とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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決め手は隠し味




『第1回 とある魔術やあらへんで!!
 チキチキカミやんのハートは料理で掴め 心を込めた手料理対決~!』

「この企画の司会を勤めさせていただく土御門元春だにゃー」
「アシスタントの土御門舞夏であるー」

「え~、この番組では女の子が手料理を作ってカミやんに食べてもらうぜい」

「いきなり連れて来られたと思ったら、なんだよこの企画……」

突然始まった謎の企画、スタジオの真ん中には上条当麻が座っている。
どうやら、上条当麻にフラグを回収するきっかけを作るのが目的みたいである。

「料理といえばメイドの私も出たかったんだがなー、兄貴が許してくれなくてなー」

「舞夏の手料理をカミやんなんぞに食べさせんぜよ」

「そんなに気にすることも無いと思うけどなー」

「前置きはこの辺にしておいて早速企画の説明をするぜい、舞夏頼むにゃー」

「分かったぞー」

そう言って用意されたフリップを手に持って説明し始めた。

~企画説明~

・上条当麻にはこれから出される女の子の手料理を食べてもらう。

・全て食べ終わった後に誰の料理が1番印象に残ったのか答えてもらう。

・公平を期するために全て『肉じゃが』を作ってもらう。

・1度出された料理は、何があっても1口は食べなければならない。


「以上だぞー、ちなみに女の子が出てくる順番は出てくるまでは分からないぞー」

「いや、だから何で俺なんだよ?」

「さて、説明も終わったところで早速最初の挑戦者の入場だにゃー」

「スルーですか、そうですか」



挑戦者1 五和

「お久しぶりです、上条さん」

「五和か、思ったよりまじめそうな企画で良かったー、五和の料理なら安心して食べれるな」

知った人物の登場に上条はほっと息をついた。
五和の料理の腕は以前作ってもらったことがあるので知っている。

「はい! 上条さんの為に頑張って作りました!」

五和もこれ以上無いチャンスなので張り切って作ったようだ。
ここで料理の腕は自分が1番とアピールすることが出来れば、他の子とより一歩リードすることが出来る。

「五和、がんばるのよな!」

天草式のメンバーも何故か応援に来ている。
まあ、料理を作った後のスタジオでの応援は大して意味は無いのだが……。

「うまい! こんなうまい料理を食べたのは久しぶりだ」

やはり料理は美味しかったようだ、上条はあまりの旨さに高く空の上へ引き上げられるような感覚になった。

「ありがとうございます」

上条の反応のよさに五和は安堵の息をついた。

「おーっと、これは好印象だにゃー」

「さすがは私がライバルと認めただけのことはあるなー」

舞夏は以前からライバルがここで活躍するのを見て、少し悔しい気持ちになった。

「カミやんには満足してもらったところで、次の挑戦者どうぞだにゃー!」


挑戦者2 オルソラ=アクィナス


「オルソラまで来てたのか」

「お久しぶりでございます」

「オルソラの料理もうまかったもんなー、マジでおいしいもんばっかり食べられて上条さんは幸せですよー」

インデックスに500倍くらい美味しいと言われた実力を持つオルソラ。
イギリス清教の女子寮も彼女が料理当番のときは食堂もいっぱいになるほど定評がある。

「あなた様に食べていただきたくて、頑張って作ったのでございますよ」

「おお! 見るからにうまそうな肉じゃがだな」

出された料理は声に出さずにはいられないほど美味しそうな料理だった。

「和食はあまり得意ではなかったので、洋風肉じゃがにアレンジしてみたのでございますよ」

「うめぇ! 五和の肉じゃがもうまかったけど、これもかなりうめぇー!」

