とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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だれでも歓迎! 編集
 とりあえず300人の女性を撒いた主人公トリオだが、予断を許さない状況には変わりない。
 当麻は気は進まないといった表情で携帯を取り出すと、どこかへと電話を掛ける。

「オイ上条、誰に電話してンだァ? 何とかしてくれる奴なンだろうな?」
「飾利だ。こんなことにあいつを巻き込んだら後で他の奴らに怒られるけど背に腹は変えられないしな」


 初春の名前を聞いて本人に悪いとは思いながらも、悪魔的行動で何とかしてくれる、そう思った一方通行と浜面。
 しかし世の中は何事も思い通りにはいかない。


「もしもし飾」
『何ですか上条当麻。こんな時に電話だなんて、飾利が起きたらどう責任取るんですか?』
『ごめんなさい当麻兄さん。飾利、今すっごくいい顔で寝てるんですよー。だから今日はもう電話掛けないで下さいね。あ、電源はあたし達全員切りますから』
『飾利起こそうとすんじゃねぇよ幻想殺し。こっちは飾利の可愛い寝顔見て楽しんでんだよ、ったく。死ね』


 佐天からは今後の連絡を拒絶され、シェリーには理不尽に『死ね』と言われて電話を切られた当麻。
 呆然としてる当麻に一方通行と浜面は心配そうに何があったのか尋ねる。


「上条! 何があった? 初春ちゃんからの協力は仰げそうなのか?」
「……それどころか神裂、シェリーにも応援が頼めなくなった。後、死ねって……俺、何も悪いことしてないのに」
「なあっ! テメェあれだけのこと言っといてダメだったとかフザケてンじゃねェぞ!」
「嘆きたいのはこっちだ! 飾利が寝てるからとか可愛い寝顔がどうとかって理由で拒絶され……っ!」


 初春の協力要請どころか神裂とシェリーも当てに出来なくなった当麻と一方通行はこんな時でも喧嘩を始める。
 当麻が泣き言を言い終えようとしたその時、嫌なプレッシャーを感じた当麻は言葉を紡げなくなる。
 そのプレッシャーの正体に一番早く感づいたのは、一番心当たりのある浜面だった。


「こ、この胃に穴が開きそうな感じは……麦野か?」
「正解だよはーまづらあ♪ 私の存在を感じてくれるなんて嬉しいじゃない♪ だ・か・ら・さ。私のモノにしてあげる♪」
「そう言いつつも俺にレーザー向けるのって間違ってるよな! お前の愛が俺には重いっ!」


 麦野の光線に反応が遅れた当麻と一方通行、大ダメージを覚悟したがそこに救世主が現れる。
 それは黒子の『空間移動』で麦野と当麻達の間に現れた美琴で、問答無用で『超電磁砲』を放った(相手を確認せずに)。
 麦野は自分の光線をかき消して迫ってくる超電磁砲を自分の左腕を以って力任せに弾き飛ばす。


「何してんだこのガキャあああああっ! 私と浜面の愛の営み邪魔してんじゃねえぞおおおおっ!」
「はぁ? 一瞬誰か分かんなかった第四位が寝言言ってくれるじゃないの。浜面さんは滝壺さんの恋人、これは決定事項なのよ。それくらい分かんなさいよオバサン」
「あんた面白いジョークかましてくれるじゃない。浜面が滝壺のモノ? 笑わせんじゃないわよ。そいつは私のモノ、ガキには理解出来ないでしょうけどね」


 第三位と第四位、二人の間に不穏な空気が流れ、その雰囲気に誰もが息を呑む。
 本来ならここで騒ぎそうなミサワ(番外固体)がいるはずだが、彼女は別ルートから当麻達を捜索中である。


「当麻ごめん。あんたを助けに来たはずが変わった。この分からず屋を全力で叩き潰す。だからお願い、手は出さないで」
「あ、ああ……。でも絶対無理はするなよ。」
「ありがと当麻」


 上琴のいい雰囲気にイラッとした麦野も負けじと浜面を使っていい雰囲気を出そうとする。


「ねえ浜面。そこのクソガキ片したら子作りしよーね♪」
「しねーからな! つーかお前の言ってることがホントマジで怖いんだけど!」
「ありがと仕上♪」
「頼むから人の話聞いて! てか何で美琴ちゃんみたいに俺のこと名前で呼んでんの!」


