とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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第2部 第16話 第三章(4)


8月23日(日)午前5時

ついこの前まで、この時間に日が昇っていたのに、曇っているせいもあり薄暗い。
あれほど長かった高校生の夏休みもあと1週間で終わり。季節は確実に秋へ移行
しつつある。少し早めに起きた私は気分転換を兼ねて自宅周辺の大通りを散策
する。散歩には気を紛らわす効果と、思考をまとめる効果があり、考えが煮詰まって
しまった時には、時々意識的に行う。グレムリンという得体のしれない相手の場合は
なおの事。10分も歩くうちにまとまらない思考が形を作り始める。

不幸中の幸いというのだろうか。今回の米国転覆計画のおかげで押収された
オーレイ・ブルーシェイクがらみの情報から、多くの預金口座情報と資金の
流れの情報がとれた。さらに、その捜査の過程で、人工衛星の解析から
多くの魔術関係者を特定できた。

さらに木原幻生から押収したファイルから押収した、魔術に関する詳細な記述。
ここ2ケ月間の100機以上の人工衛星の衛星画像。
電磁波の揺らぎを利用し、あらゆる魔術・能力・原石の情報を能力者を分析
する解析プログラムへかける。これに、世界200以上の国と地域の住民基本台帳データを
ツリーダイアグラムで私が不在中に解析プログラムにかけ、ほぼ全地球の70億人のデータを
解析し、魔術師・能力者・原石の辞典の作成をほぼ完了する。

とはいえ、いまだはまだ試作品。正直言えば作っただけの代物。
(まあ・・今はまだ参考程度だな。それでも・・多少の足しにはなるだろう。)
「それに・・・この学園都市の中ならどうでもなる。」

AIM拡散力場が充満した学園都市という要塞を知り尽くした私だからできる戦いかたがある。
と。考えはまとまり私は30分ほどの散策を終え自宅へ帰る。
もう当麻も起きていることだろう。
当麻にできるだけ話そう。これから起こるであろうことを。

「おはよう当麻」
「美琴 おはよう」
「寝れた?」
「ああ。久しぶりの自宅だからゆっくりとね」
食卓からは久々の純和風の香りが漂う。
「へ・・ずいぶん朝から手間かけてさせて。悪いわね」
「久々の自宅だから手間をかけた。正直ブッフェ形式の朝食も飽きたし。」
「え?そう。食べ放題だからと言ってずいぶん食べていたんじゃないの?」
「それは食べ盛りだから・・」
「ふふ・・でも当麻の朝食おいしいわね。ありがとう」

私は、みそ汁を飲みながら、当麻の顔を眺める。
当麻の作る朝食は、どこか懐かしく、温かみを感じるのはなぜだろう。
塩鮭と、海苔とごはんと、キュウリの漬物と味噌汁のごく平凡な和食から
当麻のしっかりと芯の座ったでも暖かい人柄を感じる。
朝食を終え、食器洗浄機に2人の食器を入れ終わり、私はホワイトボード
を備え付け、当麻との作戦会議を始める。

「当麻・・完全じゃないけどグレムリンの目的はわかったわ」
私はホワイトボードにサインペンで書く。
<オティヌスを魔神にすること>
「オティヌス?魔神?正直よくわかんねえな」
「まあ記号として理解すればいいと思う。 オティヌスという名前の魔術師を、神サマみたい
 なこの世のあらゆる物理法則すら捻じ曲げる化け物へ進化させる計画があると理解すれば
 いいと思うわ」

「神サマね・・・・?まるで2年前の美琴みたいな話だな」
「方法論は違うけど、結果は近似しているわね」
「で防ぐ方法はあるのか?」
「厳密な意味で本当にそれで防げるかどうかはわからない。
 だけどグレムリンが欲しがっている物はわかる。」
「欲しがるもの?」

「起爆剤と囚われの姫君よ」
「起爆剤は・・あの火山噴火を誘発する米軍の兵器だよな?で囚われの姫君とは?」
「フロイライン クロイトウーネ」
「え?フロイライン?」
「発音しにくい?フロイライン クロイトウーネよ。まあ名前なんて記号だから
 フロイラインでいいわ」
「フロイラインはなぜグレムリンが狙う?」


「桁外れの耐久性を有するからかな多分。いわゆる殺しても死なないてやつよ」
「それは・・」
「おそらく、グレムリンがオティヌスを魔神へ昇華させるには、燃料としての火山噴火
 のエネルギー、その儀式を行うのに桁はずれの耐久性を有する人体が必要と推測
 できる」
「なるほど・・て。でもそれは美琴の憶測だよな」
「ええ。でも合理的な推論だと思っている。それに仮に違っているとしても
 それは問題ではないわ。はっきりしているのはオティヌスという首謀者を人外にする
 計画が進行中で、その道具が火山噴火とフロイラインという人外の耐久力を有する
 少女という事ね。」

