とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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部屋とYシャツと私…とアンタ




御坂美琴は、今まで味わった事のないくらいにドキドキしていた。

恋人となった上条から、「今日、俺んちに遊びに来ないか?」とメールが来たのは今朝の事だ。
インデックスは必要悪の教会から呼び出されてイギリスへと一時帰国。
しかも呼び出された内容というのが魔神に関する事らしく、
必然的にオティヌスも付いて行く事となった。そして主【インデックス】と餌【オティヌス】が行くのなら、スフィンクスも付いていく。
つまり今日は二人っきりになれるチャンスなので、上条は美琴に自室デートの誘いをしたのである。

不幸な上条の寮部屋らしく、色々とトラブルには見舞われた。
例えば突然浴槽が壊れたり、上条が洗濯物を外に乾かしていたら、
突然のゲリラ豪雨が降って洗濯物が全てダメになったり。
しかしそんなこんながあって、今現在、時刻は23時36分。
美琴はそろそろ帰らなければならない時間である。
だが美琴の方にも上条の不幸が伝染ったのか、彼女にもトラブルが舞い込んだ。
白井からメールが来て、今から帰ってくると確実に寮監にバレるとの情報。
翌日の早朝ならば流石の寮監も寝ているだろうから、
帰ってくるならそのタイミングが良いとの事だった。さて、ではここからが問題だ。
早朝まで、美琴はどうやって時間を潰せば良いのだろうか。
漫画喫茶、カラオケボックス、ビジネスホテル…当ては色々とあるがしかし、
上条が提案したのはそのどれでもなかった。
そしてそれこそが、冒頭で美琴がドキドキしている理由なのだが。

(お、おおおおと、お泊りって!!! そ、そんな、いきなりそんな!!!)

つまりはそういう事である。
だがそれだけではない。浴槽は壊れたが洗い場は普通に使えるのでシャワーを浴びたのだが、
先に説明した通り洗濯物は全てダメになり、もう一度洗う事となった。
美琴もお泊りセットなどを持っている訳もなく、つまりは着替えが無いのである。
上条はタンスというタンスをひっくり返し、何か着られる物がないかを探した。
すると一枚だけ残っていたワイシャツを発見する。
緊急事態なので美琴はそのワイシャツを着る事となったのだが、
裸ワイシャツにお泊り。これはもう何と言うか、アダルティな展開の臭いがプンプンする。

(いいい、いや、で、でも当麻だって初めてのお泊りでそ、そんな事とかしないと思うし…
 ……あっ…ワイシャツから当麻の匂いがすりゅ…♡
 って! トリップしてる場合じゃなかったわ! だだ、大体私にも心の準備が…
 ……あっ…何だか当麻の温もりとか感じる気がしゅりゅ…♡
 って! だから変な事考えてる場合じゃないんだってば! そ、そもそも私はまだ中学…
 ……あっ…よく見たらサイズ大きい…やっぱり男性なんらりゃ~…♡)

…この状況を楽しんで頂けているようで、何よりである。と、そこへ。

「美琴さ~ん? 着替え終わりましたかね………って、うおっ!!?」

美琴が着替えている最中、覗かないようにトイレに引きこもっていた紳士【ヘタレ】な上条だが、
着替える時のガサゴソ音がやんだので、そっとトイレのドアを開けてみた。
すると確かに着替え終わった美琴がそこにいたのだが、素肌に直接自分のワイシャツを着る彼女…
という男なら誰しも一度は夢見たシチュエーションを目の当たりにして、一気に顔を紅潮させた。
今の美琴の姿を一言で表す言葉を、上条は頭の中で瞬時に導き出す。

(エ……エロいっ!!!)

それは「可愛い」でも「美しい」でもなく(それらの言葉も含まれてはいるが)、「エロい」である。
当然ながら美琴は下着を着けていない。着替えは持ってきていないし、
シャワーを浴びる前に身に着けていた下着を、シャワー後にも着けるのは着心地が悪い。
なのでノーブラ&ノーパンである。つまりワイシャツを少し上に捲るだけで、
破壊力抜群の「そーれぴらーん(© 絹旗)」が拝めてしまうのだ。

