とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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「君って確か……」
「ギャー!!ヤメテッ!!」

 一番、二番をこんな感じで【思考漏洩】の囁き戦法で動揺させて打ち損じさせ早くもツーアウト。
 そして、三番はピッチャーにリーダーと呼ばれていたキャッチャーであった。

「悪いけど、前の二人みたいにはいかないよ」
(俺の調べた情報によるとこいつは精神感応系のレベル4……
 なんかいいネタは……)
「アイツに笑ってもらうためにここは打たせてもらうよ!!!」

 そう言ったときにリーダーが一度だけベンチにいるピッチャーを見つめたのを情報屋は見逃さなかった。
 そして、あるひとつの可能性に気付き、打つときに囁いてみた。

「君、もしかしてあのピッチャーの子の事好きなのか?」
「ブッぶあkkdfks!!!」

 見事に的中し、動揺によってファールフライを打ち上げるリーダー。
 その表情は、打ち損じで悔しいというより何で分かったというように真っ赤になっていた。
 しかし、スリーアウトになったのでとっととベンチに戻った。
 去り際にリーダーと呼ばれた少年が「何で分かった……」と呟いていたが聞かなかったことにした情報屋であった。

「本調子に見えない上条当麻のピッチングを捉えられなかったわね。何かあったの?」
「えっ! あ、いや、その……」
「ん?」

 勢いが見られない当麻のストレートを打ち損じて3者凡退に終わった自軍の攻撃を不思議に思ったピッチャーがリーダーに尋ねる。
 リーダーとしては素直に話すわけにもいかなかったので、大まかにピッチャーに打ち明ける。

「他の二人も多分同じだろうけど、俺たちの動揺を誘うようなことをキャッチャーが囁いてきた。それに動揺したから俺たち……」
「そう…………つまり姑息な手段を使ったきたのね。ありがとうリーダー、素直に話してくれて。これでますます勝ちたくなったわ」

 リーダーはピッチャーの闘志に更に火が付いたことに驚くが、思わぬ収穫に喜んだりもしている。
 そして2回表の当麻のクラスの9番の攻撃、ボール大に纏った風の威力に歯が立たずにキャッチャーフライに倒れる。

「どいつもこいつもカミやん以外だらしないぜよ。あれくらいの大きさに抑えられた風を纏ったボール、男なら思いっきり……振って……ウソォ!」
「お前にも全力で相手してあげるわよ、土御門元春! 私の竜巻、打てるものなら打ってみなさい!」

 第2打席の土御門、ピッチャーの作り出した竜巻の投球の前にあえなく三振、しかも1球ごとに吹き飛ばされるおまけ付きで。
 まるで小規模の戦場から帰ってきたかのような土御門の姿にチームメイトは同情することしか出来なかった。
 続く翔太を前にしてピッチャーはボールに纏う風をボールの倍ほどの大きさにして投げた。

(上条くんや土御門くんほどの大きさじゃないにしてもこの風、かなり凄い! なら僕も!)

 翔太はピッチャーのボールに【火炎地獄】で攻撃し、威力を殺そうとしたが纏う風の量が多く、完全には威力を殺すことが出来なかった。
 結果、翔太の打ったボールはセンターフライとなり2回表の攻撃は3人で終了するが、ピッチャーは翔太への印象を改める。

(上条当麻や土御門元春ほどじゃないにしろ纏わせる風の量も質も上げてあった。それでもセンターまでもっていかれるなんて侮れないわ、あの子供みたいな奴)

 2回裏になって当麻の腕の痺れが取れているかと思われたが、1回裏と2回表の終了が早かったので完璧とまではいかなかった。
 迎える相手チームの4番打者はピッチャー、当麻が本調子じゃないと分かっていても全力でぶつかる気満々である。

「上条当麻、お前の腕の調子がまだ戻っていないとしても私は同情も手加減もしない。それがどんな相手に対しても尽くすべき礼節だから」
「ああ、それでいいと思うぜ。俺は俺で今の全力でお前と戦ってやる、いくぞ!」
「(この回も上条をフォローしてやるぜ!)君ってどうして上条と土御門を敵視してるの? もしかして二人の恋人のことが好きだったりする?」

 情報屋の【思考漏洩】の囁き戦法を前に動揺するかと思われたが、ピッチャーは様子見して「好きよ、尊敬もしてる」と素直に答えて1ストライク。
 自分の身に起こったことを理解したピッチャーは情報屋を睨みつけた、蔑みの感情も籠めて。