当麻は少し関心を示しつつまだ事態が呑み込めていないようで、これがどれだけ
重大な事態が認識できないようだ。
(まあ・・そうよね・・隣にいつ封印がとけるかわからない神サマもどきがいるのに
 その認識もないようだし、それに・・あの右手・・でも心強いわ)

「で・・美琴はグレムリンはどうする?」
「そうね放置したいところだけね。たぶん無理だろうね」
「へ?」
美琴はスマートフォンを当麻に見せる。
「トールさんという方からお誘いよ。」
「トール?」
「グレムリンの正式構成員のようね」
「なんで」
「どうやら彼らが私を学園都市でもマークすべき人物と評価してくれたようだわ
 光栄と思うべきかしらね」

「どうする?」
「会うしかないないでしょ。情報はいくらでもほしいし。」
「俺は?」
「うーん、私の不在時に当麻を攫われれても困るし、一緒に来てくれない?」
「そうか・・わかった」
「でいつ?」
「10時にジョセフてファミレスだってさ・・ずいぶん失礼なやつだけどしょうがないわね」
「わかった」

 ・・・・・・・

午前10時ジョセフ
「当麻あの人みたいねほら・メールの顔の人・・」
「あ・ああ」
私は、トールと思われるジーンズにラフなシャツの男に声をかける。

「グレムリンのトールさんでよろしいですか?」
「ええ。あ・・御坂さん日本語で結構ですよ。上条さんもいるので」
「あ・・そうですか。では早速ですが、ご用件はなんですか?」
「フロイライン・クロイトウーネを牢獄から救出するのに御協力いただけませんか?」

「私にメリットがあるような気がしませんが。一応目的を聞きましょう」
トールは、オティヌスの魔神の進化へフロイライン・クロイトウーネの体が必要なことと、
それを防ぐためにフロイラインを確保するのが目的だと言った。

「なるほど・・オティヌスが魔神になるのを防げる可能性があると」
「理解が早くて助かる」
「残念ながら御協力できないですね。それだけの理由なら」
「は・・見損なったよ御坂美琴。所詮は学園都市の犬か」
「逆切れは見苦しいですよ。トールさん。無条件に困った女の子を助けるなんて
 ライトノベルの主人公だけで十分です。貴方の方法論は説得性も合理性もあり
 ません」

「ただ・・困った女を助けるだけなんだ。でなぜ動かない。それにオティヌスが
 もし魔神になれば世界が困る」
「私は一応組織人です。この学園都市ではそれなりの地位もあります。貴方の論法では
 私はなんの感銘も受けないんですよ。」
 私は、一方的なトールの論法に段々腹が立ってきた。

 だが・・当麻の顔を見て少し冷静さを取り戻す。封印がやばくなっている今、激情は
 やばい。このまま無計画で封印が解ければ、オティヌスの神サマ化以上に破局的な
 事態となる。

 まあ・・当麻の意見を聞いてみよう。私はそう思った。
 当事者ではない第3者の意見だからこそ、それに当麻の意見だからこそ聞く価値があると。


「当麻はどう思う?私はこんなしょうもない話はしたくないんだけどさ」
「俺個人か?そうだな。学園都市でそれなりの役職者の美琴が統括理事長の居城を破壊
 できないのは当たり前だよな。だけど・・美琴には馬鹿にされそうだし、フロイラインが
 危険かもしれないのはわかる。だけど・・やっぱり理由なく拘束する権利は統括理事長
 でもないような気がする。」

私は、頼まれれば断れない当麻の性格を思い出し苦笑いする。
そんなお人よしの当麻だから私は愛したことも思い出す。
「そう・・わかったわ。じゃ・・トールさん私と戦ってくれない?」
「私は、グレムリンの魔術師トールに負けてしょうがなく協力した。そうゆう話
 が納得できるかどうか確認させて」

「ああ・・協力してくれるのか・・」
「勘違いしないで。アンタが私が力を貸すに足るかどうか確認するだけよ
 それに私は当麻の判断を尊重するだけよ」
「わかった」
「ここは狭いから・・広いところへ行きましょう。」
「じゃ・・トールさんのスマホへ位置情報を送りましたから10分後にお会いしましょう」

