琴)「「ならない(キッパリ)」」
(上)「ふ、不幸だ……」
(琴)「そりゃ、最初はチョットビックリしたけど、慣れたらジェットコースターみたいで面白かったわよ」
(上)「あ、アレを……面白いで済ますのか……」
(小)「トコロで上条ちゃん。二人はお知り合いのようですけど、こちらの方は一体……?」
(琴)「あッ、自己紹介が遅れて申し訳ありません。常盤台中学2年の御坂美琴と言います」
(小)「ご丁寧な挨拶、ありがとうなのですー。私は月詠小萌。上条ちゃんのクラスの担任をしているのですー」
(琴)「え? 当麻のクラスの……担任……?」
(小)「え? 常盤台の御坂美琴……さん?」
(小・琴)「「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!?」」
(小)「とっ、常盤台の『超電磁砲(レールガン)』さんなのですかーッ!?」
(琴)「ぅ、ウワサには聞いていたけど、ホントに先生なんですかーっ!?」

 と、同じようなリアクションを取ってしまった二人であった。
 それを横目で見ていた上条は……

(上)(それが普通のリアクションだろ? だったら、何であの運転のリアクションが普通じゃないんだよぉ~……)

 とボヤくしかなかった。

『カランカランカラ~ン』

 入り口のドアベルが鳴った。
 そして、中からマスターが出て来た。

(マ)「オーイ、早くしろよ。説明の時間も考えたら、あんまり時間に余裕がある訳じゃねえんだからな」
(上琴)「「あ、マスター」」
(小)「風見ちゃん、お久しぶりなのですー」
(マ)「よッ、先生も元気そうで何よりだな」
(小)「先生はいつでも元気なのですよー」
(マ)「変わらねえな、そういうトコ。……ところで後の二人はどうしたんだ?」
(小)「黄泉川先生と寮監さんなら、まだ車だと思うのですけど……」
(マ)「何やってやがんだよ。まったく……あ、やっと来やがったな……」
(寮・黄)「「こっ、コマンダー!! お久しぶりでありますッ!!!!!」」
(マ)「ハァ……。あのなぁ、オレはもうコマンダー(司令官)じゃねえんだ。今はタダの喫茶店のオヤジなの。それに昔っから言ってんだろ。そういう堅苦しい挨拶は抜きにしろって……」
(寮)「しっ、しかし……」
(マ)「イイからさっさと入れよ。第一今日の主役はオマエらじゃねえだろ? そっちの用件の方が先だろうが?」
(寮・黄)「「あ……」」
(マ)「何か一杯入れてやるから。それ飲んで落ち着きな……。ホレ、行くぞ」

 そう言うとマスターは店の中に入っていった。
 それに続くように全員が店に入っていく。
 中ではアッコさんが迎えてくれた。

(ア)「皆さん、いらっしゃーい」
(マ)「んじゃ、とりあえず開いてるとこに座ってくれよ。つっても、閉店してるから全部開いてんだけどな」
(上)「ま、マスター……。あの、これは一体……?」
(マ)「事情は後で説明してやる。とりあえず、コーヒーを入れてやるよ」

 そう言うとマスターは、大きめのネルのドリッパーを取り出した。

(マ)「イチイチ好みを聞いてたら、時間が無くなるんで申し訳ないがウチの特製ブレンドでガマンしてくれ。嬢ちゃんはカフェ・オ・レにするかい?」
(琴)「い、いえ。そのままでイイです……」
(マ)「何緊張してんだよ? あ、ソイツがいるからか?」

 そう言ってマスターは寮監の方を見る。

(寮)「あッ、いッ、いえッ!? わッ、私は何もッ!?」

 途端に寮監の顔が赤くなり、モジモジとし出す。

(琴)(ウソッ!? こ、こんな寮監の顔って……あの『あすなろ園』以来じゃない!?)