「え…えっと、ど、どう…かな…?」
「……えっ!? あ、いやその…た、大変似合っているのではないかと思われますです…」


美琴に感想を聞かれたが、素直に「今すぐむしゃぶりつきたくなる程エロいッス!」なんて、
言える筈もなく、しどろもどろに「似合っている」と返事をする上条。それもウソではないが。
美琴はワイシャツの裾をギュッと握り、顔を「かあぁ…」と赤くさせて、

「あ…ああ、あり、ありが…と……」

とモジモジしながらお礼を言う。上条は心の中で、

(何なんですかね……この可愛すぎる生き物は…)

と思いつつ、このままでは負けてしまいそうな理性を孤軍奮闘させる為、洗面所の冷水で顔を洗った。
真夜中に出歩かせたらスキルアウトに狙われて危ないからとの理由で、美琴に宿泊を勧めたのに、
このままでは自分自身がスキルアウトのように美琴を襲ってしまいそうだ。エロ同人みたいに。
冷水如きで完全に冷静さを取り戻せる程、今の状況は楽観視出来ないが、
それでも多少頭を冷やす程度の役目にはなる筈である。

「よ、よし! じゃあそろそろ寝るか!」
「えっ!? あ、あぁ、うん……そ、そそ、そうよね。明日は早く起きなきゃなんないし」

美琴は早朝に起きて、寮監が寝ている隙に帰らなければならない。
街の不良共【スキルアウト】が活発に活動するのは、大体深夜の0時~4時くらい(のイメージ)だ。
5時に起きて上条の部屋を出るのがベストだろう。6時になったら寮監が起きる危険性も出てくるし。

「じゃあ、美琴はこのベッド使ってくれ」

言いながらベッドメイキングをする上条。
このベッドはいつも、インデックスが寝ているベッドである。
だが今日はそのベッド主がイギリスに行っている為、美琴が寝る事になるのだが、しかしそうなると。

「…? 当麻はどこで寝るのよ」
「俺はいつも通り、浴槽に布団敷いて寝るけど…」
「なっ!? そんなのダメよ! 浴槽壊れててヒビが入ってるんだから、危ないじゃない!」

そうなのだ。突然浴槽が壊れたと説明したが、それは給湯器が…ではない。
そもそも、給湯器が壊れていたのならシャワーだって浴びられないし。
文字通り、「浴槽」その物が壊れたのである。
何がどうなってどんな不幸が働いてそうなったのかは分からないが、
上条家の浴槽は本日、地割れしたかのようにバックリを裂けてしまったのだ。

「大丈夫だろ、上に布団敷くんだし。そりゃ直接寝たら危ないかも知れないけどさ」
「布団の上からだって充分に危ないわよ! 万が一、怪我とかしたらどうするの!」
「そんな事言われてもなぁ…」

心配してくれるのは嬉しいが、現実問題、他に寝る場所がない。
リビングで寝るという手もあるが、その場合はベッドと布団の間にテーブルを置くなどして、
バリケードを作らなければならないだろう。高校一年生の性欲を舐めてはいけない。
美琴の為に。そして上条が、自分自身を抑制する為に。……と、思ったのだが。

「ってか、布団はどこにあるの?」
「あー、ヤベェ。まだベランダに干しっ放しだ…った…? ……………あ」

そこで上条は気がついた。ゲリラ豪雨で、洗濯物が全てダメになった事を。
洗濯物がダメになる程の雨で、布団だけが無事だったなんて奇跡は有り得ない。
それが不幸体質の権化である上条ならば、尚更の事である。
となると、上条は今夜は布団無しで寝なければならなくなる。
えげつない程に水を吸って、びっしょびしょに濡れた布団に包まって眠る訳にもいかないし。

「…しゃーねぇ。バスタオルでも敷いて寝るか」

そう上条が呟いた瞬間だった。美琴から、まさかの提案。
それはちょっとした仕返しだったのかも知れない。
上条に「ウチに泊まってけ」と言われ、ドキドキさせられた美琴の、ちょっとだけ勇気の要る復讐。

「……じゃ…じゃじゃあっ!!! い、いい、いしょ、一緒に寝ればいいじゃないっ!!!」
「ほわっつ!!?」

美琴からの大胆発言に、思わずなんちゃって英語で聞き返す上条。
一緒に寝るという事はつまり、一緒に寝るという事である。それ以上でも、それ以下でもない。
…いや、『それ以上』はあるにはあるが、上条はそうならないように欲望と戦ってきたのに、
このまま一緒に寝てしまったら、『それ以上』の事に対する我慢が限界を迎えてしまう。
ちなみに限界を迎えたらどうなるのかは、オリアナ姉さん辺りにでも聞いて頂きたい。


