とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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第20話 幻想殺し(8)


8月1日(土)

ふあ・・よく寝た。
昨日は午後を丸々オフにしたので、リフレッシュできた。
父が常盤台の入学時に購入したイタリア製の1850年代の「安物」のロッカのバイオリンの
手入れと、明日のソロの練習をする。父は安物と言っていたが、インターネットで相場を
見ると4000万円くらいだったはず。いくらなんでも「安物」は正しくない。
まあ文化遺産級のストラディバリウスなら20億円するものあるそうだから、比較の問題で
安物というだけの話だろう。

まあ常盤台でバイオリンのソロだしね。あんまり露骨に安物はまずいだろう。
4000万ならまあ許容範囲か。それにそのくらいなら粗忽ものに壊されても笑って許せる
範囲だしね。

それにしても出し物の目玉が私のバイオリンのソロね。
正直な話、別に私のバイオリンなんてどうってことないだろう。別に私は音楽家でも
なく、客観的見て下手だとは思わないが、所詮は学校教育の範囲を超えない。
レベルで例えればせいぜい3くらいの話だ。高校生の大会に出れる程度の話。
いくらプラズマ操作や電撃が最強であっても、音楽までレベル5なわけが
ない。むろん時間をかければ、戦術的価値を有するレベル4クラスには
なれるだろうが、どんなに頑張っても世界の最高峰になれるわけがない。

それより私の本職の能力実演でもしたほうがお客様は喜ぶのでは?
実際私にビキニアーマーでも着せて、超能力戦隊物でもやった方がまだ
ましじゃないの?と思う。

それこそ、砂鉄剣で装甲車でもぶっ壊して、超電磁砲で戦闘ヘリでも
粉砕し、プラズマブレイドでアタッチメントでも切り裂いたほうが
よほど御坂美琴らしいでしょ。

でも ま・いいか お嬢様の御坂美琴も
私を構成する大事なパーツよね。
本当 今日は楽しみだわ・・
さあて今日は上条当麻を接待するのよね。私の庭で。
私は意識を目のまえの白井黒子へ向ける。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「お姉さまおはようございます」
「黒子おはよう」
「さきほどはなにか、お姉さまらしからぬ馬鹿笑いが
 聞こえましたが何かありましたか?」
「ふふ・・今日はありのままの私の姿を彼に見せるのよ」
「彼とはあのお姉さまに両手を切断された類人猿ですか?」
「ええ・・でもさ黒子失礼よladyが類人猿なんてちゃんと上条さんといいなさい」
「まあ・・でもお姉さまが認めるだけのものがある・・ということですね」
「ええ・・彼には誰にもない力がある
 彼はいまだにその真価に気がついていない。だけど
 その力はいずれ世界を変える」
「凛々しいことに定評があるお姉さまがここまで惚気るなんて
 驚きですわ・・」
「女はね、伴侶たる人物を見つけたら変わるのよ」
「黒子はお姉さまほどの人にケチをつけるつもりは
 ありませんが、お姉さまの輝かしい経歴にケチがつかないことを祈りますわ」
「ふふ・・まあいいわ。私の能力者を見る目は
 確かなつもりよ、彼はレベル0なんかじゃない。ある意味最強の能力者よ」
「それで、今日はあのるい・・失礼上条さんを招待なさったのですね」
「ええ・・でも正直バイオリンソロなんて、自信ないわ」
「ご謙遜を、常盤台でもお姉さまほどバイオリンができる方はいませんわ」
「成績ならね。でも楽譜どおり正確に弾けるだけよ。そんなの最高位の電撃使い
 なら当たり前じゃない。生体電流を操り正確にプログラムを再現する。
 高位能力者(レベルファイブ)ならできて当たり前だわ」 
「お姉さま、ご謙遜かもしれませんけど、あんまりなさると、嫌味に聞こえる場合
 もありますわよ。」
「ごめん、そんなつもりではないわ。でも気をつけるわ・・」
「お姉さまは、素直でお優しい。そして強い。でも いやだからこそ ねたまれる場合も
 ある。でも気になさらないでください。黒子にわかっています。
 お姉さまは黒子だから心を打ち明ける」
「ええ・・まあいいわ。頼まれ、それを受けた以上 私はちゃんとやり抜く
 でも本当は能力実演のほうが楽だったわね」
「お姉さま、あんまりまた無自覚に女のコのファンを増やされても、後で
 お困りになるのでは?ただでさえ常盤台の多くのコの夢は
 お姉さまに愛されたいのはご存じでしょ」
「本当にそう?話だけじゃないの?」
「お姉さま・・無自覚なのは罪ですわよ」
「まあ・・いいわ。どうせ私は9月で中学生終りだし」
「お姉さま・・確か大学院へ飛び級されるとか?」
「ええ。。それも今日発表するけどね」
「しかしま・・最初から最後まで伝説づくめのお姉さまでしたね」
「伝説?」
「常盤台史上最高点で入学、最初から最後まで全教科満点、
 最後は中2の夏休み前に
 優等な成績で卒業、いきなり高校・大学を飛ばして大学院。」
「それもそうね。確かに一般教育の枠には入らないわね」
 あ・・もうこんな時間ね。
 さあ 黒子無駄話は終わり、仕事よ」