「成る程ね、そうやって皆の動揺を誘ってたわけか。咎めも否定もしないけど私はこのやり方に一片の好感も持てない」
「……辛辣だね。でも勝負の世界はこうゆうものだよ。言い方は悪いけど動揺する方にも問題はあるってことさ」
「その通りよ。言ったでしょ? 私は咎めも否定もしないって。だから私はそんな小細工を真っ正面から打ち破るわ、こうやってね!」

 そう言うとピッチャーはバットにボールと同じ要領で風を纏わせる、情報屋の声も聞こえないほどの唸りを上げて。
 当麻はその光景に驚きながらも情報屋の手腕を信じて第2球を投げるが、

「し、しまったっ! こんな騒音の中じゃあ俺の【思考漏洩】は使えない!」
「言ったわよね? 真っ正面から打ち破る、って!」
「ファ~~~~ア、こりゃあ俺の出番はうおっ! ……マジかよ」

 ピッチャーの纏う風の音がうるさいせいで情報屋の声は届かず【思考漏洩】は不発、綺麗で鋭いスイングで本調子でない当麻の投球をレフトスタンドに突き刺さるホームランを叩き出す。
 一方通行が全く動かなかったのは、一回裏の情報屋の囁き戦法のハマリっぷりなら自分の出番は無いとたるんでいたからである。

「これが私の実力よ、恐れ入ったかしら?」
「くっ……タイム!」

 ピッチャーの言った言葉を完全に無視して情報屋はタイムをかけて全員を集めた。

「悪い、相手を甘く見てた……」
「大丈夫だ、まだ一点しか取られてねーんだ、他の奴らを抑えようぜ。」
「そうだにゃー、まだうちには秘密兵器が残ってるぜい」

 当麻と土御門の発言でチーム(主に情報屋)の士気は回復した。
 その後のバッターは【思考漏洩】の囁き戦法で三人続けて打ち取り、三回表、一方通行の第二打席へ

(ここいらで粘って、上条の腕を回復させてやらねェとなァ)

 一方通行の作戦、それはわざとファールを打ち続けて当麻の腕を休ませるというものである。
 しかも、あわよくばフォアボールで出塁を狙うという究極の二段構えである。

「さァ、かかってきなァ!!!」

――――――――――

 約五分後、一方通行は粘りに粘ってフォアボールで出塁した。
 五分も粘っていたのは一方通行がボール球だろうと何だろうとファールに打ち返し、ピッチャーの負けず嫌いな性格によってキャッチャーが敬遠のため立ち上がるまでずっと投げ続けていたからである。
 そして、つい先ほど満塁ホームランを打った情報屋の第二打席が始まろうとしていた。

「タイム!」

 リーダーは5分間も一方通行に粘られて疲れているであろうピッチャーへと駆け寄る。
 しかしそれは杞憂でしかなく、ピッチャーは汗こそ多く流しているものの顔には楽しげな笑みを浮かべていた。

「平気、なのか? 一方通行にあんなに粘られて」
「まあ、平気かどうかは微妙だけど大丈夫、まだまだいけるわ。それに今ので分かった、一方通行は時間稼ぎをしていた。理由は間違いなく上条当麻よ」
「あの学園都市最強の一方通行が上条当麻の為に時間稼ぎ? 何でそんなこと……ああ、そうゆうことか」
「さすがリーダー、話が早くて助かるわ。だから私も途中から気付いてあっちの思惑に乗ってたんだけどね。乗っかりすぎたけど上条当麻の腕の回復の手伝いは出来たみたい」

 ピッチャーが当麻のクラスのベンチを見るようにリーダーに視線を送ると、当麻が自分の右腕を見て笑みを浮かべているのが見えた。
 その上でピッチャーはリーダーに更に時間稼ぎをするように頼み込む、無茶なこととは分かっていても。

「本当ならそんな頼みは聞けないって言うところだけど言っても聞かないのは分かってるからな。いいさ、気の済むようにやるといい」
「ありがとう、リーダー。けど忘れないで。私は勝負を諦めるつもりはない、最後まであがき続け、そして勝つ!」
「その意気だ。じゃあこの回はその闘志を少しの間、抑えよう。クールでクレバーに、誰にも惑わされない感じでいこうか」
「んっ……! 了解。じゃあこの回はあなたの指示通りにピッチングするわ。リードの方、よろしくね」

