とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part36

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両片思い篇 新学期



上条当麻は自分の美琴に対する感情の正体を知った。
だからといってすぐ行動できるわけではない。
だって

(告白して、成功するイメージができない!!! 難易度はフィアンマやっつけるほうが簡単!!)

この心の声を聞いたら間違いなく、上条はフィアンマに殺される。

(どうやったら振り向いてくれるだろう? )

すでに彼女がてめぇしか見えてないことに気付かない上条。
勝手に勝率を低く設定し、泣きながら教室の扉を開いた。
去年とほぼ変わらない面子が、一斉に上条の方を向く。

上条は挨拶ができる偉い子なのだ。

「おはようございます」

もちろん小萌は

「おはようではないのです!!
初日から遅刻とか学校をなめすぎなのですよ !!
ちょっとこっちに来るです!!」

と、いおうとした。
が、実際は「おはようではない」という言葉の途中で黙ってしまう。
ガタタッ
という音と共に、3人の生徒が同時に立ち上がったからだ。
吹寄、青髪、姫神はそのまま上条に向け走り出す。
まず吹寄がボディを決めた。
くの字に曲がった上条に、青髪はアッパーを繰り出す。
とどめに姫神が魔法のステッキで殴り付けた。
上条ダウン。
一年戦争で名を馳せたジェットストリームアタックだった。
もちろん小萌は「なにやってんのー!!」と叫ぶ。
しかし、姫神がボソボソと耳打ちすると、担当教師はてちてちと上条にかけより、

「ていっ」

と頭をはたいた。
軽いパワハラだ。
もちろん、土御門は訳がわからない。
再び姫神がボソボソと耳打ちする。
そして、嘘つきは笑って言った。

「あー、そういえば、カミヤンは他に美人のお姉さんも振ってたぜい」

ガタタタッガタタタタッ

と全男子が立ち上がる。
彼らが走って来るのを見た上条が「あぁ、美琴、時が見える」と言ったとか言わなかったとか。


その美琴を固法は見ていた。
お昼時の風紀委員第177支部で、彼女はただ同情するばかり。

「あうあう」

「そろそろ、白状してもらおうか、御坂さん」

わざわざ照明を落とし、机の上のライトを美琴に向けている。
顔を真っ赤にした美琴の正面。
佐天涙子はいつもは微塵もない落ち着きを見せていた。
ノリノリである。
部外者2人なんだが、なんか今更だ。
美琴の斜め後方では、黙々と初春が書記の仕事をしている。
ノリノリである。
で、どっから持ってきたそのカツ丼?

「いい加減、吐いて楽になったらどうですか?」

「あうあう」

「あうあうじゃわからないです。固法先輩が証人ですし、知らないなんて言えませんよ?」

固法は思い出す。
始業式が終わり、ここに向かう途中だった。
そこで今あうあう言ってる子に声をかけられた。
しかも第一声が、

「どうやって黒妻さんを落としたのか教えてください!! やはりその胸部に食いついたんですか!!」

だった。
は? と言ったら眼鏡が落ちそうになる。
しかし、彼女は真剣だ、アホなことに。
頬を紅潮させてるため、残念ながら、言ってることもわかっているようだ。
しかし、目はまっすぐこっちをみている、馬鹿馬鹿しいことに。

正直固法は困った。
本人に聞いてほしい。
いや、聞かないでほしい。
さて、先輩らしくごまかさねば、
自分の魅力を磨いたほうがいい?
いや、逆にキズつけるか。
あの人は中身をみてくれた?
いや、ただのノロケになる
まったく、いったいなんでこんな面倒な質問を…………ん?

「「どうして急にそんな質問を?」」

あれ? ハモった。
気付くと美琴がガクガク震えている。
自分の後ろを見て。
振り替えると、フッフッフと悪役の顔で笑う佐天と初春がいた。

バンッと机が叩かれた音で、固法の意識は今の時間に戻る。
佐天はあの時と同じ表情で美琴に詰め寄っていた。

「往生際が悪いですよ!! さっさとしゃべってください! 上条さんを落としたいんですよね!!」

「も、黙秘権を行使する!!」

「……話してくれたら、上条さんの好きなタイプを聞いてきてあげますよ」

「ホント!!?」

「やっぱりそうかぁぁぁあああああああ!!」

「し、しまっ!! も、黙秘権を行使する!!!」

わいわい、騒ぐ後輩をしり目に、
固法は窓から青空を眺めた。

「平和ねぇ」




平和だと? 冗談ではない。
ここに、戦場から帰還した戦士がいる

「お、オレがなにしたっていうんだ」

帰宅途中の上条は不満をこぼす。
姫神を怒らせることをした記憶はまったくない。せいぜい悩みを聞いてもらったくらいだ。
美人のお姉さんを振ったなんて冤罪もかけられた。

