とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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ビリビリがデレデレでドキドキするツンツン頭




 それは白井の買ってきた、一冊の本から始まった

「催眠術?」
「そうですの。 お姉様こういうのお好きでしょう?」

 怪しい。
 普段この手の話を振ってくるのは佐天の仕事で、
 白井は 「またくだらない事を…」 と苦言を呈する役どころである。

「…黒子、アンタ何か企んでない?」
「そそそそそんなことはありませんの!!!
 わたくしはただ、お姉様のお暇を少しでも潰せればと思いましてですね!?」
「ふ~ん…」

 確かにちょっと興味はある。
 白井は何かよからぬ事を考えているのだろうが、いざとなれば電撃を浴びせればいい。
 ここはあえて、話に乗る事にした。

「で? 具体的にはどうするの?」
「(ホッ…)少々お待ちくださいまし…この本によれば、まず五円玉とタコ糸を用意し―――」
「ストップストーップ!」
「何ですの?」
「まさかとは思うけど、糸で吊るした五円玉を揺らして、
 『あなたは段々眠くな~る』とか言うんじゃないでしょうね!?」
「おや、ご存知でしたの? 流石はお姉様」
「いやいやいや! それ前世紀に流行ったヤツでしょ!?
 この最先端技術の塊の学園都市で、そんなモン信じるんじゃないわよ!!」
「ですがこの本の著者は長点上機学園の卒業生ですの。信憑性はかなり高いかと」
「マジで!? 一周回ってバカってパターンじゃないのそれ!?」

 美琴は少し安心した。
 いくらなんでも、こんなので引っかかりはしないだろう。

「はぁ…まぁいいわ。ちゃっちゃとやってみれば?」
「では行きますの。……あなたは段々眠くな~る、段々眠くな~る……」
「全くもう、そんなの本当に効くわけがなスピー…」
(効いたああああぁぁぁぁぁ!!!)

 まさかの展開に、白井も若干引き気味だ。
 白井本人もどこか半信半疑だったのだろう。
 この本が本物なのか、美琴がアレなのかは分からないが、とにかく美琴は爆睡中だ。

「(いえ、まだ成功したとは言えませんの。本番はこれからですわ)
 3・2・1で目覚めたら、あなたは語尾に、『黒子大好き』と言ってしまいますの。3・2・1・ハイッ!」

 白井がパチンと手を叩くと、美琴目を覚ました。

「いでしょ黒子大好き」
「ぶふぉ!!!」
「急にどうしたのよ黒子大好き?」
「な、何でもありませんの……」

 自分で命令したくせに、身悶える白井。
 普段聞きなれていないため、(というより、美琴が普段絶対に言わない言葉のため)免疫がなかったのだ。

「それにしても、やっぱりその本インチキね黒子大好き。実際私は催眠術なんて掛かってないし黒子大好き。
 ま、いい暇つぶしにはなったんじゃない黒子大好き?」
「ふぉ、ふおおおぉぉぉぉ」
「……何変な声出してんのよ黒子大好き」

 どうやら催眠術に掛かっているという自覚はないらしい。



「(こ、これは使えますの!!)で、ではもう一度、あなたは段々眠くな~る、眠くな~る……」
「だから効かないってば黒子だクカー」
「ゴクリ……ではお次は、3・2・1で目覚めると、あなたは己の欲望剥き出しにして、本能の赴くままに行動してしまいますの!!
 (そうすればお姉様はわたくしに……ウヒヒヒヒィィィィ!!!) 3・2・1・ハイッ!」
「い好き……黒子」
「わ、分かっておりますわお姉様!! 黒子はもう準備万端ですのよ!! さあ! わたくしの胸にダイブしてくださいまし!!
 愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけませんのおおお!!!!!」
「何、訳の分かんない事言ってんのよ。それよりちょっと出かけてくるわね」
「ジュッテ~ィンッッム!!!………………………はい?」
「だから、出かけるって言ったの」
「え…いやしかし…愛する黒子を置いてどちらへ…?」
「誰がアンタを愛してるって? 私が愛してんのは当麻だけよ」
「は…い…?」

 美琴の口から出てきた暗号に困惑する白井。
 11次元を瞬時に演算するその脳を必死にこねくり回し、その暗号を解読していく。

 当麻とはあの類人猿の事だろう。ではその類人猿を愛しているとはどういうことか。
 先程の催眠術を思い出してみる。白井は美琴にこう言った。
 『あなたは己の欲望剥き出しにして、本能の赴くままに行動してしまいますの!!』、と。
 つまり、普段素直になれない美琴が、内に溜めている感情を爆発させた結果、こうなったという訳だ。
 そしてその彼女が『出かける』という事は……