 第一三学区にて真実の愛を知っている御坂美琴、歪んだ愛に目覚めた麦野沈利、両雄の戦いが幕を開ける。
 二人の戦いが始まった頃、当麻に一本の電話が入る。


『もしもしお兄ちゃんですか? 最愛ですけど今どこですか? 第一三学区が超騒がしいですけどまさかそこにいませんよね?』



「最愛か。確かに俺達は今第十三学区に居るが、っておい浜面勝手に俺の携帯を取るな!!」


浜面は当麻の電話の相手が絹旗だと分かると無理やり当麻の携帯を取った。


「絹旗か、ちょっと大変なことになっているんだ!!」
『なんで、いきなり浜面に超変わったのですか?まあ、今はそんなことは超良いとして今第十三学区では何が超起きているのですか?』


「麦野が俺を追って来ていたんだけど、今御坂さんが麦野と戦っているんだ!!」
『む、麦野ですって!!ひょっとして浜面を超殺すために超追っているのですか!?』


「まあ、ある意味麦野は俺を殺すため何だけど、麦野は俺を自分の物にしようとしてきたんだ!!」
『まさに超ヤンデレですね。とりあえず状況は分かりました。今からそっちに行きますから何とか耐えて置いてください。』
「おい、ちょっとどうやってって電話切りやがった。」


絹旗は浜面が話しているのに電話を切った。
そして浜面は当麻に携帯を返した。


「なあどうだったか?」
「とりあえず絹旗がこっちに向かっているって。」
「そうか。とりあえずどうするってあぶね!!」


浜面と当麻が話していたら電撃が飛んできた。
しかしその電撃は美琴からの電撃では無かった。


「あなた達が止まってくれたおかげでミサカは反対側に回ることが出来ました。」


麦野の反対側にミサワが居たのだ。
それにより、当麻達は逃げ道を失った。



「……だいたいあの巨乳は誰だよアクセラ……ありえない考えが浮かんだんだが……」
「あれは番外個体、ミサカワーストってやつだ、略してミサワって所かァ?まあオレを殺すためのミサカって事だ」
「殺されるために作られた御坂妹の次は殺すために作られた御坂妹か……ふざけてやがる」
「あれが美琴ちゃんのクローンか……あれ?前に聞いた話だと同じ年位でレベルは2~3って聞いてたけど全部違くね?」
「アイツはオレを殺すために成長させて、レベル4までになったらしい。詳しいことは知らねェけどなァ」
「つまりだ……美琴が高校生ぐらいになると、あんな巨乳になると……」
「そう言うことだァ」


二人とも鼻を押さえているが話はそんな事をしている間にも続く。


「さーてと、あなたの体はミサカが頂くから大人しくしててね♪」
「だが断る」


そういうと一方通行は上条を盾、浜面を引きずり走り出した。


「ミサワの相手は任せたぞ、上条」
「任せとけ、お前らはさっさと逃げろ」
「ラジャァ」
「えっ?ちょ、上条ォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


浜面が絶叫したのはアクセラがアクセル全快で走ったからである。


上条は二人が行ったのを確認するとミサワの方を向く。


「ミサワ……だったっけか?」
「ミサカの識別名はそんなんじゃないよ?それよりそこ退いてもらえる?あの人殺せないから」
「断る」
「しょうがない、じゃああなたから殺すね」
「それはテメェに出来ないよ、殺すしか愛する方法がないって幻想見てるやつに、俺の愛が負けるはずねえんだよ!!」
「あっそ、じゃあ始めよっか」





その頃、逃げた一方通行と引きずられてる浜面はと言うと。


「待て、待てよアクセラ!!上条置いてくのかよ!?」
「アァ、俺達にはやることがある」
「やること?」


そう、これは一方通行の考え抜いた選択肢なのだ。


「あのわからず屋共のオカタズケ」
「いいっ!?マジでか!?」
「ンナ事でもやらねェと、借りがドンドン増えてくだろォが」



「それもそうだな。じゃあ始めるか!!」


そう言うとアクセラと浜面は当麻を追っていた約300人の女性を相手にすることになった。





その頃、麦野と戦っている美琴はと言うと…


「やっぱり、何度戦ってもきついわね。」
「そういえば、あなたとは戦ったことがあったわね。あの時は逃げられたけど、今度こそは必ず倒してやる!!」
「そう。なら倒してみなさいよ!!」