 と、美琴が驚いていると、アッコさんが大きなお皿を運んできてくれた。
 その上には、サンドウィッチが『これでもか!』という程乗っていた。

(ア)「何にしても『腹が減っては戦は出来ぬ』よ。食べて、食べて」

 といって、各自が座ったテーブルの上にサンドウィッチの入った皿を置いてゆく。
 上条は腹が減っていたこともあり、早速それをパクつき始めた。
 それを見て、全員がサンドウィッチに手を出し始める。
 少し緊張が解けたのを機に、上条が疑問に思っていた事をマスターに聞いた。

(上)「それにしてもさ、マスターがネルドリップでコーヒー入れるなんて珍しいよね?」
(マ)「この人数だからな」
(上)「え?」
(マ)「ネルドリップは基本的に大人数用なのさ。少ない人数じゃペーパーなんかとほとんど差が出ねえのさ」
(上)「へえ、そうなんだ……」
(マ)「使い込まれたネルの出す味わいとコクの深さは確かにペーパードリップじゃ出せない。だがそれはあくまでも五人前以上での話だ」
(上)「でも、二~三人前用のネルも売ってるじゃないか?」
(マ)「まあな。でもそれはネルの雰囲気を味わいたいって人向けだよ。味に差が出る訳じゃない。逆のネルの方が入れ方が難しいしな」
(上)「入れ方が難しいって?」
(マ)「ドリッパーもそうだけど、ネルの場合は淵に沿って入れたらコーヒーに当たらないままお湯が下に落ちちまうんだよ」
(上)「あ……そうか」
(マ)「だから、豆が保持出来るお湯の量を計算して入れる必要がある。だから難しいんだよ」
(上)「なるほど……」
(マ)「五人前以上になると、豆の量が増えてそういうコトに気を使わずに済むようになるし、ネル本来の味も出しやすくなる。だから大人数用なのさ」
(上)「へえ……だから、一人用の時は選べないってコトなんだ……」
(マ)「ネルの管理が難しいってのもあるけどな。だからホテルの朝食で出るバイキングのコーヒーが結構美味かったりするのは、三〇人前とかっていう量をネルで出してたりするからなんだ」
(寮)「相変わらず、お好きなのですね」
(マ)「まあな、それが高じちまって、こんな店を開くようになっちまったんだからな……」
(ア)「お陰でコッチは大騒ぎだったけどね……」
(マ)「何だかんだで楽しんでるクセに……って、ホレ出来たぞ」
(ア)「ハイハイ……皆さん、お待たせー」
(上)「待ってました!!!」

 そう言って上条がコーヒーに飛びつく。
 同じように美琴もブラックのまま、まず一口飲む。
 かなり感化されたらしい。

(上琴)「「美味しい!!」」
(上)「確かにこのコクはペーパーじゃ出ないよな」
(琴)「柔らかいんだけど、シッカリ味はあって。でも、苦い訳じゃないから飲み易い」
(マ)「苦手なのが居るから、薄めにしてあるのもあるけどな」
(上琴)「「え?」」

 ふと見ると、上条の隣に座っている小萌先生は、ミルクと砂糖を入れて美味しそうに飲んでいるのだが……。
 上琴二人の向かい側に座っている二人がコーヒーを見つめて固まっている。

(マ)「あ~、無理して飲まなくてもイイぞ~。オマエらにゃ、トラウマがあるんだから……」
(上琴)「「と、トラウマ?」」
(マ)「昔、コイツらの上に居た時にな、当直室で二人で酒盛りしやがってよ。また、そういう時に限って間の悪いことにスクランブルが掛かったんだ」
(上)「スクランブル?」
(マ)「緊急出動要請ってコトだよ。で、この二人がベロンベロンになってたから、宿直の爺さんに特製コーヒーを作らせて飲ませたんだ」
(寮・黄)『『ビクゥッ!?』』
(琴)「と、特製コーヒーって?」
(マ)「味なんて無視。酔いを覚ませて、アドレナリンが分泌するようにってだけのカフェインたっぷりのヘドロみたいなコーヒーエキスさ。それを無理矢理飲ませたんだよ」
(上)「ウエ~~~、飲みたくねぇなぁ……」
(マ)「事件はスッキリ解決したんだけどな。それ以来コイツら、コーヒーが飲めなくなっちまったんだよ。そのコーヒーエキスがトラウマになったらしくてな」
(琴)「ちょっと可哀相……こんなに美味しいのに……」
(マ)「まあ、昔話はこれくらいにしといて……、そろそろ本題に入ろうか? 小萌先生」
(小)「そうですねー。それにしても、相変わらず風見ちゃんのコーヒーは美味しいですねー」
(マ)「まあ、昔っからこれしか趣味がねえからな……んじゃイイかな?」
(小)「はい、よろしくお願いするのですー」

