とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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第69.5話  時間切れなら延長で




頭を押さえながら、上条は立ち上がった。彼の後頭部には靴の足跡がくっきりと残っており、
加害者側がかなりの力と上条への憎しみを込めた事が窺い知れる。
上条は涙目で、たった今、自分にドロップキックを食らわせた加害者を睨み付ける。

上 「って~な、白井! 上条さん、何か悪い事いたしましたかね!?」

白 「やっかましいですの! いつまでもお姉様の白魚のようなお手に触れてんじゃありませんわよっ!」

上 「フォークダンスってそういうモンじゃなかったっけっ!!?」

七日間続いた大覇星祭も無事(?)終わり、今は後夜祭でキャンプファイヤーを囲みながら、
リア充共【カップルたち】がフォークダンスを踊っている時間だ。
大会二日目の借り物競争の時、お守りを貸してくれた佐天へのお礼として、
彼女と踊る約束をしたのだが、広場にやってきたのは『何故か』美琴だった。
美琴の殺気…のような気迫と勢いに圧されてしまい、そのままの流れで、
何気なく美琴とフォークダンスを踊ってしまっていたのだが、
「時間切れ」という理不尽でよく分からない理由により、
ダンスを中断させられたのだ。白井の、渾身のドロップキックによって。

上 「だから時間切れって何なんだよ! まだ後夜祭、終わってねーじゃん!?」

白 「んまっ! 何っっって図々しい!
   それでは貴方、終わるまでずっと踊っているおつもりでしたの!?
   後夜祭が続いている間、お姉様と身体を密着させ、指と指を絡ませ合い、見つめ合ったりして、
   キャンプファイヤーが燃え尽きる頃には二人のハートも燃え尽きるほどヒートしているとか、
   そんな事はさせませんわよ類人猿があああああああっ!!!」

上 「途中から何の話だよ!」

美 「ハハハハハハートが燃え尽きるほどとか、なな、な、何言ってんのよ黒子っ!!!
   だ、第一、燃え尽きちゃったら、それでもう関係も終わっちゃうじゃない!」

微妙に否定しきれていない美琴である。

佐 「も~、白井さん! 邪魔しちゃ悪いじゃないですか!」

初 「まぁ…白井さんにしては我慢した方ではありますけどね」

話に割って入ってきたのは、頬をぷくーっと膨らませている佐天と、苦笑いしている初春である。

佐 「せっかくあたしがお膳立てしたのに~…」

白 「余計な事はなさらないでくださいな!」

美 「そ、そそそうよ佐天さん! あ、あ、あんな急に…心の準備もまだだったのに……」

微妙に拒否しきれていない美琴である。
と、ここで佐天の顔を見た上条が一言。

上 「あ、そう言や結局まだお礼、出来てねーや。フォークダンスは御坂と踊っちまったし」

佐 「へ?」

美琴の気持ちやら、それを知った佐天の罠やらに気づいていない上条は、
再びその話題を持ち出す。律儀なのか、めんどくさい男なのか。
だが佐天は、このチャンスをまたもや罠へと変えるのである。


佐 「んー…じゃあ、ケータイのアドレス交換してくれませんか?」

美 「なっ!!?」

その言葉に一番驚いていたのは美琴だった。
上条と出会って約三ヶ月。美琴が三ヶ月経っても未だ成し得ていない偉業(?)を、
佐天は出会って一週間とかからずにやり遂げようとしているのだ。

上 「アドレス? まぁ…俺は別にいいけど……
   でもフォークダンスん時も言ったけどさ、本当にそんなんでいいのか?」

佐 「お礼は後日って事で、後で何かおごって欲しい時に連絡しますから」

上 「ああ、なるほどな」

上条も納得し、両者共に携帯電話を取り出し、何事もなくアドレス交換が終わる。
しかしここで、佐天が妙な行動に出る。
なにやら自分のケータイを操作し始めたのだ。不思議に思った初春が、

初 「? 佐天さん、何をしているんですか?」

と問うと、佐天は思わず口を滑らせる。

佐 「あー…上条さんのケータイに、御坂さんのアドレスを送ってあげようかと思………あ」

うっかりと恐ろしい企てを吐いた佐天に、声を荒げたのは勿論、白井と美琴だ。

白 「なああああ!!? ちょ、いい加減になさってくださいなっ!!!
   風紀委員として、人のプライバシーを侵害なさる行為は見過ごせませんわよ!
   そんな事をしたら、またお姉様と類人猿の距離が縮まってしまうではありませんの!!!」

美 「ちょちょちょささささて、さて、佐天さん!!!? かか、かっ、勝手にそういうの困るからっ!!!
   コイツにアドレス渡したら、何されるか分かんないじゃない!!!
   そそ、それに、いつ電話がかかってくるのかも分かんないから、
   ずっとド……ドキドキしながら待たなきゃならないハメになるし!!!」