 ピッチャーから勝気な表情が消え、冷静さと謙虚さが表に表れたがこれも全てはリーダーの能力によって感情を変更されたからである。
 リーダーの能力は精神感応系で『自分や対象となる人間の感情の書き換え』というもので、効果時間は10分~1時間と人によって異なってくる(能力解除は自由)。
 ただし同じクラスの心理掌握のように問答無用の書き換え、対象を都合のいいように操るといったことは出来ないが書き換えの幅は心理掌握に匹敵するのだ。

「随分と長いタイムだったな。それで? 大好きなあの子と話して満塁ホームランを叩き出した俺の対策は立ったのか?」
「だ、大好きって……! ああ、そっか、あんたの能力の対処方法、分かったよ。ありがとな、これで俺たちもバッティングに集中できそうだ」

 情報屋はリーダーの言っていることがよく理解出来なかったが、一回に満塁ホームランを打っている彼はノリノリである。
 しかしノリだけでどうにか出来る相手ではないわけで、相手バッテリーの思惑通りに時間稼ぎの為にフルカウントまでもって行かれた上でキャッチャーフライに。
 続く5番と6番も情報屋と全く同じ感じでアウトにされ、この回の当麻チームは無得点に終わる。

「思ったよりも時間が掛かったな、俺たちの攻撃。けどそのお陰で腕の痺れも取れたしようやく全力で投げれそうだぜ」
(というかわざと長びかされた感じだな、こりゃ。おそらくピッチャーの子の狙い通りだろうけど、こっちとしては実にありがたい話ぜよ)
「無茶するなよ上条。大丈夫だ、この俺の囁き戦法さえあれば!」

 土御門は情報屋のテンションの高さに少し不安を覚えたが、確かに彼の言うとおりでもあるので囁き戦法を続けさせることにした。
 その一方で相手チームのリーダーはバッターに対して能力を使用していた。

「相手の言葉に惑わされない、水のように穏やかで澄み切った気持ちで。……どうだ?」
「うん、不思議と落ち着いてる。これならどんなことがあっても動揺しないって思えるよ、じゃあ行ってくるね」

 そして始まった3回裏の攻撃、リーダーによって感情を書き換えられた8番バッターは情報屋の【思考漏洩】にかかりながらも取り乱すことなくヒットを打つ。
 続く9番も先の8番と同じようにヒットを打ってノーアウトランナー1塁2塁とすると土御門がタイムを取る。

「おい情報屋、お前さっきから【思考漏洩】使ってないのか? 俺はお前を信じて本気で投げてないんだぞ」
「い、いや、使ってるんだ。実際、俺の言葉にも反応してるし……」
「となるともう囁き戦法は使えないにゃー。カミやん、オレが許可する。今から最終回まで全力で投げ続けて相手をねじ伏せろ、いいな?」
「分かった。今日初めての全力投球だ、俄然やる気が湧いてくるってもんですよ!」

 そして内野陣が守備位置に戻り、1番バッターがバッターボックスに入ると当麻は誰もが目を見張るほどの豪速球を投げた。

「な……何だこのパワーは!………ぐぁあああ!!!」

 バッターはリーダーの能力によって前の8番9番と同じように打てるだろうと踏んでいた。
 そこに来ていきなりの剛速球により完全にタイミングが外れ、サードゴロのダブルプレー、ツーアウト一塁になった。

「ふーん、あれが上条当麻の本気ね……こっちであれを打てるのはリーダーと私ぐらいかしら?」
「いや、長打は無理でも普通のヒットならみんな打ち返せると思うぞ。……それにしてもうれしそうだな。」
「当たり前じゃない。あんな強い相手と戦えるんだから。是が非でも勝つわよ。」
「お前って、そんなに戦うの好きなタイプだったっけ?」
「奴らのときだけよ」

 そう言ったとき、ピッチャーが笑顔になっていることにリーダーは気がついた。
 こいつのために全力を尽くして勝とう、とリーダーが決心したとき審判の「アウトッ!」の声が聞こえ三回裏が終了、四回表が始まった。