 小萌先生がそう言うと、マスターは全員に向き合って言葉を発し出す。

(マ)「まあ、色々と聞きたいことはあるだろうが、まずオレの話を聞いてくれ」
(全員)『『『『『コクリ』』』』』
(マ)「今日の昼に小萌先生から連絡を受けて、上条の補習以外に出された課題を片付けるのに誰かサポート出来る人材は居ないか? と相談を持ちかけられたんだが……」
(上)「えッ!? 課題って?」
(小)「実はですねー……、これだけあるんですよ、上条ちゃん……」

 そう言うと、いつの間にかアッコさんが運んできた段ボール箱3箱を小萌先生は指差す。
 それを見た上条の顔から、血の気が引いてゆく。

(上)「う……ウソ……。ウソですよねッ!?」
(小)「確かにこの中に入っているのはほとんどが参考書だったり、参考文献だったりするのです。でも……それを読まないと授業を受けていない上条ちゃんには解けない課題ばかりなのですよー」
(上)「そ、そんな……、ふ、不幸だ……」
(マ)「でだ、こんな資料を読まずとも上条のサポートが出来る人材はと考えたら……、ちょうど良い人間が一人居たんだ。それが嬢ちゃんだ」
(琴)「それで私が呼ばれたんですね」
(マ)「そういうコトだ。だがコトはそう簡単じゃないんだよな……。これは上条の担任である小萌先生からの依頼だ。つまり学校って組織が絡んじまってる。これが上条と嬢ちゃんの間だけの取り決めならこんなにややこしくはなってなかったんだろうけどな……」
(寮)「その件に関しては私の方からお話しさせて戴きます。上条君のサポートにウチの御坂をと言われる理由も、縁も所縁もない二人にこの様なことをさせるコトも、いくらコマンダーのお考えと言えど理解しかねます」
(マ)「まあ、事情を知らなきゃそう言う意見になるわな……。だから、二人にココに来て貰ってるんだが……」
(上琴)「「えッ!?」」
(マ)「二人とも、二人の関係がこの三人にはバレちまうが、今回の場合それを知っといて貰わねえと話が先に進まねえんだ。だから……」
(上)「あッ、そ……それは……」
(琴)「構いません!!」
(上)「み、美琴?」
(琴)「いつかはバレることだし、……いつまでも隠し通せるとも思ってません。それに当麻の力になれるのなら、私は……そうしたいんです」
(寮)「み、御坂……オマエ?」
(琴)「はい。寮監、そうです。私と当麻は恋人として付き合っています!!!」
(上)「ばッ、バカッ!? オレみたいなレベル0の無能力者と付き合ってるなんて言ったら……、オマエの立場が……」
(寮)「……そうか。……オマエ達はそういう関係なのか……分かった!!!」
(上琴)「「え?」」
(寮)「コマンダー、コマンダーのお考え、理解いたしました。そういうコトならば反対する理由は一切ありません。上条君がこの課題を終えるまで御坂にサポートさせること。常盤台の寮監として了承いたします」
(マ)「スマンな。助かるよ。一番の難関はそこだったからな。でだ……、それが決まれば話は早い」
(上琴)「「え?」」
(マ)「まず上条。オマエは今日これから、嬢ちゃんの監視と教育の下、ココにある課題を来週末の土曜日までに全て片付けること!!!」
(上)「ええッ!?」
(マ)「嬢ちゃんは、上条を徹底的にしごいて、この課題を来週末までにやらせること!!!」
(琴)「ハイッ!!!」
(上)「チョット待てッ!? 何でそんなにイイ返事なのッ!?」
(琴)「当麻は黙ってなさい!!!」
(上)「ひゃッ、ひゃいッ!!!」
(マ)「平日は、学校で完全下校時刻まで補習を受けて、その後黄泉川か小萌先生のどちらかにココまで送って貰えるようにしてある。夕食はオレが準備してやるから、心配するな」
(上)「ヘッ!?」
