とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

523

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

パペットカミコット




何気に佐天は家事スキルが高い。料理・洗濯・掃除という家事の3大基本は勿論のこと、
今では出来る人の方が少ない、裁縫まで網羅している。
そして彼女は今日、その恵まれた家事スキルを遺憾なく発揮し、

「どうですか、これ! 御坂さんと上条さんのペアパペットですよ!
 家庭科の授業で作ってみたんですけど、結構いい出来だと思いませんかっ!?」

余計な事をしてきやがった。
佐天が鼻息荒く自慢しながら鞄から取り出したのは、一組のパペット人形だ。
なるほど、自画自賛するだけあって中々に良く出来ている。
モデルとなった(と言うか、勝手にモデルにされた)美琴と上条は可愛らしくSD化され、
クオリティも「実は売り物です」と言われても信じてしまうくらいに高かった。
しかし本来ならばここで「それ授業で作ったの? 凄いわね」と、
賞賛【ツッコミ】を入れる場面なのだが、佐天の目の前にいる美琴にはそんな余裕はない。

「ささささ佐天さんっ!!? それを何にどう使うつもりなのっ!!?」

今までの経験から、『ろくな使われ方をされない』のは目に見えているから。
現在、いつものファミレスのいつもの席で、いつも通りに喋っているのは佐天と美琴だけだ。
白井と初春は風紀委員の仕事で遅れるらしい。それはまぁ、よくある事なので構わない。
しかし問題なのは、白井が居ない時【じゃまがはいらないとき】の佐天は美琴【じぶん】弄りが激しい事である。
その内容は、ほぼ200%確実に上条関係だ。
そんな佐天がわざわざ作ってきたペアパペット。嫌な予感がしない訳がない。

「え~? どう使うって~?」

佐天は悪っそ~うなニタニタ笑いをしながら二つのパペットを両手にはめる。そしてそのまま、

「た・と・え・ば…こんな事とかっ!」

と言いながら二つのパペットを抱き合わせた。

「にゃああああああああ!!! や、やや、やめてええええぇぇぇぇぇ!!!」
「『ああ、美琴! 俺はお前の事を愛しているんだ(低い声)』
 『嬉しいわ! 私もよ!(高い声)』」
 『ずっとこうしていてもいいかい?(低い声)』
 『ええ、いつまでも…いっそこのまま時が止まってしまえばいいのに…(高い声)』」
「何その台詞うううううううううぅぅぅぅ!!!?」

やめて、という美琴の悲痛な叫びは佐天に届かず、何か寸劇【ちゃばん】が始まってしまった。
ご丁寧にも声色を変えて、上条【だんせい】と美琴【じょせい】の声を使い分けながら。
顔を真っ赤にしながらテーブルをバンバンと叩く美琴。
上に乗っている紅茶とアイスコーヒーにチャポチャポと波が浮かぶ。
それを楽しむかのように寸劇を続ける佐天は、とどめとばかりに。

「『んちゅ~~~~~』」

二つのパペットにキスをさせた。流石の美琴も、これには限界だった。

「んにゃああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!?」

と叫びながら、佐天が両手にはめていたパペットを二つ共ひったくる。
これ以上この寸劇を見せられては堪らない。色々な意味で。

「没収っ!!! こんな物は没収します!!!」

しかし佐天は「え~? これからもっと面白くなるのに~…」と不満そうにブーたれる…訳ではなく、
むしろ想定の範囲内と言わんばかりに、悪っそ~うなニタニタ笑いを維持したままだった。

「あっ、いいですよ? 元々それ、御坂さんにプレゼントするつもりでしたし♪」
「なん…だと…!?」
「その代わり、大事にしてあげてくださいね!
 それと白井さんに見つかると後が怖いので、その辺も注意してください」

佐天は始めからこうなる事が分かっていたようだ。流石は美琴弄りの天才である。

その後、仕事で遅れてやってきた白井初春組もファミレスで合流したのだが、
パペットを白井に見つかる訳にはいかない為、
ペアパペットは二人仲良く、美琴の鞄の中で眠りに就かされたのだった。


