とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part07

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第3章(2)


上条と美琴は第三学区にある個室サロンに来ていた。
上条がIDを見せると部屋が集まる奥へと続く道を進んでいく。
そしてその一室に入ると上条たちは更に隠し扉から地下へと進む階段を下っていった。

「よお、待ってたぜ」

そこには二人の少年と二人の少女が待っており、
更に奥に二人の女が拘束された状態で椅子に座らされていた。

「それで俺に破壊して欲しい霊装っていうのは?」

「これだ」

鼻にピアスをした方の少年…浜面仕上が上条に抱えていた十字架を模した、
まるで剣のようにも見える霊装を手渡す。
上条がそれを右手で受け取った瞬間、霊装はバラバラと砕け散った。
それを見た拘束された女の内、作業服を着ている女…オリアナ=トムソンは
何処か忌々しげに目を瞑った。
それに対して十字を彩られた白い修道服を着た女…
リドヴィア=ロレンツェッティは興味深そうに上条の右手を見ている。

「それでこの霊装の効果は一体何だったんだ?」

「おいおい、ぶっ壊してから聞くようなことかよ?」

茶髪の少年…垣根帝督は呆れた様子で笑いながら言った。
そして上条の問いにはピンクのジャージを来た少女…滝壺理后が答えた。

「かみじょうの足元でバラバラになってる霊装の名前は使徒十字。
 突き刺した土地をローマ正教の支配下に置いてしまうという効力を持つの。
 具体的な効果としては幸運と不幸のバランスを捻じ曲げ、
 何をやってもローマ教会に都合がよくなるように運命を捻じ曲げる」

「…いよいよローマ正教もマジになってきたってことか」

「ったく、忌々しいったらありゃあしないわよ。
 いくら潰してもワラワラ湧いてきやがって…
 どんだけ科学を認めたくないのって感じよね」

そしてもう一人の少女…麦野沈利はリドヴィアとオリアナを睨みつけながら言った。

「この二人の処遇は?」

「イギリス清教に引き渡すですって。
 アレイスターもあんな胡散臭い組織といつまで繋がってるつもりなんだか…」

すると垣根は上条のことを正面から見据え、
先ほどまでと違って真面目な表情をし命令するような口調で言った。

「上条、実はお前を呼んだのは霊装を破壊させるためだけじゃないんだ。
 『執行部』の部長として、お前に任務を言い渡す」

垣根がこんな言い方をするのは珍しかった。
垣根は立場上『執行部』の部長として指揮系統は一番上にある。
しかし基本的に各チームは独立して動くことが殆どのため、
その立場はあってないようなものだった。
垣根が部長として上条に命令を下すのは『グレゴリオの聖歌隊』を潰して以来だった。
そしてこのことは、それだけ重要な意味を持つということになる。

「大覇星祭の振り替え休日中に『グループ』には北イタリアに飛んでもらう」

「北イタリア、南イタリアのローマじゃなくてか?」

「ああ、そこで何か学園都市に対する強力な戦術的魔術の開発が行われるらしい。
 それを見極め、場合によっては破壊するのが『グループ』の任務だ」

「…」

「術式を破壊するのに上条の右手以上に有効な手はないからな。
 それに『グループ』の新人達の見極めにも、ちょうどいい機会になる。
 『スクール』と『アイテム』は陽動に出て敵の撹乱に動く。
 麦野もよろしく頼むぞ」

「はいはい、任せときなって」

「久しぶりの『執行部』揃っての活動だからな。
 気合を入れていくぞ!!」

「ああ」

しかしそう返事をしながらも何処か浮かない表情の上条を、
美琴は心配そうに見つめているのだった。



「というわけで、振り替え休日の初日から俺達は北イタリアへと飛ぶことになる。
 それに差し当たって、必要な準備は各自で済ませておいてくれ」

上条は残りの『グループ』のメンバー二人に垣根から請け負った任務のことを告げると、
二人は頷いて立ち去っていった。
二人が立ち去ったのを確認すると、上条は美琴に向かって言った。

「それじゃあ、そろそろ行くか?」

「うん」

今の時間は6時00分、後30分でナイトパレードが始まる時間だ。
上条はこの日のためにナイトパレードが特等席で見れる店の予約を済ませておいた。
そして二人は上条が予約した店へと向かうのだった。

「年々、ナイトパレードって派手になっていくわよね」

「そうだな」

上条と美琴がいるのは建物の二階にあるオープンテラスだ。
少し見下ろすような形でナイトパレードが行進していくのを特等席で見ることが出来る。

「しかし去年も美琴と一緒にナイトパレードを見たけど両親達も一緒だったからな。
 こうして恋人として二人きりでナイトパレードを見るのは今年が初めてか?」

「そうね、本当は当麻と一緒にずっとナイトパレードを見るのを楽しみしてたのよ」

「何だか今日の美琴は言葉がストレートだな。
 いつものツンツンした美琴は何処に行ったんだか…」

「う、うるさいわね!!
 私だって偶には素直になろうと思うことくらいあるわよ」

「まあ上条さんとしては、
 美琴が俺のこと好きでいてくれるって分かって嬉しいんだけどな」

上条の言葉に美琴は頬を染める。
実は美琴がツンツンしていても上条には美琴の気持ちは良く分かっていたのだが、
それでも素直に自分に向かって好意を表してもらえると嬉しいのだった。
二人で食事を取りながら科学で彩られた幻想的なナイトパレードを眺める。
すると上条は美琴が何か言いたげにナイトパレードではなく
自分を見ているのに気が付いた。

「どうかしたか?」

「当麻、何か私に隠し事してない?」

「いや、別に隠し事なんてしてないんだが…」

「でも、この任務を言い渡されてから凄く不安そうな顔をしてるわよ」

「…参ったな、本当に隠し事をしてるわけじゃないんだ。
 ただ今回の任務は何か嫌な予感がするんだよ」

「嫌な予感?」

「俺のそういった勘が良く当たるのは知ってるだろ?
 今回の任務を通じて何か大きく変わっちまう気がして…」

「実はね、私も当麻と同じ気持ちなの。
 私の中の何かが告げてるのよ、何か私達の運命が大きく変わるって」

美琴も次第に不安そうな表情へと変わっていき、その表情は恐怖に彩られていた。

「美琴…」

「それが良い方向なのか悪い方向なのか分からない。
 でも私、当麻に何かある気がして怖くて仕方ないのよ」

「大丈夫だ、俺は何があろうとも美琴を残して死ぬようなことはしない。
 そして絶対に美琴や皆のことも守ってみせる」

「約束してくれる?」

「ああ、約束だ」

上条は席を立ち上がり美琴の隣に移動すると、美琴の唇にそっと自分の唇を重ねた
こうして上条と美琴、二人の夜は更けていく。
やがて大覇星祭は終わりを告げ『グループ』は北イタリアへ向けて旅立った。
そしてそこで起こった戦いが上条と美琴、
二人の運命を後に大きく揺れ動かすことになるのだった。







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