(マ)「嬢ちゃんは完全下校時刻までにウチに来てくれればイイ」
(琴)「ハイッ!!!」
(マ)「店が忙しい時は、嬢ちゃんに頼むこともあるかも知れないけど、それは良いよな?」
(琴)「ふえッ!? そ、それって……あ、あの……」
(マ)「上条の晩飯を嬢ちゃんに頼むこともあるってコトだ。材料はこの厨房にあるモノなら何でも使って貰って構わねえからな」
(琴)「あ……は、ハイ……」
(マ)「時間は少なく見積もっても10時頃までやらないと無理だろうから、各自の寮に戻るのはオレとアッコで責任を持って送ってやる」
(ア)「任せといてね」
(マ)「それと、土曜日は午前中は学校で補習。午後からはウチで勉強。日曜日は一日ウチで課題の特訓だ。場所は店の裏の詰め所の一角を使えばイイ」
(ア)「勉強中はイチャイチャ厳禁だからね。二人とも!!!」
(上)「そ、そんなの……出来る訳ねえじゃねえかよ……ブツブツ……」
(琴)「う……。アッコさんに言われるとは思わなかったな……」
(ア)「チョット美琴ちゃん、それどういう意味よッ!?」
(マ)「まあまあ、一応監視カメラでの監視はさせて貰うぜ。サボってないかを見るのもあるからな。で、その映像はこの課題への取り組みが終わったら全て消去してやる」
(上琴)「「アハハハ……ハア……」」
(マ)「で、先生方にはこの二人の関係に関しては他言無用に願いたい」
(小)「それは構わないですよー」
(黄)「そこまで教師が口出し出来るコトじゃないし……」
(寮)「私は既に了承しております。コマンダー」
(マ)「だからオレはもうコマンダーじゃねえッつてんだろうがッ!!!」
(琴)「あ、あの……寮監? その、コマンダーって?」
(寮)「何だ? 知らなかったのか!?」
(琴)「以前、能力を暴走させかけたところをアッコさんに助けられて……それ以来のお付き合いなのですけど……、昔のことまでは……」
(寮)「コチラの風見愼さんは『ASC(アンチ・スキル・コマンダー)』と言ってな、対高位能力者や対暗部、対外組織などに特化した警備員(アンチスキル)の司令官であった方だ。私やあちらにいる黄泉川などを新人の頃から面倒を見て下さった方でもある。今の私があるのもコマンダーのお陰だ」
(上琴)「「ええッ!?」」
(マ)「バカが……。言っちまいやがった……」
(琴)「寮監って、元は特殊部隊の警備員……。……あの黒子が瞬殺される訳だわ……」
(上)「えッ!? あ、あの白井を瞬殺……? す、スゴい……(と言うより、恐ろしい……)」
(黄)「トコロで月詠先生。さっきからコマンダーのことを風見ちゃんって呼んでるじゃんか?」
(小)「風見ちゃんは風見ちゃんですからねー」
(黄)「イヤ、その呼び方って、確か生徒にしか使わないんじゃなかったっけ?」
(小)「そうですよー。風見ちゃんは、私が教育実習で初めて受け持った生徒だったのですー」
(マ)「オレが高3の時だよな」
(寮・黄・上琴)「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!?」」」」

 と、とんでもない秘密が暴露され、大騒ぎになった【エトワール】だったが……。
 何とか騒ぎも収まり、教師達はそれぞれの帰路についた。

 教師達が帰った後、早速店の裏で課題に取り組み出す二人だったが……
 今日一日会えなかったこともあって……、少々イチャイチャモードが起動しそうです。

(上)「まさか、こんなコトになるなんて……」
(琴)「でも……当麻と一緒に居られるから、私は嬉しいよ」
(上)「そっ、それは……、それはオレもだけどな……」
(琴)「ねえ、勉強する前に……少しだけそっち行ってイイ?」
(上)「あ……ぅ、うん……」