二人共、後半部分に本音がだだ漏れである。
「え~?」とブーたれる佐天。とそこで、この場で唯一ケータイの画面を見ていた佐天が、
大覇星祭の運営委員からのメールを受信した事に気づく。

佐 「あっ! 結果発表出てますよ。やっぱ今年も長点上機学園が優勝かぁ~…」

その言葉に、美琴、白井、初春の三人も佐天のケータイを覗き込む。

初 「でも常盤台もすごいじゃないですか」

白 「くっ…! わたくしが参加していればお姉様とペアを…
   もとい、優勝も夢ではありませんでしたのに……」

ちなみに美琴は、

美 (コイツの学校は………下の方か。どっちにしろ、常盤台【ウチ】の勝ちよね…これ………
   …………………………
   って事はっ!!! 勝負は私の勝ち!!? どどどどどどうしよう!!?)

勝負、と言うのは、大会初日に交わした約束の事だ。
ルールは二つ。
「負けた方は罰ゲームを受ける」と「勝った方は負けた方に何でも言う事を聞かせられる」だ。
つまりこの瞬間、美琴は上条に何でも言う事を聞かせられる権利を手に入れたのである。
正直、上条にやって貰いたい事など山ほどある。
が、真っ先に思いついた『それ』を、美琴は自ら、顔を真っ赤にしながら全否定する。

美 (なななななな何考えてんのよ私はっ!!!?
   そそ、そん、そん、そんな事、私達にはまだ早………じゃなくてっ!!!
   そももそそそもそも! コ、ココ、コイツと私が……………モニョモニョ…………な関係とかっ!!!
   なる訳ないじゃないのよおおおおおおお!!!!!)


美琴がどんな事を思いついたのかは、サッパリワカラナイが、とりあえず『それ』は却下だ。
しかし、ならばどうしよう、と思ったその時、先程の佐天の行動を思い出す。

アドレス交換。

一度は素直になれない性格が災いし、否定したものの、
本当は上条のアドレスなど、欲しいに決まっている。
しかも今は上条に何でも言う事を聞かせられる立場だ。
こちらのアドレスを渡すだけでなく、上条のアドレスをゲットするのも夢ではない。

美琴はゴクリと生唾を呑み込み、三人(特に白井)に聞こえないように上条に耳打ちしようとする。
「罰ゲームとして、アンタのアドレスをよこしなさい!」、と。
しかしその時だ。美琴が目の当たりにしたのは…

吹 「あっ! こんな所にいたのね上条当麻! とっとと来なさいってメールしたでしょ!?」

上 「メール? 悪い、見てなかった。何すんの?」

吹 「大覇星祭の反省会兼打ち上げよ! 後は貴様だけなんだから!」

上 「痛ぁ!? 頭突きすんなよ!」

イラッとするほどのデカい乳を備えた女子高生。

姫 「上条君。遅いと思ったら。また知らない女の子と一緒にいる。
   一度。本当に痛い目にあった方がいいと思う」

上 「いてててて! ゴムボール投げるなよ! …てか姫神、もう体は大丈夫なのか?」

姫 「っ! そ。そうやって突然。優しい言葉を掛けてくる所が。
   上条君の良い所でもあり。悪い所でもある…」

車椅子に乗っている、巫女装束でも似合いそうな黒髪の少女。

小 「今日は先生のおごりなのですよー! 美味しい焼肉屋さんを予約しているのです!」

上 「マジで!? うわ、肉食い放題とか初…久しぶりだよ! 先生、太っ腹~♪」

小 「上条ちゃん…女性に対して『太っ腹』は、あまり嬉しくない褒め言葉なのですよ……」

身長一三五センチの少女(?)。そして……

イ 「とうま! とうまが来ないと、いつまで経ってもお肉が食べられないんだよ!?
   私のお腹と背中がくっついたら、とうまはどう責任取ってくれるのかな!?」

上 「だぁーっ!!! だからって俺の頭に噛み付くな!
   上条さんの頭を噛んでも、インデックスさんのお腹は膨れませんですのことよ!!?」

いつも上条の周りをチョロチョロしている、ちっこいシスター。
美少女四人(実は一人だけ『少』女ではないが)に囲まれだす上条に、
さっきまでのロマンス的な空気は一気に砕け散り、美琴は拳をギュッと握り、ある決意をするのだった。

美 (………ふっ…ふふふ…! 見てなさいよアンタ!
   もっとすごい罰ゲームで、後で吠え面かかせてやるんだからっ!!!)

彼女が上条に対してどんな罰ゲームを行ったのか、それは9月30日までのお楽しみである。










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