とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part37

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両片思い篇 新学期



「と、いうお願いだ」

上条当麻はそう言って説明を終えた。
上条宅でその会談は行われている。
上条が話した相手は一方通行、打ち止め、番外個体、浜面仕上、滝壺理后。
コの字のソファーに皆座っている。
小さなテーブルの上には人数分の麦茶が置かれていた。
黄泉川家の対面にアイテムの2人が座る形だ。
上条の隣にはインデックスが座り、さらに1人分のスペースが空いている。
その空間の主は、皆に配った麦茶を片づけにキッチンに立っていた。

「……」「……」「……」「……」「……」

しかし、珍しいこともあるものだ。
あの一方通行と、浜面仕上が、いや打ち止めも番外個体も滝壺理后も全く同じ表情をしている。
目はジトっと効果音を発し、口は横一文字で表現可能だ。
皆上条の話よりも気になることがあるようである。
ここから、皆さんはなにを予想しただろう?
上条が美琴の頬をつついたり、
美琴が上条の腕に抱きついたと考えているだろうか?
申し訳ないが、まだ、二人は付き合ってすらいない。
故にそのようなことはない。

「なぁ、美琴、アレどこだっけ??」

「ん? アレなら戸棚に当麻が片付けてたと思うけど??」

「おお、ほんとだ、ほれみんな、煎餅だ、食えよ」

「ねぇ、アレも出しちゃう?」

「そうだな、出すか」

なにかがおかしい。
とてとて、と団子を持った美琴が歩いてきた。
上条のリアクションはないから、団子で正解だったのだろう。

浜面はたまらずに尋ねる。

「お前達さ、ホントに付き合ってないの??」

「な!! ななななに言ってるのよ!! なんで私がコイツなんかと!!!!」

「そそそうだぞ!! どうしてコイツなんかと!!」

そう言った後、二人は互いに顔をそむけ、壁に向かってしくしく泣きはじめる。
上条と美琴の周囲が無駄に暗い。インデックスはもくもくとミルクを飲んでいる。
が、注意する点はそこではない。
そう、この二人は付き合っていないはず。

「ん? あぁ!! あーもうダメじゃないインデックスこんなにこぼして」

「あぅ、ごめーたい」

「あちゃー、ほれ、ティッシュ」

「ありがとう。もう、インデックスったら、パパに似ちゃったのかな?」

「こら、美琴さん、何言ってんの!!」

「昨日のシチュー」

「ぐっ」

「ぱーぱ、ごめーたい?」

「ぱぱは昨日謝ったよ、インデックス」

「あ、そういえば、夕飯なにがいい?」

「美琴が作ってくれるならなんでもいい。うまいし」

「うまーし!!」

「うまいじゃなくて、おいしいでしょインデックス。
そういうのが一番困るのよね、昨日は洋風だったでしょ……」

「おい、みんななに黙ってんだよ? 質問とかないの?」

いやいや質問しかない。

「付き合っては、ねェンだな?」

「「しつこいな(わね) 当然だ(よ)」」

その場にいる全員が思った。

(((((そのレベルで!!?)))))


2人がインデックスにかまっている間に、5人は目で会話する。

(ねえ!! あれで付き合ってなかったら、何をもって付き合ってるっていうの!!? ってミサカはミサカは実際付き合ってるお2人に回答を求めてみる!!)

(いやいや、あれは付き合ってるだろ!! どう見ても!!)

(でも、あの2人付き合ってないっていってたよ?)

