とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある交感の好感交換




自覚がある。最近どうも、自分の様子がおかしい。
そんな主観的なのか客観的なのかよく分からない気持ちを漏らしたのは、
ご存知、上条である。彼は学校の帰り道、歩きながら考えている。
実は彼、ここ数日ある事が気になって気になって仕方がない状況に陥っていた。
ある事…つまり、

(……今頃、美琴はどこで何してるんだろうな…)

美琴の事である。どこで何ももクソも、美琴【むこう】もただの帰宅途中だろうに。
だがこれこそが、彼の悩みの原因でもあった。
この数日間、何故か美琴の事が頭から離れなくなってしまっているのだ。
おまけに厄介な事に、この現象、幻想殺しが通用しない。
頭を触っても何も変化がなく、それはつまり、そこに異能の力が働いていない事を意味する。
おかげで上条の頭の中には常に美琴の顔がチラついている。
料理中も食事中も移動中も勉強中も入浴中も排便中も睡眠中も、それはもう24時間である。
しかもただ考える訳ではない。色々と妄想までしてしまうのだ。
例えば、もしも美琴と付き合ったらどうなるか、とか。もしも美琴と結婚したらどうなるか。とか。
今日なんか授業中、自分のノートに何気なく『美琴』と書き、その上に『上条』と書いてしまい、
ハッと我に返り慌てて消したくらいだ。
美琴の事を考えると心臓の鼓動が速くなるし、顔が熱くなってしまう。
鈍感が売りの上条と言えども、流石にこれは理解せざるを得ない。

(……そう、だよな)

知らず知らずの内に、彼は自分の胸に手を当てていた。
上条当麻という一人の少年は知る。
それが、倫理や理性や体面や世間体や恥や外聞までもが関係ない、ただただ(以下略)
つまり、16巻の253ページの美琴と全く同じ事になってしまっている訳だ。
しかし何故それまでは全く意識していなかった美琴への感情が、
ここ数日でカンブリア大爆発を起こしてしまったのか…思い当たる節がなくはない。

(やっぱ…あの時か?)

数日前、上条は街角で美琴とぶつかった。
原因は美琴が『偶然』にも上条の学校付近を散歩していたところ、
何か『妄想』でもしていたのかボーっとしてしまい、
前方不注意になったところに上条の不幸が重なってしまった、というのが顛末だった。
が、今は責任追及をする場ではない。
肝心なのはその次なのだが、ちょうどこの後からだったのだ。上条の体に異変が起きたのは。
その現象は、漫画などでよくある心と体が入れ替わる例のアレに似ていた。
しかし上条の心は依然変わらず上条のままである。変わったのは、美琴への感情だけだ。
まるでそう、『美琴への好感度だけが入れ替わってしまった』かのように。
だがそうなると当然、次の問題が浮かんでくる。
好感度が入れ替わったのなら、今感じている美琴への感情は、
元々美琴の胸の内にあったという事になり、つまり美琴は上条【じぶん】の事を―――


「いやいやいやいやっ!!! そ、そ、そんな訳ないだろっ!!?
 みみみ美琴が俺の事を……好っ! ……とか、ありえねーって!
 だ、大体今まで、そんな素振りとか全然無かったじゃねーか!」

訂正しよう。変化したのは美琴への感情だけではないようだ。
性格も、ちょっとだけツンデレ【ミコっちゃんっぽく】なっている。
この様子では、今頃は美琴も鈍感【かみじょうさんっぽく】なっているのだろうか。

しかし上条の意見も最もである。
美琴は今まで、上条の事を想っていたなんて素振りを見せていない。
ただちょっと恋人役を上条に頼む時に顔を真っ赤にしていたり、
一緒にフォークダンスを踊る時に顔を真っ赤にしていたり、
一緒にツーショット写真を撮る時に顔を真っ赤にしていたり……

「………あれ?」

ふと気付いた。素振り見せまくっていた事に。
瞬間、上条はその場でうずくまり、髪をかきむしったのだった。

「うわああああああ!!! 何で今まで気付かなかったんだ俺っ!!?
 あん時もそん時も、めっちゃ俺の事見てんじゃあああんっ!!!」

ツンデレ属性が追加されたせいか、同じツンデレの気持ちを理解してしまう上条。
色々と分かったのは良かったが、何かもう死にたくなってくる。

「って事はちょっと待てよ!?
 それじゃあ美琴も普段から、ノートに『上条美琴』とか書いてたのか!?
 いや、それだけじゃない! 他にも枕でキスの練習したり、妄想の中で一緒に旅行したり、
 結婚式の引き出物考えたり、子供の名前を考えてみたりしてたってのかよ!!?」

