とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part06

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だれでも歓迎! 編集


3日目


第22学区 地下市街 フレンドパーク前
御坂と上条は入り口に着いた。
普段の御坂なら、電磁波を利用して10メートル後ろで佐天と初春が後をつけている事など分かるはずなのだが、
テンパっているせいか気づいていない。
初春はさっきから唸っている。

「どしたの初春? 便秘?」
「ち、違いますよ! いや、よく考えたら打ち止めって聞いたことがあるような気がして……」
「じゃあその人も知り合いなの? 初春は何でも知ってるなぁ~」
「何でもは知りませんよ。知ってることだけです。
 ここまでは出掛かってるんですけど…」
「まぁそれは後でいいんじゃない? それよりどうすんの?
 盗聴器はもう使えないんでしょ?二人の会話聞けないよ?」
「それなら大丈夫です。フレンドパーク内にも盗聴器がありますから。
 昨日のうちに色々仕掛けたって言ったじゃないですか。」

当たり前のようにさらっと恐ろしい事を言う初春。
さすがの佐天も若干ひいた。 夜神総一郎もこんな気分だったのだろう。

そんな事とは知らず、上条たちは中に入って行く。
受付のお姉さんにチケットを渡すと、変わりにカードを出された。
余談だが、このお姉さんも都市伝説の被害者らしく、上条を見て顔を赤くしたのだが、
隣の彼女を見て落ち込んだ。常盤台のお嬢様が相手では勝てないと思ったのだろう。

カードの中にはチップが埋め込まれているらしく、ゲームをするときに画面にかざすと100円を入れずにプレイできるようだ。
ちなみに、乗り物に乗るときは係員にカードを見せればいいらしい。
外の人間から見れば十分ハイテクなのだが、中の人間からしたら、しかもこの未来未来した第22学区ではなんとも時代遅れな代物だ。
だが上条にとってそんな事はどうでもいい。とにかくタダがうれしいのだ。文句などあるはずがない。
普段の上条はこんな所に来ない。
補習やら買い物やらで時間がないのもそうだが、基本的にお金のかかる遊びはしたくないのだ。
RPGの中でさえ「ぜになげ」はしないくらいである。
なので今日の上条は若干テンションが高い。
対して御坂は挙動不審のようである。
さっきから、もじもじそわそわふらふらキョロキョロしている。
そんな様子に気づいていないのか、上条は追い討ちをかける。

「な、なな何で手とか繋ぐわけ!!?」
「いや、結構人多いし離れたら面倒だろ?」

佐天はまたモヤが掛かった気がした。

中はわりと賑わっていた。
遊園地やゲーセン特有のガチャガチャした音や、雑踏【モブキャラ】の声が聞こえてくる。

「ひょうか!次はこのぷりくらで撮ってみるんだよ!」
「で…でもこれ以上変な格好は……」

「なー兄貴ー本当にこのUFOキャッチャー取れるのかー?」
「まかせろ!俺はゲーセン界の課長と呼ばれた男だぜい!?
 それに舞夏の為なら、たとえ火の中水の中草の中あの子のスカートの中だにゃー!」

「ど、どうして結標ちゃんは乗れるのに先生はダメなのですか!?
 先生のほうが年上なのですぅ!!」
「だって小萌は身長足りないし……」

「何してるじゃん鉄装!! こういう所にバカは集まるから見回りはしっかりしないといけないじゃんよー!」
「ま、待ってください黄泉川先生! せめて一回だけ! 1プレイだけストⅣやらせてください!!」

「あれー? なにコレ。イチゴ味? 頼んでたのと違うんだけどな~?」
「さすが浜面。超使えないです。」
「いや、ねーから! シャケ味のアイスとか売ってねーから!!」
「大丈夫。私は役に立たなくてもはまづらを応援してる。」

「うわ~い! 今度はアレをやってみたい、ってミサカはミサカは猛ダッシュ!」
「ウロチョロすンじゃねェクソガキィ!
 ちゃンと手ェ繋いでねェと迷子になンだろォがァァ!!」
「キャハハハ! じゃあ代わりにミサカが第一位と腕を組んであげるよ。」

最近のモブキャラは随分個性的な様で……ていうか平気かここ?
一触即発っぽいメンバーがうようよしているのだが。
しかし上条も御坂も他の連中も、どうやら気づいていないようだ。
もはや奇跡である。

学園都市の技術は外に比べ20年は進んでいるが、なぜかゲームはレトロな物が多い。
上条は15年以上前のゲームを指差した。

「コレやってみよーぜ!面白そうだし!」
「ふぇ?……あ、あぁうん……」

御坂はまだドキドキしているらしく、何だか生返事だった。
そんな事とは知らず、上条は

「どうかしたのか? あ、ひょっとして負けるのが怖いのか~?」

などと要らん事を言う。 御坂も御坂で、

「な! そんなわけないでしょ!? アンタに負けるなんてありえないし!!」

と、言い返した。 少しいつもの御坂に戻ったかな?と、さらに上条は挑発する。

「いやいや、無理しなくてもいいんですよ?
 プライドをズタズタにされたくなければ尻尾巻いて逃げたって……」

言いかけて上条はハッとした。 どうやらやりすぎたようだ。
御坂からなにやら、ゴゴゴゴと音がする。
そして御坂は指を突きつけこう言った。

「いいわよ! 受けて立とうじゃない!
 その代わりに負けた方は罰ゲームだからね!!勝った方の言う事何でも聞くんだから!!」

上条は激しく後悔した。


勝負は三本勝負。3つのゲームで戦い、先に二本取った方の勝利だ。

「つーか御坂。能力使ってズルすんなよ?」
「しないわよそんな事! アンタこそ『負けたのは不幸のせいでした』なんて言い訳しないでよね!!」

両者の間でバチバチと火花が散る。 ちなみにこれは比喩表現であって、御坂の能力ではない。

第1ラウンド モンスター系格闘ゲーム

……ファイ デモンクレイドル ジゴクヲアジワエ……
……ズッダーン ドッカーン オバーチャーン ウエーンウエーン……

上条 WIN!

