とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある新米の恋人同士【ウブカップル】10/31

とある新米の恋人同士【ウブカップル】 の続編です。



10月31日。
学校から帰ってきた上条は、自室に入ってすぐさま掃除をし始めていた。

「…よし! 大体こんなもんかな?」

粗方片付いた所で、「ふ~」と一息つきながら部屋を見回してみる。
部屋の中はいつもと違って上条一人だけとなっており、何だか妙に広く感じる。

「今頃インデックスとオティヌス【あいつら】、楽しくやってんのかねぇ?」

ほんの少し寂しく思いながら、そんな事をポツリと呟いた。
インデックスとオティヌスは、現在、小萌先生のアパートにいる。
上条が『今日、小萌先生ん家でハロウィンパーティーやるってさ。お菓子食い放題だぞ』
と唆したのである。結果インデックスはノリノリで『行ってきますなんだよ!』と出かけて行った。
しかしオティヌスは『私は別に興味無いぞ』と断ってきたので、
『実はインデックスがいない間に、スフィンクスを風呂に入れようと思ってんだけど…
 もし暴れたら怒りの矛先がオティヌスにも―――』と上条が言いかけた所で、
『私も行ってくる!』とインデックスの頭にしがみ付いたのだった。
しかしそのスフィンクスも実はお隣の土御門家でお世話になっており、ここにはいない。
なわば何故に上条は、こんな人払いのような事をしたのか。そんな事は決まっている。

「さて、と。そろそろ美琴が来る頃かな?」

勿論、恋人と二人っきりでハロウィンを楽しむ為である。

先日の25日。
上条と美琴は、ちょっと早めのハロウィンデートを満喫し、お互いにイタズラをし合った訳だが、
その際に上条が、本番はもっと凄いイタズラをすると宣言【やくそく】したのだ。
そして前回は上条が美琴の寮に行った為、今回は美琴が上条の寮にやってくる手筈となっている。

上条がチラチラと時計を見ながらベッドの上でソワソワしていると、
『ピンポーン』とチャイムが鳴り響いた。
上条はガバっと立ち上がり、直行で玄関へと向かう。相当楽しみにしていたようだ。

「はいはーい! 今、開けます…よ…?」

ドアを開けたその先には、待ち人である美琴がそこに立っていたのだが、しかし何か違和感がする。
いや、『何か』もなにも、違和感の正体など分かりきっている。
美琴の頭から、有り得ないモノが生えていたのだ。

「え、えっと美琴さん…? 何故にアナタの頭から『ねこみみ』が生えてらっしゃるのでせうか?」
「えっ!? に、似合って…ない、かな…? せっかくのハロウィンだから着けてきたんだけど…」
「いや、似合いまくってるけど…」

正直、元から生えていたんじゃないかと思うくらい似合っている。

「ホント!? 良かった~…そこの雑貨店で買っちゃった♪」

「にぱっ!」と可愛い笑顔を上条に向けてきた『みこにゃん』は、
本日、何万人の人が言うであろう定番の言葉を口に出す。

「あ、その…『トリック オア トリート!』」

上条はすかさず叫んだ。

「トリックでお願いします!」


「へぇ~、意外と片付いてるじゃない」
「ん。まぁ、美琴が来る前にザッと掃除はしたからな」

部屋に上げた美琴を座布団に座らせながら、上条はお茶の用意をする。

「美琴は紅茶だったよな? うち、バッグの奴しか無いけどいいか?」
「いいわよ。何でも」

何でもいいと言うのは、『どれでも同じでしょ』的なネガティブな意味ではなく、
『上条が淹れてくれるお茶ならどんな物でも嬉しい』という、ポジティブな意味である。
色んな意味で、ごちそうさまである。

キッチンでヤカンに火をかける上条の後姿を見つめながら、
美琴は「ニヒッ」と口角を上げて、何か悪巧みを思いつく。

「あ、牛乳あるけどミルクティーにすぉわぁぁぁあああっ!!?」

上条が「ミルクティーにするか?」と言おうとした瞬間、
突如彼の耳に生暖かい風が当たった。突然の事で、上条は背筋をゾクゾクとさせる。

「な、ななな何をしてございますかっ!?」

振り向くと、自分の背後で「にししっ」と笑いながら立っている美琴がそこにいた。

「何ってイタズラよ♪ さっき玄関で、『トリック』をご所望したでしょ?」
「うっ…ぐ」

ねこみみを付けた彼女から、こんな可愛らしいイタズラをされてしまっては、
流石の上条さんと言えども赤面せざるを得ない。
しかし上条もこのまま黙ってやられる訳ではない。美琴の目を正面から見つめながら、一言。

