小ネタ 擬人化自販機7-116号たん
こんちは、自販機です。
あれ、わたくしのことご存じない?
しかたないですね・・・
自己紹介させていいだだとくと、例の公園で御坂美琴に蹴られ続けているものです。
皆さんも知っている通り、彼女はある少年、上条当麻のことが好きです。今回は、その二人について私が目撃したものを紹介させていただくつもりです。
理由?そんな野暮なことは聞かないでください。貴方たちも私と同じ気持ちのはずでしょう?
では、なにから話しましょうかね。そうだ私が初めて二人を見たことから話しましょうか。
あれは、確か季節が春から夏に移り変わる頃でした・・・
「あ、アンター!」
御坂美琴と呼ばれる少女、その美琴はある少年を見つける。
「うわ、ビリビリ!?」
「だから、私の名前は御坂美琴って言ってんでしょうが!」
美琴から電気が飛び出し、普通の人間ならばその電気にやられ倒れてしまうはずである。
しかし、その少年、上条当麻は右手を振り上げその電撃をいとも簡単に消す。
「お前な、そんな電撃人に向かって放つもんじゃねえぞ!」
「う、うっさいわね!アンタが人の名前を覚えないからいけないんでしょうが!」
ギャーギャーと二人は騒ぎ、上条が走り出してそれを美琴が追いかけ、彼らは公園から消えていった。
ん?なんだこれはですって?まあ、まあ。実はこれは序章なんです。二人は徐々にですね、まあ聞いてもらったほうが早いですかね。
彼女が変わったのはあの日でしょうか。あの日はとても暑い日でした。
「助けにきてくれたんだ・・・・・」
さっきから美琴はそんなことばかり呟いている。なにがあったのか知らないが、美琴が意識しているのは上条のことであろう。
あるときは顔を真っ青にし、あるときは顔を真っ赤にする。どうやら思い出しなんとかというやつをしているらしい。
「アイツは・・・・」
美琴はなにかを考えるが、考えたことを否定するかのように頭を振る。
「ない、ない、そんなわけないじゃない」
「そんなわけ・・・・ないじゃない・・・・」
美琴はなぜか暗い顔になり、その後、気分転換のごとく自販機を蹴る。
「じゃあ、アイツをからかいにいきますか」
顔を明るく作りかえると美琴はどこかに向かっていった。
どうでしょう。私は自販機ですから大したことは知りませんが、なにせいつも御坂さんに蹴られていますからね。ちょっとした心情変化でも感じ取れるんですよ。
蹴り具合で。
きっと彼女が彼を気にし始めたのは、この頃からですかね。まあ、前から予兆はあったんですがね、この頃のことは彼女にとっても大きなことなんでしょう。
あと、こんなことも見かけましたね。だいたい9月の始めあたりでしたか、
美琴は自販機の前でにやけていた。
フッとわれに返った美琴は自分がにやけていることに気づいたのか、手をまるで千手観音のようにあたふたさせる。
「わー、わー!なんでもない、なんでもない!アイツのことなんて考えていない!あの擬似デートのことは考えてない!」
誰に言うでもなく、誰からも聞かれていないのになにか弁明らしきものを喋る。
そして、さっき蹴って出した、缶をギューっと握りながら、顔を赤くする。
なにやらブツブツとつぶやき出す。その声は近くにある自販機でさえ聞き取りづらいものだった。
「(私は・・・・・なんでも・・・・・・・・アイツとなんか・・・・・・・でも・・・・・・・・・・)」
そこに後から上条が歩いてきた。
「おー、ビリビリこんな所で何やってんだ?」
すると、美琴はあからさまに慌てて、上条のほうに振り向く。
顔はリンゴもビックリの真っ赤な色であった。
「な、な、なんでアンタがここに!?」
「あのなー、俺がここに来てはいけないんでせうか?」
美琴はさっきのことが聞かれたと思っているのか、電撃を上条に放つ。
「い、い、いいからアンタは、これをくらいなさーい!!」
「うわ、なぜ!?不幸だー!」
上条が公園から一目散に逃げ出すと、美琴は楽しそうにそれを追いかけていった。
この頃になるとなぜ気づいていないのか不思議に思いますね。いや、両者ともですよ。なんだかんだいって二人とも似たもの同士なんでしょう。
それでその影響なのでしょうか、この頃から彼女の蹴り具合が毎回違ってくるようになりましたね。ある日は喜んでいたり、ある日は怒っていたり、
感情の変化が激しくなりました。彼女がどれだけ彼を意識しているのかがわかりますね。もうわたくし自販機としても早くくっついちまえと思うわけです。
まだまだあるんですよ。えーとですね、
ん?あれ、もうこんな時間ですか。もっと話はあるんですが、時間も時間なのでこれぐらいにしておきましょう。二人がこれからどうなるかなんて、言うまでもないですしね。
また、時間があったら話しましょうか。では、次に会う日まで。