とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part3

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だれでも歓迎! 編集


とある旗男と女子学園


(ど、どうしましょう)
名門常盤台中学の制服を着た生徒は怯えていた。
目の前には男がいる。
よくいる不良だと思う。
特徴といえば腰に拳大ほどのボールを幾つもぶら下げている変なファッションだ。
一週間前に肩がぶつかって絡まれたが、そのときはうまく逃げられたのだけど。
今日唐突に目の前に現れて、それから動けないでいる。
入学当時にも不良に絡まれて、そのときは御坂様に助けていただいたが、
今回もそうそう助けが来るとは思えない。
湾内絹保は意を決して目の前にいる男に向かい、拒絶の言葉を吐き出した。

一端覧祭二日目、上条当麻は御坂美琴との待ち合わせの場所に向かっていた。
約束は10時なのだが、以前待ち合わせをしたとき美琴は前に30分ほど前から待っていたようなので
今度は自分がそのくらいにつくようにして驚かせてやろうと思い、少し早めに出てきた。
川沿いの土手を歩いていると、そこで目に入ってきた光景がある。
「あの、や、やめてください。」
気の弱そうな女子中学生に男が絡んでいる。
絡まれている女の子は名門と名高い常盤台中学を着ている。
そして絡んでる男はきっと祭りでテンションが上がっているんだろう。
祭りに一人じゃ寂しいから女の子を誘ってるんだ。うん、きっとそうだ。
「いーじゃねーかー。ちょっとつきあえよ。」
残念。やっぱり頭はちょっと弱いけど態度はとても強い人でした。
無視することも出来ない。それに彼女は常盤台の子だ。彼女に何かあれば美琴も……
(知り合いの振りして連れ出すか。)
考えがまとまるより先に、行動にでていた。
「はいはい、通りますよー。待たせてごめんなー」
「え?」
と女子中学生の返事が聞こえるが、有無を言わせず手をとる。
「イヤー連れがお世話になりましたー。」
あまりの唐突さに女の子も男ポカーンとしていた。その隙を突いてすたこらと
「まてよ。」
だめでした。後ろから声がかけられる。
自分でもいやそーな顔をしているなあ、と思いつつ
「はいはい、なんですかー?わたくしめになんかようですかー?」
小ばかにされたと思っているのか、男から歯軋りした。音がここまで聞こえてくる。
「怪我してえんだな?」
と、いきなり男が何かをこちらへと投げてきた。それは小さな放物線を描き、地面に落ちると
いきなり膨らんで

バァン!!

唐突にそれははじけとんだ。

砂埃の舞う中、ガラの悪い男は不敵な笑みを浮かべていた。
自分の能力はむかつく相手に痛い目を見せるのには向いている。
しかもあの野郎が盾になって彼女は怪我しないはずだ。
いままでこちらを見てみぬ振りをしていたやつらの視線を感じながら、砂埃がやむのを待つ。
砂埃が少なくなってきた。そろそろ地面にぶっ倒れているあの男が見えるはずだ。
「はっ。正義の味方さん。ざまあねえ……」
声はそこで止まった。予想していた景色はそこにはなかった。
つまり、怪我をしているはずの男と震えているはずの女の子の姿はそこになかった。

「ふう、大丈夫か?」
巻き上がった砂煙のなか、常盤台の女の子を連れて逃げることには成功した。
いつも思うが、自分の能力を過信してるやつは隙が多い。ビリビリとか。
「わ、私よりも貴方様はお怪我はございませんか!?」
「へ?なんで?」
女の子のあまりのあわてっぷりに思わず間抜けな返事をしてしまう。
女の子はかなり面食らったようだ。不思議そうな顔をして聞いてくる。
「あ、あの私の盾になってくださいましたよね?」
たしかに後ろにいたこの子からみたら、自分をかばってあの爆発を真正面から食らってたように見えるかもしれない。
まあ実際はかすり傷一つないのだが。
(まー、実際あの程度どうってことないよなあ……)
打ち消しそこなえば即大怪我の電撃を放ってくる、目の前の女の子と同じ制服を着た少女を思いだす。
怪我がないことを伝えようにも自分の能力のことを説明するのもなんだか気が引けたので
「ああ、上条さんは頑丈なんですよ。だから気にしないほうがいいですよー。」
適当にごまかすことにした。
彼女はまだ、不思議なものを見るような目でこちらを見ていた。が、気を取り直したのか
「あ、ありがとうございました。」
と可愛らしくお礼を言ってきた。
(……これが普通の反応だよなあ……)
もし美琴だったら、『そんなこと頼んでないわよ』とか言いそうだ。まあいいか。
……最近何かと美琴を意識してる気がするなあ。
と、そこで女の子がすこしもじもじしながら
「あ、あのもしよければお礼をしたいのですが……」
と言ってきた。
「あー気にしなくて良いぜ。俺は俺がやりたいことをやっただけ。お互い怪我もないみたいだし……」
と、そこでポケットの携帯からメールの着信音が聞こえる。
とりあえず確認すると、送信者は御坂美琴。

