とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part07

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匿名ユーザー

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12月24日


―――


20:05 とある高校男子学生寮の一室 


美琴「…ね、インデックスはいつ戻ってくるの?」チュッ

上条「ん…。そろそろ戻ってくるはず…」チュッ

美琴「…んぅ。じゃ、それまで、こうしてても、いいよね?」チュク

上条「…ああ」チュ

美琴「…はむ」チュゥ

上条「ん…」ピチャ

美琴「…」チュッ

上条「…」チュゥ

ピンポーン

美琴「!!」ビクッ

上条「!!」ビクッ

インデックス「とうまー。ただいまなんだよー」ドンドン

上条「…時間切れだ」

美琴「…そうね。残念だけど」

上条「冷蔵庫からケーキとジュース出してきてくれるか?」

美琴「りょーかい」

お互い立ち上がって小さく微笑み合い、軽く唇を合わせてから少年は玄関へ、少女は台所へと向かう。

上条「おかえり、インデックス」

インデックス「ただいま。とうま。む。美味しそうな匂いがするんだよ!」

上条「美琴がたくさんシチューを作ってくれたからな。明日の朝は豪勢だぞ」

インデックス(む。自然に名前で呼んでる)「…さすがみことなんだよ!」

美琴「おかえりなさい。インデックス。ちょうどケーキを食べようと思っていたところよ」

インデックス「いいタイミングで帰ってきたんだよ!」

美琴「ふふ。手を洗ってきなさい」

インデックス「わかったんだよ!」

洗面所へと走っていく銀髪の少女を見送ってから、テーブルの上にケーキとジュースを置いた茶髪の少女は、部屋の隅に置いておいた袋を見て眉を顰める。

美琴「良く考えたらインデックスって外出着は修道服しか持ってなかったっけ…」

上条「簡素な(激安)ワンピースなら持っているはずだぞ。まあ飛行機に乗るときくらいしか着ないけど、またどうして?」

美琴「修道服だと袖が邪魔でダウンジャケット着れないかなー?って思って。でも大きめなもの買ってきたし大丈夫かな?」

上条「そもそもアレの上から着ていいものなのか?それって?」

美琴「宗派によると思うけど、学舎の園のシスターは修道服の上から普通にマント羽織ったりしてるから大丈夫だと思う」

上条「そっか」

インデックス「わわっ。おっきいケーキなんだよ!」キラキラ

上条「ふふん。上条さん驕っちゃいましたよ」

インデックス「偉いんだよ、とうま!」

美琴「あ、インデックス、ちょろっとフード取って両手を水平に伸ばしてくれる?」

インデックス「なぜ私が磔刑の真似をしなくちゃいけないんだよ?」

美琴「ああ、違う違う」ゴソゴソ

不満そうな少女に向かって、美琴は慌てて紙袋から白いダウンジャケットを取り出して広げる。

美琴「これ、インデックスにと思って。合わせてみようかなってさ」

インデックス「あったかそうなんだよ!?えっと、フードを取って…。みこと、これでいい?」

ダウンジャケットを見て、銀髪の少女は言われたとおりにフードを外し、両手を伸ばした。

美琴「うん。修道服の袖を押さえて持ってねー。…よっ、と。うん。着れるみたいね」

インデックス「もこもこで暖かいんだよ!?」

美琴「よかったあ。着られて。これで外行く時も寒くないでしょ?」

インデックス「ありがとうなんだよ!みこと」

美琴「どういたしまして。脇にポケットがあるから、そこに手を入れるといいわよ」

インデックス「確かに暖かいけど、危ないかも」



美琴「確かにそうねー。じゃ、明日、手袋とか買いに行こうか?」

インデックス「いいの?」

美琴「女の子だもん。もっとお洒落しないとね」

もそもそとフードを被りながら、銀髪の少女は言う。

インデックス「でも、美琴はいつも同じ格好だよね?」