「だ、だって…ふ、布団無かったら、か、風邪引いちゃうかも知れないじゃない…
 このベッド、つ、詰めればもう一人くらい寝られそうだし…だ、だから、その…」
「わっ! 分かった、分かったよ! だからそんな泣きそうな顔すんなって!」

提案したはいいが、やはり後から羞恥心が込み上げてきたらしく、
美琴は恥ずかしさのあまり目にうっすらと涙を溜め始めていた。
本来はここで、一緒に寝る事を断固拒否しなければならない上条なのだが、
これ以上断ると美琴の中で何かが決壊して、本当に泣いてしまうかも知れない。
なので上条は二つ返事で、美琴とベッドインする事を了承するのだった。

(う~…息子よ、今日だけは元気にならないでくれよ…?)

そんな事を思いながらベッドのヘッドボート(オティヌスの寝室として取り付けたらしい)に、
水の入ったコップを置く上条。それよりも上条には息子などいない筈だが、
詳しい説明を聞きたい人はオリアナ姉さん辺りにでも以下略。

「…? このお水、何なの?」
「ん? ああ、加湿器代わりにしようと思ってな。
 この時期、乾燥とかが気になるだろ? でも上条さんには加湿器なんて買う余裕は無い訳ですよ。
 けどこの前『寝るときに水が入ったコップを枕元に置いているだけでも加湿効果がある』
 ってテレビでやってたから、試してみようと思ってな。水ならタダだし」
「へぇ~…そうなんだ」

加湿器くらい私が買ってあげるのに…と思った美琴だが、
そこへ踏み込むと上条の男としてのプライドをズタズタにしてしまいそうなので、止めておいた。

「それに…」
「それに?」
「…あっ! いや、何でもないであります…」

何でもなさそうな上条の態度。明らかに何かを言いかけていた。
言うのを止めた上条の台詞を代弁すると、
「それに今日は、喉がカラカラになる夜を過ごさなけりゃならないからな」である。
裸ワイシャツの美琴と一緒のベッドで一夜を共にする。しかし手を出してはならない。
この拷問に耐えるには、コップいっぱいの水だけでは心もとないくらいだ。
下手をすれば、喉が渇きすぎて加湿器【コップ】の中身を直接飲んでしまうかも知れない。
それくらいの覚悟で臨まなければ、上条は己の中のオオカミに打ち勝てないだろう。
いくら幻想殺しでも、欲望という感情は消えてくれない。
それは幻想ではなく現実だから。更に言えば、動物しての本能なのだから。
…今更だが、「とっとと襲っちゃえばいいじゃん」というツッコミなナシである。
上条さんもミコっちゃんを大切に想っているからこその我慢なんだから。

「そ、それじゃあその……お、おやすみ…」
「お、おう。おやすみ…」

二人は一緒のベッドに入り、部屋の電気を消す。
視覚が奪われた分、他の五感が無駄に研ぎ澄まされてしまい、
お互いの匂い、呼吸する声、触れ合う感触、味(!?)がハッキリと伝わってしまう。
…いや、すまない。味は流石に言いすぎだった。しかしそれくらい密着しているのは確かである。
心臓がバクバクする。こんな状態で眠るのは、やはり不可能で、上条も美琴も目をギンギンに

「…すー………すー………」

してはいなかった。美琴、まさかのご就寝である。
どうやら上条の部屋に入ってから、ずっと緊張しっ放しだったらしく、
ベッドに横になった事でその疲れが一気に押し寄せてきたようだ。
だが残されたもう一人、上条は血の涙を飲む羽目となる。
何しろこちらが手を出せないこの状況で、美琴が寝惚けて抱き付いてきたり、
ふとももを絡ませてナニに当たってきたり、頬を撫でてきたり、寝息が首筋にかかったり、
寝相でワイシャツがはだけたり、その際に胸元が見えてしまったり、その胸を押し付けてきたり、
毛布と掛け布団で見えないが中ではミコっちゃんの秘密の部分が丸出しになっていたり、
可愛らしい唇から「当麻ぁ…中はダメ…♡ ………むにゃ」なんて意味深な寝言が出てくるから。
もう一度言うが、この状況でこちらは手を出せないのだ。これを不幸と言わずに何とする。


(だあああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!)

