とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

17-45

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匿名ユーザー

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「はい当麻、あーん」
「あーん」
「元春、あーん♪」
「あーん」
「○○様、あーんですの!!」
「あーん」
「はい、翔太あーん♪」
「あ……あーん」

 自分が用意したお弁当を相手に食べさそうとしている美琴たち四人。
 ちなみに、翔太が少しだけ戸惑った理由はその食べさせようとしたものが原因である(かわいそうな卵みたいなもの)
 この様子を見ていたクラスメイト達が嫉妬のオーラを出していたのは言うまでもない。

「……よくみんなが見てる前であんなことできるよね、真昼さん」
「まあ、俺たちも見てなければできるけどな!」

 バカップル達を見て妙な対抗意識を持つ真昼。
 真夜はどうかここから変な方向に進まなければいいなと淡い期待を抱いていた。
 なお、隅の方で紫木が

「俺もいつか吹寄と………」

 と、ぼやいていた………。

――――――――――

 すこし時間が戻り、常盤台保健室。
 その扉の前にいたのは、メン子こと心理掌握に連絡が終わった翠嵐だった。
 ここにきた理由は一つ。
 第一試合で怪我をさせてしまったリーダーを見舞うためである。

「………はいるわよ、リーダー」


病室の中から入室を促す声が聞こえ、翠嵐は病室へと足を踏み入れた。
「…リーダー、その怪我……。」
「別に、大したことないって。軽い打撲だってさ。」
「でも……。」
「それよりもすまなかった、試合を中止にまでしてしまって。俺がもっと根性出して試合を続けていたら……」
「いいの。それよりリーダーはしっかり体を休めて。」
「でも、お前はあんなに先輩たちのことを倒そうと努力してきたじゃないか。その努力が報われなかったのは俺のせいだろ。」
翠嵐はすぐさま否定した。
「そんなことない!リーダーに怪我を負わせたのは私。だからリーダーのせいなんかじゃないわ」
「いや、でも……」
翠嵐はそれに、と前置きして
「一人も欠けることなく戦う事にこそ意味があるわ。
リーダーに無理をさせて勝ったとしても意味ない。そんな勝利よりだったら私は迷わず貴方を選ぶわ。」
「翠嵐……」
「リーダー。確かに負けたことは悔しいわ。でも、それ以上に貴方を守れてよかったと思う。だって……---------」

そこまで言って翠嵐は病室を後にした。伝えられなかった自分に多少腹が立った。目尻が熱くなる。そこへ
「---…嵐---」
彼が呼ぶ声が聞こえた。何かに引っ張られるように足を止め、翠嵐纏は病室へと踵を返す。

病室の中にはきっと二人が勝利よりも強く望んだ世界が広がっている。

――――――――――

 そして時間は再びお昼の常盤台、彼女持ちながらもいちゃつけず昼食を摂っているのは一方通行、浜面、服部。
 恋人が隣に居ない3人は自分達の弁当を比較するという、分かりやすい暇つぶしを実行中。

「滝壺って思ったより料理上手なんだな。郭には少し劣るけど」
「てめっ半蔵! さり気なく俺のお気に入りの卵焼きをつまむんじゃねぇ! つーわけで流れ的にアクセラの弁当……はパス」
「浜面ァ、そのパスってのはどうゆう意味だ? まさか打ち止めが頑張って作った弁当がつまめねェとか言わねェよなァ?」

 3人の恋人の弁当に順位を付けるなら滝壺、郭、打ち止めといったところだが3人とも自分の恋人の弁当が1番だと自負している。
 しかし打ち止めの弁当は焦がしたりしてるので基本真っ黒、お世辞にも美味いとは言えないが頑張りだけは1番である。

「そっ、そんなわけねーだろ! 俺はただ、アレだ。打ち止めちゃんがアクセラの為に作った弁当を食べるのは忍びないって思っただけで」
「遠慮すンな。俺のから揚げとお前のから揚げ、交換だ。ホラよっ」

 すかさず一方通行が自分のから揚げ(らしき物体)を浜面の口に放り込むと、自分は浜面の弁当から手早くから揚げを取って食べた。
 ジャリッ!! という音を立てるから揚げに悶絶してる浜面を尻目に一方通行は滝壺お手製のから揚げを堪能した。

「ヘェ、打ち止めのから揚げよりジューシーじゃねェか。滝壺のやつ、なかなかやるじゃねェか。……どうした? 浜面ァ」

 打ち止めのから揚げにノックダウン寸前の浜面、から揚げについて抗議しようとしたが止めた。
 というのも今の今まで一方通行が打ち止めのほぼ真っ黒弁当を普通に食べてるのを見て下手なことは言ってはいけないと防衛反応が働いたからである。
 それは服部も同じで一方通行の不満の無い顔を見たらそれ以上の追求が出来なくなったのだ。

(郭のやつ、俺が言ったとおり特大兵糧丸は入れなかったな。栄養価は高いけどすっげー不味いんだよな、あれ)

 兵糧丸とは忍者の携帯保存食で栄養価満点だが、色々と味に問題があるものを使っているので不味い代物。
 しかし明日、その兵糧丸が弁当に入れられることなど夢にも思わない服部は気持ちを切り替えて一方通行と浜面と楽しく昼食を食べるのだった。

――――――――――

「ふーっ、ようやくひと段落したのよ。まさか球技大会専用メニューのスタミナ定食がここまで人気を博すとは……」

 場所は変わって友愛高校食堂、食堂のおじさんこと建宮は昼食ラッシュを捌き切って一休みの最中だった。
 ちなみに上条のクラスで唯一こちらのブロックに居る吹寄率いるバレー組は居ない、茜川が持ってきた真夜製の豪華五段重ね弁当を食べているので。