美琴「う、これは学校の制服で、アンタの修道服と同じようなものだから仕方ないのよ」

インデックス「そっか」

上条「はは。インデックス。なんかスノーマンみたいだな」

フードを被り終わった少女を見て、家主の少年がそう言った瞬間、何かが弾けるような音と共に、室内の空気が変わった。

上条「えーっと、インデックスさん?」ダラダラ

インデックス「…どうやらケーキの前にとうまの頭を齧らないといけないみたいなんだよ」ガチガチ

上条「待ってくださいインデックスさん!み、美琴?インデックスを止めてくれ」

美琴「…当麻ゴメン。さすがに女の子を『スノーマン』って言っちゃうのは擁護できないわ」

上条「え?なんで?ちょっと落ち着いてくださいインデックスさん!?可愛いじゃんかスノーマン!」

インデックス(みことも普通にとうまのことを名前で呼んでいるんだよ)「…私は女の子なんだよ、とうま!」ガブッ

上条「ぎゃああああああああっ!!不幸だあああああっっ!!」

―――

インデックス「とうま。みこと。私に言うことあるんじゃないの?」モグモグ

ケーキを頬張りながら銀髪の少女が言うと、同じようにケーキを食べていた少年と茶髪の少女の手が止まった。

上条「…インデックス」

美琴「…」

大きく息を吸い込み、少年は真っ直ぐに銀髪の少女を見た。

上条「俺、美琴と婚約した」

インデックス「え?婚約!?」

上条「あー、なんていうか、自分の気持ちに素直になったらさ、美琴を離したくないって思って」///

美琴「当麻」(なにこれ、嬉しすぎる)///

インデックス「驚いたんだよ。みことがとうまのこと好きだっていうのはバレバレだったんだけど、とうまがみことのことをそんなに好きだったなんて思わなかったんだよ」

美琴「うぇ!?わたし、そんなにわかりやすかった!?」///

インデックス「暇さえあればとうまを見ていて、頬を染めていれば誰だってわかるんだよ」

美琴「そ、そんなことしてた?わたし!?」///

インデックス「うん」

上条「…」(俺はてっきり怒って睨んでるのかと思ってたんですけど!?あれ、照れてたのか?)

インデックス「まったく、とうまは女の子の気持ちに疎いんだよ」

上条「疎いも何も、俺なんかに好意を寄せてくれる子なんているわけないだろうが!」

美琴「ここに居るわよ馬鹿!!」

上条「美琴…」ジーン

美琴「当麻…」

インデックス「いきなりふたりの世界に入るのはやめて欲しいんだよ」ハァ

上条「わ、悪い」///

美琴「ご、ごめん」///



インデックス「…とうま」

銀髪の少女は皿の上にフォークを置き、真っ直ぐに少年を見る。

上条「どうした?インデックス」

インデックス「とうまは、伴侶としてみことを選んだんだね?」

上条「…そうだ」

美琴「…」(やっぱり、インデックスも当麻のこと…)

インデックス「みことも、伴侶としてとうまを選んだんだね?」

美琴「…うん」

インデックス「おめでとう。とうま、みこと」ニコ

上条「あ、ああ」

美琴「ありがとう、インデックス」

銀髪の少女に返事をした後、少年はいつの間にか伏せていた顔を上げて銀髪の少女を見る。どことなく寂しそうな表情。

上条「あ、あのな、インデックス!俺と美琴は恋人になったけど、お前はこのままここに居ていいんだぞ!上手くいえないけど、その、お前は俺にとって家族みたいなもんで…」

インデックス「みことととうまが姦淫しないよう、シスターである私がしっかり見張ってあげるんだよ!」

上条「ちょっと待て!なにさらっと凄いこと言ってやがる」

美琴「か、か、か、かん、かん、かん………」アワワワワ///

上条「美琴、落ち着け」ポン

美琴「ふにゃー」///

インデックス「…その様子なら大丈夫そうなんだよ。…それで、ね、とうま。…本当にいいの?」

上条「何がだ?」

インデックス「私、ここにいても、いいの?」

真っ直ぐに少年を見つめて、銀髪の少女は言った。

美琴(インデックス、アンタ…)

