―――とある寮の一室
この部屋の主であるツンツン頭の少年と、この部屋の主の恋人である少女はベッドに並んで座り、食後のテレビを見ていた。
中途半端な時間帯であったためか、ちょっとしたニュースや天気予報が流れるだけの退屈な番組で、少女―御坂美琴―は部屋のあちこちに視線をさまよわせていた。
中途半端な時間帯であったためか、ちょっとしたニュースや天気予報が流れるだけの退屈な番組で、少女―御坂美琴―は部屋のあちこちに視線をさまよわせていた。
「あら?」
ふとベッドの脇からリボンのようなものがチラチラと見えるのに気が付いた。
美琴は、体をひねってリボン(とそれが付いているもの)を見ようとするが、突然少年―上条当麻―に止められた。
美琴は、体をひねってリボン(とそれが付いているもの)を見ようとするが、突然少年―上条当麻―に止められた。
「お、おい美琴ちょいと待っ…!」
慌てた様子に好奇心が喚起される。
ほとんど同居人であるがゆえのジャイアニズムを発揮し、レベル5の電撃使いは音速の3倍のスピード(本人イメージ)でそのブツを掴みとった。
いかにもデパートでプレゼント用の梱包をしてもらいました、という見た目の袋は軽く、中身も柔らかそうだ。
ほとんど同居人であるがゆえのジャイアニズムを発揮し、レベル5の電撃使いは音速の3倍のスピード(本人イメージ)でそのブツを掴みとった。
いかにもデパートでプレゼント用の梱包をしてもらいました、という見た目の袋は軽く、中身も柔らかそうだ。
「何これ、誰かにプレゼント?」
「ま、まぁな…」
「ま、まぁな…」
歯切れの悪い返事に、ピクッと美琴のあるセンサーが反応した。
「ほほぅ…アンタはまたどなたに贈呈物攻撃をなさるおつもりで…?」
「ちょ、ちょっと待て美琴!何かあらぬ誤解があるぞ!ストップビリビリ!ノーモアバチバチ!」
「じゃあ、さっさと吐きなさい!これは一体何なの!?」
久し振りに見る少女の怒号にビクビクしつつ、上条は仄かに顔を赤らめて横に目を逸らした。
「ちょ、ちょっと待て美琴!何かあらぬ誤解があるぞ!ストップビリビリ!ノーモアバチバチ!」
「じゃあ、さっさと吐きなさい!これは一体何なの!?」
久し振りに見る少女の怒号にビクビクしつつ、上条は仄かに顔を赤らめて横に目を逸らした。
「…プレゼントだよ、お前への」
「…え?」
「…え?」
予想外の返答に勢いを殺がれる美琴。
「私に?だって、特に、き、記念日ってわけでもないし、隠す必要だって…」
「あー、すぐ渡すつもりじゃなかったんだよ」
「あー、すぐ渡すつもりじゃなかったんだよ」
たった今見つかっちゃったけどな、と上条はため息をつく。
「あ、開けてもいい…?」
「仕方ねぇな。元々お前に渡すつもりだったし」
「ありがと!」
「仕方ねぇな。元々お前に渡すつもりだったし」
「ありがと!」
先ほどのビリビリモードが嘘のように、美琴は満面の笑みを浮かべている。
包装紙を全く破ることなくテープを剥がして中身を取り出すのは、さすが常磐台のお嬢様といったところか。
包装紙を全く破ることなくテープを剥がして中身を取り出すのは、さすが常磐台のお嬢様といったところか。
「これ…パジャマ…?」
袋の中身を両手で広げる美琴。
それは淡いオレンジを基調とした、肌触りのよいパジャマであった。
控え目ではあるが、ところどころに小さなフリルが付いているのが可愛らしい。
それは淡いオレンジを基調とした、肌触りのよいパジャマであった。
控え目ではあるが、ところどころに小さなフリルが付いているのが可愛らしい。
「まぁ…何て言うか、安かったからな」
相変わらず彼は美琴から視線を逸らし、その顔からは照れの表情が見て取れる。