「さてと、ついさっき思いっきり入れられた分取り返させてもらうぜ!!!」
「上条当麻!貴様はここで倒す!!」

 ピッチャーはつい先ほどより大きな竜巻をボールに纏わせ当麻に向かって投げつけた。
 しかし、ボールのコントロールがずれ、ボールはストライクゾーン外へ飛んでいった。
 だが、それだけでは終わらなかった。
 あたりの人を吹き飛ばしたり、バットをへし折ったりするボールを受け止めたリーダー及びその後ろにいた審判が凄まじい勢いでフェンスに衝突することになった。

「り………リーダーぁぁあああああ!!!!」
巻き起こった惨事に野球場全体が静まり返る中、ピッチャーはリーダーの所へと駆け寄った。
 ちなみに同じく吹き飛ばされた審判は周囲から心配されていたが、同じく吹き飛ばされた当麻は心配されないという久々の不幸扱いである。

「大丈夫? リーダー」
「あ、ああ……。こ、これくらい、いたたっ……。そ、それにお、お前が、みんなが頑張ってるんだ、あ、あと2回くらい」
「バカね。私はね、仲間が怪我して頑張ってくれることなんて嬉しくも何ともない。だから気持ちだけ受け取っておくわ。今日は本当にありがとう」

 ピッチャーはそう言うと、リーダーをそっと横たえた後で迅速に担架を2つ(リーダーと審判の分)用意させるように常盤台側に頼み込んだ。
 その後でチームメイトを集め、少し話し合った後でチームメイトに頭を下げてすぐさま当麻チームのベンチへと向かい、

「私たちはこの試合、棄権するわ。おめでとう、あなた達の勝利よ」

 自軍のギブアップを告げたピッチャー、その表情に悔しさは見受けられなかった。
 ちなみに1日目のギブアップは最低でも試合開始から10分経過しないと認められないもので、球技大会の体裁を考えての教師側の考えである。

「……意外だにゃー。お前さんならキャッチャー1人欠けても代理立てて戦うとばかり思ってたぜい」
「違うって土御門。きっとこの子たちは俺たちに敵わないって分かったからギブアップしたんだよ。そう、満塁ホームランを打ったこヒイッ!」

 この試合で1番の功労者であろう情報屋が気を大きくして若干調子に乗っているのを、ピッチャーは風を纏った自分の足でベンチを粉々に蹴り砕いて黙らせる。

「勘違いしないで。リーダーが動けるようだったら棄権なんてしてないわ。お前達に敵わないなんて思ってない、仲間が大切だから棄権した。ただそれだけよ」
「最初の演技がウソみてェな負けず嫌いで潔い性格じゃねェか。そうゆうバカは俺は嫌いじゃないぜェ」
「アクセラのさっきの発言は浮気の発言として後で打ち止めちゃんに報告するとして、だ。1回戦から楽しい試合だったぜい。また手合わせしたいもんですたい」
「むぅ……。まあそっちがいいって言うなら、いつでも……。けど言っておくわ、土御門元春。私はお前が白雪さまに並び立つ強さを持ってるとは……少しは認めるけど」

 土御門がいつものスマイルで差し出してきた手をピッチャーは渋々ながらも手を取って握手を交わし、少しだけ寛容になった所を示した。
 そして次は先ほどのピッチングで吹き飛ばされた当麻の所へ向かうのだが、

「当麻、怪我してない? 試合ならもう終わったから治療してあげるわよ、付きっきりで♪」
「おおっ! それはまた魅力的なお誘いで! だったら今すぐに……悪い美琴、ちょっと待っててくれ」

 人目も憚らずに堂々といちゃついている上琴に心底イラッと来たが、当麻の切り替えを見て落ち着きを取り戻す。

「私の竜巻を真っ正面から打ち返すほどの強さ、試合が終わって恥も外聞もなく御坂さまに甘える軟弱さ。どっちが本当のお前なの?」
「どっちがって言われてもなぁ、どっちも本当の俺だぞ。それはともかくさ、試合楽しかったぜ。ところでさ、どうして上条さんと土御門を敵視してるのでせう?」
「簡単よ。お前達二人が第3位と第5位の恋人でその二人を弱くしたからに決まってるじゃない。強い女性を弱くさせる存在を私は認めないわ」

 上琴は思った、どうして自分達に関わってくる人間というのはこうも勘違いをしてくるのかと。
 ピッチャーを納得させる為に当麻ではなく美琴が説明する、彼女の誤解に関することの全てを。