上条「お前なにを言ってるんだ?」

インデックス「家族でも恋人でもない私が、ここにいてもいいの?」

上条「お前…。何でそんなこと言うんだよ」

インデックス「だって、私、他人だし」ショボン

上条「なっ、お前、いまさら何言ってやがる」

少年は銀髪の少女の頭に手を置くと、そのままぐりぐりと撫でる。

インデックス「痛いんだよ、とうま」

上条「インデックス。俺は『御坂美琴と彼女の周りの世界を守る』って約束してるんだよ。そして、その世界にはもちろんお前も入っている」

インデックス「…とうま」

上条「美琴。俺はインデックスのことを家族と同じように考えてる。だから、こいつがこのままここに居ることを許してやってほしい」

美琴「許すも何も、アンタが家族だって言うんならわたしがどうこういうことじゃないでしょ」(わたしと私の周りの世界を守るって…)///

上条「スマン」

インデックス「…みこと」

美琴「それに、と、と、と、友達を追い出すような真似、わたしにはできないわよ」///

インデックス「ともだち?」

美琴「わ、わたしは、インデックスとは友達だって思ってるけど…駄目、かな?」



インデックス「ふ、ふえええええんっっ!!」

上条「だああああっ!泣くなインデックス!」

美琴「わっ、わっ、何で泣くの!?そんなに嫌だった!?」

インデックス「う、嬉しいんだよ。とうまが居ても良いって言ってくれて、みことがともだちって言ってくれて嬉しいんだよ!ふええええんっ!!」

上条「インデックス…」ナデナデ

美琴「…」

茶髪の少女は銀髪の少女の後ろに回り、背中から抱きしめた。

インデックス「みこと?」

美琴「…ごめんね」ボソ

インデックス「…いいんだよ」ボソ

美琴「ありがとう」ボソ

少年に聞こえないように言葉を交わすと、少女達は小さく微笑みあった。

上条「む。なんかハブられてる気がする」ムスッ

美琴「はいそこ、女の子に嫉妬しない」

インデックス「鈍感の癖に嫉妬深いんだよ。とうま」

美琴・インデックス「「ねーっ」」

上条「…」(なんか突っ込んだらマズイ気がするからスルーしておこう)