つまり上条も、この数日間は同じ事をしていた訳だ。

「し…しかもあまつさえ! みみみ、美琴が俺の事を想像しながら!
 オ…オオオ、オナ、オナ―――」
「おな?」
「同じ志を持つ仲間って素晴らしいですねっ!!!」

オナなんとかと言いかけた瞬間、背後から話しかけられて背筋をビクッと伸ばす上条。
とっさに「同じ志云々~」と言って誤魔化しはしたが、実際に何と言おうとしたのか、
そして上条は美琴の事を想像しながらナニをしたのか、非常に気になるところである。

「…何、急にちょっと良さ気なクサい台詞言ってんのよ。アンタそんなに熱い奴だったっけ?」
「っ! …み、美琴」

振り向くと、そこには今最も会いたいような、
それでいて絶対に会いたくないような相手、御坂美琴が立っていた。
上条の心臓が、バックンバックンと暴れだす。
美琴は上条と対峙した時、いつもコレを食らっていたというのか。

「え、あっ、美琴さん…その、どうしてここに?」
「どうしてって…いつもの通学路じゃない。アンタこそどうしたのよ。顔、真っ赤よ?」
「いいいいや大丈夫っ! ちょっと暑いだけだからっ! ホラ、今日真夏日だし!」
「…曇ってるし風もあるから、そんなに暑くないと思うけど。今、冬だし」
「あ…あーそうだっけー!? あははははははーっ!」


何だか上条の様子がおかしい。そう思った美琴は、自分の手のひらを上条の額に宛がう。
その結果、上条の心拍数と体温が更に上昇してしまう。

「んがっ!?」
「熱は…ないみたいね。……いや、あるのかしら? どんどん熱くなってるような気も…」

それは美琴【あなた】のせいでせう。
そんなツッコミも言えない程に、今の上条には余裕がない。
それにしてもこの状況、ものすごい既視感である。配役を逆にすれば、いつもの上琴の風景だ。

「ホホホントに大丈夫だからっ!」
「そう? ならいいけど…」

慌てて美琴から距離を取る上条。やはりこれも、普段の美琴がよく取るリアクションだ。
対して美琴は、いつもよりも淡白というかクールで冷静な印象を受ける。
お互いの好感度が入れ替わっているせいで、普段の上条の態度に近いのだろうか。
そう思った上条は、美琴に自分の事をどう思っているか、聞いてみようとした。

「な、なぁ美琴。美琴はその………あの…お、俺の事を、さ…………えっと…」
「ん?」
「……いや…何でもないでふ…」

しかし一歩踏み込めない。新たに実装されたツンデレ属性が邪魔をするのだ。
そうでなくても今までモテ期を経験した事のない上条(失笑)には、
こんな質問、ハードルが高いというのに。

しかしここで不幸の発動だ。ただし上条の、ではなく美琴である。
美琴のポケットから、パサッと一冊の手帳型の写真入れがこぼれ落ちる。
上条が美琴のツンデレを受け継いだように、美琴も上条の不幸を受け継いだ…のだろうか。

「…? 何か落ちた」
「えっ? ………あ、ちょっ! それダメ―――」

上条が写真入れを拾い、何気なく開いてみる。
と同時に、それまでクールぶっていた美琴が一気に慌てだした。
中に入っていた写真は…

「……俺…?」

その写真は、ツーショット写真を撮った時の上条であった。
携帯電話で撮ったあの写真を、プリントアウトした物だろう。
美琴が写っている左半分を切り取り、その分上条が写っている右半分を拡大してある。
これを持ち歩いていたという事はつまり。

「ちちち違うのよこれはそのたまたま持ってただけで別にいつもアンタと
 一緒に居たいなって意味とかじゃないんだから勘違いとかしないでよねっ!!!?」

耳まで真っ赤にしながら言い訳をまくし立てる美琴。おかしい、いつも通りである。
上条との好感度が入れ替わっているのなら、このリアクションはどう考えてもおかしいのだ。

例えば、入れ替わり云々が単純に上条の杞憂だった場合、
美琴のこの反応はごく自然だが、上条の説明がつかなくなってしまう。
『上条が美琴の事を普通に好きになった』というなら話は別だが。

そして入れ替わり云々が実際にあった場合、
上条の変化に説明がつくが、美琴がいつも通りな筈がなくなる。
『元々上条も美琴に対して、美琴が上条を想っているのと同じくらいの想いがあった』
としたら、入れ替わっても好感度に変化がない事に納得ができるが。

という事はつまり、

「だっ、だだだ、だからっ!
 夜寝る前にこの写真におやすみのキスとかも全然してないからっ!!!」
「だだ、だよなっ!? 俺も枕を美琴の顔に見立ててキスの練習とかしてないしなっ!!!」

どういうことだってばよ?











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