「天草式の五和に続いての好印象! これは誰が優勝するかわからないにゃー」

「むむむ、新たなライバル出現の予感だなー。やっぱり私も出場すればよかったー」

2人続けて実力者の登場に、舞夏は少しだけ不満を覚えた。

「舞夏の料理はカミやんには絶対食わせんぜよ、さて次の挑戦者の準備が出来たみたいだにゃー」




挑戦者3 結標淡希

「まさか、お前まで参加してるとは……」

意外な人物の登場に、上条は少し不安になった。
彼女の料理の腕は小萌先生から聞いている。
今までの幸せ気分は一気に不安で埋め尽くされてしまった。

「せっかく料理を覚えたんだから、誰かに食べてもらえって小萌が言うから」

「なるほど、それでこれは肉じゃがなのか?」

目の前にある謎の物体に疑問を覚えた。
この企画がテレビ番組なら、不適切な表現で画面にモザイクがかかるだろう。

「普通に肉じゃがだけど?」

何当たり前のことを聞いてるの? と呆れ顔で問い返した。

「……何でこんなに青いんでせう?」

そう、謎の物体は青色だったのだ。
醤油を入れすぎたわけでも、煮込みすぎたわけでもなく、
普通に肉じゃがを作る工程で、肉じゃがが青色になることなんてありえないのだ。

「普通に作っても面白くないから、ちょっとだけ着色料を入れてみたんだけど、何か問題でも?」

結標としては料理にインパクトを持たせるためと遊び心を持って、調味料の中に置いてあった着色料を入れたのだ。

「……妙な臭いがしません?」

「別に変な物は入れてないから味は問題ないわよ」

肉じゃがに青色の合成着色料を入れる時点で十分変な物なのだが……
と、普段の上条ならツッコミを入れるところだが、あまりの臭いの為に上条の思考はツッコミより肉じゃがの方に奪われていた。

「そうか? 食事中の人もいるだろうからソフトに表現するけどこれは……、
 牛乳を雑巾で拭いてそのまま乾くまで放置した時みたいな臭いが……」

記憶喪失の上条は牛乳が乾いたときの臭いなんて知らないだろうが、あまりの臭いの為に直感的にそう言ってしまった。

「失礼ね! さっさと食べなさいよ」

「食うのか? 俺が? コレを?」

上条は意を決して、肉じゃがもどきを口に運んだその瞬間―――

「……パクッ、ゴフッ」

「なっ! 汚いわね!」

口に入れた瞬間上条は吐き出してしまった。

「ゴホッゴホッ、何だよコレ?」

「だから肉じゃがだって……」

「……絶対生物が食べるように作られて無いだろコレ」

あまりの不味さに、上条の感想にはフォローすら入っていない。

「そんなはずは……」

「コレはインデックスですら残すレベルだぞ?」

何でこんなものを食わせるんだよと上条は不機嫌になっている。
ここでインデックスの名前を出すのはインデックスに失礼なのだが……。
大食いの象徴であるインデックスですら食べられないとはよほどのものだろう。

「調理中の情報が入ったぞー、その女が着色料だと思って使ったのはー」

「着色料? あー青色の原因のアレか」

「アレなー、実は青色の絵の具だったんだー」

「ゴフッ、人に何食わそうとしてんだよ!」

予想外の調味料に上条は思わずキレた。
やはり人間が食べられるように作られていなかったのである。

「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」

「とにかく、1口は食べたからルールは破ってないよな?」

正確には食べずに口に入れただけなのだが、こんなものを食べてしまうと病院送りになってしまう。
絵の具以外はちゃんとした素材で作られているので少しもったいないが……。

「まー問題ないにゃー」

「素材を無駄にするのは料理人として許されないけどなー」

料理人として素材を無駄にするのは許されないし、世間では食べ物を粗末にするな! とクレームがつくかも知れない。
そこで、『この後スタッフが美味しく食べました』というために土御門は秘策を用意していたのだ。