インデックス「はー。安心したら甘いものが食べたくなったんだよ。それ、食べていい?」

そう言うと銀髪の少女は半分以上残っているホールケーキを指す。

上条「おう、いいぞ」

インデックス「いっただきまーす」

美琴「いきなりホールごといっちゃうの!?アンタらしいというかなんというか、凄いわね」

インデックス「もぐもぐ。美味しいんだよ、むぐ」

上条「まあ、俺達も食べたからいいだろ」

美琴「まあ、そうね。インデックス、明日は何時に迎えに来ればいい?」

インデックス「朝ご飯にシチューを食べるから9時ごろで良いんだよ」

上条「いや待て、学校あるだろうが」

美琴「え?常盤台は昨日から冬休みだけど?当麻、授業あるの?」

上条「なんですと!?俺の高校は火曜日まで登校日だぞ」

美琴「そうなんだ。ご愁傷様。わたしは休みだからインデックスとお買い物」

上条「くっ、なんか悔しいな」

美琴「まーまー。明日もご飯作ってあげるから、がんばって勉強してきなさい」

上条「それは嬉しいな。サンキュ。美琴」

インデックス「みことのご飯は美味しいから大歓迎なんだよ!」

美琴「ふふ。ありがと。さて、じゃあそろそろ帰らないと」

上条「送ってく。インデックス、留守番頼むぞ」

インデックス「任せてなんだよ!」

美琴「じゃあ、インデックス、また明日ね」

インデックス「うん。またね。みこと」


―――


20:45 とある公園 自動販売機前

自動販売機の陰で抱きしめあい、やや長めに恋人のキスをした後、少女が名残惜しそうに背を向ける。

そんな少女の右手を掴むと、少年は言った。

上条「やっぱり、寮まで送る。ってか送りたい」

美琴「うん。ありがと」ギュッ

上条「どういたしまして」ギュッ

指を絡ませて手を繋ぎながら、少女の寮へ向かって歩き出す。

美琴「その、いっぱい、しちゃったね」///

上条「そ、そうだな。でも、その言い方はちょっと問題がありますから注意してください美琴センセー」///

美琴「あ、う、そ、そうね。ゴメン」///

上条「いや、謝らなくてもいいんだけど。気をつけてくれればな」

美琴「うん。その、さ、当麻は、その、したい?キスじゃなくって、さっき言ってた最終段階ってやつ」///

上条「気をつけろって言った矢先にそういうこと聞くのかよお前は!?」///

美琴「ゴ、ゴメン。でも、その、したいなら、その、女の子には準備があるから、その、ね?」///

上条「したくないって言えば嘘になるけど、美琴はまだ中学生だろ?さすがにそういうのはまだできねえかなって」

美琴「あー、その、ね。一応さ、学校から処方箋出てる、から…」///

上条「へ?処方箋って、薬?お前、どこか身体の具合悪いのかよ!?」

美琴「あー、そうじゃなくってさ、その、…ピルって言えば、わかる?」///

上条「ピ、ピ、ピルゥ!?な、何考えてるんだ常盤台は!?」///

美琴「えーっと、家庭の事情を勘案してってやつよ。わたしの場合は許婚がいるからってことで、さ」

上条「え?俺達って常盤台公認!?」

美琴「うん。ママが連絡してくれたから」

上条「そっか。俺達、親公認だしな」

美琴「うん。その、さ。家同士の取り決めで許婚になる子とかいるから。処方箋もそういう子を守るためのものだと思うんだけど」

上条「あー。そういうのって本当にあるんだな。お嬢様も大変だよな。それ考えるとさ、俺達って恵まれてるな」

美琴「…うん」

上条「好き合って許婚になれて、上条さんは幸せ者ですよ」

美琴「わ、わたしも、幸せ者だもん」

そう言って腕にしがみつく少女の頬を、少年は優しく撫でた。

美琴「ふわっ!?」///

上条「あーもー、可愛いな美琴は」ナデナデ

美琴「あ、ん」///

上条「…その、女の子の準備ってやつはさ、美琴に任せる。俺も、男の準備はしておくから」///

美琴「な、な、なに言っちゃってるのアンタ!?」///

上条「馬鹿お前、いつまでも我慢できるわけねえだろうが!」///

そう言うと少年は少女を抱きしめる。

美琴「!?」///

上条「…美琴が好きって気持ちが俺の中でどんどん大きくなってんだよ。美琴のすべてを知りたいし、俺のものにしたいって」

美琴「…わたしだって当麻のこと知りたいし、わたしのものにしたいわよ」

上条「お互い素直に言いたいことが言えると嬉しいな」

美琴「そうね」

上条「じゃあさ、キスしていいか?」

美琴「そんなの、聞かなくてもわかるでしょ?」

ふたりは小さく笑い合って、唇を重ねた。お互いを存分に味わってから唇を離すと再び歩き始める。



美琴「えーっと、素直に言うのが嬉しいって言うから正直に言うけど、その、わたしのアレって月の中頃くらいだから、女の子の準備終わるのって早くても来月の終わりくらいだから…」///

