とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part02

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午前はやはり補習があったため、昼からバイトをする。
昨日でバイトには慣れてきたので、仕事ははかどっている。
2時間ぐらい経った頃、再び来客がやってきた。

「いらっしゃいませー…ってまたか、ビリビリ」
「ビリビリ言うなって言ってんでしょ!?」
「あー、わりーわりー」
「……直す気ないわね?」
「いっ!? いやいやいやそんなことはないですよ!? だからその電撃をしまってくれるとこちらとしてもありがたいのですがーっ!!?」
「……わかったわよ」

素直に電撃をしまった美琴に上条は驚く。

「あれ? なんか素直だな…。なんかあったか?」
「なっ。何もないわよっ。せ、席ついてるからね!」

以前自分のせいでクビにしてしまったことを思い出して止めたとは到底言えない。

「なんなんだ一体……。すいませんすぐに仕事に戻ります」

後ろからの怖すぎる視線に気づいた上条はそそくさと動きはじめる。
オーダーを持って美琴のところへ。

「ご注文は決まりましたか?」
「ん。ナポリタン。あと水ね」
「……昨日も同じじゃなかったか?」
「い、いいじゃない別に!」
「…まあ、そうだな。んじゃ、先に水持ってくる」

上条が奥に戻って行くのを見送る。
実は見とれてしまっていたのは内緒だ。
美琴は考える。

(う~。とりあえず来てみたはいいけどどうしようかな。また待つのもいいけれど理由をきかれたらどう答えよう……。どうせなら一緒にバイトとかしてみたいけどうちの学校は禁止してるしなぁ……)

「水をお持ちしまし……だぁぁ!?」

パシャッ
パリンッ

何をどうやったら普通に歩いているはずの人間が足をもつれさせるのかわからないが、とにかく上条は盛大に転び、当然の如く美琴に水が降りかかった。
机の上には割れたガラスのコップが散乱している。

「………ッ」

美琴は自身が陥った現状を把握すると肩をプルプルと震わせ始める。
その状態をみて本能的に身の危険を察知した上条は音速で土下座モードへ移行する。

「わ、悪い御坂! と、とにかくビリビリだけはやめてくださいお願いします!」
「……ア、アンタは、前も、今回も。本当はわざとやってるんじゃないでしょうね…?」
「そんなことは神に誓ってございませんのことよ!?」

上条が土下座モードで謝っている時、上条の上から怒気が込められた声が降りかかる。

「上条」
「は、はいぃぃ!!」

音速の速さで立ち上がる上条。
美琴は怒りをぶつけていいのか迷っている。
店長はタオルを美琴に渡して、上条に向き直る。

「お客様にむかってなんだその口のきき方は」
「は、はい! すいませんでしたぁ!!」
「謝るのはお客様にだ」
「す、すいませんでしたぁ!!!」

そんな謝り方をされると美琴はもう怒ろうにも怒れない。

「え、あ、い、いいわよ。ただの水だし、かかったのはブレザーと髪だけみたいだし、すぐ乾くわよ」

美琴はブレザーをぬいで他に濡れてないか確認しながら言う。

「上条」
「は、はい?」
「彼女の服を従業員室で乾かしてこい」
「は、はい!」

従業員室

何故かそこに上条と美琴は二人きりでいた。
美琴がなぜいるのかというと、店長に「ちゃんと乾かすか見張っていてもいいですよ」的なことを言われたからだ。
ナポリタンもついでにあったりする。
もしかしたら店長のささやかな心遣いなのかもしれない。

「なかなか乾かねえなーこれ」

現在上条は何故か置いてあったドライヤーを使って乾かしている最中だ。
美琴は二人きりという状況に心臓がバクバクしていて、ナポリタンを食べようにも食べられない。

「ん? 俺が乾かしておくから食べててもいいぞ?」
「え、あ、うん」

美琴はなんとか心を落ち着かせようとナポリタンを食べはじめる。
ただ、(好きな)人の目の前で食べることに緊張してか、いつになく上品に食べている。
食べていたときに、ふと疑問に思う。