「このスタミナ定食も飾利姫に食して頂きたかったがこればっかりは無理な注文か。……そういえば」

 建宮は思い出す、今朝出かける前に初春にかかってきた電話について。
 当然ながら会話内容を立ち聞きするなど出来るわけもなく、ただ初春が楽しそうな笑顔を浮かべているのは分かったのだが、

「あの愛らしい笑顔をGWが終わるまで見られない理不尽な展開が待ってる気がしてならんのよね。俺の思い過ごしであってくれればいいのだが……」

 しばらく初春と会えないという建宮にとっては嫌すぎる予感を感じていた。
 そのことについて考えようとした建宮、しかしそれどころでは無くなる来訪者の声が聞こえてきた。

「ごーはんごはん♪ さいじのごはんたっべほーだーい♪」
「この変な歌は……禁書目録! なぜここにというかどーして食べ放題とか歌ってるのよ! 俺にツケるつもりか!」

 インデックスの声を聞いた建宮はすぐさま臨戦態勢(?)に入ると、食堂に【歩く教会】チームが現れた。

――――――――――

「さいじ、ご飯食べさせてほしいんだよ!!」
「あ、建宮私達の分も超お願いしますよ、もちろん建宮のツケで」
「ぎゃーー!!絹旗、なぜお前さんまでいるのよなああああ!!!!しかもツケってお前ええええ!!!!」

 ひょっこり現れたインデックスと絹旗の発言にギャーギャー騒ぎ出す建宮。
 すると、さらに入り口から麦野、ステイルそして御坂妹が入ってきた。

「建宮、当然僕らだから料金タダでおかわり自由ぐらいのサービスはつけてくれるよね?」
「ちょっとステイル!!そんなことしたら俺は金欠で死ぬから!!!!」
「誰だか知らないけど私にもサービスしてくれるわよねぇ?」
「当然、ミサカにもその権利はありますよね、とミサカはさも当然のように席に座ります」

 食堂で好きなようにやり始める『歩く教会』チーム一同。
 このとき、建宮にできることはたった一つだけだった。

「………不幸だァーーーー!!!」

 そう、幻想殺しの少年の口癖を真似ることだけだった。

――――――――――

 一方、上条のクラスのバレー組。
 彼らはそんな建宮の叫び声を聞きながら赤音が持ってきた真夜製の豪華五段重ね弁当を食べていた。

「そういえば、ついさっき聞いたんだけどバスケになんか乱入チームが入ってきたらしいわよ」
「へぇ~、私が聞いたのはこっちの野球組の試合時間がすごく押してるらしいよ~」

 楽しそうに会話を続ける吹寄と赤音。
 その一方でバレー組のリベロたる野原が隅っこの方で縮こまっていた。

「スパイク怖い…スパイク怖い…スパイク怖い…」

 彼が縮こまっている理由、それは少し前の試合が原因であった。
 その試合で相手の選手が放った光の屈折を利用した分身スパイクを見事に顔面に食らってしまい、一時的に気絶してしまった。
 しかも、その気絶した状態を治すために赤音が【鼓膜破砕】を使用してたたき起こしたためこんな状態になってしまったのである。

「……野原、いい加減戻れ」
「野原君、さっき【鼓膜破砕】を使ったのは謝るからさ~」

 しかし、一向に戻らない野原のために吹寄は最後の手段を使った。

――――――――――

「そういえば野原。さっきあたしの所に数名の女子が来たわ。あのレシーブしてる男子のこと、紹介してくれって」

 吹寄の言葉を聞いた野原はガバッ! と起き上がり吹寄の肩を掴むが頭突きをくらう羽目に。
 痛みに耐えながらも期待の眼差しを送る野原に辟易しつつも、吹寄は言葉を続ける。

「貴様の頑張りを認めてくれる女子が今の貴様の姿を見たら幻滅するわね。そしてその女子は流れるように上条に」
「頑張る! 俺頑張る! 俺に惚れてくれた女の子達の為にも!」

 吹寄の言葉を曲解して復帰した野原は真夜製の豪華五段重ねを食べ始める、誰が作ったのかも知らずに。
 その様子に吹寄と茜川だけでなく他のチームメイトも引いていた。

「うまっ! この弁当マジうまっ! この弁当作ってきたの吹寄か?」
「あたしじゃないわよ。というか野原、貴様この弁当誰が作ったのか聞いてないの?」
「しょうがないよ、私がこのお弁当出した時にはもう野原君あの状態だったし。真夜君が作ったって説明聞いてないんだよ」

 茜川から真夜が作ってきたと聞き、野原の手が止まった(口の中のものは飲み込んでいる)。
 そして少しして野原は号泣しながらどこかへと走り去ってしまう。

「ど、どうしたの? 野原の奴」
「きっと女の子が作ってきたと思ってたんだろうね~。朝から頑張ってこのお弁当を作ってきたって妄想して萌えたんじゃないかな~」
「ああ、それで真実を知ってああなったのね。本当に大馬鹿ね、野原って。それより茜川さん、このお弁当のレシピだけど教えてもらえる?」

 吹寄のお願いに茜川は迷うことなくOKを出して後日、真夜からレシピを渡すことを約束する。
 真夜製の豪華五段重ね弁当を完食した吹寄たち、残り試合も勝利して準決勝へと駒を進めるのだった。
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