「……つまり御坂さまと白雪さまが堕落して弱くなったのは勘違いで逆に二人とも強くなれた。特に白雪さまは土御門元春がいたからレベル5になれた、と」
「確かにあなたの考えることも分かる気がする。実際、当麻と恋人になってからは当麻一色ですっごく大好きで愛してるし、それが堕落に映ることも承知してる」
「御坂さま……」
「でも当麻が居なかったら今の私は居ないし、もしかしたら弱くなってたかもしれない。当麻という大切な人が居るから私は強くなれたの。分かってくれた?」

 ピッチャーは少しの逡巡の後で納得したように頷くと、上琴に謝罪の意味を込めて頭を下げた。

「二人には私の身勝手な思い込みで迷惑をかけてしまってごめんなさい。後で土御門元春にもすまかなったと伝えて欲しい」
「いいって別に。むしろすぐに納得してくれてホッとしてるくらいだからさ。あとさ、出来れば美琴のことをさま付けは止めてくれないか?」
「それは無理。私は強い女性は年齢に関係なく敬意を払うって決めてるの。超えるべき目標には好意と尊敬を以って接する。それが私、翠嵐 纏(すいらん まとい)よ」

 ピッチャー改め翠嵐は最後になって自分の名前を告げた後で引き上げてる自分のクラスへと戻りながら、心理掌握への報告を考えていた。
 翠嵐が去った後で当麻は美琴に肩を貸してもらって立ち上がりながら、翠嵐の言葉を思い返して美琴に一つの可能性を示唆する。

「あの翠嵐って子さ、もしかしたら美琴に決闘申し込むんじゃないか? いや、下手したら白雪や麦野にも……」
「あー、有り得るわね。能力見る限りだと結構強そうだし、苦労しそうだわ。昔の黒子のような子たちとは違うからそうゆう意味だと安心かな」
「ははっ確かにそうだな。それよりもさ、次の試合まで時間もあることだし美琴さんの治療というものを」
「おーーーーいっ、上条くーーーーんっ! 美琴ちゃーーーーんっ!」

 1回戦でこれだけハードなので今後の試合も大変だと思った当麻は早く美琴の手厚い愛の看病のお世話になりたいと思っていた。
 しかし当麻は知ることになる、準決勝に駒を進めるまでの全試合を全て圧倒的な戦いで勝ち進み、1回戦が1日目で1番大変だったということを。
 上琴が2人っきりで治療できる場所、つまり保健室へと向かおうとしていたその時、上空から月夜が降り立った。

「あーあ、やっぱり間に合わなかったよ。1回戦さっさと勝ってきたから少しは応援できると思ってたのに~」
「うちのクラスの相手は心理掌握さんのクラスだから最終回までもつれると思ってたからちょっと意外だったな」
「俺らの試合が始まるのが少し遅れたのも原因の一つだと思うぜ。白雪の応援団がはしゃぎすぎてたもんな」

 土御門を応援できなくて残念がってる月夜の所へ少しだけ遅れて真夜と彼にお姫様抱っこされた真昼が合流する。
 真夜に降ろされた真昼がふとスコアを見て、自分達のクラスが5点しか取れず、1点取られたことにガッカリした。

「何だよお前ら、4回で終わっててもたった5得点しか取れてなくて、しかも1失点かよ。俺らなんて10分で10点の無失点だぜ♪」
「そんな厳しいこと言わんで欲しいぜよ、井ノ原姉。いくらそっちが10分で10点取ったからって……マジで?」
「元春にも見せたかったよー。私の華麗で強烈な必殺シュートの数々! 井ノ原くんの相手オフェンスを蹴散らす悪魔のようなディフェンス! 真昼ちゃんの見事な指揮っぷり!」
「白雪さん、俺のことを悪魔のようなってのはちょっと……。ちなみに白雪さんが7点、真昼さんが3点取ったよ。俺は得点禁止されてるからな、今日1日と準決勝前半まで」

 当麻たちの所に合流した土御門たち野球組は月夜たちの試合結果に驚きを隠せない。

「言っとくけどその3人が言ってる以上に一回戦は悲惨だったぞ、相手がな……。俺なんてボール回ってこねぇからアピール出来ねぇし」
「東原くん、どんな試合だったの?」

 野球組とほぼ同じくらいに合流した東原に翔太がサッカーの1回戦の試合内容を尋ねた。
 東原は少し悩んだ後で当麻達に試合内容を聞かせることにした。
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