上条「そ、そうか」///

美琴「うん」///

上条「いやいやいや!なんですること前提になってるんでしょうか!?美琴センセー」///

美琴「だって、我慢できないんでしょ?」

上条「いやいやいや!美琴センセーが結婚できる歳になるまでは上条さんも我慢しますよ?」

美琴「その、…わたしがしたいって言ったら?」///

上条「………我慢できないかも」///

美琴「当麻のえっち」///

上条「自分から誘っておいてそれはないんじゃないでしょうか?美琴センセー!?」

美琴「さ、誘ってなんて…」///

上条「ほう。『わたしがしたいって言ったら?』なんて言ったのはどちらさまでしたっけ?」

美琴「うぐっ。…と、当麻としかしたくないんだからね」///

上条「俺だって美琴としかしたくないからな」///

美琴「じゃあ、いいや」

上条「だな」

美琴「えへへ」

上条「ははは」

笑い合いながら二人は寮の前で立ち止まる。

美琴「…着いちゃった」

上条「ああ。門限ぎりぎりってところか?」

美琴「うん。あとちょっと」

上条「そっか。じゃ、部屋に戻ったらメールするから」

少年を見つめてから、少女はそっと瞼を閉じる。

美琴「…おやすみのキス、して?」

上条「いいのか?寮の前だぞ?」

美琴「許婚だから隠す必要ない…んむっ!?」

話し終わる前に少女の唇が少年の唇で塞がれ、口内に舌が差し込まれた。

美琴「ん…ふっ」(あ、吸われてる、…わたしも)チュク

上条「…んぅ」(応えてくれた。美琴…)チュク

恋人のキスを充分に堪能してから唇を離す。ふたりの間に透明な糸が伸び、切れた。

美琴「おやすみ。当麻」

上条「おやすみ。美琴」

寮監「おかえり。御坂」

美琴「ただいま戻りました。寮監…様!?」

寮監「ずいぶん情熱的な接吻だったな?御坂」

美琴「ふ……」(み、見られた!?見られちゃった!?)///

寮監「ふ?」

上条「!!」(マズイ!)

美琴「ふにゃああああああああああああっっ!!」ビリビリビリ

上条「不幸だああああああああああああっっ!!」



―――

21:05 常盤台中学学生寮 寮監室


寮監「砂糖は?」

上条「あ、結構です」

寮監「どうぞ」

上条「いただきます」

一口飲んでソーサーにティーカップを置き、視線を自分の前に座っている女性から、自分の肩に頭をもたれさせている茶髪の少女に移して、上条当麻は頭を掻いた。

上条(美琴が気を失っちまったから部屋に連れて行けばいいと思ったんだが、なんでここにいるんだ?しかもお茶なんか出されてるし)