「それは問題ないにゃー、別室に青髪ピアスが待機してるにゃー」

「何で青髪が?」

「女の子の手料理が食べられるかもって言ったら喜んで協力してくれたぜい」

「……なるほど」

土御門の一言で、上条は全て納得してしまった。

「舞夏、残りの肉じゃがを別室まで持って行ってくれないか?」

「分かったぞ兄貴ー、それじゃ行ってくる」



ピーポーピーポーピーポー



「それじゃ気を取り直して次の挑戦者だにゃー」



挑戦者4 白井黒子

「白井……」

驚いたことに、次の挑戦者は白井だった。

「わたくしの手料理をご馳走しますわ、上条さん」

白井はそう言って不敵な笑みを浮かべながら、肉じゃがを差し出した。

「……何だこれは?」

結標の時は出されたものがギリギリ肉じゃがと認識することが出来た。
だがコレは―――

「常盤台中学特製オリジナル肉じゃがですの」

「俺にはただの石にしか見えないんですが……」

「気のせいですの、肉じゃがをベースにすればオリジナル料理も許されると聞いたので」

「いや……、コレは……、どう見てもただの石だろ?」

「ただの石ではございませんの。ジャガイモの代わりに石を使い、肉の変わりに合成ゴムを使って、
 鰹とこんぶで出汁を取り、砂糖と醤油とみりんで味付けした特製肉じゃがですの」

「……つまり石ゴムじゃねーか」

「それを言うならゴム石だぜいカミやん」

土御門の鋭いツッコミが光った。
上条は土御門を怒りをこめて睨みつけた。

「さあ、お召し上がりください」

「……コレを?」

無機物を食べることの出来る人間がいたら、それはもはや人間では無いだろう。

「そうですの」

(類人猿にはここで放送中の事故として亡き者になってもらいますの!)

「白井ー、さすがにそれは酷いと思うぞー」

冷静に対処したのは舞夏だった。

「ルールでは出された料理は絶対に1口は食べないとダメなんだけどにゃー」

土御門は面白いものが見れるとニヤニヤしている。

「兄貴はアレを食べ物と判断するのかー? アレは料理に対する冒涜だぞー?」

料理を馬鹿にされた舞夏は、義兄を睨みつける。
愛する義妹に睨みつけられた土御門はゴホンと咳をつき、全てを無かったことにした。

「……そうだにゃー、カミやんそれは食べなくてもいいぜい」

「なっ! せっかくわたくしが心を込めて作ったのに!」

せっかくの計画が全て水の泡になってしまう、不機嫌なしわを眉間につくった。

「こんなこともあろうかと、ある人物に助っ人を頼んでおいたんだぞー」

白井がエントリーした時点で舞夏はある人物に協力をお願いしていた。

コツコツコツ
白井の後ろから不吉な足音が近づいてくるが、白井は気付いていない。

上条はその足音の正体に気付いた、足音の正体の人物について一切知らないはずなのだが
物凄い威圧感を感じてしまい、動けなくなった。

「ほう、コレが常盤台中学特製と銘打たれた料理なんだな白井?」

「ひっ」

突然後ろから声をかけられて白井は心臓が止まりそうになった。
そして振り向くと、『最強の無能力者』の異名を持つと恐れられる寮監の姿があった。

「ここここれはご機嫌麗しゅう寮監様……」

黒子は何事も無かったかのように挨拶をして、必死に誤魔化そうとする。

「こんな料理が常盤台のレベルだと思われることに責任が取れるんだな?」

「そっそそそお、それは……」

「白井、今ここで私に首を刈られるのと、自分で作った料理を自分で食べるのとどっちがいい?」

「……首を刈ってくださいですの」

「そうか」

ゴキッ

黒子は首を180度回され、ゴミのように捨てられた。
その光景を上条は真っ青になり見ている。全身から血の気が引いていくのを感じる。
寮監は上条の前に立ち、凄まじい威圧感を出し上条に語りかけた。