喜びでいっぱいの美琴であったが、その上条の様子を見ていたずら心が芽生えてきた。
喜びでいっぱいの美琴であったが、その上条の様子を見ていたずら心が芽生えてきた。
「あれあれ~、当麻さんは、お泊まり反対じゃなかったんですか~?」
「まぁ…たまには、と思ってな」
「この間お泊まりしたの、嬉しかったんでしょー」
「うっせえな。…悪いかよ」
「えへへ~えへへ~」
「まぁ…たまには、と思ってな」
「この間お泊まりしたの、嬉しかったんでしょー」
「うっせえな。…悪いかよ」
「えへへ~えへへ~」
口許を緩ませたまま、美琴は上条の頭をなでる。
いつもとは逆の関係に、上条はぶすーっと口をとがらせる。
いつもとは逆の関係に、上条はぶすーっと口をとがらせる。
「…なんだよ。」
「すーきっ」
「すーきっ」
全身で上条への好意を表すように、美琴は少年の胸へと飛び込んだ。
「お前、だいぶ変わったよな」
胸にダイブしてきた愛らしい彼女の頭をなでていた上条は、ふと思ったことを口に出す。
「随分と自分の気持ちをまっすぐ出すようになった」
「んー、そうね。楽になるわよ。それに、誤魔化してばかりいたら、こうして心に浮かんできてくれた気持ちに失礼だもの」
「んー、そうね。楽になるわよ。それに、誤魔化してばかりいたら、こうして心に浮かんできてくれた気持ちに失礼だもの」
美琴は、上条の言葉にまっすぐ返事をするように顔を上げ、その目を閉じて胸に手を当てた。
それを見て上条は、祈りのようだな、なんて思う。
それを見て上条は、祈りのようだな、なんて思う。
「強いな。さすが常磐台のエース」
そう言って再び、美琴の頭をなでる。
しかし、美琴はいつものように目を閉じて甘えてくることはしなかった。
再びまっすぐな目をして、上条の顔を見つめる。
しかし、美琴はいつものように目を閉じて甘えてくることはしなかった。
再びまっすぐな目をして、上条の顔を見つめる。
「違うわよ。これは、ある人に教わったの。私の大切な想い出」
「ある人?誰だ?」
「ある人?誰だ?」
いつもとは違う美琴の仕草に加え、含みのある言葉に、上条の胸の中にわずかなもやもやが広がる。
「分かんないの?」
「あぁ、俺の知ってる人か?」
「そうよー。きっとよーく知ってる人」
「なんだその言い方」
「あ、じゃあヒントね。男の人です!」
「あぁ、俺の知ってる人か?」
「そうよー。きっとよーく知ってる人」
「なんだその言い方」
「あ、じゃあヒントね。男の人です!」
なぜか美琴はニヤニヤとした表情を浮かべる。
さっきまで真剣な目をしてたくせに、それがまた上条にはつまらない。
さっきまで真剣な目をしてたくせに、それがまた上条にはつまらない。
「なんだそれ…全然分からねぇ、降参だ降参」
「うふふ、分かるまでなーいしょ」
「うふふ、分かるまでなーいしょ」
美琴は上条の首に手を回して、頭をすり寄せた。
今日は何だか関係がいつもとは逆だ。
今日は何だか関係がいつもとは逆だ。
「お前、楽しそうだな」
「大切な想い出だもの。ねぇ当麻…?」
「ん?」
「これ…今日使ってもいい…?」
「大切な想い出だもの。ねぇ当麻…?」
「ん?」
「これ…今日使ってもいい…?」
美琴はもらったばかりのパジャマを広げる。
早速かよ、と上条は思うが、心のもやもやが晴れるまで、まだもう少し話をしたい気持ちもある。
早速かよ、と上条は思うが、心のもやもやが晴れるまで、まだもう少し話をしたい気持ちもある。
「まぁ、いいぞ。寮は大丈夫なのか?」
「有能な人物には有能な秘書がいるものよ」
「そういうものですか」
「そういうものなのです」
「有能な人物には有能な秘書がいるものよ」
「そういうものですか」
「そういうものなのです」