寮監「君が、御坂の許婚か?」

上条「はい」

寮監「まあそうでないと困るのだが。だが、許婚とはいえ、寮の前での接吻はできれば自重してもらいたかった」

上条「う、すみません」(そういえばこの人に見られたんだっけ)///

寮監「御坂もわかっているはずなのだがな。…まったく、恋は盲目とは良く言ったものだ」

上条「…」

寮監「特に今日はクリスマスイブだからな、寮生達もそういうものには敏感なのだ。困ったことに」

上条「…」

寮監「私が門前に出たことで多少は防げたと思うが、それでも効果はないだろうな」

上条「…それってどういう意味?」

上条が尋ねると、寮監は立ち上がって扉の前に置かれている衝立の向こう側へと歩いて行く。

寮監「君はそこから動かないように。あと、御坂が気付いたら黙らせておいてくれ」

上条「え?」

寮監「まあ、すぐにわかる」

扉を開ける音がすると同時に、廊下の向こう側から複数の少女の声が聞こえてきた。

寮生A「寮監様、御坂様は!?」

寮生B「逢引なさっていたとか」

寮生C「門前でせ、接吻をしていたとのことですが…」

寮生D「御坂様が殿方と!?」

寮生E「御坂様が!?」

寮生F「寮監様!本当ですか!?」

寮監「お前達、静かにしろ。御坂には今厳重注意をしているところだ。今回の件については御坂家にも注意をする」

寮生A「御坂様の家にも注意をするということは…婚約者ですか?」

寮生B~F「御坂様に婚約者が!?」

ひときわ大きい声が聞こえてきたところで上条にもたれていた少女が小さく身動ぎした。

美琴「…ん」

上条「…美琴、目、覚めたか?」ヒソヒソ

美琴「当麻?…ここ、どこ?」パチパチ

少年は人差し指を自分の唇に当てて静かにするよう合図をしてから言う。

上条「ここは、お前の寮の寮監さんの部屋で、寮監さんが寮の人に説明をしているところだ。静かにしてろ」ヒソヒソ

美琴「説明?」ヒソヒソ

上条「おやすみのキス、何人かに見られたかもしれない」ヒソヒソ

美琴「うぇ…むぐっ!!」

茶髪の少女が叫びそうになるのを察知して、少年は慌てて右手で少女の口を塞ぐ。



上条「静かにしてろって言っただろ」ヒソヒソ

美琴「~っ!!」ジタバタ

上条「美琴。今から手を離すけど、声出すなよ」ヒソヒソ

暴れる少女の耳元でそう囁くと、少年は少女の顔を覗き込む。目が合うと、少女は小さく頷いた。

美琴「…苦しかった」ヒソヒソ

上条「スマン」ヒソヒソ

美琴「謝るだけ?」ヒソヒソ

上条「…ちょっとだけだぞ?」ヒソヒソ チュッ

美琴「…ん」チュッ

寮監「お前たち、正直に言え。誰が何を見た」

寮生A「寮監様、たまたまですが私、二階の廊下の窓から御坂様が門の前で殿方と接吻をしているのを見てしまいました」

寮生B~F「!!」

寮監「そうか。他にはいないのだな?」

寮生A~F「…」

寮監「全く、御坂にも困ったものだ。まあ、年に一度のことだし、お前たちも大目にみてやってくれ」

寮生A「それって、あの殿方は御坂様の婚約者、ということでしょうか?」

寮監「否定はしない。詳しくは御坂に聞け」

寮生B・D「御坂様に婚約者が!」

寮生C・F「御坂様に彼氏が!」

寮生A・E「御坂様に恋人が!」

寮監「さあ、解散だ。解散」

寮生A~F「失礼します」

寮生達の挨拶を背中で受け、寮監は寮監室へ入ると扉を閉めた。

寮監「まあ、あんな感じだ。明日には寮内に広がっているだろう…」

美琴「…ん」チュゥ

上条「…んぅ」チュッ

寮監「お前達…」

美琴「ふにゃっ!!」ビクッ

上条「あ、その、これは…」ビクッ

寮監「御坂が目覚めて大声を上げそうになったから唇で塞いだとかそういうことか?」

上条「は、はい、すみません!!」

美琴「あ、あ、あ…」(見られた、また寮監に見られちゃった)ピリ…パチッ

上条「うわわわわっ、美琴、落ち着け!」

少年が少女の頭に右手を置く。それと同時に少女から漏れ出していた電気が消えた。

寮監「!」(御坂の電気を止めた、だと?)

美琴「ど、ど、ど、どうしよう、どうしよう当麻!?また寮監に見られちゃったよ」アワアワ

上条「お前は悪くない、悪いのは俺だ。だから落ち着け、な?」ナデナデ

美琴「当麻ぁ…」グスッ

上条「よしよし」(やべ、可愛い)ナデナデ



寮監「君は無能力者と御坂から聞いているが、今、御坂の電気を消しているのは君の力ではないのか?」

上条「あ、いや、これは生まれつきというかなんというか、俺の右手、能力消しちゃうんですよ」

寮監「ほう。それは興味深いな。だが超能力が消せるなら無能力者とはいえないと思うのだが」

上条「でも、身体検査にひっかからないんですよね」

寮監「ふむ。それは第七位と同じ原石と呼ばれる力なのではないか?」

上条「よくわからないです。ははは」

美琴「…」(統括理事会は当麻の力を”幻想殺し”として、管理しているけれど、無能力者扱いなのよね…)

寮監「第三位より強い無能力者か…。まあそれもいいかもしれないな」

上条「いやいやいや、そんなことありませんから!」

寮監「御坂が君に身を委ねている時点で、君の方が御坂より強いと思うが?」

美琴「え?」///

優しい眼差しで茶髪の少女を見ると、寮監はほうっと溜息をつく。

寮監「そのような御坂も、新鮮だな。実に初々しい」

美琴「は、はは…」(また、寮監が壊れた)

