The_secret_meeting. 3
美琴と上条が一緒に料理を作っている頃、佐天の部屋には初春と白井が来ていた。
こちらもメールにあった通り、料理を作っていたのだ。
「初春そっちはどう?」
「ラザニアはもうちょっとですね。うーん、いい匂いがします」
「そっか。サラダももう出来るから、後は明日まで冷やせばいいだけだよ」
キッチンに立つのは佐天と初春。白井の姿はそこにない。
「白井さーん。そっちはどうですか?」
サラダの入ったボールにラップフィルムを掛けながら、佐天が白井に問い掛ける。しかし。
「あー、白井さんなら顔ドラムの真っ最中だから答えられへんよ」
答えた声は野太いテノールであった。
こちらもメールにあった通り、料理を作っていたのだ。
「初春そっちはどう?」
「ラザニアはもうちょっとですね。うーん、いい匂いがします」
「そっか。サラダももう出来るから、後は明日まで冷やせばいいだけだよ」
キッチンに立つのは佐天と初春。白井の姿はそこにない。
「白井さーん。そっちはどうですか?」
サラダの入ったボールにラップフィルムを掛けながら、佐天が白井に問い掛ける。しかし。
「あー、白井さんなら顔ドラムの真っ最中だから答えられへんよ」
答えた声は野太いテノールであった。
現在、佐天の部屋には同じ手料理班の2人以外に、青髪ピアスと土御門が来ていた。
パーティグッズを買いに行った帰りに、佐天を訪ねてきたのだ。
「顔ドラムって、白井さんどうしたんですか?」
キッチンでオーブンをチェックしていた初春が、白井たちが囲んでいるテーブルの方へと戻る。
「いやー舞夏と電話中なんだけどにゃー」
そう答えるのは土御門。確かに片手には携帯電話が握られている。
「俺が話すと新鮮味が薄れちまうから、良かったら初春さんが直接聞いてみればいいと思うぜい」
「そうなんですか?」
よくわからないまま、初春は土御門から携帯電話を受け取った。
「もしもし? 初春ですけど……」
『おー盛夏祭の時以来じゃないのかー? 久しぶりだなー!』
「あ、お久しぶりです。覚えていて下さったんですね」
『御坂や白井からもよく話に聞いてるからなー。最近は兄貴からも聞かされてたし』
「そうなんですね。ところで、白井さんが顔ドラムしちゃうような話って何ですか?」
『おー単刀直入だなー。いいぞー君にも話してあげよう!』
「……、ほう。……ほほう」
パーティグッズを買いに行った帰りに、佐天を訪ねてきたのだ。
「顔ドラムって、白井さんどうしたんですか?」
キッチンでオーブンをチェックしていた初春が、白井たちが囲んでいるテーブルの方へと戻る。
「いやー舞夏と電話中なんだけどにゃー」
そう答えるのは土御門。確かに片手には携帯電話が握られている。
「俺が話すと新鮮味が薄れちまうから、良かったら初春さんが直接聞いてみればいいと思うぜい」
「そうなんですか?」
よくわからないまま、初春は土御門から携帯電話を受け取った。
「もしもし? 初春ですけど……」
『おー盛夏祭の時以来じゃないのかー? 久しぶりだなー!』
「あ、お久しぶりです。覚えていて下さったんですね」
『御坂や白井からもよく話に聞いてるからなー。最近は兄貴からも聞かされてたし』
「そうなんですね。ところで、白井さんが顔ドラムしちゃうような話って何ですか?」
『おー単刀直入だなー。いいぞー君にも話してあげよう!』
「……、ほう。……ほほう」
以下、土御門舞夏の話をまとめるとこういうことらしい。
いつものように兄貴の夕食を作りに、部屋を訪れた舞夏。
合鍵で入って調理を始めた舞夏だが、料理人としての嗅覚が反応した。
匂いの源は隣人、上条当麻の部屋。
推測するにおそらく肉じゃが。しかも相当な作り手の肉じゃがとみた!
ベランダを使って隣の部屋を覗き込むと、部屋の主である上条はベッドに寄り掛かって寝ているではないか。
そして、キッチンから顔を覗かせているのは、鼻歌まじりに調理している御坂の姿が。
これは乱入するよりもここから見ていた方がいいと判断した舞夏。
そのまま美琴が帰るまで秘かに覗き見し続け、また兄貴の部屋に戻ってから電話を掛けて今に至る。
合鍵で入って調理を始めた舞夏だが、料理人としての嗅覚が反応した。
匂いの源は隣人、上条当麻の部屋。
推測するにおそらく肉じゃが。しかも相当な作り手の肉じゃがとみた!
