とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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「あ……ありえない……」
「あんな華奢な体でこんな球を放るなんて………」

 相手チームが現在一番恐れているのはギブアップを認めてくれない削板ではない。
 マウンドの上でピッチャーをやっている五和である。

「ありえねぇよ………あんなかわいい顔していて160kmの剛速球を放るなんて……」
「しかも、全く軌道が読めない球を投げてくるんだぜ………打てるわけがねぇ………」

 そう、彼らは今の今まで一球たりとも五和のボールにかすりもしなかったのである。
 さらに、こちらのピッチャーは完全に打ちのめされてグロッキーな状態になってしまった。
 ………そのあきらめたような態度が削板は気に入らないらしく、ギブアップを認めてもらえない理由であったが彼らは知る由も無かった。

(早く………終わってくれーーーーーぇーーーー!!!!)×相手チーム全員

 結局、最終回も五和の投げる剛速球に一球も打つことができず、彼らは敗北してしまった。

――――――――――

「本当に申し訳ありませんでした。自分達に付き合わせる形になってしまって」
「私からも謝罪しよう、申し訳ない。あの根性馬鹿にはしかるべきお灸を据えておこう」

 試合終了後、見た目も心もボロボロな相手チームに謝罪をするエツァリとショチトル。
 その丁寧な物腰も相手チームが許す要因の1つだが、

「いや、もういいですから。確かにこちらも少し諦めが早すぎたのも事実です。それに当の本人は充分罰を受けてるようですし……」
「ありがとうございます。ああ、それと彼のことはお気になさらずに」
「お気になさらずと言われても……。あのメイドのピッチャーさんに槍で殴られたり切り刻まれてるのは……」

 彼らの視線の先で試合を強要した削板がメイド姿の五和に海軍用船上槍でボコボコに殴られたり、七教七刃で切り刻まれてるのが一番の理由だ。
 いくら酷いことをされたといっても五和の折檻は行き過ぎだと思っていた相手チームにエツァリとショチトルが揃って「死なないから平気」と一言。
 それに納得するしかなかった相手チームに再度頭を下げたエツァリ、ショチトルと共に削板への攻撃を終えた五和と合流する。

「お疲れ様でした五和さん。こちらのアフターケアはとりあえず終わりました」
「ハァ、ハァ、ハァ、お、お疲れ様です、ハァ、ふ、2人とも……」

 まるでボロ雑巾のように倒れている削板、普通なら彼に同情するのだがそれは時間の無駄というもの。
 それを球技大会からの短い付き合いとはいえ嫌というほど知っている五和、エツァリ、ショチトルは同情も心配もしない。
 そう、レベル5第八位になってもナンバーセブンを名乗り続ける削板が首をコキコキ鳴らしながら起き上がるのが分かっているから。

「あ~~、相変わらず根性入ったいい攻撃しやがんなぁ五和。で? 何で俺は攻撃されたんだ?」
「……あのですね削板さん。戦意喪失した相手に試合を強要しておいて反省の1つもしないんですか?」
「何を言う! 反省するなら根性が足りてないあいつらだ! 結局最後まで試合したことは少しは根性入っ痛っ!!」

 全く反省の色を見せない削板を五和が海軍用船上槍で頭をどつく、しかし削板は頭をさすりながら平気そうな表情を見せる。
 エツァリは目の前の少年の理解を超えた打たれ強さに驚きつつも今後の試合についての提案を出す。

「いいですか削板さん。今後、相手がギブアップしたなら素直に受理して下さい。分かりましたか?」
「なぁにぃ! エツァリ、お前いつからそんな根性の無い言葉を吐くようになったぁ!」
「いつからも何も自分はいつもこんな感じで……じゃなくてですね。学校側のスケジュールをあなた1人の捻じ曲がった根性の犠牲にするつもりですか?」

 エツァリの言葉に「ぬぐっ!」と呻いた後で渋々ながらも了承した削板を見てエツァリは思う、彼の操縦法が分かってきたと。
 なお、最終手段として原典を使おうかと思っていたエツァリ、削板が素直に言うことを聞いてくれてホッとしているのは間違いなく本人だろう。

「五和、クールダウンを忘れるな。お前がいくら頑丈とはいえ万が一があっては私たちも心配だ」
「ありがとうございますショチトルさん。私なら大丈夫、この調子でガンガン投げていきますから」
「根性入ったいい言葉だぜ五和! それでこそ俺が気に入った根性満点のいい女だ! よしお前ら、残り試合も根性入れて勝ち続けるぞぉ!」

 1人で豪快に立ち去る削板を呆然と見送る五和、先ほどの彼の言葉に自身の理解が及んだ数秒後、顔を真っ赤にさせて走り去った。

「なぁエツァリ。削板の真意はともかく五和も満更ではないのか?」
「違いますね。確かに削板さんの言葉は少なからず五和さんの心を動かしたでしょう。ですが彼女は上条さん一筋です、当然今でも」
「では何故顔を赤くさせたのだ?」
「削板さんの言葉に少しでも心が動いた自分が恥ずかしかったのでしょう」

 まあこいつも似たような人種だったからなぁ、ショチトルはエツァリの推論に納得していた。
 ちなみにエツァリが率いるこのチームも圧倒的な力で準決勝まで勝ち上がることになる、結局ギブアップを認めない削板に悩まされながら。

――――――――――

 そんなこんなで球技大会は進み、ただ今お昼の休憩の真っ最中。
 ギブアップが適用されたお陰もあって、午後はA・Bブロックの全種目の試合は少なくなっている。
 Bブロックの常盤台では上琴、土白、青黒、結月(結標と翔太)が昼食を利用していちゃついていた(井ノ原ツインズは赤音が居ないので普通に仲良く)。
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