寮監「ああ君、そういえばまだ名前を聞いていなかったな。聞かせてもらえるか?」

上条「あ、はい。上条当麻と申します」

寮監「ふむ。すると御坂はゆくゆくは上条美琴になるのだな」

美琴「え?あ、はい…」///

上条「改めて言われると何か恥ずかしいな。いや、嬉しいんだけどさ」///

美琴「えへへ」///

寮監「上条君、御坂。今日のことは不問とするが、今後このようなことが無いよう寮の近辺及び内部では節度を持って行動してもらいたい」

上条・美琴「はい」

寮監「先ほどは夢中で聞いていなかったと思うが、御坂に婚約者がいるということが寮全体に広がるのは時間の問題だと思われる」

美琴「…まあ、仕方ないです。んー。そうすると明日には学校、いや、学舎の園ときて、第七学区、学園都市全体へと伝播するでしょうね。こういうことってあっという間に広がるから」

上条「そういうもの!?」

美琴「ま、ね。たぶんアンタの学校でも話題になるわよ。『超電磁砲に婚約者!』ってね」

寮監「女というものはそういう話に弱いからな」

美琴「まあ、アンタの名前までは出ないわよ」

上条「…俺は別に名前が出ても構わないけどな」

美琴「え?」

上条「言ったろ?独占欲強いって。別の奴とお前が噂になるくらいなら、俺の名前出してもらった方がいい」

美琴「わたしも、当麻以外の人と噂になるのは嫌」

少年と少女は見つめあう。

寮監「…ふむ。じゃあ御坂、いっそ寮内放送で発表するか?」

美琴「え?」

寮監「お前自身が発表すれば変な噂をたてられずに済むぞ」ニヤリ

茶髪の少女は少年を見て、それから静かに口を開いた。

美琴「そうします」



―――

21:30 常盤台中学学生寮208号室

黒子(門限も過ぎていますのに、お姉様は一体どこに…。はっ、まさかまだ上条さんと一緒にいるのでは)ワナワナ

~~~

美琴「当麻…。わたし今日帰りたくないの」

上条「美琴…」

美琴「…ねえ?当麻。ホワイトクリスマスにしてくれる?」

上条「俺、雪は降らせられないぞ」

美琴「もう、わかってるくせに」

上条「なにがだよ」

美琴「ナニよ」

上条「俺色に染め上げてやるぜ~」ガバッ

美琴「ああーん。優しくしてーん」

~~~

黒子「お姉様がそんな破廉恥なことするわけないですのおおおおおおっっ!!」ギャアアアアア

ピンポンパンポーン

ツインテールの少女が妄想に悶えていると、室内のスピーカーから軽快なチャイムが流れてきた。寮内放送の合図である。

黒子(寮内放送?こんな時間に?)

寮監『夜分遅くに失礼する。これより、寮生二年、御坂美琴から全寮生に向けて報告がある』

黒子(お姉様!?)

美琴『二年の御坂美琴です。夜分遅くに申し訳ありません。私事で恐縮ですが、わたし、御坂美琴は先日とある高校一年の上条当麻氏と婚約いたしましたことをご報告申し上げます。なお、この件に関しては常盤台中学に報告済です。以上、ご静聴ありがとうございました』

ピンポンパンポーン

黒子「……………は?」

ぽかんと口を開け、主のいないベッドを見つめる。

黒子(なんですの?お姉様と上条さんが婚約…??)

まるで何かに殴られたかのような眩暈にも似た感覚が少女を襲った。

婚約。それすなわち男女が将来における結婚の約束をすること。

黒子「婚約ぅぅぅぅっっ!?」

そんな少女の叫びは、ほぼ同時に寮内から湧き上がった嬌声によって掻き消されるのであった。





クリスマス狂想曲 12月24日 了






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