とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part02

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第1章 ①二人の出会いと別れ


「あのー美琴さん、一つ言っておかなければならないことがあるんですが…」

「何、と、当麻?」

二人で学園都市に反逆すると誓い想いを通じ合わせた時から、上条と美琴は互いの名を下の名前で呼び合うようになっていた。
まだ美琴のほうはイマイチ上条を下の名で呼ぶことが覚束ないが、それでも最初の頃に比べたらずっとマシだった。
そんな二人は上条の住む寮に向かっている最中である。
そして上条は美琴に伝えなければならないことがあった。
結果として美琴のことを傷つけることになるかもしれないが、
それでもこの問題を置き去りにして二人の関係を前に進めることは出来ない。
上条は意を決して美琴にあることを打ち明けた。

「実は俺の部屋に居候が一人いるんですが、なんて言うかその…実は女の子なんだ」

「え?」

上条と美琴の間に少しの間、沈黙が流れる。
上条はどう説明すればいいか悩むが、自分の現状を正直に伝えた。

「本当のところは何で俺がその子…インデックスと同居してるかも分からない状態なんだ」

「もしかしてそれって?」

「ああ、どうやら記憶喪失になる前の俺が助けたみたいで」

上条は少し俯きながら答える。
上条の抱えるもう一つの問題、記憶喪失…
インデックスを救う際に竜王の殺息と呼ばれる魔術をその身に受けて脳が激しい損傷を受けてしまったのだった。

「それで美琴に聞きたいことが…」

「今後もその子と一緒に暮らしたいって言うんでしょ?」

「いや、そうじゃない。
 これから学園都市に喧嘩を売るんだ、どれだけ危険があるのか分からないのに関係ない人間を傍に置いておこうとは思わねえよ」

「なら、聞きたいことって?」

「俺は記憶喪失のことをインデックスに話すべきなのかな?
 インデックスを救ったのは前の俺で、そして前の俺を殺したのも多分インデックスだ。
 そのことを知ったらインデックスは傷つくんじゃないかって。
 でもインデックスを助けたのは俺じゃないのに、昔の自分を騙ってていいのか分からなくて」

「…私は記憶喪失のことを話したほうがいいと思う。
 本当のことを話したら多分その子は凄く悲しむ。
 でも本当のことを知らずに生きていくのは、もっと残酷なことだと思うの。
 それに私が口出す問題じゃないことは分かってるけど、当麻はその子に拒絶されるのが怖いんじゃない?」

「…美琴の言う通りだ、俺は前の自分と比較されて拒絶されるのを心の何処かで怖がってたんだ。
 ハハ、何ていうか情けないな」

「そんなことない!!
 記憶を失って不安にならない人なんていないもの。
 だから辛いことや不安なことがあった時は私を頼って。
 当麻が私を支えてくれてるように、私も当麻のことを傍で支え続けるから」

「そうだな、美琴が一人じゃないように俺も一人じゃないんだよな」

「うん!!」

そして二人はインデックスの待つ上条の部屋へと足を踏み入れるのだった。



「とうま、おかえりー!!」

上条が部屋に入ると、インデックスが笑顔で出迎えてくれた。
しかし上条の後ろに立つ美琴を見ると、インデックスの表情が険しいものに変わる。

「…クールビューティーじゃないよね?
 誰かな、その短髪は?」

インデックスはギラリと歯を覗かせて上条のことを睨みつける。
いつもの上条ならそれだけで臆するところだが、今日は例え噛み付かれてもケジメをつけなければならない。

「彼女の名前は御坂美琴、俺の恋人で大事な人だ」

「え?」

その言葉を聞いた途端、インデックスの表情がみるみる青褪めていくのが見て取れた。

(やっぱり、この子も…)

何となく美琴は予想していたが、目の前のシスターもやはり上条のことが好きなのだ。
このシスターもきっと上条に命を救われたのだろう。
そう思うと罪を背負った自分が上条の特別になっていいのか迷うところだが、他ならぬ上条が傍にいると言ってくれた。
だから後は上条の判断に任せよう…
美琴は二人の成り行きを見守ることに決めたのだった。

「取り敢えず上がろう。
 インデックスに話さなければならない大事なことがあるんだ」

すっかり意気消沈したインデックスの後に続いて、上条と美琴は部屋に足を踏み入れる。
テーブルを囲んで座ると上条はインデックスに自分が記憶喪失であること、
そして美琴のことは絶対能力進化という実験の中で支えてあげたいという気持ちから好きになったことを正直に話した。
上条の話を黙って聞いていたインデックスは話が終わると呟くように言った。

「…そっか、あの時のとうまはもう居ないんだね」

「…すまない」

「謝らないで、とうまは何も悪くないんだから。
 ただ出来ればあの時の病室で正直に話してくれたほうが良かったかも」

「騙してて悪かった。
 インデックスのためだと思ってたけど、結局自分が拒絶されるのを恐れてただけなんだ。
 そしてこんな形でインデックスの幻想を殺すような真似をして、俺は…」

「だから謝らないでって言ってるんだよ。
 むー、今のとうまは少し卑屈すぎるかも…」

インデックスは俯く上条の頭を撫でながら言った。

「でも前のとうまも今のとうまも底抜けに優しいことは変わらないんだよ。
 そしてその優しさが今は短髪に向かってることも分かってる。
 お邪魔虫な私は早く退散したほうがいいのかも」

「…俺と美琴はこれからかなり危険なことをしようとしている。
 中途半端な形でインデックスを傍に置いていても、却って危険な目に遭わせるだけだと思う。
 でもインデックスに何か危険が迫った時は必ず助けにいくから」

「とうまならそう言うと思ったんだよ。
 でも今のとうまの一番大切な人は短髪なんだから、そのことを忘れちゃ駄目かも」

「ああ、分かってる」

するとインデックスは上条から美琴の方に向き直って言った。

「短髪…ううん、みこと。
 とうまは誰にでも優しい女たらしで苦労することもたくさんあると思うんだよ。
 それに無茶をしてみことに心配掛けることもたくさんあると思う。
 でもとうまは必ずみことの所に帰ってくるから、とうまのことを支えてあげてね」

「うん、分かった。
 あなたの分も私が当麻のことを支え続けるから。
 それに当麻を危険なことに巻き込もうとしてるのは私なの。
 …ゴメンね」

「とうまはこっちの都合に関係なく首を突っ込んでくるから、却って最初から傍にいたほうが危険は少ないと思う。
 二人が何をしようとしてるかは分からないけど、お互いに支えあって頑張って欲しいんだよ」

「…ありがとう」

そして上条はステイルに連絡を取って翌日の飛行機でインデックスはイギリスへと帰っていった。
ステイルに思いきり殴られたが、上条はその痛みを忘れずに前に進もうと誓った。
そんな上条が学園都市からの一時的な退去を命じられたのは、その日のことなのだった。









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