 ・・・・・・・・・

多摩川の河川敷
「ここなら少々運動しても大丈夫でしょう」
「ああ」
「じゃ・・はじめましょう」
いきなりトールは右手の5本から青白い光を放つ。
アーク溶接の要領だろうか。それを磁場でコーティングしているようだ。
(電気系の魔術師か・・まあ同系統のようね)
「電気系統ですか・・まあそれならどうでもなりますね」
私は、磁場を攪乱し、青白い光は私にあたることなく方向をことごとく
そらされる。
「電磁波や磁場、電流を使うものは私に意味ないわよ。次は?」
「さすがだね、学園都市1位サマはこれはどうかな」
トールは溶接ブレードを数百mにのばす。
私は目をつぶり、瞑想を始める。
(出力は、恐らく数億KWくらいか・・反射膜で吸収できる。だけど・・さっさと
終わらせよう。戦意を喪失させる方法で。 全能のトールになる前に・・ )
「だから磁場や電磁波は意味がないて。アンタは反射もできないし硬質ボディでもないようね」
私は唇を高速回転させつぶつぶつぶやき始める。
「う・・・何を・・・?」
トールが頭を抱え始める。
「いわゆる超音波てやつよ。頭痛でまともに考えられなくなる」
トールは気絶し、地面を倒れ伏す。

「ああ・・やちゃった。当麻どうする。こんな奴にオティヌスを倒すなんて無理よ」
「美琴、こいつは悪いやつじゃない。こいつに力を貸してくれないか?」
「フロイラインはね。・・・」
美琴は、スマートフォンの画面で統括理事会のマル秘資料を当麻に見せる。
「どう?AIM拡散力場を食うために人の脳を食うリスクがあるわよ」

もともと美琴がこの作戦に乗り気でない理由は自分のクローンのネットワークが食われる
リスクがあるからだ。特にラストオーダという個体が、お気にいりらしい。
フロイラインクロイトウーネは、長期の拘束で情報に飢えている。だから脳特にMNWの莫大な記憶を
渇望している。
「それでも俺は、なんとか助けたい」

私は苦笑いをする。上条当麻は何のメリットもないのに、なんの関わり合いもないのに
無償の愛を注ぐとんでもない、善人。だけど・・惚れた弱み、なんとかするしかあるまい。
自分が社会的地位を失わず、かつ当麻の願いをかなえる方法はあるか・・
私はある程度考えていたことを、形にまとめる。もともと窓のないビルの壊し方は思考実験で
何度も行ったことだしな。私は当麻とともに行動することを決断する。

「しょうがないわね。じゃ・・こうしましょ。」
当麻に驚くほど以外な盲点があることを示す。フロイライン・クロイトウーネを収容しているがゆえの
セキュリティホール。
「なるほど・・でも本当にいいのか?」
「決めたことよ。私は地獄の底までついていくわ。じゃ・・時間もないし、さっさやりましょ。
トールを起こしましょ。彼に責任を全部押し付けるためにもね」

 ・・・・・・・・

窓のないビル外周道路。 8月23日 14時

私たち3人は宅急便会社のトラックをコンビニの前に路駐し、
作業を進めている。
本来なら攻略不能の要塞、破壊などありえない話だ。


普通なら。

窓のないビルは核兵器の直撃程度では破壊できないとされる。
だが、ビル自体が無限の耐久度があるわけでも、無限に硬いわけでもない。
正確には柔構造で衝撃を分散したり、外力を相殺する波動を内部で計算して受け流す
構造であり、それは高度の演算装置で維持されている。

だがら想定外の巨大な火力では破壊される可能性はあるし、演算のむらを衝かれると、
意外にあっけなく崩壊する可能性がある。またテレポータの侵入を許すことから、
仮に複数の時限発火式核弾頭がテレポートされる場合には
内側から崩壊する可能性はある。

私が窓のないビルを崩壊させること自体は多分どうにでもなる。
私はその中でビルの管理者に一番精神的な打撃を与える方法を選択した。
「当麻フロイラインは外界の音や光に異常な関心を示している。もし、フロイラインの
 収容されている場所に直接、光を送付したらどうなるかしら?
 彼女はその光に反応し、どんな手を使っても外界へ脱出しようとする」

「だけど、そもそもテレポータなんてどうする?それに居場所は?」
「ふふ。。そうね。だけどまあまかせなさい。時間もないしさっさと始めるわよ。」
 私は結標へメールを送る。
「いま、携帯ラジオと、LEDライトを結標へ送ってもらったわ 多分5分くらいかしら」
「美琴、フロイラインは脳みそ食うんだよな?」