「ウチの生徒が迷惑をかけた」

上条は恐怖のあまり固まっていた。

「は、はい……」
やっとの思いで出た返事は声が震えていた。

「さて、次の挑戦者はこちらだにゃー」
何事も無かったかのように土御門は進行している。



挑戦者5 佐天涙子

「えーっと、君は御坂の友達の……」

「……」

挑戦者の佐天涙子は俯きながら何かを考えている。

(マズイマズイマズイマズイ)

「挑戦者の佐天涙子だにゃー」

「あっはい!」

名前を呼ばれた佐天はドキッっとして思わず返事をしてしまった。
彼女がこんなことになっているのには少し事情がある。

参加する前の風景

「聞いてよ初春! 今度御坂さんの想い人の上条さんを対象とした料理バトルがあるみたいなんだけど」

「私も舞夏さんから聞きましたー」

「御坂さんも参加するみたいなんだけど、あたしも御坂さんの為に何か出来ないかなーって思ってさー」

「具体的にはどうするんですか?」

「聞いた話だと、料理を出す順番はエントリー順みたいだから、御坂さんの後にエントリーして、
 すごくまずい料理を出せば前に食べた人の料理の印象が更に上がるって作戦なんだけどどうかな?」

「なるほど、御坂さんの為に自分を犠牲にするわけですね」

「そんなにたいしたことじゃないけどね、上条さんのことで悩んでる御坂さんを見てたら、あたしも応援したくなっちゃって」

「それでもいい作戦ですね!」

「でしょ? それじゃ早速エントリーに行くよー」

「あれ? でもこの作戦って、佐天さんの後の人の印象も上がったりしません?」

「大丈夫! ちゃんと考えてるよ!」



開始10分前

ピンポンパンポーン

各調理室に放送が流れる。

『今回の参加者の皆さんに、重要な話があるにゃー。最初はエントリー順番で料理を出してもらおうと思ったんだけど、公平を期するために順番はくじ引きで決めることになったにゃー』

『料理対決ってのは料理を出す順番も大事だからなー、これから私がくじを持って調理室を回るから、みんなはギリギリまで料理に集中しておいていいぞー』

「マズイマズイマズイマズイ」

突然のアナウンスに佐天の顔は真っ青になる。
美琴より後なら問題ないのだが、美琴より前になってしまうと……


回想終わり



「すみません、御坂さんってもう出ました?」

「御坂もこんな企画に参加してるのか?」

「……まだなんだ」

佐天は絶望した、このままでは大変なことになってしまう。
自分の安易な行動のせいで友人が傷ついてしまう……。

「あの、佐天さん?」

「あっはい」

佐天の顔はどんどん真っ青になっていく。

「具合悪そうだけど大丈夫か?」

「……あの、あたし棄権するってのはダメでしょうか?」

棄権さえすれば上条に料理を食べさせることなく、全て丸く収まるはずと思った。

「棄権? それは出来ないぜい」

「そうですか……」

「まー、棄権してもしなくても、料理を食べるのはカミやんだから君が気にする必要はないぜい」

(だからマズイんだけど)

佐天は今にも泣きそうな顔をしている。
どうしたらいいのか分からなかった。

「んー、どうして棄権したいのかわかんねーけど……、あ! もしかして料理に失敗したとか?」

「え? 別にそういうわけじゃ……」

「それくらい全然かまわねーよ、さっきの2人の料理の後だしな。多少のことなら全然平気だぜ」

さりげない上条属性の発動、
料理に失敗したと勘違いをしている上条は優しい笑みを佐天に向けたが、佐天にはそれに答える余裕が無い。

「とりあえず料理を紹介するにゃー」

佐天は肉じゃがを上条に差し出した。
上条の優しかった表情がどんどん青くなっていく。

「……何で赤いんでせう?」

「……」

佐天は答えなかった、というより答えられなかった。

「結標のときみたいに赤い絵の具が入ってるとか?」

「大丈夫だぞー、この料理には人間が口に出来ない食べ物や調味料は入ってないぞー」

フォローを入れたのは舞夏、舞夏には各挑戦者が使用した素材と調味料のリストが渡されていた。

「そ、そうか……」

人間が食べられる物と聞いた上条は少しだけ安心して肉じゃがを食べようとした。

「それじゃ、いただきます」

「あっ」

上条が肉じゃがに箸をつけた瞬間、佐天は小さく呟いた。

「……ゴフッ」

肉じゃがを口に入れた瞬間、上条は肉じゃがに口を噛まれたような感覚に陥った。

「……」

「ひたい! ひす! ひすをはやふ!」(痛い! 水! 水を早く!)

