美琴「素直になる…かー」
学園都市、常盤台寮内で、御坂美琴は悩んでい た。その悩みとは…
「どうしたらあいつともっと親しくなれるかし ら」
…まあ言わずもがな上条当麻のことである。
あの時、病院から抜け出した上条を見つけ、恋 心を自覚してから、美琴は美琴なりにいろいろ 努力はしている、しているのだ。ロシアまで追 いかけたり、ハワイまで同行し、共闘したり と。 時にはかなり思いきった発言もした。誰が聞い ても告白と取れるような発言を。実際彼以外の 人間が聞いていたらまず気付くだろう。だが上 条の鈍感ぶりは筋金入りである。故に今に至っ ても大して二人の仲は進展せずにいる。まあ、 顔見知りから友達位にはランクアップ出来たで あろうが…
だが美琴が望むのはそこではない。それより もっと親しい関係だ。友達で満足するわけには いかない。それにあまりのんびりやっているわ けにもいかないのだ。なんせ彼を慕っているラ イバルは多い。だから、取られてしまう前にな んとか彼を振り向かせたい。そして、この悩み を抱えているのだ。
「あのバカの鈍感は直しようがないし、もし直 して、他に靡かれても困る。なら私が変わるし か無いってのはわかってんだけどねー…」
一応美琴なりに答えは出ていた。これでもレベ ル5だ。自己分析が出来なくてはやっていられ ない。
「素直になる。かー…」
これが美琴の答えである。実際この答えは妥当 である。なんせあのバカさんには口で伝えなけ れば通じない。それも、ストレートに。だが、 美琴は上条の前ではどうしても恥ずかしくな り、素直になれずにいた。
「自覚はあるのよ。私が素直にならないから。 本当はただ話したいだけなのに、いつも突っ掛 かっちゃってさ。」
だがこのままでいるのは絶対に嫌だ。だから美 琴は親しい友人である、ある人物に電話で相談 していた。
「ねえ、どうしたらいいかな佐天さん?」
「どうしたらって…もう答え出てるじゃないで すか、御坂さん。」
佐天涙子、美琴の一つ年下の親友の一人で、恋 バナ大好きの少女である。
「素直になれってこと?できたら苦労しないわ よ…」
「じゃあ上条さんを他の人に取られてもいいん ですか?」
「それだけは嫌!絶対に嫌!!」
美琴にとって上条はもうかけがえのない存在に なっている。それこそ、自分だけの現実を揺る がすほどの。
「なら…」
「でも出来ないのよ…あいつの前だとどうして もいつも通りの自分でいられないの…」
「…でももへちまもないです!!上条さんとの 仲を進展したいなら御坂さんが素直になるしか ないんでしょ!?」
「だからそれ以外に方法がないか相談してるん じゃない!」
「私に御坂さん以上の答えは出せませんよ。な んせレベル5の頭脳で出した答えですよ?レベ ル0の私にはそれ以外の答えは出せません。…で も、背中を押すことは出来ます。」
「背中を?」
「御坂さんが、素直にならないなら、私が上条 さんに告白します。」
は?え、今何て言った?なんで告白?佐天さん もあいつが好きなの? そもそも佐天さんとあい つって面識あるの? と美琴は混乱した。美琴が 何も言えずにいると、佐天が先に切り出した。
「上条さんって、御坂さんが大覇星祭の借り物 競争で一緒だった人ですよね?私会ったこと有 るんですよ。同じく大覇星祭の時に。その時か ら気になってたんですよね。男前ですし、それ に御坂さんが好きになったって聞いて余計気に なりました。」
「え、ちょっと待ってよ。冗談でしょ?」
「本気ですよ?私、結構面食いですし、そろそ ろ彼氏も欲しいですしね。だから御坂さんが行 かないなら私に下さい。」
「嫌、嫌よ!あいつは私にとって!!」
「なら!!素直になってください!!どのみち のんびりしてたら私が行かなくても上条さん取 られてしまうんでしょ!?」
「ッ!?」
そうだ、のんびりはしていられないのだ。それ は自分でもわかっていたじゃないか。
「…何も行きなり告白しろとは言いません。少 しづつでいいんです。頑張りましょ?御坂さ ん。」
「佐天さん…わかった、私やってみるわ。少し ずつでも素直に。」
「そのいきです!御坂さん!それでこそ我らが 御坂さんです!」
「や、やめてよ!恥ずかしいじゃない!…でも ありがとね佐天さん。背中押してくれて。多分 佐天さんに言われないと私ずっとぐだぐたして たわ。私頑張るわね!」
「大丈夫ですよ!御坂さんなら!なんせ、学園 都市が誇るレベル5の第三位、常盤台のレール ガンなんですから!!」
「だ、だからやめてってば!!!」
御坂美琴は決心した。素直になると。そして絶 対あいつを振り向かせると。こうして、御坂美 琴の上条当麻攻略作戦が始まったのであっ た!!