「ええ・・あ・・トール?そもそもアンタアレ捕獲はできるの?」
「え?」
「まさか・・アイデアなし?」
「はあ・・まったく。いいわ最悪私がなんとかするわ」
やがて5分が経過したころ異変は発生した。

ビシビシビシ まるで安物のべニア板が壊れるように窓のないビルは軋み始め
今度は轟音とともに外壁が吹っ飛ぶ。

「終わったようね。怪物は自力で脱出したようよ」
「さあてと・・ドイツ語を理解してくれればいいけど」
そこには女性としては長身な身長2mほどの女性が立っていた。
ほとんど裸体といってもいい装束と裸足が異様さを裏付ける。
私は確認する必要もないが一応確認の為にドイツ語で声を掛ける。
「フロイライン=クロイトウーネさん?」
なぞの女性は、呼びかけに多少反応したようだが、基本は無反応で
私を一瞥するや否や攻撃を開始する。

私は、保護膜をトールと当麻にも伸ばし攻撃を自動防御する。
「無駄よ。あんたの細胞かなんかを飛ばしたようね。でも残念私の保護膜には無力よ」
(ちんたらすれば逃げられる、速攻あるのみ だけどプラズマ瞬間蒸発では彼女を
 殺してしまう。じゃ・・凍らせるか )

私は、普段とは逆に対象から分子運動を制御して熱エネルギーを奪う方法で
彼女と彼女の半径5mの分子運動エネルギーを奪い瞬間で絶対零度(▲273.15度)
へ冷却させる。気が付けば約80kg相当の本体が物言わないただの固定に置き換わる。
そこにまるで魔術のように身長2mのフィギュアが完成し、氷の像のように
立ち尽くす。生きてるように。
(まあ彼女が地球上の物質なら動くことはないでしょ。絶対0度だし)

横に私が手配済みの液体ヘリウムの入った保冷車が用意されている。
「トール。これで少しは時間を稼げる。正直、こんなゲテモノはマスドライバーで
 太陽へ送付することをお勧めしますけど。あとはお任せします」
「当麻、アンチスキルも動き出す任務完了撤収よ」
「あ・ああ」

私は学園都市最強のテレポータへ電話を行う。
「結標。座標送るからこの愉快なオブジェを指定座標へ送って」
フロイラインだった愉快なオブジェは瞬間的に液体ヘリウム運搬車内へ
テレポートされる。
「じゃ・・トールこの車両はプレゼントするから後はなんとかして」
「みこっちゃんさようなら。たぶんまた会うけどな」
「私は会いたくないわでも会うわね、たぶん」

 ・・・・・・・

8月23日 (日)16時

「終わったわね」
「ああ」
「ふふ・当麻、アンタとトールだけなら多分窓のないビルも破壊できず彼女も確保できず


詰んでいたわよ。いまごろアンチスキル行きかトールと逃げ回ったいたでしょうね」
当麻は苦笑いをし、頭を書きながらごめんごめんとジェスチェーで示す。
「それよりいいのか?理事長のビルを一部とはいえ破壊し、しかも彼女を逃がした」
「ふふいいのよ。どうせあんなセキュリティの瑕疵を放置するほうが悪いのよ」
「はあ・・悪いな。俺の我儘で美琴の経歴に泥を塗って」
「いまさら・・よ。当麻のそんな助けたいから助けるとこ馬鹿だけど嫌いじゃないわ。
 むしろダイスキ。」
(だけど・・当麻。いつも結果オーライでは済まないわよいつか責任を負う日がくる)

「トールはどうなるかな?」
「結局オティヌスには勝てないでしょうね。」
「それじゃ・・意味が」
「ええ・でも今は時間稼ぎが大事よ」
「ああそうだな」

「当麻・・いまは先の事を考えてもしょうがないわ 抱いて」
「美琴。きょうは済まない、迷惑かけた」
「少しは自重してよ。でも・・いいや。当麻は当麻らしくいて」
「ああ・・。もっと全部救えるように強くならなきゃいけねえな。結局
 今日も肝心なとこは美琴だのみだ。」
「いいのよ。私は当麻のためならなんでもするわ」
「じゃ・食事のまえにお風呂入ろう」
「ああ」
「今日も優しくしてね」
「はいはい」
「当麻・・・はいは一回よ」
「美琴・・拗ねてるのか?」
「まさか 私は当麻だけよ」
「よし・・背中洗ってやるぞ」
私と当麻は風呂へ一緒に入る。
当麻のわりに広い背中。
当麻・・もう私に何日人の日々があるかわからない。
たぶんあとすこしで私を人につなぎめている封印は解ける。
当麻・・頼むわよ。あなたの右手しかないのよ。もうそれしか。


続く











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