 上条がOKを出すと、美琴は即座に上条の隣に座り、その右腕に抱きついた。

(琴)「エヘヘ……。当麻の腕だぁ……」
(上)「オッ、オイッ……美琴、くっつきすぎだろ?」
(琴)「だってぇ~……、寂しかったんだもん……。今日は会えないなんて言われてたし……」
(上)「そ、それは……オレだって……ゴニョゴニョ……」
(ア)「ンッ、ウンッ!」
(上琴)『『ビクッ!?』』
(ア)「アハハハハ……。そりゃそうよねぇ~、ラブラブの二人が今日一日会えなかったんだもんねぇ~。こうなっちゃうのも仕方無いかァ~」
(マ)「からかってやるなよ。とは言え、さっき約束したばかりだってのに、もうコレか? 前途多難だなぁ……コリャ」
(上琴)「「うう……」」
(マ)「まあ、今日のトコロは大目に見てやらなくもないが……実際のトコロ、時間的にはかなり厳しいんだぜ。そこは嬢ちゃんがシッカリ把握しといてくれよ?」
(琴)「あッ! ハイッ!!!」
(上)「あ、あの……マスター」
(マ)「ん? 何だ?」
(上)「あ、あの……今回のことでかかるお金のことなんだけど……」
(マ)「ああ、その件なら心配しなくてもイイぜ。今回のコトにはスポンサーが付いたから、そっちの心配はしなくてイイよ」
(上)「えッ!? す、スポンサーって?」
(マ)「裏事情で詳しいことは言えないが、オマエが補習を受けなきゃならなくなった訳を知ってる人から金が出たってコトさ」
(上)「オレが補習を受けなきゃならなくなった訳って……。それってオレがイギリスやロシアで闘ってきたことを知ってるってコトになるんだけど?」
(マ)「ああ、そうだな」
(上)「そうだなって、まさか? 美琴が出してるとか言うんじゃないだろうな!?」
(マ)「違う、違う。オマエの知らない人物だよ。ただ、誰かってのは言えない。そういう約束なんでな」
(上)「ウーン、なんか釈然としねえな……。ホントに美琴が出してるとかじゃないだろうな!?」
(琴)「うん、それはないわよ。当麻。だから安心して」
(上)「美琴がそう言うんならイイんだけどな……」
(マ)「それよりもスポンサーが付いたってコトは、今回のことはキチンとやりきらなきゃならない責任が生じたってコトなんだぜ」
(上)「え゛……?」
(マ)「『え゛』じゃねえよ。当然だろうが?」
(上)「当然って……、今回の件はオレが戦争を止めたから、スポンサーが付いたんじゃねえの?」
(マ)「ああ、そうだぜ」
(上)「だったら……」
(マ)「戦争を止めてくれたから、スポンサー役は引き受ける。だが金を出す以上、結果を要求する。『Give and Take』だ。分かるよな?」
(上)「そんなぁ……」
(マ)「世の中そんなに甘かねえよ。スポンサーが付いたってコトだけでも、相当にラッキーだったと思わなきゃな」
(上)「そ、それはそうだけど……」
(マ)「スポンサーが言うには、『特別講師』も派遣してやるって話だぜ」
(上)「と、特別講師ィ~!?」
(マ)「飛びっ切りのヤツを派遣してやるって張り切ってたからな。誰が来るかまでは知らんが、まあ、楽しみに待ってるこった」
(琴)「そんなァ~……私が居るのに……(ブツブツ)」
(ア)「美琴ちゃんを信用してない訳じゃないだろうけど、さっきのラブラブぶりじゃあねえ……」
(上琴)『カアアアアア(////////////////////)』