「はっはっはー! まずは一勝!」
「く…なによ最後の! でっかい猟師2人も出して! 卑怯じゃない!!」
「…そういう技だし…」

第2ラウンド 同じ色4つで消える系パズルゲーム

……イテ ヤッタナー ゲゲゲ……
……エイ ファイヤー アイスストーム ダイヤキュート……

御坂 WIN!

「うぅ…俺の大連鎖が……」
「でかいの一発狙おうとするからでしょ? せめて相殺用の中連鎖くらい用意しときなさいよ。」
「ていうか、頭を使うゲームで上条さんが勝てるわけがありません!」
「威張るな!!」

次のゲームで勝負がつく。泣いても笑ってもラストだ。
だがどうにも嫌な予感がする。こんなときこそ不幸が発動するのが上条だ。
しかも不幸を負けた原因にするなと釘を刺されている。
負ければ罰ゲーム。絶対にめんどくさいこと請け合いだ

(神様、仏様、デンデ様! なにとぞ今だけは力を貸して下さい!!)

敬虔な十字教徒でもないくせに、こんな時だけ神頼みする日本人丸出しの上条。 アーメン・ハレルヤ・ピーナツバターだ。

最終ラウンド 太鼓を叩いて達人になる系リズムゲーム

……キョクヲエラブドン……
……キーミーガーイタナーツーハートオイーユーメーノナカーーアーー……

いい勝負だが、僅かに上条の方の点数が高い。しかもここから上条の得意な、黄色の連打ゾーンが来る。
さらに点差を広げてやる!と、意気込んだ所で先程の嫌な予感が的中した。
変に力が入ったのか、手がすべりバチを落としてしまう。
慌てて拾う上条だがもう遅い。数秒のタイムロスなど音ゲーでは致命的だ。
もう取り返しのつかないほど点差が開いていた。もちろん逆転されて。
折角の祈りも天には届かなかった。
神も仏も、立川のアパートでバカンスを楽しんでいるのかもしれない。
そうでなくても神の加護など、自分の右手で粉砕・玉砕・大喝采しているだろうに。
この瞬間、上条が罰ゲームを受ける事が確定した。

御坂 WIN!

そんな様子を見守る【のぞく】影が二つ。

「うーん…なんかこう…もっとこういい感じになりませんかね?」
「そうだねー…最初は良かったんだけど、途中から普通の友達っぽくなっちゃったね。
 あんまりカップルっぽくないっていうか……」
「ボッスンとヒメコのデートを見てるみたいです……」
「でもまぁここからじゃない? 上条さんが罰ゲームを受けるわけだし、
 何でも言う事聞かなきゃいけないわけだしね。」
「何でもって……ぬっふぇ!!? まま…まさか御坂さん!!」
「…何を想像してるのかは知らないけど、そこまではいかないでしょ。御坂さん、意外と奥手っぽいし。」

上条はビクビクしていた。さっきから御坂が不気味なほど沈黙している。
きっととんでもない事を要求されるに違いない。
あらゆる最悪な可能性を覚悟する上条だが、御坂が口にしたのはわりと呆気ないものだった。

「…名前……」
「え…?な、なんでせう……?」
「あたしの事、これから先…な、な、名前で呼びなさいよ!!!」

キョトンとする上条。初春達はおお!と、盛り上がっている。
この一歩は周りからは見れば小さな一歩だが、御坂にとっては偉大な一歩である。

「あー…何だ。 そんなことでいいのか?
 つーかお前だって俺の事『アンタ』って呼んでるだろ。」
「あ、あたしはいいのよ!勝ったんだから!」

本当は御坂も「当麻」と呼びたい所だが、そんなことをしたら確実に漏電する。すでにギリギリなのだから。
今この幸せな時間を、気絶なんかしたら勿体無い。

上条は頭をぽりぽり掻いた。気負っていたわりには(上条にとっては)あまりにも拍子抜けな罰である。

「じゃー、次は何する?…《美琴》」
「~~~~~!!!」

言葉にならないほどうれしい御坂。
その様子を見ていた佐天はボソリとつぶやいた。

「……もう帰ろうか初春。」
「ええ!? これから面白くなりそうなのにですか!?」
「さすがにこれ以上は悪いしさ。」
「…そうですね。後は若いお二人に任せますか。」
「あはは! あたし達の方が若いって!」

軽口を叩く佐天だが、心の中は益々ざわついていた。
あんなにうれしそうな御坂を見て、なんだかんだで楽しんでいる上条を見て、
胸がギュッと締め付けられ苦しくなる。
何故かは分からないが、ここから離れたかった。

この感情は何なのだろう………?


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