「あれ? そういえばアンタ、昼は?」
「ん? ああ、もう少し後になったら休憩に入るから、そん時に食べてる」
(っといっても今日は休憩がなさそうな気がするけどなー。はははー……不幸だ)

心の声は口には出さない。
美琴はその言葉を信じたのか、再びナポリタンを食べはじめる。
沈黙。ゴーというドライヤーの音だけが聞こえる。

(なんだなんですかなんなんですかこの空気はー!? ってアレ? なんか今の、大分前誰かが似たようなこと言ってたような…?)

(ううー。なんか言うべきよね……ナポリタンは食べちゃったし。何を話せば!? ……そうだ!)

美琴は心の中だけでやるつもりが、現実でも握りこぶしを開いた手の平に縦に置くという動作をしていることに気づかないまま言い出す。
だが上条はブレザーを乾かしているため気づいていない。

「あの、さ。結局昨日のお詫びしてないじゃない?」
「は? してもらっただろ?」
「結局アンタが大半支払っといて、お詫びになるわけないでしょうが!」
「う……。それなら、今日は迷惑かけちまったし、これでチャラということで」

その言葉を聞いた美琴は不機嫌そうな顔をした。

「……アンタ、水ぶっかけといてお詫びはなしなわけ…?」
「えっ? あ! 喜んでお詫びさせていただきます!」
(って、あるぇー? いつの間にかこっちがお詫びする話に変わってるー?)

上条は心の中で首を傾げるが、3秒で考えるのは諦めた。


16:57

御坂美琴はまた喫茶店にいた。
ブレザーと髪はしっかり乾いている。
髪を乾かすためにタオルで頭をわしゃわしゃーとされて顔が赤くなったりもしたが、その話は置いておく。
結局あの後、お詫びをもらうことになって、今はまた上条がくるのを待っていた。
だが、昨日よりも遅い上に、連絡もきていないため、美琴はイラだちを隠しきれていない。
時折、バチッと電撃が髪から手の方に飛んだりしている。
その様子をみて店員は怯えているのだが、美琴は気づいていない。

「わ、わりー。遅れちまったー。……つ、疲れた」

声が聞こえた瞬間電撃を飛ばしてやろうと振り向くが思い止まる。
上条が妙に疲れている様子だったからだ。
一気に怒りが消えた美琴は、さっきまでとは真逆の心配そうな表情で尋ねる。

「どうしたの? そんな疲れて……」
「そ、それはだな。昼を食べていないから体力がやばいんです」
「え!? アンタ、昼は食べるって…」
「今日は御坂に迷惑かけた分、店長に怒られまして、休憩時間がなかったのです」
「あ~…」

美琴は決して自分は悪いことをしたわけではないのに、何故か悪いことをした気分になる。

「それで? お詫びは何をすればいいんでせう?」
「別にもういいわよ。それより、ご飯食べに行くわよ」
「こ、この時間から…?」
「そんなに早いって程でもないでしょ? ほら、行くわよ」
「ちょっ!? 行くのは決定ですか!?」

美琴は上条の手を引っ張って行く。
上条は諦めてついていくことにした。


17:21

二人はレストランの前に立っていた。
一人はいつも通りで。もう一人は疲れた顔をしている。
上条は恐る恐る美琴に尋ねる。

「あのー、御坂さん? ここに入るんでせう?」

目の前のレストランは明らかに高級感があった。

「ん? そうだけど?」
「いや、私のお財布事情を考えるとあまり乗り気にはなれないというか…」
「じゃあ、私が出してあげるわよ」
「いやいやいや!? さすがに奢ってもらうのは男としてどうかと思うわけなんですよ」
「…じゃあ、今度は私が大半支払うから。それでいいわよね」
「それってあんま変わってないん……どわぁ!?」