お前の側にいるのは、百合脳な秘書じゃねぇか、と言葉にはせずツッコミを入れたのは秘密だ。
「ふー、いいお風呂でしたー」
「おかえり、よく似合ってるじゃないか」
「おかえり、よく似合ってるじゃないか」
先に入浴を済ませていた上条が美琴を迎える。
風呂上がりということで、ややピンクがかった肌はみずみずしく、茶色い髪と淡いオレンジのパジャマとでバランスよく調和しており、上条は鼓動が高まるのを感じた。
美琴にはああ言ったものの、あのパジャマは、上条がセブンスミストというデパートで、顔から火が出そうになりながら一生懸命に選んだものだった。
なので、実際に美琴が着てくれて、さらにそれが予想以上に似合っているのを見て上条はドキドキ真っ最中なのだ。
風呂上がりということで、ややピンクがかった肌はみずみずしく、茶色い髪と淡いオレンジのパジャマとでバランスよく調和しており、上条は鼓動が高まるのを感じた。
美琴にはああ言ったものの、あのパジャマは、上条がセブンスミストというデパートで、顔から火が出そうになりながら一生懸命に選んだものだった。
なので、実際に美琴が着てくれて、さらにそれが予想以上に似合っているのを見て上条はドキドキ真っ最中なのだ。
「ふぁぁ…」
「っておい!人が珍しく服装を褒めてるのにスルーで欠伸ですか、美琴さん!?」
「ごめんごめん…なんだか体が温まって眠くなっちゃった…」
「っておい!人が珍しく服装を褒めてるのにスルーで欠伸ですか、美琴さん!?」
「ごめんごめん…なんだか体が温まって眠くなっちゃった…」
見ると、少女の目はややトロンとしていて、今なら立ったままでも寝られるぜ、と言われても納得できる。
「確かに、もう遅いし寝るか」
「…そう言いながら何故アンタは風呂場へ行こうとするのかしら?」
「いや…いっつもこう…ってストップ!寝ぼけまなこで照準あやふやの雷撃は控えて下さい!電化製品が死ぬ!」
「アーンーターはー!恋人が泊まってるのに、なんでそういうことが出来るのかしら!?第一、お風呂場びしょびしょでしょーが」
「むぅ…一応、紳士の上条さんは、乙女の寝る部屋で一緒に…というのはちょっと控えたいのですよ」
「恋人同士で一緒に寝るのなんて、別におかしくないじゃない!」
「…そう言いながら何故アンタは風呂場へ行こうとするのかしら?」
「いや…いっつもこう…ってストップ!寝ぼけまなこで照準あやふやの雷撃は控えて下さい!電化製品が死ぬ!」
「アーンーターはー!恋人が泊まってるのに、なんでそういうことが出来るのかしら!?第一、お風呂場びしょびしょでしょーが」
「むぅ…一応、紳士の上条さんは、乙女の寝る部屋で一緒に…というのはちょっと控えたいのですよ」
「恋人同士で一緒に寝るのなんて、別におかしくないじゃない!」
いつもの彼女なら、恥ずかしくて赤面しそうなセリフだが、恐らくこれは怒りのパワーの成せる業である。
「それでもだ。美琴は中学生だし、俺だってまだ高校生だ。やっぱり守るべき常識というか規律はあると思うんだ」
美琴の勢いに負けじと、まっすぐな目で返す上条。
こうなった上条は、なかなか折れない。
まぁ、中学生を部屋に泊めている時点でどうなんだ…という意見もあるのだが。
こうなった上条は、なかなか折れない。
まぁ、中学生を部屋に泊めている時点でどうなんだ…という意見もあるのだが。
「……分かったわよ。じゃあせめてベッドの隣りで寝てよ。やっぱり…近くにいて欲しいもの」
「あぁ、分かった」
「あぁ、分かった」
そう言って上条は手早く床に布団を敷くと、電気消すぞー、と言い、スイッチに手をかけた。
「ホントに早いわね」
「だって眠そうだっただろ。それに早寝早起きは健康にいいぞ」