上条は心の中で絶叫した。己の中の何かを発散させる為にである。
本当は直接叫びたいところだが、美琴が起きちゃうしご近所の迷惑にもなるので我慢する。
だがそんな上条の苦労も虚しく、美琴はここぞとばかりにトドメを刺しにくる。

「んっ…ちゅむ♡」
「うわわわわっ!!?」

どんな幸せな夢を見ているのかは知らないが、突然美琴が上条の顔を抱き寄せ、
耳たぶを甘噛みしてきたのだ。これには上条、堪らず声を漏らしてしまう。と同時に飛び起き、
その衝撃でヘッドボートに置いてあったコップが、ガタンと音を立てて倒れてしまった。
当然、中の水は零れ、その下で寝ている美琴に直撃する。

「んやっ!? 冷たっ!」
「す、すまん美琴っ!」

文字通り寝耳に水を食らった美琴は、レム睡眠から一気に目覚めた。
あまり心地の良い目覚め方とは言えない。

「やだ~…なにこれ、びしょびしょ~……」
「わ、悪い! すぐに拭く物持ってくるか…ら…?」

とタオルを持ってこようとした上条だったが、ふと動きが止まった。
その一点に、目を釘付けにしながら。部屋の電気を消しているのでハッキリは見えないが、
水に濡れた事によりワイシャツはピッタリと肌に張り付き、下着も着けていない為、
その胸の二つの突起物【ぽっち】も、薄っすらとだが見える。上条、前屈みである。
ちなみに残念だが、肝心の下半身の方は毛布と掛け布団に阻まれて見えない。不幸である。
だが上条の不幸はそれで終わりではなかった。

「ん~…濡れてて気持ち悪い……」

そう言いながら、美琴がおもむろにワイシャツを脱ぎ始めたのだ。どうやらまだ寝惚けているらしい。
上条は一瞬「いいや! 限界だ押すね!(押し倒す的な意味で)」と言いそうになったが、
ギリギリで踏みとどまり、自分の着ている服を脱いで美琴に渡す。

「そ、そそそ、それ着て寝なさい! それと上条さんはトイレで寝るから! おやすみ!」

上条はドキドキしまくっている心臓を押さえながら、ベッドから離れる。ヘタレである。
結局上条は、朝まで便座に座って夜を過ごす事にしたのだが、
こんな興奮状態では一睡も出来る訳がなかった。だが不幸中の幸いとでも言うべきか、
ここはトイレなので、元気になりすぎた息子を大人しくさせる事は出来たのである。
意味が分からない人はオリアナ姉さん以下略。


 ◇


朝である。5時頃、丁度美琴が起床したタイミングで、
心配になった白井が空間移動を駆使して迎えに来たのだが、
部屋の惨状を見られて、それと同時に上条は殺されかけた。
しかし自分が清廉潔白である事を(白井の攻撃から逃げながら)説明したので、
何とか生き延びられたのである。

「あ~…今日は干す物が多いなぁ……」

そして現在は7時半。上条は洗濯物をベランダに干している。
だが二組の布団…上条が普段寝ている、ゲリラ豪雨にやられてしまったせんべい布団と、
昨夜に水を零してしまったベッドの布団を、ベランダの手すりにかけたその時に、
ふいに隣部屋の土御門とサングラス越しに目が合った。
土御門は部屋の窓から顔を出し、ニヤニヤしながらこちらを見ている。

「な…何だよ?」

嫌な予感がしつつも、聞かなくてはならないだろう。土御門が妙に悪い笑顔をしている理由を。

「いや~…この寮ってボロいから、隣の部屋との壁が薄いだろ?
 だから夜中に騒いだりすると、丸聞こえしちゃうんだよにゃー。
 つまりカミやんが昨日どんな事をしてたのか、大体は理解してるつもりだぜい」
「っ!!? ちょ、ちょっと待てよ! 言っとくけどそれは誤解―――」

この流れはマズイと思った上条は、間違いなく間違っているであろう土御門の認識を正そうとする。
しかしその前に、土御門はこんな時に言うお馴染みの言葉を口に出すのだった。

「カミやん…『 ゆうへ゛は  おたのしみて゛したね 』」










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