美琴は電撃を一発放って、

「つべこべ言ってないで行くわよ」
「なんかもう強制!? うあー不幸だー!」

上条は美琴に引きずられて行った。


18:36

二人はレストランから出て、今は行き先も考えずに歩いている。
レストラン内では美琴が上条にマナーを教えることになったりしたのだが、その話は置いておく。
今、上条は自身の財布を見ながら嘆いていた。

「7割近く支払ってもらったはずなのに財布が淋しい………」
「ちょーっとアンタには高かったかもね」
「ちょっとどころじゃないんですけどね……とほほ」

上条の気分はかなり下がっている。
美琴はというと、むしろ上がっていた。

「で、次はどこに行く?」
「次って……まだ食べんの?」
「そっちじゃない! なんかこのまま帰るのも嫌だし、どこか行きたいなーって」
「あー。行くのはいいけど、お金がないからお金かかるところはなしな」
「ん? 例えばアンタの家とか?」

美琴の発言を聞いて上条は盛大に噴き出す。

「ぶっ!? な、なんでそうなりますか御坂さん!?」
「いや、外はお金かかるとこしかないでしょ?」
「そ、そうだろうけど、こっちは男子寮ですよ?」
「別にいいじゃない。減るもんじゃないし、アンタの部屋とかも興味あるしね。それともアンタ、私が来たら困るようなものでもあるの?」
「いや、そうじゃなくて。男子寮に女の子が来ることがそもそも間違ってる気が」
「アンタは私の寮に来たじゃない」
「あ、あれは仕方ないだろ!?」
「来たことには変わりないじゃない。なら私もいかないとね」
「う。……そうですね」
「わかったら行くわよ~!」

美琴は上条の腕を掴むと意気揚々と歩きだした。
上条は「負けた…」と呟いて、引かれるがままとなっていた。
後々、逆方向に進んでいたことが判明して上条に電撃が放たれたことはここだけの話である。


19:18

2人は上条の寮の前に来ていた。

「アンタのせいで遅くなっちゃったじゃない」
「お前が場所も聞かずに歩き出すからだろ」
「違う方向に進んでたなら教えてくれたってよかったじゃない!」
「あー。そうですねー。とにかく入るなら入ろうぜ。ここで話してたらバレる」
「ちょ、ちょっと!」

上条が先に進み出して、美琴は少し出遅れる。
エレベーターに乗って、上条の部屋の前にくる。

「着いたぞ」
「お、お邪魔しまーす」
(うわーっ。とうとう来ちゃった!)

美琴は内心ドキドキしながら上条の部屋へと入っていく。
中は意外と綺麗だった。

「へ、へー。意外と綺麗なのね。アンタの部屋」

何故かこういうときだけは素直に感想を言える美琴だった。

「ん? でもまあ、こんなもんだろ。男の部屋って」
「そお? 足場もないくらいってイメージだったんだけど」
「そりゃあ、そういう奴もいるだろうけど、全部が全部そうってわけじゃないぞ?」
「わかってるわよそれくらい」

少し、沈黙。
2人は床に腰掛けて、話すことがなくて困っている。
少しして、上条は気づく。

「あ。そういやお茶も出してなかったな」
「え? べ、別にいいわよ」
「遠慮すんなって―――うおぁっ!?」

上条はそう言いながら立ち上がって、台所の方へ歩こうとして。
絶妙なところにおいてあったティッシュ箱を踏んでしまい、上条は前に倒れこむ。
それは奇しくも美琴を押し倒す形になる。
状況が把握できず、時が止まったように動かない二人。

(ぇ? え? か、顔が近い……っ! な、なんで止まったまま動かないのよーっ!? ………こ、この状況って。も、も、ももももしかしてキ、キス!? ちょ、ちょっと。ま、まだ私心の準備がーっ!!)