ベランダを使って隣の部屋を覗き込むと、部屋の主である上条はベッドに寄り掛かって寝ているではないか。
そして、キッチンから顔を覗かせているのは、鼻歌まじりに調理している御坂の姿が。
これは乱入するよりもここから見ていた方がいいと判断した舞夏。
そのまま美琴が帰るまで秘かに覗き見し続け、また兄貴の部屋に戻ってから電話を掛けて今に至る。
ベランダから覗き見って犯罪ですよね……と思った初春だが、最後までツッコミを入れることはなかった。
電話の向こうの土御門舞夏は言う。
『あの御坂の恋する乙女ぶりは、カメラを回したくなる画だったぞー。肉じゃが作り終わった後も、書き置きのメモを何度も書き直してたしなー。
顔が真っ赤だったから、きっと御坂にとって恥ずかしい言葉を綴ろうとしてたんだろうなーあれは。まぁ、結局は諦めたみたいだけどなー』
電話の向こうの土御門舞夏は言う。
『あの御坂の恋する乙女ぶりは、カメラを回したくなる画だったぞー。肉じゃが作り終わった後も、書き置きのメモを何度も書き直してたしなー。
顔が真っ赤だったから、きっと御坂にとって恥ずかしい言葉を綴ろうとしてたんだろうなーあれは。まぁ、結局は諦めたみたいだけどなー』
つまり、その御坂の可愛らしい様子の詳細を聞かされて嫉妬が爆発した結果、白井は顔ドラムしているようだ。
その後、サラダの調理を終えた佐天が初春と電話を代わり、全く同じ話を耳にした。
結局、人数分の計5回も同じ話を繰り返した舞夏であったが、本人は自分の楽しみを共有出来たことが嬉しいらしく、
最後に兄の土御門と会話してから機嫌良く通話を終えたようであった。
結局、人数分の計5回も同じ話を繰り返した舞夏であったが、本人は自分の楽しみを共有出来たことが嬉しいらしく、
最後に兄の土御門と会話してから機嫌良く通話を終えたようであった。
「ということは、作戦は大成功ってことですね」
「みたいだにゃー」
「あの類人猿め…お姉様の手料理なんてこの黒子でさえ滅多に食べることは出来ませんのに……」
「まぁまぁ白井さんも落ち着いてーな。おでこ冷やそ?」
「白井さん、上条さんに危害加えたらダメですよ」
にっこりと笑い、やんわりと白井に告げる初春。
しかし、そんな初春の笑顔に、彼女をよく知る白井と佐天は『黒春』を垣間見た。
「みたいだにゃー」
「あの類人猿め…お姉様の手料理なんてこの黒子でさえ滅多に食べることは出来ませんのに……」
「まぁまぁ白井さんも落ち着いてーな。おでこ冷やそ?」
「白井さん、上条さんに危害加えたらダメですよ」
にっこりと笑い、やんわりと白井に告げる初春。
しかし、そんな初春の笑顔に、彼女をよく知る白井と佐天は『黒春』を垣間見た。
ラザニアも仕上がった後、5人は小さなテーブルを囲んで話し合う。
「あーいよいよ明日が本番ですね。明日で何とか2人をくっつけたいんですけど……」
「コスチューム選びや胃袋作戦で、いくら鈍感なカミやんといえど多少は御坂さんを意識し始めてるはずと違う?」
「そうですよね。だから、あとは御坂さんが告白出来るよう、私たちで背中を押すことさえ出来れば……」
「いや、背中押すのは御坂さんじゃなくてもいいと思うぜい」
すると、土御門がニヤリと笑って口を挟んだ。
「カミやんを押すのもありじゃないかにゃー?」
「押すって土御門さん、それは上条さんも御坂さんを想ってるってことですか!?」
思わぬ土御門の言葉に、佐天が勢い良く食いつく。
「どうかにゃー? もちろん本当のところはわからないが、揺さぶりをかけるのは有りだと思うって意味ぜよ」
「揺さぶり、ですか?」
「そうだにゃー。たとえば、」
と、言葉を区切った土御門は突然、周囲を驚かす行動に出た。それは、
「白井さん。俺、実は君に一目惚れだったんだぜい」
「「「なっ!?」」」
なんと、土御門が隣に座っていた白井の肩を抱き寄せて囁いたのだ。
「な、何しよんねんつっちー!? 白井さん抱きしめるなんてーっ!?!?」
しかし、当の抱きしめられている白井は、土御門に向かって極めて冷静に告げる。
「離してくださいな、土御門さん。あなたの意図はわかりましたので」
「「「へ? 意図?」」」
「つまり、私たちがお姉様の後押しをする一方で、あなた方殿方がお姉様にちょっかいを掛け、上条さんの嫉妬を引き出そうという魂胆ですの。ですわよね?」
