猫耳美琴のペットな生活 1
朝、美琴は規則正しく目を覚ました。
「ふわぁー。おはよう黒子」
同室の黒子も同じ様に起きてきた。
「おはようございますのお姉・・・さ、ま・・・・・・」
しかし黒子は美琴を見るやいなや、まるで信じられない物でも見たかの様な顔をした。
「どうしたのよ黒子」
「お姉様、その、お耳は・・・・・・」
「耳?」
美琴は両耳を触るが、特に変わった様子はない。
そういえば頭に少し違和感があるなと思い、頭頂部に手を伸ばす。
「・・・・・・」
ただ髪の毛が跳ね上がっているわけではない。
カチューシャみたいに上から付けている物ではない。どれだけ触っても取れるない。まるで生えてきたかのようだ。
美琴は急いで手鏡で自分を見た。
「あ、なっ!」
鏡に映ったのは、周囲を自身の髪で覆われた哺乳類の。正確には猫の耳が生えた美琴の顔。
「にゃによこれー!!?」
美琴の悲鳴が、寮内に響き渡った。
「朝っぱらから五月蝿いぞ!!」
怒鳴り込んできた寮監の目に映ったのは、猫耳を生やし、今にも泣きそうな美琴であった。
「・・・・・・白井。いくらペット厳禁とは言え、御坂を猫として扱うのは無理があるぞ」
「私ではありませんの!朝起きたらお姉様がこのような可愛いお姿に」
寮監はぐいっ!と美琴の猫耳を引っ張りあげた。
「痛い!痛いです寮監さみゃ!!」
しかし猫耳は取れず、美琴が悲鳴をあげるだけである。
「あ、ああ。すまないな」
どうやら本当に生えてきたらしい。
超能力が科学的に証明された学園都市では、こんな不可思議な現象も納得するしかないものなのだ。
しかしこのままの姿で登校させるわけにはいかない。
「御坂、心当たりは?」
「・・・・・・ありません。朝起きたら生えてました」
弱々しく答える美琴。さすがに可哀想に思えてきた。
「このままでは登校させることはできないな。せめて原因さえわかればな」
「・・・・・・あの」
「ん?」
「原因はわからないのですが、解決できそうな人間なら・・・・・・」
美琴は猫耳を両手で圧えながら言う。
「御坂、今日だけは特別だ。私服で構わん。その耳を隠してそいつのところへ行け」
「はっ、はい!」
一気に美琴の表情が明るくなる。
猫耳を何とかできるから嬉しいだけとは思えない。
もしかすると『そいつ』に会えるから嬉しいのでは?
「他の寮生が起きてくる前に急げ。それと常盤台生として恥じぬ身だしなみであるようにな」
最後に寮監は部屋を出ながらそう言った。
上条家の本日の朝食は食パンとベーコンエッグ。
そのほとんどをインデックスに取られてしまっており、その比率は7:3である。
食べ盛りの上条としては少し物足りないが、度重なる不幸による入院によって財政が圧迫。インデックスの分を減らせば噛み付き。上条が我慢するしかないのだ。上条としては、それ自体は文句はないのだが。
そんな朝食中に玄関のチャイムが鳴った。
(誰だ?こんな朝っぱらから)
隣の土御門はありえない。今頃大好きな義妹の作り置きのご飯を食べているはずだ。
他の寮生もわざわざこんな朝っぱらから来るとは考えられない。
そうすると、新聞の勧誘か。
とりあえzす上条は玄関を開けた。
「はーい。言っとくけど新聞の勧誘ならお断り・・・・・・だ・・・・・・」
しかし違った。
上条より少し小さい、紺色のパーカー。
フードを深く被って影で見えにくくなっているが、その人物が誰か、すぐにわかった。
「御坂か?」
「・・・・・・」
無言で首を縦に降る美琴。
何も言わないなど、普段の彼女ではありえない。
妹達に関わる事か。それとも別の事件か。とにかく心配だ。
「わざわざうちに来るんだ。何かあったんだろ?」
「ぇっと、その」
少しばかり戸惑いながら、美琴は言った。
「笑わないし、誰にも言わないって約束する?」
「大丈夫だ。言ってみろ」
美琴はキョロキョロと辺りを見渡してから、ゆっくりと、フードを取った。
「え!?」
そこに現れたのは、猫の耳が生えた、涙目の美琴だった。