件名:「なにやってるの」
着信時刻 10:00

本文はない。だがこの短い件名から怒りが読み取れる。
「ふ、不幸だー!」
とりあえず全速力で待ち合わせ場所へと走っていった。
唐突に走り去る高校生をみて思わずポカーンとしてしまう。
声をかけて止めることすらできなかった。
「上条さんか……」
頬が熱を持って赤く染まっていた。

「遅い……!」
時刻は10時15分。
御坂美琴は苛立っていた。昨日分かれた場所で待ち合わせをしていたのだが
あの馬鹿は相変わらず来ていない。
待ち合わせを9時30分にすべきだった
10時になった時点でメールを送ったが、返事はない。
どうせいつもの不幸に巻き込まれているんだろう。
「ほんとにあの馬鹿は……自分の体質くらい認識しておきなさいよ。」
はやく顔を見たいんだから。
「すまん!遅れた!」
いつもの格好のツンツン頭は息を切らせている。
急いできたのはわかるが遅刻は遅刻だ。
「アンタねえ、何でほんとにもう、いつもいつも遅刻するの!」
「本当にすみません」
あきれてしまうが、ここで時間を食ってもあまりいいことはない。
「まあ、もう仕方ないわ。それじゃとっとと行くわよ。」
「ああ。ん?そういえば」
「なによ」
「私服初めて見る気がするけど、似合ってるな。いつも制服だからなんだか新鮮だ。」
今日の美琴は制服ではない。
少し大きめの白いセーターにピンク色のティアードスカート。
ちょっと大き目の眼鏡とマフラーもしている。
なにせ行く場所が常盤台中学、つまり自分の学校なのだ。
常盤台のエースといわれている自分が男子学生を連れてきたとなったら色々と
面倒が起こりそうなので私服で来たのだ。
近くで見られるならともかく、遠めには意外とわからないはずだ。
「あ、あたりまえでしょ!私だっておしゃれ位するのよ!」
実際は黒子と買い物に行ったときに半分無理やり買わされたのだ。
まさかこんなときに役に立つとは。着てみたときはちょっと心配だったが
(似合ってるんだ。よかった……)
と、自分の服の評価に安堵したのか、相手の服装を見たときにふと違和感に気づく。
「アンタなんか服についてない?」
「え?」
コイツ自身が気づいてなかったのか、なんだか服のいたるところに灰色の粒がついている。
「なんだこれ。」
「アンタにわからないものが私にわかるわけないでしょ。ほら、動かないで。はたいてあげるから。」
軽くはたくと簡単に落ちる。ことんことんと地面に落ちたそれを拾い上げてみると
「ただの砂利ね。何でこんなについてるの?」
「いや、ほんとーに心当たりがござい……」
上条の動きが止まり、ギギギと脂の切れたロボットのようにゆっくりとそっぽを向いた。
……コイツがやることといえば。
「また女の子でも助けて、その時に何かあったんじゃないでしょうね……」
ジト目で睨み付けると目の前のツンツン頭はそっぽを向いたままだらだらと冷や汗を流し始めた。
「私を待たせておいて他の女とイチャついてたのかアンタはーっ!」
しばらくあたりには電撃のほとばしる音が響き渡った。

「何ぐったりしてるのよ。」
美琴が不機嫌そうに呟く。
「いや、あれだけ電撃放たれたらぐったりもするぞ。」
無傷だがとても疲れた。
とはいえ、目的地には着いた。常盤台中学校門前。
普段は警備も厳しく、普段は入ることのない場所だ。
ただし、今日は違う。
大きな看板とともにバルーンまで浮かんでいる。一種のテーマパークのような様相だ。
「ところで、何でここに来たかったの?」
「いや、まあほらその、なんだ。」
『美琴が普段どんなところで生活してるのか見たかったから』
とはいえないので
「お嬢様学校ってのがどんなものか拝見したかった次第でございますよ。」
変な感じでごまかした。
ふーん、とものすごいジト目を向けられた。
「まあ、いいわ。行きましょ。」