「…トリック オア トリート」

しかし美琴は余裕の表情を浮かべた。

「ざ~んねんでした! 私はお菓子持って来てるのよん♪
 あ、ほら。この前パンプキンケーキを友達に作って配るって言ってたでしょ?
 ちゃんとアンタの分も作ってきたから」

言いながらカバンから、自作のカップケーキを取り出す美琴。
しかし上条はそれをスルー。

「あー、そっかー! ミコっちゃん、お菓子を持ってないのかー!
 じゃあイタズラするしかないなー、これはー!」
「えっ……えええ!!? いや、だからお菓子はちゃんと―――」
「いやー、仕方ない! 仕方ないなー! 持ってないんだもんなー、お菓子!」

全く聞く耳を持とうとしない上条である。
どうやらこの男、どう転んでもイタズラをするつもりのようだ。
端から『トリック オア トリック』だったのだ。

上条は冷蔵庫から、チョコレートケーキを取り出した。
スポンジにブランデーでも染み込ませているのだろうか、洋酒の香りが漂ってくる。

「な、なによ! アンタもお菓子、用意してたんじゃない!」
「上条さん、『トリック』してくれとは言いましたが、
 『トリート』の準備をしてないとは言ってませんですことよ?」

そんな事を言いつつ誤魔化しながら、上条はケーキのクリームの部分を指ですくい取る。
そしてそのまま、

「は~い、ミコっちゃ~ん! お口、あ~んして~?」

無茶振りしてきた。
美琴は耳まで真っ赤にさせながら、上条の大胆行動にアワアワしだす。

「えええっ!!? そそ、それはちょっと、まま、まだ早いって言うか……」


恋愛経験レベル0の美琴(上条もそうだが)にとって、『あ~ん』は大人の階段の第一歩らしい。
来年は高校生になる歳だと言うのに、ピュアすぎるにも程がある。
しかし上条は、そんな美琴にも容赦がなく、

「いいから。ほら、お口をお開けなされ」

と無茶振りを続ける。
上条は、「ねこみみこと」のみこにゃん姿に、理性を司る回路のネジが一本だけ緩んでしまったようだ。
気分は仔猫を食べる狼さんのそれである。色んな意味で、いただきますである。
しかし美琴は恥ずかしさからか顔を背けてしまう。そこで上条が取った行動は、

「えい」
「わひゃっ!?」

指についたクリームを、美琴のほっぺに付けるという事だった。

「な、な、何するの!?」
「何って、そりゃあ勿論……」



ぺろっ…



「……こうする為ですが」

数秒間の硬直の後、美琴の頭から煙が噴き出した。
大体何が起こったのかお分かりになったと思われるが、正にその通りである。
上条はわざわざ美琴のほっぺにクリームを付け、それを自分で舐め取ったのだ。

「この前の『イタズラ』の仕返しだよ」

前回は美琴にキスされたので、その仕返しらしい。
だがここで手を緩めるような上条ではない。
『ほっぺにチュウ』で美琴の精神的防御力がブレイクした今こそ、攻めるチャンスなのだ。
上条は再び指でクリームをすくうと、

「じゃ、もう一回な。あ~ん」

先程失敗したミッションをもう一度挑戦する。さっきの今で成功するとは思えないが。

「あ……あ~~~ん…はむっ…」
「はーい、よくできました」

と思ったが、意外とアッサリ成功した。
どうやら美琴は美琴で、頭がほわほわして思考が鈍ってしまったらしい。
それが功を奏し、自分にブレーキをかける間も無く、当たり前の様に『あ~ん』をしてしまった。
しかしここで、上条の予想を超えた事が起きてしまう。

「ちゅるちゅる…ちゅぷちゅぷ……んっ、ちゅっ…ぷちゅる」
「えっ!!? ちょ、み、美琴!!? そ、そそ、それこそちょっと、俺達には早すぎませんか!?」

美琴が上条の指を咥えたまま、舌を動かしてきたのだ。
何だか『いけないプレイ』をしているようで、今度は上条の顔が真っ赤に染まる。
上条は慌てて指を引っこ抜いた。ヘタレである。対して美琴は物足りなそうに、