(Zzzzz)

(てめェのツレは寝てンじゃねェか使えねェ。アイツらが付き合ってたら、さっきの話がおかしくなるだろ)

ここには皆、ほぼ強制的に集められていた。
上条達は夕飯をご馳走するという。
しかし、食事の招待は幻想殺しや電撃で脅したりせずにやるものだと思うのだ。
で、行ったら行ったで、

「あ、ごみぶくろきらしてたー」

と、第3位がいい、

「!! そっかー、じゃあおれとあくせられーたとはまづらがかいにいくよー」

と、ヒーローがほざき、

「よろしくー」

と、今度は外に連れ出された。
上条家に拉致されて3分後の出来事だった。
顔面を右手で掴まれながら引きずられていた一方通行と、襟の後ろを掴まれていたため、窒息しかけていた浜面は、公園で自由になった瞬間に猛抗議しようとする。
しかし、その前に上条は地面に土下座していた。

「頼む!! 助けてくれ!!」

どういうことだろう?
また魔術師でもきたのだろうか?
はたまた統括理事会の暴走か?

「どうやったら御坂と付き合えるか教えてください!!」

「やっぱり、醤油だって。目玉焼きって和名じゃん。じゃあ和風にするべきだろ?」

「甘ェな。通説では普及したのは明治以降、西洋料理としてなンだよ。洋風に味付けすンのがセオリーだ。ソース1択だな」

2人はすでに背を向けて帰途に就いている。
そこに慌てて回り込んだ。

「おい!! 無視すんなよ!!」

「いちいち、アホに付き合えるか」

「まったくだ」

「頼む、教えてくれよ!! 浜面みたいにバカで脳筋でパシりでなんの魅力もない男がどうして彼女できたんだよ!! 絶対参考になるだろ!!? 貧弱でぼっちで中二病全開でもやしな一方通行でも、御坂DNAには詳しいはずなんだ!!なんか情報をください!!」

ごみ袋を買って帰ったのは2人だけだった。


上条が土下座していた時、
御坂美琴もまた上条家の床に土下座していた。
打ち止め、番外個体、滝壺理后は?を頭上に浮かべる。
インデックスは、ママの上に登りご満悦だ。

美琴は、いまからいう内容を考えると微動だにできない。
しかし、学校から帰る途中に考えたではないか。
『この想いを第三者にいえなくて、本人に伝えられるわけがない』
だから、勇気を振り絞っていった。

「実はわたし!! 上条当麻のことが好きなの!! なんとかうまくいく方法を一緒に考えてください!!」

しばらく続いた沈黙。
美琴の上の重さが無くなった。
顔をあげると、インデックスを抱いた打ち止めがいる。
そして



両サイドから他の2人によって、ほっぺを思いっきり引っ張られた。

「ちょ、いふぁいいふぁいいふぁいってば!!!!!」

おかしなママの顔にインデックスは大はしゃぎだ。
打ち止めと番外個体、滝壺は、驚きを隠せない。

「「「ゆ、夢じゃない!!!???」」」

「自分のでしろやーーーー!!!」

ぼそっと打ち止めが呟く。

「まさか、お姉さまの偽物? ってミサカはミサカは名推理」

納得の顔でそちらを見る滝壺と番外個体。

「どういうこと!!? 素直なわたしってそんなにあり得ないの!!?
 え? なにじりじり近づいて……さっきもほっぺ引っ張ったじゃん!! 2度もやる必要は……!!!」

ぎゃーーーーー!!! という叫び声が響いた後、
きゃっきゃと笑う赤子の声が響いた。


で、今に戻る。
こんな状態の2人が付き合うにはどうすればいいのだ?
もう告白して事実をつくるしかないだろう。
でも、こいつらにそれができるのか?

「ムリじゃ、ねェか?」

「いや、でもやるしかないだろ?」

「……そうだな」

大変だなアイツら。

「ホント!!? ありがとう!!」

「いやぁ、断られたらどうしようかと思ったよ」

あれ? なんの話だっけ?

「学校に行ってる間インデックスを頼むな」

「お世話になるときは、おりこうさんにしてるのよ、インデックス」

「あい!! いんでっくす、おりこう!!」

新手の詐欺だろ。

ちょっと待てだとか、今のは無しだとかまくしたてる2人を置いて、
上条家は、笑顔だった。


3人は知らない。
この後の数カ月で彼らの人生が大きな変化を迎えることを。
特にあの少年にとっては、今までの人生を否定するような試練が待ち構えている。

さあ、新学期の幕開けだ。










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