とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part57

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「ごめんね」

デジタル時計が20:00をさしていた。
暗い部屋のなか、ベッドの隣で美琴が呟いた。

「お前は悪くないだろ」

「わたしの、体調管理が甘かったから……」

「それはオレも同罪だ」

「……」

美琴が沈黙したあと、ベッドから咳き込む声が聞こえた。

「コホッ、コホッ、うぅ、まコホッまぁコホッコホッまあ、ま」

慌てて美琴はインデックスを抱き上げる。
異変に気付いたのは、 学校から帰ってしばらくしてからだった。
美琴がインデックスを抱き上げた時にあまりに元気がなかった。
体温を計り、慌ててゲコ太先生の病院に行った。

『ただの風邪だね。季節の変わり目だし、仕方ないかもね。大丈夫だ』

自分たちが入院した時よりも安堵した。
そして自分たちの意識の甘さに悔いた。
美琴は、インデックスに語りかける。

「これからは、気を付けるからね」

「美琴……」

「気を付けるから……」

テーブルの上に、常盤台中学から届けられたある書類が置かれている。

『寮の修繕完了予定日と寮への帰還予定日の通知書』

ステイルや神裂、一方通行、打ち止め、垣根、フレメア、浜面、滝壺、そして白井が訪ねてきたのは、その書類が来た後だった。

ほとんどがインデックスの見舞いだったが、
白井は、この通知を喜び、駆け付けた。
しかし、彼女が美琴から受けた言葉は

『黒子も、この子とわたしを引き裂く気?』

という言葉だった。
いつもの美琴なら言わなかっただろうし、いつもの上条ならフォローがあっただろう。
しかし、彼らは追い詰められていた。
暴言や暴力はない。
言葉はいつも通り。
だが、有無を言わさず、上条と美琴は皆を追い出した。
最後まで、彼らは白井の表情に気付かなかった。

「コホッ、ぐしゅっ、まぁ、コッコホッまぁま、ぱコホッぱぁ」

「これからは、ちゃんと気温の変化に注意しないと。ね、当麻」

「…………あぁ、そうだな、美琴」

現時点で、その「これから」は残り7日。


白井は、星空を見上げる。
もうこのパジャマでは過ごせないほど肌寒くなってきた。

「……お姉様……」

そして、決めた。
これは正義の行いとはいいがたい。
ただの、わがままだ。


夜が明ける。
インデックスが熱を出して2日。

「うん、熱もひいたし、喉の腫れもない。咳も鼻水もないし、もう大丈夫だね。念のために2、3日は安静にするんだよ?」

とゲコ太先生から診断された。
安心して疲れが出たのか、夕方に病院から帰ってすぐインデックスの横で上条も美琴も眠った。
それから18時間。
美琴はまだ目を覚まさない。
上条は、美琴とインデックスにかかった布団を整える。
振り返ると、ソファーとテーブルの上で寝ている2人が視界に入った。
オティヌスとトールだ。

『貴様ら、その子が元気になったとき、代わりに倒れる気か!!?』

インデックスに熱が出た翌日、オティヌスとトールがなにも知らずに訪ねて来た。
白井やステイルたちと同様追い出そうとしたら、怒鳴られた。
そこではじめて、二人は食事をしてないことに気付いたのだった。
彼らがいなかったら本当に倒れていたかもしれない。

「……さて……」

上条は制服に手を通すと、
玄関のドアノブに手をかけた。


上条が家を出たちょうどその頃、
常盤台の寮の屋根に2人の男が立っていた。

「さぁ、覚悟はできたか? 第一位!!!」

ホストのような男、垣根帝督は翼を広げながら笑う。
絶体絶命な状況で、正面に立つ男は

「……いや、それじゃダメだな」

ため息を吐いた。
一方通行はだるそうな目で続ける。

「前からてめェはクソガキと遊んでンだからよ、今さら殺し合いは不自然だろォが」

「クソガキじゃなくて打ち止めさんと呼べや、いつも面倒みてもらってる相手にその態度はなんだ? アァ?」

「いつもおせわになってます」

「いえいえ、気になさ……そうじゃねぇ」

「なンだよ?」

「オレとてめぇが殺し合いして、その余波で完成間近の寮が壊れました!! このシナリオに文句あんのかよ?」

「文句だらけだっつの。カブトムシになって知能も虫並みになったンですかァ?」

「てめぇも他に考えつかなかったんだろぉが、知能もやしレベル」

「……」

「……」

「お望み通り殺してやるよ!! ついでにツノへし折ってメスにしてやらァ三下!!!!」

「上等じゃ!! いい具合に炒めてくれるわ!!!!」

その瞬間、目の前をビームが横切った。

「ま、待てって!! 麦野!!!」

下を見ると麦野が浜面に羽交い締めにされている。
もともとは寮を狙っていたようだ。

「なんだよ? お前もあのチビには第三位が必要だといってたじゃねえか。だからこうやって完成間近の寮を……」

「だからってぶっ壊すのはダメでしょうがよーーーーーー!!」

ゆっくり超能力者トップ2は顔を見合わせる。

(……発想あれと同レベルかよ)


日も大分登ったころ、
上条はとある目的地に向かって歩いていた。
公園を横切ろうとした時、不意に目の前に少女が現れる。

「おっす、白井」

「おはようございます。上条さん。インデックスさんの体調はいかがです?」

「あぁ、治ったよ、心配かけたな」

「それはなによりですの。上条さんはなにをされてるんです?」

「あぁ、常盤台の校長先生に、美琴が寮にへ戻らなくてもよくなるようにお願いしに行くんだよ」

「……話すら、聞いてもらえないかもしれませんわよ?」

「それなら、その上の、理事長になるのか? に頼むし、それでダメなら統括理事の誰かに頼むし、それでダメでも別の手を考えるさ」

「……なるほど、流石ですわね」

「お前はなにしてんの?」

「……実は、上条さんと、まったく同じ理由でしたわ」

「へぇ、奇遇だな。一緒に行くか?」

「そうですわね、いろいろな面から意見を言ったほうがいいと思いますし」

「美琴を慕う風紀委員の意見は確かにあるにこしたことはないな」

「その前に、お願いがありますの」

「ん? なんだ?」

「私と、戦ってくださいまし」

木の葉が風で舞った。

「な、に……?」

「そして、私が勝てば、何も言わずにお姉さまから離れてくださいまし」

「何を言ってるんだ!!」

「別に会うなと申している訳ではありませんの。 あと数ヵ月、せめてお姉さまが常盤台から卒業するまでは、距離を置いてくださいませ」

「ふざけ……っ!!」

言葉が途中で遮られた理由は単純。
上条が話すのをやめ、回避に専念したからだ。
後ろに飛んだ上条の目の前に鉄矢が浮かぶ。
気付くと白井の姿がなかった。

「くっそっ!!」

しゃがむと、頭上を鋭い蹴りが通った。
捕まえようとするが、すぐにまた消える。
目論見が外れた上条は慌てて前転の要領で跳ぶ。
鉄矢が服を裂いた。

「……わかったよ」

上条は、ようやく敵を見据える。

「理由やなんだは、取っ捕まえて聞いてやる!!!」











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