(まさか、コイツと一緒に常盤台の中を歩くとは思わなかったわ……)
いつもの日常的に見慣れている校舎内の風景
だが、隣にはコイツがいる。それだけで景色がすごく変わって見える気がする。
一端覧祭という特殊な環境でしかありえない、不思議な風景。
(日常的に隣を歩ける日は来るかなあ)
それはきっと、すばらしい日常なんだろうな。
ちらり、と相手の顔を見るとちょうど上条が口を開いた。
「なんつーか、やっぱり常盤台は違うな。うちの学校はお祭りみたいなものだけど、こっちはほんとに学校紹介って感じだな。」
常盤台が一端覧祭で校舎を開放するのは生徒集めが目的なのであって
お祭り騒ぎを楽しむものじゃない。よってどうしても学校の歴史やカリキュラムについて、
どういった授業方法でどのような人材を育てていくか。といった学校の文化、についての出し物ばかりだ。
「ま、せっかくだから常盤台がどんなことやってるのか勉強してったら?」
「う、勉強はご遠慮したいところです。ただでさえこれから補習が増えそうだというのに」
げんなりした顔で答えが返ってくる。
「まあ、また宿題くらい手伝ってあげるわよ。」
「……よろしくお願いします。」
(よし、予定一つゲット)
ひそかにほくそえんだ。

(これが美琴の日常の風景か)
校舎の中も格調の高さがうかがえる。正直自分は場違いだろう。
美琴はここで勉強して、友達と日々を過ごしている。
自分の日常に文句があるわけではない。むしろ恵まれていると自分では思う。
しかし、この隣の少女の日常と自分の日常とはかけ離れていることだろう。
だけどここの外では自分に突っかかってくるお嬢様。そこには二人とも同じ日常がある。
同じ日常。きっとそれはすばらしい日常なんだろう。
そんなことを考えているとカシャッと音がする。
そちらを見ると美琴が写真を撮っている。
その後軽くウィンクをして笑った。
「あっはっは。すごいまぬけな顔よアンタ。」
「む、不意打ちは卑怯じゃねーか?」
「油断しているアンタが悪い。」
「そういうことを言うと上条さんも反撃に出ますよ?」
カメラを持っている手を右手ガシっと握る。
「へっ!?」
突然の行動にあせる美琴を左手で引き寄せてカメラをこちらに向かせて
無理やりツーショットを取る。
「あっはっは、せんせーすごい顔してますよ?」
「ふ、不意打ちは卑怯よ!」
「油断している美琴せんせーがいけないのですよ。」
走り出すと美琴が追いかけてくる。カメラを気にして電撃は放ってこない。
顔が真っ赤の美琴を見て可愛いな、と思いながらも全力で逃走した。


常盤台の入り口付近。腰に幾つものボールをつけた男は毒づいていた。
(くそがっ)
一週間前、常盤台のお嬢様と諍いを起こした。
本当に肩がぶつかっただけなのだが、非常に頭にきた。
彼女はすぐに謝ったのだが、その目が気に入らなかった。
本当は彼女のおびえていたその目がかつての自分のようで腹が立った。
そのときは逃がしたが一週間探して、やっと見つけた。
それなのに知らない高校生に邪魔された。
まあいい、今日は俺のようなやつでも常盤台に入れる。
さがしてけじめをつけさせてやればいいさ。

アイツを追っかけていると携帯がなった。相手は黒子。
あの子は、こんなときに一体なんなのだ。追いかけながら電話に出る。
「お姉さま、どちらにいらっしゃいます?」
「常盤台にいるけど?」
「常盤台中学に不審な人物が入ったそうですの。」
今日は開放日なので入場のチェックは甘い。が、中の警備はかなりのもののはず。
実際私服の警備員がそこらにいる。
どうもこの人物らしい、能力はどうたらです。
という説明の後、
「くれぐれもお気をつけください。お姉さまはすぐに首を突っ込みたがりますので」
説教に続いた。うんざりと聞いていると
「上条様?」
前方でアイツに声をかけている生徒がいた。