「それはそうだけど…ムードもへったくれもないわね」
「だって眠そうだっただろ。それに早寝早起きは健康にいいぞ」
「それはそうだけど…ムードもへったくれもないわね」
アンタに求めてる時点で間違ってるけどさ、と美琴が続けてる間に部屋の照明は今日の業務を終了した。
あんまりにあっさりとしたお泊りだが、実はこのとき、上条は美琴にドキドキしすぎて理性を押さえるので必死なのだった。
恋人同士それぞれの想いを包み込むように、夜は更けゆく。
数分の後、部屋には二人の寝息が重なっていた。
あんまりにあっさりとしたお泊りだが、実はこのとき、上条は美琴にドキドキしすぎて理性を押さえるので必死なのだった。
恋人同士それぞれの想いを包み込むように、夜は更けゆく。
数分の後、部屋には二人の寝息が重なっていた。
美琴はふと目を覚ました。
まだ日の出には早いようで、カーテン越しの外は真っ暗だ。
まだ日の出には早いようで、カーテン越しの外は真っ暗だ。
(そっか、私、当麻の家にお泊まりしたんだ)
込み上げる幸せを噛み締め、隣りにいる家主の寝顔を眺めた。
いや、眺めようとした。
いや、眺めようとした。
―――が、確かに昨晩美琴のすぐ横にいたはずの少年の姿がない。
トイレかとも思ったが、明かりは点いておらず、物音もしない。
美琴の背中を嫌な汗が流れ、心臓の音がやたら大きく聞こえる。
ハッとして携帯を掴み、上条の名を探すが―――
トイレかとも思ったが、明かりは点いておらず、物音もしない。
美琴の背中を嫌な汗が流れ、心臓の音がやたら大きく聞こえる。
ハッとして携帯を掴み、上条の名を探すが―――
「無い…!…なんで!?」
登録番号にも着信履歴にも彼の名前は無かった。
まるで世界から大切な人が切り取られてしまったような感覚に襲われる。
まるで世界から大切な人が切り取られてしまったような感覚に襲われる。
「当麻、どこ…?」
あまりに弱々しい声に自分自身が驚く。
そこにはレベル5の姿など、どこにも無かった。
そこにはレベル5の姿など、どこにも無かった。
「当麻…当麻…やだ…いなくなっちゃ…やだよぅ…」
がらんどうの部屋に、少女の声がやたらに響く―――。
「…と……こと……」
意識の外から、呼び掛ける声がした。
「…こと……みこと……!」
「う……ん……?」
意識の外から、呼び掛ける声がした。
「…こと……みこと……!」
「う……ん……?」
なかなか開かない目をなんとか開くと、目の前には心配そうな顔で見つめる少年がいた。
不思議と安らぎを覚える自分に気が付くと共に、恐ろしいほどの不安感が胸の底から溢れ出した。
不思議と安らぎを覚える自分に気が付くと共に、恐ろしいほどの不安感が胸の底から溢れ出した。
「どうした美琴!どこか痛むのか!?うなされてたみたいだし、どこか悪いのか!?」
「ぐす…とうま…とうま…!」
「ぐす…とうま…とうま…!」
上条が側にいてくれているにも関わらず、自分の不安は治まる気配がない。
自分の感情をコントロールすることが出来ないことに、さらに心がざわついてしまう。
自分の感情をコントロールすることが出来ないことに、さらに心がざわついてしまう。
「…とうま…ぐす…ぐす…」
そのとき、ふっ…と肩や背中に温もりが広がるのを感じた。
抱き締められているのだ、と美琴は後から気付く
抱き締められているのだ、と美琴は後から気付く
「美琴」
ほんの短い響き。
その声を聞いた瞬間、美琴の強張っていた体から、すうっと力が抜けた。
その声を聞いた瞬間、美琴の強張っていた体から、すうっと力が抜けた。
「美琴。俺はここにいるよ」
「………うん」
「………うん」
胸の奥底に、何か暖かいものが広がる感触がした。
