とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part2

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―――とある寮の一室

「当麻ー、運ぶの手伝ってー」

台所から美琴の声がする。
ぼんやりとベッドに腰掛け、天気予報のキャスターが昨日からの雨は明日まで続くぞー冷え込むぞー寒いぞー、なんて言ってるのを見ていた上条は、はいよー、と美琴のもとへ向かった。

「じゃーん、今晩はオムライス♪」

暖かみのあるベージュのエプロン姿で皿を差し出す美琴の姿に、上条は鼓動が高まるのを感じる。
見慣れた姿ではあるが、だからと言って愛しい、という気持ちが減る理由にはならない。

「ありがとな」
「ふふっ、どう致しまして」 

いつものやりとり。
それだけで、心をくすぐられるような幸福感で胸がいっぱいになる。




「あれ、お前あんまり食べないのか?」

夕飯を食べ終えた上条が隣りを見ると、美琴のオムライスは半分も減っていない。

「んー…あんまり食欲がね」
「大丈夫か?…ってお前、熱あるんじゃないか!?」

よく見ると、困った表情を浮かべている美琴の顔はほんのりと赤くなっている。
上条は自分の右手を美琴の額にあてる。

「…熱あるな。風邪か?」
「大丈夫よー。別にこれくらいちょっと寝れば…くしゅん!」
「ほれみろ。お前、朝は大丈夫だったのか?」
「うー…まぁ、少し…」
「ったく…無理するなよ。うちに来てる場合じゃないだろ」

口調は軽いが、上条は心の中で自分を責めていた。
朝から調子が悪い美琴に気付かなかったし、それが悪化したのは、恐らく美琴が自分の家に来てくれたからだ。
しかも、冷たい雨の中。

「はぁ…」

上条は一つため息をつき、美琴、と恋人の名前を呼んだ。

「なぁに?」
「泊まってくか?」

ぱちくりと目をしばたたかせる美琴。
しばらくの間上条を見つめ―――

「いいの?」
「この寒い中を歩いて帰ったら、なおさら悪くなるだろ」

ぱちくりしていた目を軽く閉じ、美琴は上条の腰へ手を回し、身体を預けた。
急な重みに、上条は驚きながらもしっかりと受け止め、思ったより細く軽い少女を優しく抱き締めた。

「うれしいな」

上条の腕に包まれながら美琴が歌うように言葉を紡ぐ。

「初めてのお泊まりだ」




ベッドに美琴を寝かせ、上条はそのベッドの脇に腰を下ろしていた。
美琴の額には古くより伝わる対風邪っぴきアイテム、濡れタオルがおいてある。
横になっただけでも少し楽になったようだが、相変わらず顔は赤く染まっている。
なのに―――

「えへへ~」

熱のためか少しうるんだ目は、しかし喜びの感情を表しているように見えた。
掛け布団を口許にまで上げて、上条を柔らかい表情で見つめている。

「当麻といっしょ~」

上目遣いで甘えてくる美琴にどきっとした恥ずかしさから、上条は目を逸らしてしまう。

「病人はさっさと寝ろ」

自分の動揺をごまかすかのように、手元にあったクッションを軽く投げ付ける。
しかし、クッションが埃っぽかったのか、美琴がごほんごほんと咳き込んでしまった。
「―!?美琴、すまん!大丈夫か!?」

慌てて謝ると、美琴はぜいぜいとした息をして、何かを言おうとしていた。
水が飲みたいのか、病人相手に申し訳ないことをしてしまった、と上条は美琴の言葉がよく聞こえるように耳を寄せた。



―――ちゅっ



上条の頬に柔らかな感触が残る。



数秒の思考停止を経て、ハッとした上条が美琴の顔を見る。


「―――おかえし」


熱が、頬から全身へ広がっていった。






とある少女のういういdays2―つづく?―


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