私と黒子は、エントランスへ向かい来客を迎える。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


私は一番きてほしい人物の姿を確認し、笑顔で迎える。
(・・・ふふちゃんと開始15分までに来たわね。いいことだわ。)
「当麻君、ありがとう」
「美琴 かわいいよ。メイド服」
「ほめくれてありがとう。ちゃんと来てくれて」
「さすがだな・・常盤台 寮だよな。エントランスといいロビーといい
 高級ホテル以上だな」
「そう・・ありがとう じゃ・・ちょっとほかの来客にも挨拶しなきゃないから
 ちょっとそこで紅茶でも飲んでまっていて」
私は、ぶしつけな来客の舐めるような視線に耐えつつ、来客業務をこなす。
サインを求める客、握手の依頼、撮影をせがむ金髪の大男、それらを若干
ひきつった顔で、なんとかいつもの常盤台スマイルでリーフレットを
渡し案内する。尻を触ろうとする痴漢まがいの男には、軽く生体電流を
操り、直接脳にいい加減にしろとメッセージを送る。

もういいかな。9時だ。
私は当麻に合図を送り、2人で常盤台外部寮を歩き始める。

私は当麻と手をつなぎ、他の寮生に見せつけるように歩く。
本来なら学校で妙な噂が立つのを自重し、「男」と手をつないで歩くなど
お嬢さま女子中学生にあるまじき所業だが、今日で退寮だという解放感で
行動が大胆になっている。

当麻は、欧州の宮殿のミニチュアのような寮を物珍し気にじろじろ見て
まるで初めての海外旅行の子供のように、案内人にひとつひとつ聞いている。

「当麻君、どう?」
「いや・・格差てやつをしみじみ感じています」
「そう。。そうね。でも・・当麻君はきっとこれが当たり前になるわ」
「へ?」
「当麻君には力がある。
 そんじょそこらの男にはない右手の力がね
 だからきっとこうゆう場所にふさわしい男になると思うわ」
「美琴・・」
「まあ、ゆっくりあせらず現状を変えよう。
 あんまり意地がよくない当麻君の守護者を
 私は舐めるつもりはない。だけど、日常を変えようと一歩を
 踏み出さなければ、何も変わらない。
 だからやろう。当麻君は宿題をまず期限内に提出して今までの
 不幸を変えた。だから頑張ろう。もちろん私も手伝うわよ」
「美琴・・本当にありがとう」

美琴と当麻は、茶道部で茶を飲んだり、寮生の絵画を見たり、一緒に刺繍を
したりして、まるで初々しい恋人のように、腕を組み2人きりの時を過ごした。
寮生は、いつもは女らしいというより凛々しい「御坂様」の変わり切った姿に
驚嘆の目を向け、その恋人らしい上条に好機の目を向けた。
けれど畏怖の対象である御坂美琴に声をかけ、事実を確認できる猛者はいない。
いや・・一人いた。常盤台のもう一人のレベル5 食蜂操折である。
 ・・・・・・・・・・