 先程から何かある毎に弄られ通しの美琴は思わず話題を切り替えようとする。

(琴)「そっ、それにしても……マスターがアンチスキルの元司令官だったなんて……。チョット信じられないな……」
(マ)「それを言うなよ、嬢ちゃん。今はタダの喫茶店のオヤジだ。まぁ、時々若いヤツの指導に行ったりするけどな」
(ア)「臨時講師ってヤツでね。元の地位が高かっただけに、結構良い金額出してくれるのよね」
(マ)「あんまり自慢にならねえんだけど、そんなんで食いつなぐしかねえんだよな……。ハハハ……」
(上)「マスター達も苦労してんだな……」
(マ)「オマエに言われると、何か『グサッ』と来るんだが……」
(上)「どういう意味だよ? ……ああ、不幸だ……」
(琴)「あ、それに……寮監が、何であんなにアッサリと……」
(マ)「さあな。そこまではオレにも分からんが……アイツはそういうトコ男っぽいんだよな」
(ア)「ハイハイ、いつまで喋ってるの!? 悄気てたって課題が減る訳じゃないでしょ? ならサッサとやっちゃえば?」
(琴)「そうですね。当麻! 始めるわよッ!!!」
(上)「ヘッ!? みっ、美琴さん? 何をそんなに張り切っておられるのでせう?」
(琴)「来週末までに当麻にこの課題の山をやらせなきゃならないんだからね。覚悟しときなさいよぉ~!!!」
(上)「ヒィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!?」
(琴)「とりあえず、今の当麻の実力を計らないと話にならないから、……まずこの課題をやってみて!! 後はそれからよッ!!!」
(上)「うう……不幸だぁ……」
(琴)「文句言わないでキリキリやるッ!!!」
(上)「ヒエエエエエエエエ……」

 こうして上条にとって地獄の十日間が開始された訳である。



 さて、本来ならココで『特別講師』などの新たな展開に行きたいところなのですが……。
 それをするとあまりに長くなりそうなので、そちらの噺は『番外編 上条さん地獄の10日間』として後日UPさせていただきたいと思います。
 『美琴初めてのエプロン編』とか……あったりして……。

 で……、本編としましては、その地獄(?)の十日間が過ぎたところから再開したいと思います。
 決して手抜きじゃないですよ。うん……違うもん……。



  Scene_13  【喫茶店 エトワール裏 警備員(アンチスキル)詰め所】

(上)「お、終わったぁぁぁぁ……」
(琴)「うん、OKね。当麻、本当にご苦労様」
(上)「み、美琴ォ~……オレ……グスッ……」
(琴)「ほらほら、泣かないの……。ホントに頑張ったね、よしよし……(何か、当麻がスゴいカワイいんだけど……)」

 美琴に抱きついて泣いている上条。
 普段からは想像も付かない姿なのだが……。
 その姿に思わず母性本能を擽られ、ツンツン頭をナデナデしている美琴。

 上条が甘えモードに入っている理由。
 それはこの十日間の苦労が実ったと言うことと、美琴がかなり厳しかったからなのだが……。
 美琴としては、当たり前のレベルだと思っているので、上条がどうして甘えモードに入っているかが分からない。
 ただ、『ホントに勉強が苦手なのね』程度にしか考えていないのである。
 上条のことを鈍感だと怒ることの多い美琴だが、美琴もあまり人のコトは言えないようである。

(琴)「当麻……。エヘッ、カワイい……」
(上)「うう……、だって、……ここんトコずっと……美琴、厳しかったから……」
(琴)「そっ、それは……、……当麻が全然覚えないんだもん……」
(上)「上条さんはオツムもレベル0ですから……、美琴と同じように思って貰っては困るのですのコトよ」
(琴)「努力を怠ってきた結果だと思うけど?」
(上)「うう……、また苛める……」
(琴)「ハイハイ、ゴメン、ゴメン。……もう、ホントに甘えん坊なんだから……」
(上)「美琴にだけだぞ……」
(琴)「エヘッ、カワイイ当麻……初めて見た……」
(ア)「……あのさあ、お二人さん? 監視付きだってコト……忘れてない?」
(上琴)『『ドキィッ!?』』
(ア)「監視してる方が、恥ずかしくなるわ……。ホント、アンタたちって学園都市最強の『バカップル』よね」
(上琴)『カアアアアアアアア!!!(////////////////////)』
(ア)「まあ、からかうのはこれくらいにして……」
(上琴)「「え゛……」」
(ア)「ウチの人が話があるって。店の方まで来てくれる?」
(上)「マスターが?」
(琴)「話って……何だろ?」

 そう言って顔を見合わせる二人。

(上)「でも……ココまで出来たのもマスターのお陰だもんな……」
(琴)「うん……お礼、ちゃんと言わなきゃね」
(上)「そうだな」
(琴)「行こ、当麻」
(上)「ああ」

 そう言って、シッカリ手を繋いで店に向かう二人。
 その姿を見て、アッコさんは溜息をつくしかなかった。


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