「ハッ! お姉様の貞操が危ない!! お姉様、ちょっと待ってくださいまし…って、もういねええええええぇぇぇぇ!!!!!」

 白井が我に返ると、美琴はすでにいなかった。

「だーくそ! こんなことなら、『黒子を好きになる』って暗示をかければよかったですの!!!」

 今更悔やんでも後の祭りだ。
 白井は慌てて美琴の後を追った。



 第7学区のひと気のない公園で、ベンチに座りながらケータイを弄る男が一人。
 「本日のお買い得情報」が載っているサイトを眺めているのは、何を隠そう上条当麻である。
 いつもの様に補習で遅くなった上条は、
 いつもの様にスーパーで買い物してから帰ろうかなと思っているところなのだ。

(へ~、今日は鶏もも肉とレタスが安いのか…
 照り焼きにでもして、余ったら明日の分に……いや、余んないか。インデックスがいるし)

 と、主夫スキルがどんどん高くなる上条。ボーっと考えていたせいで、
 何者かがこっちに猛ダッシュしてきていることに、全く気が付かなかったのである。
 いきなり横っ腹に衝撃が走る。
 この感覚は身に覚えがある。8月31日のあの時だ。

「おぐあぁ!!! ……み…美琴か…?」

 振り返ると、確かにそこに美琴がいた。
 だが何か様子がおかしい様な…?

「えっへへ~… 当麻、見~つけた! もう、寂しかったんだから~!!」

 と、言いながら、顔を自分の胸に埋めてスリスリしてくる。
 何かどころでなない。確実に様子がおかしい。

「誰!!!?」
「もう! 誰って美琴よ! 当麻のことがだ~い好きな、御坂美琴です!」
「いいや違うね!! 絶対アンタとは『はじめまして』だね!!
 俺の知らない妹達の誰かか!? それともまた御使堕しか!? じゃなけりゃタチの悪いドッキリだ!!」

 この男も大概ひどい。

「むぅ…どうしても信じてくれないの?」
「当たり前だろ!? とりあえず、美琴は俺のこと好きとか言わねーよ!
 『言っとくけど、アンタのこと好きでも何でもないんだからね!? 勘違いしないでよ!』が口癖のヤツだぞ!?」

 それが口癖な時点で普通は気が付くのだが。
 そこが世の女性達を悩ませる、上条クオリティなのだろう。

 美琴は上条に抱きついたまま、上目遣いでぽそっと呟いた。

「じゃあ…証明してあげる。私がアンタをどれだけ好きかって……」
「みk……!!!!!???」

 ベタに「チュッ」という音を立てて、上条は唇を奪われた。
 あまりにも突然かつ予想外の出来事に、脳が追いつかず、上条はただ呆然と立ち尽くしていた。
 だってファーストキスだもん。

「へへへ~…当麻と初めてチュウしちゃった♡」
「な……バ……オマエ………」
「今日は初チュウ記念日ね♪」
「いや…あの……え、と………」

 絶対におかしい。
 これは手遅れになる前に、何とかしなくてはならない。
 (すでに色々と手遅れな気はするが)

 上条は美琴の肩を、ガッと掴んだ。

「美琴」
「なぁに?」
「これから、オマエの体の色んなところを触ることになるけど……大丈夫か? 嫌じゃないか?」

 事情を知らない人が聞いたら、完全に変態である。
 だがそんな変態の言葉を、美琴は拒むどころか、

「えっ!? う、うん……少し恥ずかしいけど……いいよ…当麻なら……
 で、でも……私…初めてだから……あの…優しくしてください……///」

と、顔を赤らめながら訳の分からない事を言ってくる。
駄目だこいつ…早くなんとかいないと…



 一方そのころ、白井は美琴の足取りを追って街を飛び回っていた。

「手遅れになる前に!! お姉様をお護りしなければ!!」

 お前が蒔いた種なのだが。

 美琴の行きそうなところをくまなく探していると、いつものファミレスで初春と佐天の姿を見つけた。
 なにやら二人は、初春のノートパソコンの前で、大いに盛り上がっている様である。
 初春ならば、学園都市内の全ての監視カメラをハッキングすることなど造作もない。
 もはや手段など選べない。白井は急いでファミレスに入った。