「御坂さん」
「あら食蜂じゃない、珍しい」
「珍しいじゃないわよ。上条さんだっけ、彼氏なんか作ってさ。
 最強のアマゾンらしくもないわよ乙女力全開なんて」
「ふふ・・もう遅いわよ。上条君は私のカ・レ・シなのよ」
「美琴?この人は?」
「ああ当麻君はし・・知らない?こちらは食蜂操折、常盤台のもうひとりのレベル5よ」
「御坂さん、まあ上条さんの話はあとでゆっくり聞くとしてちょっと昼10分くらいいい?」
「わかったわ。商談ね。いいわ」
 食蜂は手をふりながら去る
「美琴、食蜂さんとはどうゆう関係?」
「そうね、悪友かな。商売上のね」
「商売?」
「ええ・・そうよ」
「え・・でも美琴はまだ学生でしょ?」
「私と食蜂は投資法人の共同経営者よ」
「はあ?経営者?」
「常盤台では学生やりながら経営者は少なくないわよ」
「お嬢さまてすごいんだな」
「常盤台はそうゆう点は特別ね、授業でも経営学があるくらいだし」
「なんかすごい世界だな」
「ええ親は官界・政界・財界結構なセレブばかりよ
 あの子は日銀総裁の孫、あの子は前総理の孫、あの子は愛知県に本社のある
 自動車メーカの創業家の一族ね」
「へえ・・」
「でもみんな結構ふつうよ、そこらの女子と大差ないわ」
「普通ね。美琴の普通は今ひとつ信用できないな。
 美琴は自分はどう思っている?」
「頭脳と能力以外は普通の女のコよ・・とは言えないわね。
 でも、気持ちはごく普通よ、笑いたいときは笑う。悲しい時は悲しむ。」
「そうか・・俺への気持ちは?」
「普通に・・いや特別にダイスキよ」
「当麻君は?私の事好き?」
「いうまでもないダイスキだよ。」
「ありがとう。じゃ・・そろそろ12時だから昼食でも食べましょうか?
 私は食蜂と会うから先に食べていてね。後で合流するから、席だけ確保
 してね。頼むわ」

さあてと・・
談話室だったわね。


 ・・・談話室・・・・
「食蜂悪いわね。待たせて」
「いい御身分ね。まあいいわ、上条さんをどうするつもり?」
「当麻ね。今は友人以上恋人未満。でも恋人になると思う」
「既成事実力の積み重ねて考え?」
「ええ、言葉には不思議な力がある。互いにスキスキと言い続ければそう
 思うようになる。それに私は美少女力は満点だし
 この魅力に落ちない男はいないわ」
「もう・・ナルシスト力全開はいいわよ。胸もない癖にさ、
 で今日の要件は何?」
「私は学園都市を除く世界中に疎まれている。
 いづれ私や一方通行の存在を理由に世界が学園都市を攻撃する日がくる」
「なるほど で対策は?」
「欧州を攪乱し分断させる。南欧と北欧の利害を対立させる」
「え?欧州を攪乱・分断?正気?ネタは?」
「ギリシャ、ポルトガル、イタリア、スペイン、アイルランド」
「は?・・何」
「国家ぐるみの粉飾決算よ、しかもバチカンとブラッセルも
 関わっている。」
 美琴は懐から軍用の改竄不可能な特殊チップを出し、食蜂へ
 みせびらかす。
「御坂さんまた・・・・不正アクセス力満載ね」
「国民は知る権利がある。それに、投資家は
 正しい情報を債務者から得る必要がある。 
 国民や投資家は債務者から正しい情報を得ることは
 当然の権利だわ。」
「青臭いわね。でも正論力はあるわね、
 でこれを使ってマスコミ対策しろと?」
「ええ、お願い 」
「空売りは?」
「ユーロ、NYダウ、FT100は先週対策済よ」
「戦争でも起こす気?」
「正しいことを公にしたくらいで壊れる平和なら、
 そんなのは平和ではないわ。それに神に仕える聖職者が、バブルで大損するのは
 神の御心にそうものなのかしら?」
「まさかバチカンをつぶすつもり?」
「ローマ帝国でさえつぶせなかったバチカンを私がつぶせるわけがない。
 でもバチカンへの信頼はどうなるかしらね」
「御坂さん・・あなたは悪女力満載ね。」
「ほめ言葉かしら。でもこれはか弱い女の正当防衛よ」
「そこは笑うとこ?まあいいわ。味付けは任せて」
「食蜂お願い。こんなことは貴女にしか頼めないわ」
「上条さんによろしくね」
私は退出する食蜂の後姿を深々と常盤台流の挨拶で送り出した。



 ・・・・・食堂 ブッフェ会場・・・

「ごめん当麻君待った?」
「美琴か しかしまあうまいね。
 アワビ、神戸牛、ホアグラ、キャビア、ウニ、クロマグロ
 まあすごいわ。・・美琴はいつもこんなの食べているのか?」