「ああ、朝の。」
「はい、湾内絹保と申します。今朝はありがとうございました。」
丁寧にお礼を言われる。あまりの丁寧さにちょっと背中がむずがゆいくらいだ。
「気にしないでいいって。お互い怪我もなくてよかったろ。」
「それでもです。もしよろしければお礼がしたいのですが。6階で私のクラスが喫茶店をしています。よろしければ……」
のどの渇いている今、魅力的なお誘いなのだが、美琴の素性がばれてしまう可能性が高い。
仕方ないが断ろうとしたら電話が鳴った。
相手は御坂美琴。なぜすぐ近くにいるのに電話なのだろう、と思いながらもでてみると
「あ、ごめんちょっと急用なんだ……黒子から電話が着てね。すこし時間つぶしてもらってていいかな……」
なんか弱弱しい声だ。
「おい、どうした?なんかあったのか?」
「うん、ちょっとこっちの事情。ごめん。すぐもどるから。」
唐突に電話が切れた。一体何があったんだ?
「あの、どうかなさいましたか?」
「いや、連れがな、すぐ戻るから時間をつぶしててほしいってな。」
「それなら、なおさら私たちのところで時間をつぶしていってください。」
うーん、どうしよう。断る理由がなくなってしまった。
美琴が気になる。しかし、湾内絹穂と名乗った少女は上条の手を引っ張り、
エレベーターの昇りのボタンを押してしまった。

「はあ……私って最低だ……」
ものすごい自己嫌悪だ。今回に限って言えばアイツは本当に何も悪くない。
お礼を言われていただけなのだ。女の子に。
(だけど)
ただ、自分以外の女の子と楽しそうにしゃべっている。それを見ただけで胸が張り裂けそうに痛かった。
私は彼女に対して何も言うことも出来ない。まだ私はアイツの特別でもなんでもないから。
もし、私と同じでアイツの特別になりたい子がいて、それで頑張っているなら、それをとめることなんて出来ない。
ふと撮った写真を見る。なんだかんだで笑っている自分とアイツ。
けど、この自分の位置に誰がいてもおかしくないのだ。
おかしくないけど……
(私以外の誰かが、そこにいるのがものすごく嫌……)
自分はこんなにも心が醜い人間だっただろうか。
さっきの電話だって直接会えばものすごい文句をアイツに言っていたと思う。
電話だからかろうじて、本当にかろうじて自分を押さえられたと思う。
涙がこぼれそうだ。気持ちを落ち着かせるために少し校舎の外にでて
冷たい空気でも浴びてこよう。
でもなるべく……早く戻ろう。

エレベーターの中、上条当麻は一人考え込んでいた。
(美琴の様子がおかしい)
心配だ。やはり探しにいこう。
その時ちょうどエレベーターが止まった。6階です。という機械的な音声とともに扉が開く。
彼女はエレベーターの開のボタンを押しながらこちらを見ている。
「なあ、悪いんだけど」
やっぱり相方を探しにいく、と続けたかったのだがその声は柄の悪い声にかき消された

エレベーターから出ると、男が女の子に掴み掛っていた。
「おい!やめろ!嫌がってるじゃねえか!」
誰かと認識するよりも早く、怒鳴りかかると
「あぁ!?てめえは朝の!」
そりゃ見た顔だった。今朝今後ろで震えてる女の子に絡んでいた男じゃないか。
「てめえはまだ懲りてないのか!」
男は女の子から手を離し、廊下につばを吐いた。
「人の居場所を尋ねてただけだ。まあやっと見つけたけどな。」
自分の後ろの少女に視線を送っている。ひっと小さな悲鳴が聞こえてくる。
「まあいいや、てめえもむかつくし、とりあえずまとめて吹っ飛べよ」

腰のボールを投げつける。それは突然かなりの大きさまで膨れ上がって破裂した。
自分の能力は空気を空間に送り込むこと。ちょうど自転車の空気入れのように。
押し込められていた空気が破裂する。中に小石などを入れて殺傷力もあげてあるのだが
無傷の相手を見て舌打ちをする。
「理由はわからねえがこれはきかねえのかよ。」
相手は小刻みに震えている。それは恐怖で震えているのでないことくらいわかる。
怒っているようだ。ほんと、とことんむかつくやつだ。
なんで人のためにがんばってるんだよ。他人は傷つけるためにだけいるものだろうが。