美琴「素直になる…かー」 2
翌朝。
常盤台寮内の私室のベッドの中で御坂美琴は身悶えていた。
「あ゛ぁぁぁ…言っちゃった…言ってしまった…うぅ、あ~…」
起床し、昨晩のことを思い出してからかれこれ30分この調子である。因みにルームメイトの白井黒子、もとい黒井黒子は床で寝てる。なぜかって?いつものことだからそこには触れないで頂きたいが、おえて言うなれば今の美琴を見て白井はどうするだろうか…っと話がそれて申し訳ない。本題に戻そう。
素直になる。
昨晩御坂美琴はそう誓ったのだ。佐天涙子に。上条当麻と親密な関係になるために。だが、日がたつと決意は揺らいでしまうものである。それは学園都市の第三位の超能力者である、御坂美琴でも例外ではなかった。もっとも、上条当麻のことでさえなければ揺らぎはしなかったのだろうが。
「はぁ…こうしてても仕方ないわよね。佐天さんに大見得きっちゃったし…よし!頑張れ私!あんたはみんなのお姉さまでしょ!
…自分で言ってて恥ずかしくなってきちゃった…ッてもうこんな時間!?やば、遅刻する!」
こうして、御坂美琴の1日が始まった。
え?白井?だからまだ寝てるってば。遅刻?大丈夫だ、問題ない。 …問題ないったら問題ない!!
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お嬢様らしからぬ形相で準備をし、朝食を済ませた美琴はなんとか、いつも通りの時間に寮を出ることに成功し、事なきを得た。
だが、その通学中、美琴にいきなりのチャンス、もとい、試練が訪れた。
いたのだすぐ目の前に。いつもの公園で、あのツンツン頭が。
「ッ!!??」
尋常じゃない位びっくりした。それはもう腰抜かすくらいに。…この公園に人が少なくてよかった…って、別にホントに腰抜かした訳じゃないんですよ?ホントだよ?
(落ち着けぇぇ!!落ち着くのよ!御坂美琴!何も今あいつと遭遇したからって、こ、告白しないといけない訳じゃないんだから!いつも通りに挨拶して、すこーしだけ、素直に振る舞うようにする、うん、それだけでいいのよ!)
そうして何とか自分を落ちつけ、立ち上がりあいつに声をかける。…かけようとしたのだが、いない、あいつが、いない。それもそのはず、なんせ、かれこれ2分近く、美琴は混乱して回りが見えていなかった。そして上条は美琴に気付いておらず、歩き続けているのだ。見失っても当然である。
今日は諦めるとゆうことも考えたが、美琴はそれを良しとは出来なかった。
(まだ、そんなに遠くには行っていないはず!)
そうして美琴は駆け出した。
(いた!!)
思いの外、上条は直ぐ見つかった。
(はっは~ん。アイツの学校の方向から逆算したら大体どこ通って通ってるかなんてすぐ分かるのよ!レベル5舐めんな!)