「そんなイベントはなかったはずだよなぁ」

あったのはある少女と赤ちゃんとの共同生活くらいで……

また、頭から湯気が出る。

そのまま犬の尻尾を踏みつけて、あちこちに歯形をつけることになった。
この痛みも懐かしいね。

上条は昨日から満身創痍である。
結局宿題が大量に残った夏休み最終日。
数少ない休憩時間に、ステイルを外に連れ出した。

『お前に、インデックスに関して聞きたいことがある』

そう彼に伝えると、向こうも面倒だという表情が消えて、真剣な目になってくれた。
ステイルは無言で先を促す。

『お前って……片思い歴、長いよな』

パチパチと、彼はまばたきした。
ん? 何だって、だと?
聞こえなかったか、それとも意味が伝わってなかったか、
じゃあもう一度いおう。

『だから、お前ってうちのインデックスにずっと片思いしてんだろ?
実はオレも最近、み、みこ、御坂に片思いしてて、片思い歴の長いお前に先輩としていろいろ教えてほしいといいますあぎゃぁぁあああああああああ!!!!』

いつの間にかイノケンさんが目の前にいた。
真っ黒に焦げて、なんの手掛かりもなく自分は帰ることになった。
驚きの顔で出迎えてくれた美琴を思いだし、そんだけでまた顔が赤くなる。
でも、彼女はなんで自身の頭と同じサイズのタンコブを作ってたのだろう?


(なんであの時の当麻は焦げてたんだろう?)

そう疑問を抱いているのは、御坂美琴。
つい先ほどまで佐天にいじられ、ボロボロになっている。

いや、わかっている。
第三者に自分の気持ちをいえないのに、本人に伝えられる訳がない。
でも、

(今のままじゃ、全盛期の一方通行に勝つより勝率が低い)

とりあえず一方通行のファンには謝っといたほうがいいと思う。
恐らく、天罰だろう。
一方通行戦の上条を思いだし、ふにゃりかけた美琴は、ボールを踏んで噴水にダイブした。
風紀委員のお仕事体験以来だね。

まったく、美琴は昨日からさんざんだ。
すっかり忘れていた上条の宿題を、必死に片付ける合間。
休憩時間に上条がステイルと散歩に出てくれた。
その隙にインデックスと遊んでもらっていた神裂と対面する。

神裂は驚いた。

『神裂さん、聞きたいことがあるの』

神裂は、動揺を悟られないようにする。
彼女は、上条、美琴、インデックスのために身を引いた。
18にして初めて抱いたこの感情を、捨てる決意をした。
だから、感づかれてはならない。
彼女達の力になると、決めたのだから。

『どうしました?』

『どうやったら、そんなきれいな凹凸ができるんですか?』

『……………………は?』

『く、悔しいけど、神裂さん、メッチャクチャ美人じゃない!!
大和撫子の落ち着きも、む、胸のスイカもわたしに足りないものなの!!
と、当麻も神裂さんみたいなのが、好みなのかなぁ、とか、いや、別に当麻は関係なくて、ただ私があこがれてるだけの話!!
ど、どうやったら神裂さんみたいになれるんでガフッ!!』

神裂は無表情で、鞘に入れたままの刀を降り下ろしていた。
美琴は床に倒れ付している。
ついやっちゃったのだ。
いろいろ複雑な思いを持ってるのに、
目の前で、諦めたきっかけがこんなことほざいていたら、仕方ないとは思う。
どんどん膨らむタンコブに、インデックスはうー、と驚嘆していた。

鈍感な美琴は一切神裂の感情に気付いていない。
なんで殴られたのかなー、という疑問もその後すぐ帰って来た上条のことに思考が移る。
そんなとき、わかれ道で目の前にご本人登場。
ちょっと昔の自分なら、きっとあたふたして、八つ当たりでもしていたのだろう。
でも、今は違う。

「おっす、相変わらずボロボロね」

今はまだできないけど、この想いを伝える覚悟ができた。

「相変わらずってのは聞き捨てならんねぇ、いつも俺がボロボロみたいじゃねぇかそのとおりだチキショウ」

それに、

「はいはい、いじけないの。
で、これから、学校始まるけど、インデックスどうしようか?」

あの子が、私たちを繋いでくれている。

「ん? アイツらに頼むしかねぇだろ」

彼女は気付かない。

「そうねぇ、でも気が進まないなー」

隣にいる想い人も、同じように考えていることに。










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