肉じゃがは辛さを通り越して上条にダメージを与えた。
あまりの痛みに上条はのた打ち回った。
そんな上条の様子を見て、佐天は気の毒に思いながら上条に水を差し出した。

(すみません、あたしのせいで……、そしてごめんなさい御坂さん……)

「辛口肉じゃがは発想が良かったけど、少しハバネロソースを入れすぎたなー」

「だから棄権したかったのかにゃー、まーカミやんならコレくらいのダメージ全然平気だぜい」

「ひほほほたほほもって……、ふひははへる……」(人事だと思って……、口が焼ける……)

「カミやん何言ってるかわからんぜよ」

「はひ……」

「カミやんの言語機能が回復するまで待つにゃー」



「とりあえず喋れるようにはなった」

「それでは次の挑戦者をこの人だにゃー」



挑戦者6 御坂美琴

「御坂か」

「……」

御坂も何故か元気が無い、
ただ気まずそうに下を向いている。

「どうしたんだ?」

返事は無い、美琴は元気が無いというより悲しみに近い表情をしている。

「ほう、御坂まで参加してるとはな」

「寮監! どうしてここに……」

声を掛けたのは恐怖の寮監だった、上条の言葉には悲しみのあまり反応できなかったが、
寮監の言葉には、恐怖のあまり反応してしまった。

「ただの見学だよ」

寮監の足元には白井黒子が転がっている。

「黒子も出てたんだ……」

なぜ白井が参加したのかは美琴は知る由も無かった。


「さて、超電磁砲が作った料理を紹介してもらうにゃー」


「……肉じゃが?」

「……そうよ、ちょっと失敗しちゃったけど」

「それを気にしてたのか? まー不器用なキャラが不器用なりに作ったものならなー」

「私は別に不器用じゃないわよ!」

ちょっとだけ元気になった様子を見て、上条はほっとした。

「はは、この肉じゃがを前に不器用じゃないと言い張れるんだったら大したもんだよ」

「さーカミやん、さっさと食べるにゃー」

「ああ、分かったよ……」パクッ

「こ、これは……!」

「カミやん、感想を言うにゃー」


「さっきの佐天さんの料理が原因で、舌が麻痺してて味がわからん……」

予想外の上条の感想、そう佐天の作戦はこういうことだったのだ。
美琴の後に料理を出し、激辛料理で上条の味覚を麻痺させて、後の挑戦者の料理の味を分からなくさせるという。
しかし作戦は失敗に終わり、美琴の料理の味が分からなくなるという最悪の結果になってしまった。

「そんな……」

美琴としても、結果として料理は失敗してしまったが、せっかく作ったのだから感想は欲しかった。
不味いと言われたら立ち直れなかったかも知れないが……。



結果発表

「……これで全員の料理を食べたことになったにゃー」

「上条当麻にはこれから誰の料理が1番印象に残ったのか判定をしてもらうぞー」

「うーん」

どれが美味しかったか? 誰の料理を選ぶか? 
五和か? オルソラか? と好印象を得たのは2人だけだった。

「俺が1番印象に残った料理は……」

何の番組だよ? とツッコミが入るほど上条はためている。

「御坂の肉じゃがだ……」

「どうして?」

真っ先に疑問の声を上げたのは選ばれた美琴だった。
それもそのはず、自分の料理は失敗して、更に上条は味が分からない状態になっていたのだから。

「さっきも言ったけど、舌が麻痺して味なんて分からなかったんだ
 でも、味が分からなかったからかな……、何か温かいものを感じたような気がしたんだ。
 そりゃ、味は五和やオルソラの料理の方がおいしかった。
 だけど、今回の判定は印象に残った料理だろ? だから御坂の料理が1番印象に残った。それは間違いない」


「意外な結果だにゃー」

「そんなっ! 納得出来ません!」

納得出来ない! と抗議したのは五和だった。

「五和、お前の負けよな」

建宮が五和の後ろから声を掛けた。

「どうしてですか! 私の料理の方が―――」

「お前さん、以前に上条に手料理を食べさせたことがあっただろ?」

「……はい」

「それが油断だったのよな」

「意味がよく分かりません……」

建宮の真意を理解できない。
この状況を沈めるために舞夏が動いた。

「後は私が説明してやるぞー
 この勝負は初めからフェアじゃなかったんだー
 料理って言うのは1番食べてもらいたい人の為に愛情を込めて作るものでなー
 それはみんな理解してると思うけど」

「私は上条さんの為に一生懸命作りました!」

そんなことは当たり前だ! と言わんばかりに五和は舞夏に食いついた。

「君が一生懸命だったのは上条当麻も分かってると思うけどなー
 以前に作ったとき、上条当麻に美味しいと言ってもらっただろー?
 料理を初めて作るときは、相手の口に合わなかったどうしようとか、そういう不安と戦いながら想いを込めて作るものでなー
 前に上条当麻に作ったときに、ある程度の好みを知った君は今回は不安も無く安心して作れたはずだろー?
 それが油断につながったんだなー
 その点、御坂は今回初めて上条当麻に作ったわけだからなー、相当不安があったと思うぞー
 実際、緊張しすぎて失敗の繰り返しだったしなー、それでも上条当麻の為に一生懸命作った差ってのはやっぱり大きいんだなー
 まー、御坂の前に上条当麻が舌にダメージを受けていなかったら、結果がどうなってたかわからないけどなー」

「……私の完敗です」

舞夏の言う通りだった、確かに自分は油断していた。
そんな私の慢心を上条は見抜いたのだ……、感情的になり抗議するなんて……、そんな自分を恥じた。


「さて、ここで優勝した超電磁砲には優勝商品を受け取ってもらうにゃー」

「商品なんてあるの?」

「料理対決の商品と言えば、審査員のキス、つまりカミやんのキスだにゃー」

「ぶっ! 何言ってんだ土御門!」

「この状況で逃げるのかー?」

「うっ! でも、御坂の気持ちだってあるだろ?」

「……私はいいよ」

美琴の顔は真っ赤になっている。
何かを決意したようだ。

そして美琴の言葉に上条も決意をした。

「……分かったよ」

チュ

「まさか口にするとはなー」

「カミやん、普通こういうときはホッペにキスだろ?」

土御門義兄妹はニヤニヤしながら上条にツッコミを入れた。

「っ! すまん御坂! 大丈夫か!?」

「ふ……」

「ふ?」

「ふにゃーーーーー」

「ぎゃー漏電すんなああああああああ」


こうして、第1回料理対決は美琴の優勝で幕を閉じたのだった。



そして……


「あー、悪かったよ」

「謝られる覚えなんて無いけど、アンタ何かしたの?」

「覚えてないのか?」

「別に謝られることは無いと思うけど?」

「でも、勘違いであんなこと……」


「ふふ、私のファーストキスを盗んだんだから、ちゃんと利子つけて返してよね!」

「利子つけて?」

「そうね、早く返さないとどんどん高くなっていくわよー?」

「あの……ローンでもいいでせうか?」

「……仕方ないわね、特別にローンで許してあげるわ!」

「ありがとうな、まず最初は肉じゃがの作り方教えてやるよ!」

「そうじゃないだろうが!」

「ぎゃああああ!? なんでえええ?」



今日も学園都市は平和である。









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