美琴先生 1 予告編
「―――と、いうわけで教育実習生の方を紹介します。
野郎共はもうちょっと落ち着いてください。鼻息が荒すぎですよ。静かに静かに。どーどー。
今回着ているのはあの有名な常盤台中学のお嬢様なんですから、怖い思いとかさせたら先生怒りますからねー」
(教育実習って……研修みたいなもんだっけ?)
教員免許状を取得するために必要なんだっけかなー、とまったく興味のない上条は一時限目の英語の小テストに
備えて英単語や文法の暗記中である。
「ではではー……入っちゃってください!」
がらっと音を立てて入り口の引き戸が開いた。
教壇に向かって歩く革靴の足音が、静まり返った教室に響き渡った。
まったく目を向けていない上条は口の中で英単語の発音を繰り返している。
(……妙に静かだな)
ふと、こんなことが思い浮かんだ。
その教育実習生とやらが年齢不詳の五和だったりとか顔を変えた元錬金術師であったりとか、七三分けの上方に
スーツの上からでもわかる筋肉ムキムキのアックアとか美術の先生とかでシェリーが現れる、なんていうことが。
(はっはっは……そんな冗談みたいな話ある訳ねぇけどありそうだから頼むから冗談でも勘弁してくれ……)
黒板にチョークで名前が書かれているらしく、硬い音と擦れる音が続く。
やがて、再び静寂が訪れると月詠小萌が紹介を始めた。
「はいはーい。この方が教育実習生の“御坂美琴先生”です。
なんと!超能力者(レベル5)が第三位の『超電磁砲(レールガン)』なのですよーっ!!」
「初めまして。御坂―――」
「ありえねぇっ!美琴先生?リアル美琴先生ですか!?何が起こってんだ!さっぱりわからねぇよ!
鈴科百合子とかエロ教師オリアナ先生とかそんな―――」
「月詠先生。チョークをお借りしますね」
「どーぞどーぞ」
ドパァァンッ!! という派手な音を立てて、席を立ち上がった上条の額でチョークが炸裂した。
「ほほう。御坂さん、中々やりますね。あれだけ情け容赦なく投げられれば先生の素質がありますよ」
「ど……どんな素質だよ」
『美琴先生』