離れない
星の光、そよ風すらない漆黒の闇の中、
御坂美琴は一人とある場所に立っていた。
御坂美琴は一人とある場所に立っていた。
河川敷。
上条の記憶には無い、自分だけの二人の思い出の場所である。
当時、しょっちゅうしていた追いかけっこも、
今はこの感情の正体を知ったためにできなくなり、
上条の記憶には無い、自分だけの二人の思い出の場所である。
当時、しょっちゅうしていた追いかけっこも、
今はこの感情の正体を知ったためにできなくなり、
そして、今日でこの感情ともお別れなのかもしれない。
(わたしがアイツの隣にいたら、アイツが、不幸になる……)
そんなことはない。
上条は、今日一日、恥ずかしがりながらも楽しんでいた。
しかし、美琴は気付かない。
頭をめぐるのは彼の先ほどの言葉。
上条は、今日一日、恥ずかしがりながらも楽しんでいた。
しかし、美琴は気付かない。
頭をめぐるのは彼の先ほどの言葉。
不幸
彼と一緒にいたい。
しかし、それでは彼は不幸になるようだ。
川のせせらぎの音すら、今の美琴には糾弾のように聞こえる。
しかし、それでは彼は不幸になるようだ。
川のせせらぎの音すら、今の美琴には糾弾のように聞こえる。
現実をゆがめる超能力。
それの暴走が今回の原因。
それの暴走が今回の原因。
(なら、逆に意識してもその現象は起こせるはず)
彼女は一つの悲しい決断をしようとしていた。
(あれはアイツとわたしを磁石の違う極と設定していた。
なら、同じ極に設定しなおせば……)
なら、同じ極に設定しなおせば……)
アイツを不幸にするぐらいなら。
(同じ極の磁石は絶対にくっつかない。
そうすれば……二度とアイツは、わたしに会わないで、済む……)
そうすれば……二度とアイツは、わたしに会わないで、済む……)
彼女は、覚悟を決め、能力を発動する。
「……いやだ……」
しかし、次の瞬間にはその覚悟が揺らいだ。
「……いやよ……」
自分だけの現実
「アイツと……一緒にいられない……なんて……」
その根幹を消失させるには
「アイツに……二度と会えなくなるなんて……」
その覚悟はもろい。
「……いやだ……いやだぁぁぁぁあああああああああああ」
彼女は、泣き叫んだ。
1分後、
彼女は冷たい瞳を宿し、立ちあがる。
能力を発動するために。
能力を発動するために。
彼女は強い。
悲しいほどに強い。
上条を大切に思う彼女は、自分よりも上条の幸せを優先する。
それがどんなに自分にっとって絶望となる選択肢であっても、
彼女は1分で再び覚悟を決めた。
先ほどよりも強靭な覚悟を
決めてしまった。
悲しいほどに強い。
上条を大切に思う彼女は、自分よりも上条の幸せを優先する。
それがどんなに自分にっとって絶望となる選択肢であっても、
彼女は1分で再び覚悟を決めた。
先ほどよりも強靭な覚悟を
決めてしまった。
しかし、だ。
1分踏みとどまったのだ。
最悪の選択を実行する前に、
1分の時間ができた。
最悪の選択を実行する前に、
1分の時間ができた。
その1分があったから、
その1分があったからこそ、
「美琴ぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!」
ヒーローが間に合ったのだ。
一瞬美琴は何が起こったかわからなかった。
能力を発動した瞬間、背後から衝撃を受け、視界がぶれる。
気付いたら、草にまみれて倒れていた。
アイツに、背中から抱きしめられる形で。
能力を発動した瞬間、背後から衝撃を受け、視界がぶれる。
気付いたら、草にまみれて倒れていた。
アイツに、背中から抱きしめられる形で。
その少し前、
上条は走っていた。
無風なのに回る風力発電を目印に。
そして、目的の少女を見つけた。
上条は走っていた。
無風なのに回る風力発電を目印に。
そして、目的の少女を見つけた。
背筋が凍った。
今にも、その少女が……
「美琴ぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!」
その瞬間、上条は動いていた。
後ろから美琴に飛びかかる。
何かを破壊した感覚を右手に感じた後に。
美琴を抱きしめたまま、上条は土手を転がる。
後ろから美琴に飛びかかる。
何かを破壊した感覚を右手に感じた後に。
美琴を抱きしめたまま、上条は土手を転がる。
状況を確認した美琴は恐怖した。
「……何するの!! 離してよ!!!」
このままでは再び上条が不幸になってしまう。
だから、あがいた。
そこから逃れようとした。
だから、あがいた。
そこから逃れようとした。
しかし、アイツは離さない。
しばらくして、ようやく美琴は気付く。
「……アンタ、なんで、泣いてるのよ……」
「……恐かったんだ……」
風が、吹いてきた。
「お前を見つけた時、今にもお前が消えそうで。
もう二度と会えなくなりそうで、恐かったんだ」
もう二度と会えなくなりそうで、恐かったんだ」
コイツは、何を言ってるんだろう?
自分がいるから不幸になるのだ。
そのほうが、いいではないか……
自分がいるから不幸になるのだ。
そのほうが、いいではないか……
「……お前は俺と一緒にいるのは嫌かもしれない。
でも、ごめん、オレはお前と会えなくなるのは、嫌だ」
でも、ごめん、オレはお前と会えなくなるのは、嫌だ」
何を言っているんだ?
そんなことを言われたら、
そんな、はず、あるわけないのに、
……そんなことを、言われたら、
そんなことを言われたら、
そんな、はず、あるわけないのに、
……そんなことを、言われたら、
「……ごめん、オレは、お前をどんなに不幸にしても、お前と離れたくない」
ああ、
いいのだろうか、これを口にしても、いいのだろうか?
これを口にしたらもう引き返せない。
もう二度と、あの決断はできない。
でも、それでも、
いいのだろうか、これを口にしても、いいのだろうか?
これを口にしたらもう引き返せない。
もう二度と、あの決断はできない。
でも、それでも、
美琴は上条の腕の中で上条の方に体を向ける。
涙のせいでぼやけているが、上条の泣いている顔が見えた。
涙のせいでぼやけているが、上条の泣いている顔が見えた。
そして、ようやく
「……ごめん、わたしも、アンタがどんなに不幸になっても、アンタと離れたくない」
その悲しい幻想が壊れた。
「カ、カミやん……、お手手つないで、デートかいな?」
「そうか、今、この瞬間から、上条当麻は土御門元春の敵だ」
「「幸せそうですね、御坂様!!!」」
「み、御坂さん!!
そその、白昼堂々とそのようにするのは……
その、見ているこちらが恥ずかしいというか……
いえ!! これはあくまで客観的見解であって
わたくしはとてもよいことと思っていますわ!!!!!!」
そその、白昼堂々とそのようにするのは……
その、見ているこちらが恥ずかしいというか……
いえ!! これはあくまで客観的見解であって
わたくしはとてもよいことと思っていますわ!!!!!!」
「またご来店いただき、ありがとうございます!!
今日こそ、粉微塵に大爆発なさってくださいませ!!!」
今日こそ、粉微塵に大爆発なさってくださいませ!!!」
「お、お、お姉さまぁぁぁぁぁぁああああああああ!!」
「よかったですね!!御坂さん!!」
「わたしの親戚よりも幸せそうですよ?」
「そんなこと言われてもなぁ」
「どうしろってのよね?」
仕方ないのだ。
くっついて、離れられないのだから。