上条は自分の夢のことなど知らないはずなのに、テレパシーのように通じ合ったような気がする。
絶えず流れる涙も温もりを宿したようだ。
上条は自分の夢のことなど知らないはずなのに、テレパシーのように通じ合ったような気がする。
絶えず流れる涙も温もりを宿したようだ。
「当麻…あのね、いま…怖い夢をみたの…。当麻がどこにもいなくなっちゃう夢…」
わずかに落ち着きを取り戻して、美琴がぽつりとこぼした。
その言葉は上条に向かって言っているようで、しかし美琴自身の抱える不安をカタチに表しているように、上条には聞こえた。
その言葉は上条に向かって言っているようで、しかし美琴自身の抱える不安をカタチに表しているように、上条には聞こえた。
「はぁ…。ったく…」
上条は目の前の少女を見て、頭をがりがりとかいた。
「どこへ行ったって、俺が帰ってくる場所はお前のところだよ」
瞬間、ゼロになる二人の距離。
―――とくん、と美琴の胸が一つ音を立てた。
涙に熱を帯びた顔が、さらに熱くなるのを感じる。
涙に熱を帯びた顔が、さらに熱くなるのを感じる。
「今まで、何度も寂しい想いをさせたもんな…ごめんな、美琴」
「ううん……ごめんね、当麻…私、こんなに泣き虫で…」
「いいんだよ、美琴。俺の前では、どれだけ泣いてもいいんだ。俺の知らない所でお前が涙を流してるなんて、そっちの方が耐えられない」
「ううん……ごめんね、当麻…私、こんなに泣き虫で…」
「いいんだよ、美琴。俺の前では、どれだけ泣いてもいいんだ。俺の知らない所でお前が涙を流してるなんて、そっちの方が耐えられない」
上条の腕に抱かれながら、美琴は不安定であった心の芯のようなものが、再び強さを取り戻していくのを感じた。
「それに…俺はもう、お前が側にいないと駄目なんだよ、美琴」
また一つ涙がこぼれる。
しかし、その涙の意味は、恐らく今までとは異なるものが含まれる。
しかし、その涙の意味は、恐らく今までとは異なるものが含まれる。
「もう…恥ずかしくないの…?」
少しずつ普段の調子を取り戻し始めた美琴は、照れ隠しも含めて、上条の言い回しについて指摘した。
上条は一瞬驚いた表情をしたが、真剣な顔で考え、ゆっくりと自分の信念を告げる。
上条は一瞬驚いた表情をしたが、真剣な顔で考え、ゆっくりと自分の信念を告げる。
「うーん、言いたいんだから仕方ないだろ。俺が俺の想いを押しとどめたら、自分自身にも、この想いを抱かせてくれたお前にも申し訳が立たないしな」
と…、言いながら上条はおや、と思う。
自分の告げた想いであるが、つい最近、しかもごく最近に誰かから似たような言葉を聞いたような気がする。
さらには、先ほどまで目を腫らしていた美琴がなぜか口許を緩め、わずかであるがニヤニヤとした笑みを―――
自分の告げた想いであるが、つい最近、しかもごく最近に誰かから似たような言葉を聞いたような気がする。
さらには、先ほどまで目を腫らしていた美琴がなぜか口許を緩め、わずかであるがニヤニヤとした笑みを―――
「あれ…?」
「どうしましたか~、当麻さん?」
「どうしましたか~、当麻さん?」
昨晩、自分が抱いていたもやもやが、晴れていく感覚。
「あの…ですね、ふと思ったというか、気付いたことがありまして」
「なぁに、当麻?」
「なぁに、当麻?」
いかにも、込み上げる笑みが抑え切れませんという美琴の表情に、上条は確信を抱く。
「昨日の想い出の男の人って…」
「ふふっ…鈍感♪」
「ふふっ…鈍感♪」
再び、恋人同士の唇が重なった。
今宵二度目のくちづけは、いつもより暖かい気がした。
今宵二度目のくちづけは、いつもより暖かい気がした。
とある少女のういういdays3―つづく?―