美琴は、女の子のせいか、当麻と比べ少量の物を、ゆっくりと食べる。

「ええ・・そんなに珍しくわないわ。そんなに特別メニュではないわよ
 でも本当喜んでもらえてよかった。」
「だとすると本当にいいのか?俺なんかで?」
「え?」
「美琴は、学園都市でも最上層の才媛、しかも名門常盤台中学でも主席の秀才
 親も富裕層で、しかも美少女 そんなお前が俺なんかを彼氏にしていいのか?」
「そうかもしれない。確かに今は当麻君は超荷電粒子砲 御坂美琴の彼氏
 でもそのうち、私が上条当麻の彼女の御坂美琴と呼ばれる日が来るわ」
「そうか・・でも結局それはこの右手が彼氏てことか?」
「ふふ最初はそうだったわ。でも今は当麻君のすべてがダイスキ」
「いいのか?」
「他の選択肢はありえないわ 私には当麻君しか見えない
 当麻君は私の事 嫌い?
 いいわ、一歩一歩少しづつ仲良くなりましょ。」

 上条当麻は鈍感な男というのは正しくない。
 女の発するサインに敢えて気がつかないふりをしてるだけだ。
 けれど明確ではっきりした好意を向け続ける女にたいして、いつまでの
 鈍感でいられるほど彼は、悪魔でも鈍感でもなく、
 度重なる不幸で精神が少々皮肉になり、好意の裏を考える、疑り深い
 性格なだけなのだ。

 美琴の執拗なダイスキの連呼は、上条の頑くなな心を蕩かしていく。

「美琴・・俺も心の底から美琴を愛している」

美琴はここが勝負時と判断し、言い方をより親密な当麻へ変える。

「ありがとう、当麻 
 今日は本当付き合ってくれてありがとうね。」
「美琴は宿題の解答集や解説まで作ってくれるし本当すごいよ」
「どういたしまして、当麻ちょっといいかな。聞いて
 宿題もできたことだし、湘南でも行こうか?」
「へ? 湘南?」
「ええたまには海でも生きたいなんてね。
 天気もいいようだし来週金曜日なんてどうかな?」
「湘南ね。いいよ。でも外出許可は?」
「多分とれるでしょ。私の所長のコネで」
「へえ・・あの所長てスゴイナ」
「そうね。当麻・・もっと2人きりになろう・・海で」
「ふふ。。。本当ありがとう。じゃ・・そろそろ 回りましょう。」

2人は周りの目もはばからず、手をつなぎ、腕を組み、肩を寄せ
歩き始める。まるで、本当の恋人のように振る舞う2人。
打算的な女が、自分のプランのために、初めた恋人の偽装。
だが、2人の心は女の思惑を超え、本当の恋へと昇華を始める。
お互いをダイスキと言い合ううちに、2人は心の底からつながり
始める。そのことにまだ、2人とも気がついていない。


だが、当麻は美琴のリンスの香りに女を感じ、美琴は当麻の汗臭い
ワイシャツのにおいに男を感じ、確実に2人は互いを異性として
意識し始める。

そして、美琴は言葉を紬ぎ始める。
「私は当麻のニオイ、呼吸、ウニのような髪、鈍感なところも、女に優しいとこも
 馬鹿なことも全部好き。だからもっと近くにいたい。」
「美琴、俺はあんまりうまいことは言えない。でも美琴の底抜けに
 優しいところ、強いところ、笑い顔が無性にかわいいとこ、
 考え抜いて行動すること、リンスの香り 全部好きだ」 
「ありがとう。・・当麻ひとつお願いがあるんだけど?」
「当麻、来週から一緒に住まない?私退寮してマンションへ転居するんだけど、
 結構広いから持て余すのよ。
 それに女の一人暮らしは危ないし、ね。いい?」
「美琴の頼みならいいよ。だけどさ、退寮?」
「私、常盤台を卒業して、大学院へ進学するのよ」
「へ?飛び級?それも大学院?」
「もう入学試験は合格済みよ」
「美琴は、なんでもできるんだな」
「能力と学業だけよ。あとはふつうよ。ふつう。」
「普通ね・・まあいいわ。ルームシエアね。いいよ」
「うれしいわね。あ・・そろそろ時間ね」
「時間ね。・・そうかバイオリン・ソロか?」
「ええ・・出し物よ」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・
美琴は柄にもなく高揚し、かなり緊張している。
彼を彼氏と少しづつ意識し、女になりつつある
楽器を楽譜どおり操作する単純作業が結構な負担に感じる。

そもそも美琴にとっては、今回のバイオリンソロはかなり
どうでもイイ話だった。

美琴にとって、音楽の授業は、音の三要素を表現した楽譜に記載された
楽曲を楽器と声で正確に再現する作業にしかすぎない。

音の三要素とは、「大きさ」、「高さ」、「音色」であり
それぞれ、DB(デシベル)、Hz(ヘルツ)、倍音(周波数成分)
で表現される。美琴は楽譜を数字にすべて換算し、0と1の組み合わせで理解
する。電子操作系の能力開発と変わらない、簡単な作業にしかすぎない。