(この野郎!)
上条は怒っていた。ここは常盤台中学だ。つまり
美琴の日常の中心の場所。
自分の守るべき人の大切な場所。
もう一度自分の右手を強く握り締め目の前の男に向かって走り出す。
その瞬間、目の前の男はボールを上条の頭の上、つまり天井に向かって投げた。
破裂音が響き渡る。
そして割れた蛍光灯のかけらや、天井の瓦礫が

湾内絹保の上に降り注いだ。

「!」
咄嗟に彼女を思いっきり突き飛ばした。
上からガラスのかけらや瓦礫が降り注ぐ。
それ自体はたいしたことなかったが、
それよりも咄嗟に彼女を突き飛ばしたため、相手に後ろを見せてしまった。
もう一度破裂音がして上条は吹っ飛ばされた。

「上条様!」
急いで駆け寄よろうとしたがそこで肩をつかまれた。
そこにはニヤニヤと下品な笑みを浮かべた男がたっていた
男はそのまま、自分を連れてどこかへ行こうとしているようだ。
最後の抵抗として、足でブレーキをかけるが、そのまま引きずられる。
怖くて目をつぶる。
その直後、鈍い音がした。
一瞬、殴られたのかと思ったがそうじゃなかった。恐る恐る目を開けると
ツンツン頭の高校生が隣に立っていて、男が向こうに倒れていた。

(くそっ、校舎を少し壊させちまった……)
それだけでなんともいえない感情が心からわきあがってくる。
生徒に被害が出ることだけはなんとしても防がないと!

(いてえ、くそっ、いてえ!)
久しぶりに殴られた。能力が使えるようになってからはこんなことなかったのに。
手加減なんてするんじゃなかった。
今度は最大威力でぶっ飛ばしてやる!
腰の中で、一番ゴムのきついボールに空気を送り込む。
それを思いっきり投げつけた。
が、相手はそのボールに向かって突っ込んできた。
そして、何事もないかのようにそれを走りながら右手で払いのける。
それだけでボールが元の大きさに戻る。
自分の顔が驚愕に歪むのがわかる。
「な、なんなんだよほんとにてめえは!その右手はっ!」

上条は右手を握り締める。
この右手?これは……
「この右手は……大切なものを守るためのものだ!」
全力で殴りつけると、相手はさっき爆風を食らった上条も真っ青なほどの勢いで吹っ飛んでいった。

「上条様!お怪我は!?」
目の前の高校生に呼びかける。そこで返ってきた返事は
「ああ、君大丈夫か?それと早くアイツを通報しないと……」
何を言ってるんでしょう、この人は。どう見ても自分より怪我がひどい。
「そ、それよりまずはお怪我の手当てを!」
「ああ、大丈夫。かみじょーさんは頑丈なんですよ…!」
上条様の顔が急に厳しくなる。ふと後ろを見ると男が地面に向かって
ボールを構えていた。上条様が私をかばうように前に出ると男は
男自身の足元に向かってボールを投げつけた。
視界が埋め尽くされるほどに白い粉が舞う。
視界が閉ざされ、動けないでいるとチーンという音が聞こえる。
「エレベーター!?」
言うが早いか、上条様はエレベーターに向かって走り始めたが、もう扉は閉まっていた。
エレベータの階数を知らせるランプが左に動き、1Fで止まる。
直後
「悪い!また後で!」
上条様はそう叫ぶと窓に向かって走り始めた。
そして、そのまま窓から飛び出した。
「!ここ6階!」
直後バキバキッと木の枝が折れる音がした。

窓から飛び出し、うまく(?)木まで届いた。後は落下中にこまごまと枝をつかみ落下速度を殺す。
かなり速度は落ちたもののそのまま地面にたたきつけられる。
背中から全身にしびれるような感覚が走るが気にしてはいられない。
(あいつは!?)
辺りを見回すと、校舎を挟んで後ろ側に、校庭へ走っていく一人の男。
腰のボールが見えた。間違いなく奴だ。
アイツが一目散に向かっていく先には何かイベントがあるのか、
沢山の学生が集まっていた。

御坂美琴は変装したまま、校庭の周りをとぼとぼと歩いていた。
(アイツ、心配してるかな。)
深いため息をつく。さっきから何度も戻ろうと思った。
けど、戻ったときアイツが女の子と喋っていたら、と思うとどうしても踏ん切りがつかない。
それを繰り返すうちに結構な時間がたってしまった。
ふと校庭の真ん中を見ると大きなバルーンに空気を入れ始めたところのようだ。
空にでも飛ばすのだろうか。
しかし変だ。けっこう膨らんできたのに空に浮かんでいかない?
何かあるのかと思いその中心へと走り出した。