「いらっしゃいませ~! 一名様ですか?」
「ツレがおりますので!!!」

 ウェイトレスを軽く睨み、初春達のところへ駆けつける。
 あまりの迫力に、ウェイトレスさんは半泣きである。かわいそうに。

「初春さん!? ちょっとよろしいですの!?」
「あっ! 白井さん、ちょうどいいところに!! ちょっとこれ見てくださいよ!」
「いえいえ、それよりもこっちが先ですの! 何しろお姉様が危」
「その御坂さんが面白い事になってるんですって!!」
「ない………何ですって?」

 佐天が言う「面白い」は、基本ろくなことがない。
 嫌な予感がしつつも、白井はディスプレイを覗いてみる。
 初春と佐天が見ていたのは、「L・O」と名乗る少女のTwitterのつぶやきであった。

『とある公園で美琴お姉様とあの人がイチャイチャなう、ってMはMはつぶやいてみたり!!
 しかもお姉様ったらチュウまでしてたの!!ってMはMはお姉様の大胆さに胸をキュンキュンさせてみる!!』

 レベル5の第三位である御坂美琴は、表の世界では学園都市一有名な能力者だ。
 故にこのツイートに対しての反応はハンパなく、2chではスレが乱立し、Yahoo!ニュースにまで取り上げられていた。
 白井が寮を出てからまだ数分の出来事である。ネットって怖い。

 白井は真っ白になりそうな頭を必死で動かし、その公園へとテレポートした。
 気をつけろ上条。鬼が来るぞ。



 そんなことになっているとは夢にも思っていない上条は、容赦なく美琴の体をまさぐっていく。

「唸れ、俺の幻想殺し!! 美琴を元に戻したまえ~~~!!!」
「…あっ……んっ……はぁ…あ……当…麻ぁ………ら…め…………んあ! はぁん!!!」
「変な声出さないでぇぇぇぇぇ!!!」

 非常にエロい。そりゃ噂にもなるだろうよ。
 まだ明るいうちから、公園で何やってんだよ。



 おかしい。
 あっちこっち…それはもう身体中触ってみたが、一向に右手が反応しない。
 美琴が変なのは間違いないのだが、そこには異能の力以外の何かが働いているということだろうか。

 だがそれよりも問題は……

「はぁ…はぁ…当麻ぁ………もっとぉ………」

 うっとりと顔を上気させ、潤んだ瞳で上目遣いし、やわらかい唇から聞こえてくる、甘えた言葉が耳をくすぐる。
 中学2年生とは思えない妙な艶っぽさに、自称紳士な上条さんの理性も崩壊寸前だ。

(おおおお落ち着け俺ぇぇぇぇ!!!
 美琴は今、普通じゃないんだ!! こんな時は7の段を数えて心を静めろ俺!!
 7×1がシチ、7×2ジュウシ、7×3ニジュウニ、7×4サンジュウゴ……)

 相当テンパっているらしい。

「…続き……しないの…?」
「な、何のことですかな!? 続きも何も、上条さんは別にやましいことは何ひとつしていませぬぞ!?」
「私…もう……ガマンできない…!」
「してくれぇぇぇぇ!!!
 あ、いや、今の『してくれ』はそういう意味じゃなく、『ガマンをしてくれ』って意味な!?
 だ、大体冷静になってみろよ!! こ、こ、こんなとこで、そんなことできる訳ないだろ!!?」

 冷静に断ったつもりだが、上条は完全に墓穴を掘っていた。

「ここじゃダメってことは……二人っきりになれる場所ならいいってことだよね…?」
「は、はひぃ!!?   んぐっ!!!!!」

 すると美琴は、再び上条の唇を奪う。
 クチュクチュと舌が絡み合い、二人の唾液がツツゥーッと糸を引く。

「…最後まで……当麻としたい……私の身体全部…………当麻のものにしてほしい!!!」
「み……こと…………」

 上条も、頭がポーっとして、何も考えられなくなっていた。
 三度目の口付けをしようとしたその瞬間

 白井の靴の底が、上条の顔にめり込んだ。
 上条はそのままベンチを破壊し、3m後方まで吹っ飛んでいった。

「痛ってええぇぇぇ!!! だが助かった!! あのままだったら、何か取り返しのつかないことするところだった!!!」

 いや、助かってはいないぞ上条。

「おほほほほぉぉぉぉぉい…類人猿さんよぉぉぉ………
 よくもわたくしのお姉様に、好き勝手してくださりやがりましたわねぇ………
 脳みそに直接金属矢をぶっ刺してやるから覚悟しろやボケェェェェェ!!! ですの」
「あれあれ!? 白井さんも性格変わってらっしゃる!?
 てか白井、美琴の様子がおかしいんだけど、何か知らないか!?」
「ハッ! そうでしたの!」