「おっはよー。今日も相変わらず不景気そうねー」
そう美琴は声をかけた。かけたのだが…
「…」
完全にスルーだった。それはもう清々しいほどに。
(こいつ…せめて振り向くとか!歩調落とすとか!なんかないわけ!?なんで私のことはいつもいつも検索件数0なのよ!!)
上条は今日も鈍感っぷりを遺憾無く発揮していた。いつもはここで美琴が電撃をぶつけて売り言葉に買い言葉の口喧嘩に発展するのが関の山だが、今日の美琴は一味違った!
(そうよ、私は素直になるって決めたの!ここで怒ってちゃ話にならないわ! …でもどうしたらアイツに気付かせられるかしら、いつも(でんげき)以外の方法で…)
上条は単に声をかけるだけでは気が付かない。このバカ、アンタ、ごめ~ん待った~?等は無意味だ。それは美琴の経験が物語っていた。
(となると、やっぱりここは…
名前を呼ぶしかない!!??)
御坂美琴に肩に触れるなどの選択肢はなかった!!
(かみ…じょう、と、と、とう、とうま!上条当麻!!良し行ける!今言えた!あとはこれを口に出すだけ!そう簡単じゃないあとは口を動かす…動かす…無理ぃぃ!!)
上条の10メートル後ろを人混みに紛れながら追いかけ、必死に考える美琴であったが、美琴が出した答えは今の美琴にはレベルが高かった…
(うぅぅ、でも諦めないわ!佐天さんに約束したもの!)
そして美琴は決死の覚悟で口を動かした!
上条との距離は今はたったの3メートル!あとは口を動かすだけだ!
「か、か、か、かか、上じ、上条、とと、と、とぅ、とう、とう、ま…当麻!」
よしよくやった頑張ったあたし!よくいった!後でご褒美にクレープ食べよう!!そう心の中で呟き、上条のいた方向を見る。だがそこには信じられない光景が広がっていた!
「あれ?御坂?なんでこんなとこにいんの?」
「上やん、おはよーやで…って、なんでうちの学校の下駄箱に常盤台生がおるん!?」
上条の学校の玄関口、下駄箱であった。
「へ?あれ?ここどこ?」
「いやだからここ俺の学校だよ。」
またやってしまった…
今度は上条のことを見つめすぎたあまり、回りが見えなくなっていた。
実は結構前から回りは上条の学校の生徒ばかりになっていたため、回りからは好奇の目を寄せられていたのだ。
「あれそう言えばこの子どこかで…ってこの子夏休みに上やんとデートしてた子やないか!?」
青い髪をした上条の友人らしき人物がそう発言した瞬間、周りが一斉に騒ぎだした。
「なに!?」「上条がデート!?」「またアイツか…」等々様々な発言が飛び交う中(途中罵詈雑言も)、渦中の美琴は未だ平静を取り戻せないでいた。
「上や~ん?どうゆうことか説明してもらおか?」
「は?いや俺は何も… 」
上条の声が聞こえてようやく美琴は我に返った。そして美琴がこの場を切り抜けるために考えた策は…
「し、失礼しましたぁぁぁああ!!」
…逃げることだった。そう逃げる、逃走、戦術的撤退。
「は?ちょ、御坂!?お前結局何しに来たんだよ!?」
「僕をスルーするとはいい度胸やないか!!上やん!!これは土御門に吹寄も交えてクラス内裁判するしかなさそうやな!!まあ結果はもう見えとるがな!!」
「いや、だから俺は!!え、ちょお前ら5人がかりで何を!?ちょ、離し、離してください!!上条さんは何も悪いことはしてません!無罪です!濡れ衣ですぅ!ふ、不幸だぁぁぁああ!!!! 」
何やら後ろから断末魔が聞こえた気がしたが、今の美琴にはそれに構っている余裕はなかった…
こうして美琴の初めての試練は幕を閉じたのだった!!
因みに美琴は結局学校に遅刻し、上条はその日1日出席扱いにならず、補習が慣行されたとか…
御坂美琴の試練はまだまだ続きそうだ