(やっぱり世界は強い奴の味方なんだよ)
ほくそえんだ。ただ人ごみにまぎれて逃げようとしたらその真ん中あたりにバルーンを見つけたときは。
バルーンが浮くのは空気が熱せられて空気を軽くする必要がある。
つまり、自分の能力で空気だけを送り込めば地面の上で破裂する。
この大きさだ、かなり被害が出るだろう。
もう最初の目的もどうでもいい、さっきのむかつく高校生に一泡ふかせられるなら他の事なんてどうでもいい。
そこは立ち入り禁止だという声が聞こえたが無視した。
空気を入れていく。かなりの勢いで膨らむバルーンにむしろ興味深そうに寄ってくる奴ら。
もうすぐ怪我するとも知らないで。

(あれは)
遠目から見たのでよくわからないが、
先ほど黒子から注意された人間によく似ている奴がバルーンのそばにいた。
その手元のあたりのバルーンが一番膨らんでいる気がする。
(そういえば)
その注意された人間の能力は空気を送り込む、エアーポンプ?だっけ?
ってことは!
あれをこんな人ごみで破裂させる気?
コインを手に取り急いで超電磁砲の射程まで走る。所詮はバルーンだ。当てれば大きく穴が開く。
大きく一気に穴が開けば空気は均等に外に漏れるから爆風もない。
と、そこで気づく。人ごみの中だということに。
(バルーンの向こうに人がいたら?)
バルーンの向こう側を見る。
沢山の人。そして
その人ごみを掻き分けてツンツンした頭が走ってくるのが見えた。
その瞬間、美琴は、少年に向けて右手を突き出した。

バルーンの端に奴を見つけた。まだ上条はバルーンまで距離がある。
なのに奴はバルーンから離れた。さっきのボールみたいに勝手に破裂するのか?
もし破裂した場合周りの人たちは?幻想殺しは触れたところしか打ち消せない。
(間に合うのか?破裂する前に)
バルーンまで走る。その時、向こうから手を伸ばす少女が見えた。
その瞬間、上条はその少女に向かって右手を突き出した。

直後、バルーンがはじけて飛んで、少年と少女を赤褐色の閃光が繋いだ。

男はその光景を呆然と見ていた。
あの二人は知り合いなのだろうか、息が合っているなんてものじゃない。
何で他人を信用できるんだ?
呆然としているところを、取り囲まれた。どうやら常盤台の警備員らしい。
抵抗する気力もなく、そのまま連行された。


突然超電磁砲がバルーンを打ち抜いた。それだけでなく、それを打ち消した人がいる。
そのありえない光景にほとんどの人の視線はそこに集中していた。
だけど、美琴はそんなことにかまっていられなかった。
「アンタ、何やってるの!」
近寄ったらはっきりとわかる、上条当麻は傷だらけなのだ。
「あー、ごめんな。もっと早くお前を探しに行きたかったんだけどさ。」
それだけ言うと、上条当麻は地面に倒れこんだ。


「いつもに比べればたいしたことないよ。今日のうちに退院できるんじゃないかな?」
リアルゲコ太の医者にそういわれて安堵したがいつもはどんな怪我をしてるのか。これが大したことないとか。
今はスースーと寝息を立てる目の前の高校生をみている。
「美琴…」
名前を呼ばれてびっくりとする。が相変わらずよく寝ている。
寝言だったようだ。そういえば今日名前を呼ばれたのは初めてだ。
常盤台の中だからコイツも名前を呼ばないようにしていたみたいだし。
「美琴、お前なあ……」
また寝言だ。どんな夢を見ているのかちょっと気になる。
「アンタの夢では私はどんな子?」
自然と笑みがこぼれる。コイツの寝顔は思ったより子供っぽかった。
「えい。」
頬を突いてみる。なんだか眉間にしわを寄せて呻いていた。
コイツは変わらない。自分が知っているころから何にも変わらない。
いつだって自分より人が心配で困ってたら無理矢理にでも助けてあげて。
私の知ってる上条当麻はそういう奴なんだ。
「……これ以上女の子を助けるのは少し手加減してほしいけどね。」
「俺はお前を助けたいんだよ」
突然の返事。けど起きてはいない。また寝言のようだ。
「ほんとにアンタは……」
頬が赤くなってくのを感じた。