 ◇


「け…結局そのまま貰っちゃった……」

美琴は鞄を開けて中のパペットを見つめながら、とぼとぼと歩いていた。
完全下校時刻が近くなり、ファミレスにたむろっていた美琴ら4人も解散したのだが、
帰りにコンビニに寄りたいからと理由付けて、美琴は白井と別方向に歩き出したのだ。
しかし実際はコンビニが理由ではない。
佐天から半ば強引に譲ってもらった【おしつけられた】このパペットの処遇をどうするべきか、考える為である。

「どうしよう………………―――い、いい、いやいやいやいやないからっ!!!!!」

一瞬だけ、自分が二つのパペットを両手にはめて遊ぶ姿を想像してみたが、
同時に二つのパペットの動きを本物の美琴【じぶん】と上条の姿でも想像してしまい、
顔を真っ赤にさせて、自分の妄想に対して全否定した。
頭の中でパペット達に一体どのような事をさせたのか、非常に気になる所である。

「……やっぱり、佐天さんに返すべきよね…これ…」

元々佐天が作った物で、しかも自室に置いておけば地雷が爆発する【しらいにみつかる】という危険も孕んでいる。
やはり早々に製作者【さてん】に突き返すのが得策だろう、と美琴は考えた。ちょっと惜しいが。
美琴は鞄からパペットを取り出し、それを見つめながら決意する。

「よし! 明日、返そう!」
「何を?」
「わきゃっ!!!?」

しかし決意した瞬間、突然背後から何者かに話しかけられ、「わきゃ」と変な声を出してしまった。
とっさに持っていたパペットを鞄に戻したのだが、鞄の中に戻ったのは上条パペットだけで、
美琴パペットはポロっと鞄の外へと転げ落ちてしまう。ついていない。
その上、運の悪い事に話しかけてきた何者かというのがまたよりにもよって、

「…ん? これって美琴…だよな。自分で作ったのか? へー、よく出来てんじゃねーか」

上条である。上条は美琴の姿をしたパペットを拾い上げながら、本物の美琴と見比べる。

「あ、いや…それ作ったの佐天さんで私じゃないけど……
 って言うかそうじゃなくてっ!!! 何でアンタがこんな時間のこんな所にいるのよっ!!!
 いつもはとっくに寮に帰ってる時間でしょっ!!?」

何故か上条の平日のスケジュールをよく知っている美琴である。
『いつも上条が帰る時間帯を狙って、偶然を装って一緒に下校しようとしてる』訳でもあるまいし。

「いやぁ、今日は補習がある日だったんでな。帰るのも遅くなっちまった。
 夕飯どうしよう…今からじゃスーパーもろくな物置いてないだろうし、
 かと言って何も買って行かなかったら白いシスターさんが噛み付いてくるし……」


ブツブツと独り言を呟き始める上条。本日も順調に不幸イベントのフラグを立てているようだ。
しかし今の美琴に上条の不幸に構っていられる余裕はない。
上条が自分(のパペット)を握り締めているというこの現状、
美琴は自分のパペットを自分自身で想像してしまい、顔をボフン!と爆発させる。

「と、ととと、とにかくっ! それ返しなさいよ! 佐天さんからの借り物なんだから!」
「…ん? ああ、悪い悪い―――」

と、手に持っていたパペットを美琴に返そうとした瞬間、
上条の中でイタズラ心が芽生えてくる。このまま、すんなり返すのも面白くない、と。

「いやでも、ちょっと待ってくれ。せっかくだから、もう少し触らせてくれ。
 …ん~、ホントによく出来てるな。美琴そっくりじゃん」
「なっ!? がっ、ちょっ!!!?」