 死んだ御坂妹(ミサカ10031号)が空から手招きしているのを見て、本気でヤバイと思った上条は、
 白井の気持ちの矛先を、美琴へと誘導させた。

「もう何よ黒子!! いいところだったのに!!!」
「口付け以上の何をするつもりでしたの!!? …いえ、それよりもこの五円玉を見てくださいまし!
 あなたは段々眠くな~る、あなたは段々眠くな~る……」
「またそれ!? だから何度やっても効かスヤスヤ…」
(催眠術!? どおりで右手が反応しない訳だ)
「3・2・1で目覚めたら、あなたは元のお姉様に戻りますの。3・2・1・ハイッ!」
「ないってば!! ってアレ? ここどこ?」

 目を覚ました美琴は、辺りをキョロキョロ見回していく。

「ここっていつもの公園よね。私、何でこんなとこにいるの?」
「覚えて…ないのか…?」
「ん? ア、アンタ!! なな、何でここにいんのよ!!」
「ああ、うん。いつもの美琴だ……」

 どこかちょっとだけ残念な気持ちになる上条であった。
 いや、あの記憶がないのは、不幸中の幸いだろう。これで良かったのだ。
 このまま美琴は、何も思い出さないほうが幸せ―――

「あーでもちょっと待って。何か思い出せそう……」

 上条と白井はビクゥッとして、慌ててフォローする

「お、お姉様!? 無理に思い出さないほうが宜しいかと!! 
 人間、忌まわしい過去というのは忘却の彼方へと封印するものですし!!」
「そ、そうだぞ美琴!! 俺とキスしたことなんか忘れたほうがいいって!!!」

 あ…言っちゃった。
 上条の一言に、その場が凍りついたのは言うまでもない。



「はえ!!? わ、私が、アア、アンタと、キキキキキシュ!!!?
 おも、思いらしてきた!! わらひ、キシュひて、しかも、アンタに、あんにゃこと、い、言って、
 しょれに、ああ、あんにゃことも、しゃれて……………ふ…ふ……」
「い、いえ! 気をしっかりお姉様!! 全ては夢!! 夢ですのよ!!!
 類人猿も何余計なこと言いやがりますの!!?」
「す、すまん! つい本当のことを……」
「テメェもう喋んなああ!!!」

 上条、白井。ケンカしている場合じゃなさそうだぞ。
 バチィ!! バチチィ!! と、今まで聞いたことのないくらいの帯電音がしている。
 これは…デカイのがくる。

「ふにゃー」
「「ぅおびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ!!!!!!!」」

 幻想殺しでも打ち消せないほどの電撃が二人を襲った。
 もしかしたらこの時の美琴ならば、レベル6にも到達できたかもしれない……



 その後白井は、本当に死ぬんじゃないかと思うくらいの電撃のフルコースを味わうことになり、
 美琴は2週間、上条の顔をまともに見ることもできなかったという。
 そしてさらに、

「御坂様! お噂の殿方とはどこまで進展なされましたの!?」
「何でも口付けは御坂様からだとか……」
「キャー! 大胆ですわー!!」

「さあさあ御坂さん!! 今日こそ白状してもらいますからね!!」
「ネ、ネタはあがってますよ! 防犯カメラにもバッチリ映ってますから!!」
「ラブラブなのー」

 と、クラスメイトや友人から、地獄の質問攻めが待っていた。
 そしてそれは上条も同じなようで、

「おいおいカ~ミや~ん…ちゃんと言ってくれなきゃ分からんぜよ」
「上条!! 貴様、さっさと吐け!! 一体何をした!!」
「上条君。納得のいく説明がほしい。この。魔法のステッキが。最大出力になる前に」
「死刑やあ!! この男は一遍死なな分からへんねん!!!」

 と、こちらはやや暴力【いたいめ】にあいながらも、質問攻めにあっていた。

 人の噂も七十五日だ。
 あと二ヶ月と二週間、ガンバレ二人とも。

「「あーもう!! 不幸ーーーだ(わ)ーーーーー!!!!!」」









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