とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part19

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匿名ユーザー

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第二部

序章


「先生、優しくお願いしますよ」

「はいはい、それじゃあいくよ」

そう言って冥土帰しは上条の左腕に機械で出来た機械鎧と呼ばれる腕を装着する。

「ギャーーーー!!」

そうして上条の左肩の神経と機械鎧に通る人口の神経が接続される。
機械鎧を装着する際は激しい痛みが走るのだが、上条もまたこの痛みに馴れることは出来ずにいた。
この機械鎧と呼ばれる技術は冥土帰しがとある知り合いから譲り受けたものらしい。
冥土帰しの話によると前世紀の大戦中に知り合ったその人物は弟と共に別世界から来て、
ある危険な爆弾を探して旅しているらしかった。
とても信じられる話ではないが、冥土帰しの何処か懐かしげな表情を見ると話の真偽が上条には分からないのだった。
9月30日の事件から一ヶ月半が経ち、すでにあの事件のことは学園都市の住人にとって過去の出来事になっていた。
あれから魔術側からの攻撃などは特に行われることもなく、学園都市は一端覧祭の準備のピークに達している。
上条のクラスも準備の真っ只中なのだが、その合間を縫って機械鎧を扱うためのリハビリに励んでいた。
機械鎧は体の神経と機械の人口神経を直接繋ぎあわせるため、学園都市の最先端の義肢と比べても格段に使い勝手が異なる。
しかしながら機械鎧を装着するための手術は神経の伝達を確認しなければならないため、
麻酔無しで手術を行わなければならないという難点があった。
それに加えて辛いリハビリにも耐えなければならないという、メリットに対してデメリットが多い義肢だった。
だが敢えて上条が機械鎧を選択したのは今のままでは周りはおろか自分の身すらも満足に満足に守れないことを悟ったからだった。
右手に幻想殺しが宿ることを除けば、基本的に上条は体が丈夫で少し喧嘩慣れした普通の高校生にならない。
それ故に上条は機械鎧という義肢を選択すると共に、ある人物に戦い方を教わっているのだった。



「ところで今日は御坂君は来てないのかい?」

「一端覧際の準備期間ですからね。
 本人が否定しても美琴は常盤台の象徴みたいなところがありますから。
 一端覧祭の準備を手伝わないわけにはいきませんよ」

「本音を言うと寂しいんじゃないかい?」

「夜には必ず会うんですし、美琴を束縛するわけにはいきませんよ」

「確かにどちらかというと束縛されてるのは君の方だしね」

「ハハッ」

すると冥土帰しが上条の目を真剣な表情で見据えてながら言った。

「上条君、今は俗に言う嵐の前の静けさというやつだ。
 これは僕の勘だけど、これから未曾有の大規模な戦いが起こるだろう。
 そして君は僕の患者だ、僕は患者を危険な目に遭わせたりすることを良しとしてない」

「はい」

「本来街を守らなければならないのは僕達大人の役割だ。
 君がこれから先も傷つく必要は全くないんだよ」

「…分かっています。
 でも俺には少なくてもアイツらから誰かを守ることが出来る右手がある。
 幻想殺しの力が俺に宿っている理由は分からない、だけど俺は…」

「君は力のあるなしに関わらず誰かを守るためなら危険に首を突っ込みそうだけど…」

「それは買いかぶりですよ」

「…まあ、君は止めても止まらないことは分かってる。
 それなら背中を押して出来る限りのサポートをしてあげる、それも大人の役割かもね」

「先生!!」

「辛いリハビリをこの短期間でよくやり遂げた、今日でリハビリは終わりだ」

「ありがとうございます!!」

「これから先も必ず生きて帰って来なさい。
 そうしたら必ず僕が命を繋いであげるから」

「はい!!」

上条は冥土帰しに頭を下げると診察室を出ていく。
その背中を見送りながら冥土帰しは声には出さずに心の中で呟く。

(君なら彼のことも救えるかもしれないね)

遠い昔イギリスの片田舎で救った患者と少年を頭の中で並べ、冥土帰しは全員が笑って迎えられるハッピーエンドを祈るのだった。



「驚いたな、まさかこの一ヶ月で私に一撃を入れられるほど成長するとは…」

上条はその場で膝を着いている道着を着用している女性…常盤台女子寮の寮監に手を差し伸べる。

「いえ、寮監さんの指導の賜物です」

寮監は上条の手に掴まり体を起こすと、何処か感慨深げに遠くを見つめて言った。

「御坂の同棲相手が鍛えて欲しいとやって来た時は、驚いたものだ。
 正直に言うと、どの面を下げてやって来たんだと怒り心頭の状態だった。
 いくら親御さんの許可を得ているとはいえ、名門である常盤台の生徒を不純異性交遊の道に引きずり込んだ男だからな」

「いや、俺と美琴は健全な付き合いしか…」

「分かっている、一目見た時から君が誠実な男であることは理解出来た。
 だからあらぬ嘘を吐いていた白井は、その日のうちに罰を下したよ」

(白井の奴め…)

「それにこういう言い方はなんだが、体にハンデを背負った君がそこまでして自分を鍛えようとする理由が分からなかった。
 実際は今も話して貰っていないから本当のところは分かっていないのだがな」

「すみません」

「いや、君に何か果たさなければならない何かがあることは理解している。
 例え語らずとも君がここまで成長したのが何よりの証拠だ。
 機械鎧という義肢を選択したことや、この短期間で血反吐を吐くほど己を鍛え上げたこと…
 君はこれから何か大きな戦いに臨もうとしているのではないか?」

「…」

「一ヵ月半前から学校での御坂の様子が変わったことも聞いている。
 能力の応用性を高めるために時間割の基礎から徹底的に自分を鍛え上げているそうだ。
 だが御坂はいくらレベル5といえども、その中身はまだ中学二年生の女の子だ」

「分かっています」

「私が教えたのは徹底的に敵を排除するための技術だ、誰かを守るのには向いていない。
 だがそれでも君なら私の授けた力を誰かを守るために有効的に使ってくれると思っている。
 君は一人前の男だ、君を止める理由は私にはない。
 …どうか、御坂のことを守ってやってくれ」

「はい!!」

やるべきことはやった。
今はまだ何も動きがないから無闇に動き回ることは出来ない。
それでも来るべき時に備えて準備しておくに越したことはない。
やがて訪れるであろう大きな戦いを前に、一端覧祭の幕が開けようとしていた。









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