やはりだ。美琴のパペットで遊ぶと、釣られて美琴も面白いリアクションをしてくれる。
上条は調子に乗って、パペットの頬を指でツンツンしてみる。

「ほれほれ~! ミコっちゃんのほっぺ、ぷにぷにしてやるぜ~!」
「は、はわ……はわわわわ……」

美琴の脳内で、パペットが本物に置き換わる。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

『ほれほれ~! ミコっちゃんのほっぺ、ぷにぷにしてやるぜ~!』
『ば、馬鹿ぁっ! そんな事、んっ! し、しないでよぉっ!』
『ヤだね。こんな触りたくなる頬をしてる美琴が悪い』
『そ…そんな、事、にゃい……んんっ!』
『あー…でも触ってるだけじゃ満足できなくなってきちゃったな』
『へっ!? あ、ちょ、こ、これ以上何をするつもりなの!?』
『そりゃあ勿論、ほっぺにチュー…ですよ』

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「今度はチューしたくなるほっぺしてるのが悪いとか言うつもりかああああああ!!!」
「何が!?」

突然、意味不明な事を口走る美琴。この数秒間の内に何が起こったのか、上条にはサッパリである。
だが斜め上を行く美琴のリアクションは見ていて飽きない。上条は新たな一手を繰り出す。

「じゃあ今度は…ほ~れ、すりすりすりすり~!」
「にゃにゃっ!!?」

パペットの胸元と自分の顔を擦り合わせてきたのだ。当然、これも美琴の脳内でリアルに変換される。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

『じゃあ今度は…ほ~れ、すりすりすりすり~!』
『あぁん! も、もう! 変な所に顔埋めないでよっ!』
『いやいや。こんなにフカフカで気持ちいいのに、やんなきゃ勿体無いでしょ』
『そ、そういう問題じゃないでしょ!?
 こ、こんな事…普通はその…こ、恋人同士とかとやる事で……』
『え? 俺ら、もうとっくに恋人だろ?』

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「いつからそうなってたのよ私全然記憶に無いんだけど
 でもどうしてもって言うなら私もやぶさかじゃないって言うか!!!?」
「だから何が!?」

またしても訳の分からない事を言い出す美琴。頭から、プスプスと煙も燻り始める。
このままではまた「ふにゃー」してしまいそうなので、ここらで止めておこうとする上条。
しかし今度こそ本当にパペットを返そうとした時、上条はパペットの『ある事』に気付く。

「…あ、これ口ん中が空いてんだ」

その『ある事』とは、パペットの口だった。
このパペット、実は口の中が小さな空洞になっていて、
(パペットによくある口がパカパカ開くタイプではなく、あくまでも穴があいているだけ)
飴玉くらいなら入れられるようになっていた。本当に良く出来た物である。

「へぇ~、すげーな………あっ」

そのまま弄っていたら、上条の人差し指が美琴パペットの口の中に、
「すぽっ!」と音を立てて挿入されてしまった。
美琴パペットは上条の指の第一関節まで、しっかりと咥えている。
この様子を、美琴はまたも妄想してしまう。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

『あーあー、もう。美味しそうにしちゃってまぁ。そんなに気持ちいいのか?』
『にゅぶ、ちゅぶ…あんひゃが、むりやり…んっぶ、ひゃへてるん、じゃらいろよ』
『ふ~ん、そうなんだ? でも言葉では嫌々言ってても、
 美琴ちゃんのお口自体は上条さんの指を離したくなくなってるぞ』
『ぢゅる、れおれお…ひょ、ひょんらこと、らい、わよ! …ん、れろ』
『はいはい。ほら、もっと舌と涎を絡ませて』
『ん、ぶぢゅりゅ、にゅぶびゅぶ、ちゅっぴ……こう、かひら…?』
『くっ! ん…い、いいぞ。じゃあ次は、指を2本にしてみようか』

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「アンタどこまでエスカレートするつもりにゃのよふにゃー!!!!!」
「いやだから何が、って言うか危ねっ!」

盛大に漏電しそうになったが、とっさに上条が右手でそれを防ぐ。
しかし上条の幻想殺しは異能の力だけを打ち消す能力。
妄想は異能の力ではない為に、上条の右手が触れても打ち消される事はない。
故にその後も美琴の脳内の上条と美琴【じぶん】は、益々エスカレートしてしまうのであった。










タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー