とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

14-8

最終更新:

kinsho_second

- view
だれでも歓迎! 編集
「この度は皆様にご迷惑を掛けてしまい大変申し訳ございませんでした」
「月夜の恋人として俺も謝らせてもらうぜよ。本当にすまなかったですたい」


 プールに戻った土白はさっきの件で皆を心配させた件を謝罪した。
 その場に居た全員が月夜が無事だったこともあり、何のお咎めも無く許してくれた。
 頭を上げた土御門は真夜が駆け出す前の『ごめん』の意味が気になっていたので尋ねることに。


「そういやぁ井ノ原弟。月夜を助ける前に俺に謝ったけどあれってどうゆう意味ぜよ?」
「あれか? 人の彼女を緊急事態とはいえ抱きかかえることになるからその前に謝ったんだ。ホントごめんな、白雪さんを抱きかかえて」
「……そうゆう場合は謝らなくてもいいぜよ。まったくお前は真面目というか……いや違うな。お前の姉の教育方針か?」
「正確には恋人になる前の真昼さんの、な。無闇に女に触ったりしたらサンドバックにするぞって……何か懐かしいなぁ、あの頃」


 土御門は思った、昔が昔だから今からはこの男は幸せになってもいいのでは、と。
 二人が会話してる頃、真昼は目に見える周囲の感情のベクトルに苛立ち、それが表情に出ていたことで月夜と小萌が心配する。


「い、井ノ原さん、大丈夫? 何だか不機嫌そうっていうか苦しそうっていうか……」
「あ、ああ、心配いらねーよ。ちょっと見えてるものが不快っつーかムカつくっつーか、それだけだからよ」
「白雪ちゃんの言う通りですよー! 具合が悪いなら休んでもらって結構ですからー!」
「いや、ホント心配いらないですよ小萌先生。ただ、周囲の殆どの奴らが真夜を化け物を見るような感情を向けてるのがムカつくってだけですから」


 真昼の言う通り、先ほど真夜は校舎に激しくぶつかったにも関わらずピンピンしている、その事実に見学している者の殆どに怯えていた。
 当の本人の真夜もその視線に気付いていたが、彼にとってはそれは大したことではないので気にしてはいないのだが。


「また見えたようだな。それで? 真夜に向けられてる感情はどんな感じだ?」
「黒と青が半々とか7:3、まあ、怯えとか警戒とかそんな感情ですね、これだと」
「そうか。とりあえず真昼は能力をオフにすることだ。まだお前は見えるベクトルの取捨選択が出来ないんだからな」


 木山の言う通りに真昼は【線形視認(ベクトルドライバー)】をオフにするが、それでも今まで見えていたものに対する苛立ちは消えない。
 感情のベクトルを見る時は周囲全員の感情のベクトルが見えてしまい、ゆえにその感情に感化されやすい、それが真昼の能力の欠点である。
 見える感情のベクトル、つまり対象の選択を出来るようになるまではまだ時間は掛かるというのは木山の考えだ。


「井ノ原さん心配だよね赤音ちゃん……赤音ちゃん?」
「ゴメン月夜ちゃん。今からプールサイドに居るみんなを私の後ろに集めて」
「えっ? それって」
「グズグズしないの!」


 赤音の剣幕に驚いた月夜はプールサイドに居る人間全員を慌てて赤音の後ろへと誘導、渡された耳栓を全員に着けるように促す。
 しかし赤音のことをよく理解している真夜、真昼、木山はそれでも足りないとばかりに耳を手で塞ぐと同時に、赤音の【鼓膜破砕(ボイスシャット)】の大声が炸裂する。


「いい加減にしなさいよーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」


 能力を使用した赤音の大声は常盤台中学全域に響き渡り、校舎の窓ガラスが震え、彼女の後ろに居なかった者全てが大声に頭を痛ませる。
 後ろに居た者達の被害が少ないのは、耳栓をしてることと赤音の能力の影響が彼女の前方の方が高いからである。
 それは屋上を出て、校舎の中を歩いていた美琴、黒子、泡浮、湾内も同じ被害に遭っている。


「きゃああああああああっ!!」
「あ、頭が……それにめ、目がまわって……」
「な、何なのよこの大声……! 音圧でガラスが軋むって……」
「あ~~~~~~視界がグルグルしますわ~~~~~」


 今すぐにこの場から離脱しようとした美琴だが、黒子がグロッキー状態で『空間移動』が使えないと判断すると後輩三人に耳を塞ぐように促す。
 このまま急いで校舎から出ようとする美琴達だったが、赤音の大声の第二波が襲来、二つの意味で悩まされることに。



「あんたらさっきから真夜君のことを化け物でも見るような目で見てんじゃないわよ! 能力者なんだからあれくらい別におかしくなんてないでしょ!」
「真夜君はね、お人好しで天然で自分のことより私達や他人のことを優先するような困った人よ! でも化け物なんかじゃない!」
「助けるのだってなーんにも考えないで体が勝手に動いたの! 他人を傷付けることには嫌ってるのに自分が傷付くことはお構いなし! 毎日ハラハラしてるわよ!」


 赤音の大声は最初のものよりは出力は抑えられているので頭痛がするほどのものでは無くなっているが、それでも耳を塞がないとキツイことには変わりない。
 ただ一人、自分のことを言われてる真夜だけは赤音の言葉に心当たりありまくりなので精神的ダメージの方が大きいのだが。


「でもね! 私はそんな真夜君を愛してるの! 世界で一番愛してるの! お人好しな所も天然な所も他人優先な所もひっくるめてぜーんぶ愛してるの!」
「もしこれ以上私の真夜君を化け物でも見るような目で見るなら容赦しないわよ! いい! 分かった!」


 全てを言い終えてスッキリした赤音は後ろに居る真夜に視線を移すが、彼が顔を真っ赤にさせてうな垂れていることに驚く。
 真夜の周りには真昼と土御門、それに木山と小萌が慰めるように彼の体を叩いていることにまだ状況が飲み込めない赤音に、月夜が何とも言えない表情で言う。


「凄いよ、ホント凄いよ赤音ちゃん……。あんな大声で惚気るなんて、私にはそんなこと出来ないよ。尊敬するよ、真似だけは絶対にしたくないけど」
「の……ろけ? ……あ、あーーーーーーーーっ! わ、わわわわ私ったら何てことをーーーーーーっ! しかも常盤台で堂々とーーーーーっ!」
「まあまあ♪ 人間誰にでも若さ故の過ちってあるから♪ それに堂々と惚気てる赤音ちゃん、可愛かったよ♪」


 状況を理解してしまった赤音は大声で叫ぶと(能力未使用状態)顔を真夜並みに赤くさせると、その場に突っ伏した。
 そんな赤音を月夜は親友の新しい一面を見た喜びと共に、彼女の頭を優しく撫でてやることに。


「井ノ原弟、お前本当に大変なんだな……。衆人環視の惚気、心から同情するぜい」
「よーしよし、家に帰ったらいーっぱい慰めてやっからな(俺との関係はここではバレようにしないとな……)」
「ま、まあこーゆうこともあるですよー。真夜ちゃんの選んだ道です、これくらいの苦難は当たり前なのですよー……?」
「こうゆう時は頑張れと言えばいいのか分からないが……頑張れよ」


 周囲から慰められてる真夜だが、嬉しさと恥ずかしさで頭が一杯の彼が完全に立ち直るのは少し先になりそうである。
 木山は真夜だけでなく赤音もすぐにシステムスキャンに行えない状態だと判断すると、常盤台の教師に進言する。


「すみません、先に真昼のシステムスキャンからしてもらっていいでしょうか?」
「その方が良さそうですね。では移動しましょうか。貝積統括理事も宜しいでしょうか?」
「構わん。最初は白雪という能力者だけに興味があったのだが、他の三人もなかなかどうして面白そうだしのう」


 常盤台の教師は貝積の了承を得るとシステムスキャン組+土御門を呼び、真昼のシステムスキャンの為に校内へ移動することを告げる。
 それに不満を漏らしたのは真昼だったが、それを小萌と木山が嗜める。


「ダメですよ真昼ちゃん。真昼ちゃんの今回のシステムスキャンは『感情のベクトル』が目的なんですからー」
「そりゃあそうですけど、そんなの今までみたいに相手の攻撃のベクトルを測る時のように外でやったって……」
「『感情のベクトル』は戦闘向きではないことはお前が一番分かってるはずだ。それに周囲の煩わしい視線から解放されるんだ。そう考えれば悪くないだろう?」


 教師二人の説得に真昼も折れ、素直に彼女のシステムスキャンが行われる場所へと移動することに。
 ちなみに見学していた常盤台の生徒達は赤音の大声+惚気に呆然と立ち尽くしているのだった。





 こちらは常盤台校舎内、外の見学組よりも被害が少ない美琴、黒子、湾内、泡浮が立ち直っていた。


「す、凄かったわね、さっきの……。大声もそうだったけど、の、惚気をあそこまで堂々とやるなんて……」
「ですわね。わたしくが同じようなことをやれと言われたら出来ませんもの。というかしたくありませんの」
「ど、どうしましょう? 月夜お姉さまと先ほどの殿方に後で謝らなくては……。元はと言えば私が月夜お姉さまにあのようなことを言わなければ……」
「そんなに落ち込まないで下さいな湾内さん。月夜お姉さまにも月夜お姉さまを助けてくださった殿方にも私が一緒に謝って差し上げますから」


 美琴と黒子は赤音の大声と惚気、泡浮と湾内は事の発端、それに対する謝罪のことが頭の中を占めていた。
 泡浮と湾内は月夜と真夜に謝罪する為にその場を離れることを美琴と黒子に告げて去った後で、美琴は当麻に連絡を取ろうとする。
 しかしその前に黒子が考え込んでいる姿を目にして、考え込んでいる黒子本人に尋ねる美琴だった。


「どうしたのよ? 黒子。何か難しそうな顔しちゃってさ」
「いえ、先ほど白雪さんを助けた殿方、どこかでお会いしたような、襲ったような気がするんですが、よく思い出せませんの」
「襲ったってアンタ何やってんのよ……。まあいいわ、今から当麻に連絡するついでに○○さんに聞いてあげるわよ。多分当麻と一緒に居るだろうし」


 実は黒子、サバイバル合宿最終日の夜に真夜を金属矢で襲ったことがあるのだが僅かなこと、しかも一ヶ月ほど前だったのでよく思い出せなかったのだ。
 襲ったとか言ってる黒子に美琴は呆れながらも、当麻の声が早く聞きたいと思っていたのですぐさま当麻に連絡を取ることに(青ピのことはついで程度だったりする)。



「あっ、当麻?今大丈夫?」


だが上条は今までより最大の危機に陥っていた。


『すいません美琴様、約束の時間を30分もオーバーしていてすいません』


えっ?何のこと?と美琴は首を傾げたが、そういや30分前がデートの約束の時間だった。
すっかりシステムスキャンの事で忘れていた美琴はごまかすことにした。


「も、もー、遅いわよ。一体何やってんのよ?」
『上条さんは今、他の二人と逃亡をはかっております!!』
「逃亡……?まさか、また何かに巻き込まれたんじゃ無いわよね!?」
『巻き込まれてると言えば巻き込まれてる訳ですが……、上条さんは恨みを買った覚えが有りませんがただ今総勢300人の女性を降りきっている途中です』
「300!?ってどんだけアンタは旗立てたのよ!?」
『上条さんは何にもわかりません!!今三人で逃げ回っていて今にも死にそうです!!』
「……ねえ当麻、アンタはさあ、どんだけ鈍感なのよ!?」
『ごめんなさーい!!あと20分で振り切って見せるから!!後30分だけ家で待っててー!!』
「ちょっと待って、今どこに居んのよ!?」
『第十三学区のどっか』
「第十三学区ね!?今すぐ行くから!!」





その頃三人の中の一方通行、浜面は女性たちの中にとある人物を見つけてしまい、本気と書いてマジと読む逃げ方で走った。


「「何でお前がいるんだよォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」


そこには、バチバチいっている、化け物のような人間と、とある少女に顔が似ている少女、
スーパー麦野と、番外個体(ミサカワースト=略してミサワ)がそこにいた。



「だって、浜面を追ってたらなんだか浜面の事が離れなくなってたんだもん♪」
「ミサカはある意味一方通行に助けられましたのでそのお礼という訳で。」


「「なんでそうなるん(ン)だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


ある意味不幸な二人であった。


「おい、これをどうにかならないのか。」


浜面がそう言ったが、


「俺達が攻撃すれば何とかなるけどさ…」
「「俺と上条(アクセラ)は女には手を出さないモットーがあるから無理!!」」


「お前らこういう時でもそれを通すのかよ!!」


上条とアクセラはこういう時でも自分のモットーを通すのだった。


「じゃあ、どうするんだよ!!」
「「とりあえず逃げる!!」」


「他に策は無いのかよ!!」
「「あったらとっくにやってる!!」」


「もういいや……」


浜面はこの二人に質問しても意味が無いので諦めた。



だが、ただ逃げてるだけでは命が危なかった。
バチバチバチバチッ!!と電撃とビームが二人に飛んできたからだ。


「「「何でだよォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」」


二人はとっさに上条を盾にして攻撃を回避する。(上条が叫んでいたのはこの為だ)。


「何で!?何であの二人攻撃してくんの!?」


それと何で俺を盾にしてるんだよ!?と言ったが二つとも答えは簡単だ。二つ目はわかると思うが、最初の疑問を解決するとしよう。
何故なら二人は……


「だってさぁ……」
「誰かの手にあなたが渡るんだったら……」


「「あなたを(浜面)を殺してミサカ(私)の物にする♪」」


ヤンデレだったからだ。


「「「……………よし」」」


三人は頷くと今までとは比にならないスピードで逃げ出した。
ウィキ募集バナー