所詮学校教育の音楽、芸術性や音楽性はもとめられていない。
単なる模倣、単なる楽譜をなぞる作業。
芸術性のかけらのない、pcの打ち込みみたいな作業。

だけど、彼に少しでもカッコイイ姿を見せたいという、つまらない
乙女心が冷静な演算を妨害する。

でも、彼の顔を見る。私の姿を期待と不安がいり混じった
まなざしで凝視する彼を見て、心が定まる。
 ・・想いを感じて、それを乗り越えてさらに頑張る。
私は、目をつぶり背筋を伸ばし、深呼吸をして体制を立て直す。

よし・・まあいい。少々間違ってもいい。
今はこの思いをかれに伝えよう。ありのままの自分を伝えよう。
覚悟が決まる。動悸、足の震えも収まり、やる気に満ち溢れてくる。
緊張はしているが、ここちよい緊張感に包まれる。

私はあらかじめ、予定していたクラシック2曲と、J-POP1曲、最後に
Only my Rail gunを演奏する。

静寂につつまれていた観客が、スタンディングオベイションを始める。
単なる模倣、単なる学校教育ではない何かが観客の心を
掴んだのだろうか。・・・
アンコールの声が上がり、美琴は即興の耳コぴで2曲さらに
演奏する。

美琴は観客の前で深々とお辞儀をし、さらに
口を開き観客の前で爆弾発言をする。

8月1日で退寮すること。
そして飛び級で大学院へ進学すること。
それを淡々と伝えた後、観客に謝意を言葉とお辞儀で伝える。


観客は常盤台のエースの爆弾発言に驚きに包まれるが同時に、
美琴らしいと全員が納得し、美琴の決断に対して拍手で応える。

 ・・・・・・
控室へ戻った美琴は、着替えを終え、上条と抱擁を交わす。
「当麻・・私の演奏よかった?」
「いや・・想像以上で・・びっくりした」
「ふふ・・ありがとう」
「本当に何度も聞くけど、俺でいいのか?
 美琴なら、よりどりみどりだろ?
 才媛でお嬢さまで、・・常盤台のお嬢様も黄色い声援を上げていたぞ
 そんな・・・」
「ふふ・・私には当麻しかないのよ。当麻さえ入れば私は何もいらない」
「こんな俺でも愛してくれるなら、うれしいよ美琴」
「当麻今日は寮生が私の卒業祝いしてくれけど、付き合ってくれる?」
「いいのか?お嬢様集団にこんなさえない男なんか恋人で連れ込んで?」
「いいのよ・・もう当麻は恋人だから。ふふふ・・いいかな?」
「ああ・・わかった。でも・・服は」

2人の会話は尽きない。初々しいカップルにとって時間は短すぎる。
上条に心に美琴はぐいぐいと食い込んで、居場所を拡大していく。
もう鈍感男の鉄壁のガードは脆くも崩れ始めている。
上条にとって美琴はただひとりの異性になりつつある。

 ・・・・・・・
はあ・・今日は疲れた。
でも・・・・ここちよい疲れね。
美琴は今日の出来事を反芻する。
上条との距離をまた一歩詰めた。
言葉だけでなく、生体電流の観測でも上条が自分へ異性として
明らかに意識しつつあるのを観測できた。
それに最初は利害だけで始めた上条との恋愛ごっこ。
だけど・・はっきりと自分も心が上条への愛に包まれるのを
感じる。もう・・ごっこじゃない。本当の愛。

まあいい、上条当麻と私の恋愛は、原石と科学の交わりとして
世界を大きく変えていくだろう。
それがどんな結果になろうとも私は運命に抗い戦う。

そして・・今日は私の転機。

いよいよ「御坂様」も卒業だ。
子供の小さな世界でマンセーされてもスポイルされるだけだし。
もう、常盤台という中等教育の最高峰の学校教育で吸収でき得ることも
学びつくした。もう潮時だろう。高校・大学の学部という
モラトリアムは時間の浪費だ。

それに14歳は世が世なら、大人扱いされてもおかしくない年齢だ。
あのステイルは14歳でイギリス清教で「天才」の名をほしいままにしている。

さあ御坂美琴、幼年期は終りよ。
私は魑魅魍魎が潜む70億人類社会の奥底へ旅立つ。
自分と彼に与えられた力の意味を知り、その目的を果たし、運命に抗うために。










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