気がつくと病院だった。夕焼けで独特の真っ赤な日差しが病室を照らす。
「あ、気がついた?」
窓から外を見ていた美琴も上条が起きたことに気づいたようだ。
「あー、俺気を失っちゃったのか。悪い。もう夕方じゃねーか。」
申し訳なさそうに言う。
「あ、気にしないで。どうせ常盤台もちょっとした騒ぎになってたし、ちょっとほとぼり冷めるまで、ね。」
たしかに敷地内で超電磁砲を撃ったらだれだかばれもする。
少しの沈黙の後、
「ごめん」
美琴が突然謝ってきた。
「どうした?お前があやまることなんてなんもねーだろ。」
「ううん、私が勝手に離れてなければ、きっとアンタこんな怪我してないわよ。」
美琴は外を向いているため、表情が見えない。
また沈黙。
「なあ、美琴。」
声をかける。ゆっくりと、美琴がこっちを向く。
夕日に照らされて赤い顔はどこか儚くみえた。
「心配かけてごめんな。」
上条は続ける。
「だから、おあいこだ。お互い様ってことでさ。」

笑っていた。そんなことを言って。
つられて笑ってしまう。
なんだろう。コイツには本当にかなわない。そしてそれが嫌じゃない。
「そーね。アンタを心配した私が馬鹿だったわー」
「いや、そこまでいわんでも。」
いつもの二人の雰囲気にもどる。
でも、また少し二人の距離は近づいた。

「あ、もうこんな時間か、美琴、門限は大丈夫か?」
気づけばあたりが暗い。上条はまだ着替えていない。
今日中に退院とはいえまだ無理が出来ないのだ。
美琴は少し身だしなみを直すと出口に向かっていった。そして
「またね、当麻。」
「ああ、またな美琴……?」
違和感に上条が首をかしげる。
くすっと美琴が笑った気がした。

「黒子?ちょっと部屋まで連れて行ってほしいんだけど。」
寮の前で美琴はルームメイトに電話した。
部屋にテレポートで連れて行ってもらうためだ。なんせ私服の上に門限破りだ。寮監にばれたらまずい。
いつも自分が電話をかけるとすごいハイテンションで電話にでる、はずなのだが
「……お姉さま……」
ものすごいローテンションだ。何があったのだろう。
「ど、どうしたの?黒子。」
「いえ……とりあえずお迎えに上がりますの……」
と、すぐに目の前に黒子が現れる。しかし、表情が怖い。
というか知らない人が今の黒子を見たらきっと幽霊と勘違いする。テレポートもするし。

とりあえず部屋には戻ってこれた。着替えをしていると食堂が騒がしい。
「?」
気になってちょっと様子を見に行くと、この時間しては非常に多くの女子中学生がいた。
異様なのは、みんな壁を見ていることだ。何か張り出されているのか?
近づいてみる。壁になっている人の後ろまで着いたとき、
だれかがこちらに気づく。その瞬間黄色い声が上がる。
それにつられてどんどんキャーキャーという声が響く。ものすごいコーラスで。
と、そこで美琴の目にも一枚の写真が映った。
それは昼頃例の、超電磁砲を撃った瞬間の写真だった。
それならばいい、その下にタイトルらしきプレートが張ってあった。文字は

「運命の超電磁砲(赤い糸) 撮影者:土御門舞夏」

とあった。
土御門に呪いの言葉を吐きながら、とりあえず美琴は全力で逃げた。

翌日、上条は自分のクラスの出し物、執事喫茶の準備をしていた。
怪我していても執事はやるらしい。顔に怪我がなかったのが幸いなのか不幸なのか。
もうすぐ開店というところで、扉が開いた。入ってきたのは我らが担任、小萌先生だ。
いつも可愛らしいはずの顔がなんか引きつっている。開口一発
「上条ちゃん?なにしたんですか?」
「?」
わけがわからない。小萌先生はこっちこい、という動作をする。
相変わらず頭に?マークを出しながら上条は小萌先生に近づく。
そして、小萌先生は少し扉を開いた。
そこには常盤台中学の制服を着た行列が出来ていた。
先頭には昨日助けた女の子。こちらに気づいたらしく可愛らしく礼をする。
顔が引きつる。後ろを振り返らなくてもわかるクラスの殺気。
とりあえず上条は逃げ出した。でも逃げられなかった。

いつもの言葉が学校に響き渡る。
一端覧祭三日目の開幕だった。


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