とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ とある二人の意思疎通 Oath of two people



「あー…不幸だぁぁぁぁぁ」
皆が認める不幸少年上条当麻はこの一言――つまり『不幸』と呟くことが日課になっていた。
本人いわく、『不幸だ』と呟かないとやってられるかという状態らしい。

「何故上条さんだけがこんな目に…私めがなにかしましたでしょうか?神様ぁぁぁー」
ちなみに現在絶賛逃亡中なわけであるのだが、
「アンタ止まりなさいよー!!」
ちなみに追いかけ役は学園都市に七人しかいないレベル5の一人である。
「なんで会ってそうそう追いかけっこでせうかー!?」
「あんたが・・・あたしを無視するからでしょうが―!!」
ズガァァンと辺り一面に電撃の槍が発射されたのだが幸いここは人気のない河原なので被害は上条にしかない。
「っ…あぶねーだろうがぁ!!」
「あんたねぇ・・・そう言いつつも無傷じゃない!なんなのよその右手!!」
実は上条の不幸体質はこの右手――通称幻想殺し<イマジンブレイカー>と呼ばれる代物のせいである。
この右手は異能の力なら例え学園都市の第一位を相手にしても、魔術師を相手にしても、
現在目の前で怒りを露わにしている御坂美琴もとい学園都市第三位超電磁砲<レールガン>相手でもこの右手があればそこそこ通用する代物なのだ。
「無事だったらいいってレベルじゃねーだろーがぁ!!危うく感電死するとこだったぞ!!」
「あー無事だったんだからいいじゃない、まったく…人の気も知らないで…」
「?、最後のほう何か言ったか?」
「な、何も言ってないわよバカ!!」
ズガンと上条のすぐ隣に電撃の槍が突き刺さる。
「わ、わかったから、それよりさ」
と上条は自らの危険を悟り話題を変える。

「俺になんか用があんのか?」
上条はやれやれといった感じに美琴に尋ねる。
「え!?えっと…その…ア、アンタの右手貸しなさい!」
「…はい?…」
上条はきょとんとしている。死に物狂いで学園都市を駆け巡り追いかけられていた理由がこの右手である。
「あー、もしかして私の最大出力の電撃を受けてみなさい!的な頼みでせうか?それならそうと…」
上条は勝手に決め付けると一定の距離をとり、
「あーいいぞ、準備OKだ。さっバッチこーい!!」
上条は野球の捕手の格好で美琴を待ち受ける。
「違うわよド馬鹿!!ちょっと相性占いするだけよ!!あっ…」
つい熱くなりすぎて今回の目的をバラしてしまう。
「あっ、あのね…その別にアンタがどうってわけじゃないのよ??その何て言うか――」
「なーんだ、そんなことかよ。ほら、これでいいのか??」
上条は美琴の前に右手を差し出す。上条の右手はボロボロだった。いつ着いたのかもわからない傷がたくさんありまるで何十年も使い古したようだった。
「ちょっと色々あって見苦しいんだが勘弁してくれよな」
上条は笑いながら美琴に告げるが――
「なんでアンタの右手そんなにボロボロなのよ・・・」
美琴は相性占いのことなど忘れて呟いた。
「い、いやー今さっき美琴センセーの電撃を防いでこんなことに――」
「嘘をつくな!!」
「えっ…となんのことでせうか??上条さんは別に何も隠してなんかいませんのことよ??」
「へーそうなんだ…何もなかったんだ…ハハハ…」
「ごめんね、なんか余計なこと言ったみたいでさ」
「……………」
上条は何も答えなかった。――いや、答えなられなかったのだ。
「今日は何か色々ゴメン…でもさ、アンタにはどんな理由があっても傷ついてほしくないんだ。」
美琴は今までの思いを告げる覚悟ができた。
「だってアンタの事私は――」
「御坂!!!」
上条は美琴の名前を叫ぶと少し間をおいて、
「あのさ…その…何ていうか…悪い」
「え………?」
「多分御坂が今言おうとしてることが分かった。そして俺はそれに…答えられない。」
「ど、どうして??私じゃ駄目なの??」
美琴はもう何も考えられなかった。まさかきちんと思いを告げる前に相手から拒絶されるとは夢にも思わなかったからだ。
「いや、お前のことが嫌いってわけでもない…でもさお前も知ってる通り俺にはやらなきゃならないことがある。それはとても時間がかかるし無事じゃ済まないかもしれない。」
上条は一呼吸置いて話し出した。
「もしかしたらお前の…学園都市の敵にだってなるかもしれない。だからゴメン。でも気持ちはすげー嬉しかった。」
上条の目からは涙が流れていた。
「ハハ…不幸だよな。常盤台のお嬢様からの告白を蹴っちまうなんてな」
美琴は何も答えない。
「本当ゴメン…空気も悪くしちまったしこれで俺は失礼するよ。あっ…まぁこんなこと言っても意味ねぇかもしんないけどさ、もし俺がすべてを片づけて戻ってきたらさ、聞いてほしい話がある。それだけだじゃあな美琴――
上条はその場を走り去って行く。まるでもう手の届かないところに行ってしまうかのように
「待ってるからーー!!!だから…無事で帰ってきて…当麻…」
最後のつぶやきは相手にはもう聞こえていないだろう。それでも美琴は満足した。
「ハハ…私も馬鹿だなぁ…」
美琴はそう呟くとその場を後にした。

二人の思いは疎通した。後は二人の運次第。そうすればきっと――二人の願いは届くはず。


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