そんなことを思いつつも目を閉じ始める美琴。
それを見た上条は混乱する。

(へ? あ、あるぇー? 何故このような状況になってしまったんでしたっけー!? と、ととととにかく離れねばっ!!)

「わ、悪い御坂! い、今の状況は足を滑らせてしまったからなったというわけで、別に他意があったというわけではー!? ってすいませんゴメンナサイですから電撃をしまってーっ!!」

急いで離れて弁解を述べる上条だが、電撃をバチバチと出されたので即座に土下座モードへ移行した。
美琴は美琴で、期待してしまった恥ずかしさと、結局わかっていない馬鹿への怒りで電撃をバチバチといわせている。

「ばっ………馬鹿ぁーーー!!!」

「ぎゃああああああああ!? すいませんでしたぁーー!!」

結局、電撃を飛ばして、それを上条が防ぐという構図になる。(上条は謝りながら)


19:46

あれからなんとか怒りも収まって、美琴は今お茶を飲んでいた。
上条は黒焦げになったゴミ箱をみてうな垂れている。

「ゴメンな……。俺、お前のこと守れなかった……」
「何言っちゃってるのよ。アンタは」

そういうことはもっとシリアスな場面で言いなさいよ。と言ってから美琴は再びお茶をすする。
ちなみに反省はしていない。

「はあ……。まあいいや。それで? 何かするか?」
「う~ん……。トランプ、とか?」
「あー。残念だったな。あれ、20枚くらいしかない」
「何がどうなったら20枚に減るのよ……」
「……ふっ」
「そんなことで格好つけるのもどうかと思うけど」

美琴はお茶を飲み終えて、コップをテーブルに置いてから、気づく。

(ん? このコップって洗ってあるとは思うけど、普段コイツが口をつけてるものってことになるのよね。……ってことは―――って何考えちゃってるのよ私ー!?)

「顔赤いぞ?」
「ふぇぁ!? あ、赤くなんかなってないわよ!! あ、わ、私帰るわね!」
「ん。そうか。なら送るわ」
「ぇ? そ、そこまでする必要ないわよ」
「遠慮すんなって」


20:11

2人は常盤台中学の寮へと向かっている。
特に話すこともなかったせいか、気まずい空気が流れていた。

(な、何か話す話題をください神様ー! でなきゃ気まずすぎますー!!)

迷った挙句、上条は適当に話して会話が展開することを狙った。

「なあ、御坂」
「何?」
「……いい天気だな」
「曇ってるじゃない」
「……………」
「……………」

上条の作戦は木っ端微塵にされた。
再び沈黙の時間がやってくる。
だがしかし、上条はそんな簡単に諦める男ではなかった。

「なあ、御坂」
「何よ?」
「……曇ってるな」
「何が言いたいのよ」
「……………」
「……………」

上条の作戦は再び粉砕された。
三度沈黙の時間がやってくる。
だがしかし、それでも上条は諦めるような男ではなかった。

「なあ、御坂」
「今度は何よ?」
「……話題が無い」
「……そうね」
「……どうすればいいでせう?」
「………どうしようもないんじゃない?」
「………そうかもな」
「……………」
「……………」

上条の作戦は完全に滅された。
結局沈黙の時間がやってくる。
だがしかし、常盤台中学の寮が見え始めていた。
美琴は少し顔を赤らめて、指をもじもじとさせながら言う。

「ね、ねえ!」
「ん? どうした?」
「えっと………」

やがて、決意したのか、上条をみつめて。

「…きょ、今日は楽しかった! じゃ、じゃあね!」
「へ? あ、ああ。じゃあな。俺も楽しかったぞ」

美琴はそういうと、寮の方へ走り出した。
走り出す直前の顔は、どこかとても嬉しそうに見えた。
上条は、それを見送って。

「なんだったのやら………」

そう呟いて、自分の寮の方へと歩いていった。




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