「だ~めぇ~…もっとぉ~……」

とおねだりした。

「も、もっとじゃありませんっ! これ以上は、上条さんだってどうにかなっちゃいますよ!?」
「いいのぉ~…もっとすりゅのぉ~……」
「……? 美琴?」

様子がおかしい。美琴は目をトロンとさせながら、口をパクパクしている。
ちょっと前まで手を繋ぐのもやっとだったと言うのに、この変わり様は何だろうか。
と、思った瞬間、洋酒の香りが上条の鼻をくすぐり、ハッとする。

「も…もしかして酔ったのか!? 酒の臭いだけで!?」

ブランデーが染み込んでいると言っても、そこは学園都市だ。
学生も買えるようにアルコールは飛ばしてある。
だが美琴は極端にお酒に弱かったのか、この臭いだけでホロ酔いとなってしまったようだ。
もっとも原因はお酒だけでなく、この甘々な空間にも酔っているようにも思えるが。


「む~…! 酔ってらいわよ~! いいかりゃ、つぢゅきすりゅろ~!」
「いや、酔ってるって! つ、続きってさっきのか!? ダメ! アレはもう、おしまい!」

美琴はさっきの指ぺろプレイを続行したいようだ。
しかし上条は『あれ以上』続けると自分でも抑えが効かなくなりそうなので、それを拒否する。
なので美琴は「む~っ!」と頬を膨らませる。が、直後『いい事』を思いつき、すぐさま上機嫌になった。

「むふふ~…じゃあ、今度はわらひの番~♪」
「み…美琴の番って?」

疑問をぶつけた上条だったが、その答えはすぐに分かった。
美琴がクリームを指に付けたのだ。そう、先程の上条と全く同じように。

「は~い! あ~んして?」
「うえっ!!?」

攻めは強いが受けに回った途端に弱くなるのは、美琴も上条も同じなのだった。
しかし上条にはここで「止める」という選択肢は残されていない。
だってさっき、自分も同じ事を美琴にしちゃったのだから。上条はごくりと生唾を呑み込み、そして、



はむっ…



美琴の指を咥えた。

「あっ、んっ!」
「ちゅばっ! へ、変な声出すなよ!
 かか、上条さんだって男の子なんだから、こ…これ以上は本気でどうにかしちゃうぞ!!?」

咥えた瞬間、美琴の喉奥から『妙に色っぽい声』が、聞こえてきたので、
上条はすぐに口を離した。理性が保たれているうちに。
だが美琴はそんな上条の涙ぐましい努力を嘲笑うかのように、一蹴する。

「…いいよ? どうにかしても……アンタなら…当麻になら私……して、ほしい…」

お酒のせいなのかも知れない。この雰囲気に呑まれているだけなのかも知れない。
しかし可愛い彼女が顔を上気させ、瞳を潤ませて上目遣いで、
しかもこんな事まで言われた日には、紳士を自称する上条さんでもプッツンするというものだ。
気が付けば上条は、前回と全く同じように、美琴を抱き締めていた。
そして耳元で優しく囁く。

「……もう、止まんないからな。覚悟しとけよ?」

それだけで美琴は、身体が「ビクン!」と跳ねてしまう。

「んっ…! いいよ…来て…?」

そしてそのまま美琴はそっと目を瞑り、上条がその唇を

「…とうま、それに短髪。一体二人は何をしてるのかな…?」
「おい人間…私達を追い出した本当の理由はこれか?」
「にゃー。舞夏と出かける事になったからスフィンクス【ねこ】返しに来たんだけど、
 中々どうしてとんでもない所を見ちまったぜい」
「みゃー!」

このタイミングでインデックス、オティヌス、土御門、スフィンクスの三人と一匹の乱入である。
やはり上条は、不幸という名の星の下に生まれてきたのだろう。

抱き合ったまま、口付け直前の状態で固まる上条と美琴。
その後ろで、空気を読んだのか読んでないのか、
火にかけていたヤカンが「ピュイー!」と鳴き、お湯が沸騰した事を告げるのだった。



ちなみにこの後、上条が『何かしらの不幸な目に遭った』のは、まぁ、ご想像通りである。










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