「さすが白井さん。察しがいいにゃー」
つまらなさそうな白井を、土御門が怪しい笑みを返しながら開放した。
「あーいよいよ明日が本番ですね。明日で何とか2人をくっつけたいんですけど……」
「コスチューム選びや胃袋作戦で、いくら鈍感なカミやんといえど多少は御坂さんを意識し始めてるはずと違う?」
「そうですよね。だから、あとは御坂さんが告白出来るよう、私たちで背中を押すことさえ出来れば……」
「いや、背中押すのは御坂さんじゃなくてもいいと思うぜい」
すると、土御門がニヤリと笑って口を挟んだ。
「カミやんを押すのもありじゃないかにゃー?」
「押すって土御門さん、それは上条さんも御坂さんを想ってるってことですか!?」
思わぬ土御門の言葉に、佐天が勢い良く食いつく。
「どうかにゃー? もちろん本当のところはわからないが、揺さぶりをかけるのは有りだと思うって意味ぜよ」
「揺さぶり、ですか?」
「そうだにゃー。たとえば、」
と、言葉を区切った土御門は突然、周囲を驚かす行動に出た。それは、
「白井さん。俺、実は君に一目惚れだったんだぜい」
「「「なっ!?」」」
なんと、土御門が隣に座っていた白井の肩を抱き寄せて囁いたのだ。
「な、何しよんねんつっちー!? 白井さん抱きしめるなんてーっ!?!?」
しかし、当の抱きしめられている白井は、土御門に向かって極めて冷静に告げる。
「離してくださいな、土御門さん。あなたの意図はわかりましたので」
「「「へ? 意図?」」」
「つまり、私たちがお姉様の後押しをする一方で、あなた方殿方がお姉様にちょっかいを掛け、上条さんの嫉妬を引き出そうという魂胆ですの。ですわよね?」
「さすが白井さん。察しがいいにゃー」
つまらなさそうな白井を、土御門が怪しい笑みを返しながら開放した。
その様子を見て、佐天はケラケラと笑いながら言う。
「なーんだ。もうビックリさせないで下さいよー。応援が必要な人が増えたかと思ったじゃないですか」
「悪かったにゃー。でも、さっき白井さんが言った通りぜよ。カミやんに揺さぶりをかけるのも有りだと思うんだにゃー」
「それには私も賛成です。名案だと思います。まぁ、さっきのはやり過ぎですけどね」
「お姉様にむやみやたらに抱きつこうなどお考えでしたら、この黒子が串刺しに致しますのでご覚悟下さいな」
スッと白井が金属矢数本を取り出して牽制する。
「もちろんわかってるよ、白井さん。ボクらもまだ死にたくないしね。そうやろ、つっちー?」
「もちろんだにゃー」
「じゃあ、話も一段落ついたことですし、明日新しいカップルが誕生することを祈って乾杯しませんか?」
「いいね、初春! あ、新しいジュース取ってくるよ」
そして、5人全員にジュースを回してから、佐天が音頭を取る。
「御坂さんの恋が成就することを願って! 乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
「なーんだ。もうビックリさせないで下さいよー。応援が必要な人が増えたかと思ったじゃないですか」
「悪かったにゃー。でも、さっき白井さんが言った通りぜよ。カミやんに揺さぶりをかけるのも有りだと思うんだにゃー」
「それには私も賛成です。名案だと思います。まぁ、さっきのはやり過ぎですけどね」
「お姉様にむやみやたらに抱きつこうなどお考えでしたら、この黒子が串刺しに致しますのでご覚悟下さいな」
スッと白井が金属矢数本を取り出して牽制する。
「もちろんわかってるよ、白井さん。ボクらもまだ死にたくないしね。そうやろ、つっちー?」
「もちろんだにゃー」
「じゃあ、話も一段落ついたことですし、明日新しいカップルが誕生することを祈って乾杯しませんか?」
「いいね、初春! あ、新しいジュース取ってくるよ」
そして、5人全員にジュースを回してから、佐天が音頭を取る。
「御坂さんの恋が成就することを願って! 乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
いよいよ明日は10人合同ハロウィンパーティ当日。
応援隊最後にして最大の作戦が幕を開ける。
応援隊最後にして最大の作戦が幕を開ける。