美琴は電撃の槍を放った。
しかし、


「忘れたのかしら。あなたの能力と私の能力は根っこは同種だと言う事を!!」


そう、麦野は美琴の電撃を捻じ曲げて麦野に当たらなかったのだ。
そして今度は麦野が光線を放った。
だが、


「そっちこそ忘れてない?同種なら私も捻じ曲げられることを。」


今度は美琴が電撃で光線を捻じ曲げたのだ。


(にしても、このままじゃ埒があかないわね。)


美琴はこのまま続けても埒があかないことに気づいた。


(あの時はあいつが残したもので助かったけど…)
「そっちが攻撃してこないなら、こっちから攻撃するわよ!!」
「っ!!」


美琴が考えていたら、麦野から攻撃してきた。
美琴は何とかかわした。


「私が考えている時間を与えると思う?」
「チッ!!」


美琴は麦野が戦う時間をくれないので考えるのをやめ、とりあえず戦うことに専念した。





 こちらは一方通行&浜面、見知らぬ女性ということばかりとあって力を思うように入れられず苦戦中。


「ちっ! 知り合いの女なら思いっきりやれるってのによォ! やりづれえったらねェぜ! 結標とかなァ!」
「てめぇその言い方だと女に手上げた経験あんじゃねぇか! だったらそのノリでこいつらもまとめてやってくれよ!」
「バカ言うな! 結標は暗部、こいつらは能力者とはいえ素人だぞ! そンな真似できっかよォ!」


 一方通行は一応女には手を上げないというポリシーを持ってはいるが、結標のように覚悟を持った人間は女性だろうと容赦しない。
 しかし目の前の女性達は単に当麻にフラグを立てられた一般市民、戦うなどもっての他なのだ。


「でしたら私達に変わってくださいな。ジャッジメントとして見過ごせない事態ですし♪」
「浜面もアクセラも超引っ込んでて下さい。女性には女性、これで超イーブンですから♪」


 一方通行と浜面を取り囲む女性達が上から声が聞こえてきたかと思うと、ある者達は遥か彼方へと飛ばされ、ある者達は地面に縫い付けられる。
 現れたのはジャッジメントの腕章を付けた黒子、そして絹旗だった。


「遅れて申し訳ありませんの。お姉様を運んでからすぐに絹旗さんから連絡を受けて、彼女達を運んでたものですから」
「まったく二人とも超慣れないことをするもんじゃないですよ。後は私達に超任せて二人は私達の荷物番とあの子のボディーガードしてて下さい」


 そう絹旗が言い終えると黒子はすかさず二人をある場所へと移動させる。
 標的の二人が居なくなったことで女性達も移動しようとするが、そこに絹旗と黒子が立ちはだかる。


「バレンタインというのにこのようなバカ騒ぎを起こしてくださるだなんて……。上条さんにはお姉様が居るのに本命チョコなどと諦めが悪いにも程がありますわ」
「皆さんに恨みは超ありません。ですがお兄ちゃんとお姉ちゃんの仲に割って入るなら話は超別です。遠慮も加減も無しです、超徹底的にやらせてもらいます!」


 絹旗&黒子の最恐中一コンビVS当麻狙いの女性約300人の戦いが幕を開ける。





一方通行と浜面が移動させられた場所、そこは戦地から離れた安全な所で山のような荷物の近くに腰を下ろしてる打ち止めがいた。


「あーっ! やっぱり無事だったねってミサカはミサカはあなたがこうして来てくれたことを喜んでみたり!」
「な、なンでてめェがこンなトコいンだよォ! それにこの荷物の山はどうゆうことだァ!」
「これに触って少しでも傷が付いたら不敬罪だよってミサカはミサカは脅してみたり」
「……ちょっと待て。今、不敬罪って言ったかァ? まさか……!」


 打ち止めが出迎えてくれたことは嬉しいのだが、状況が全く分かっていない一方通行は混乱する。
 そこに『不敬罪』のキーワードを聞き、ヴィリアンとウィリアムが来てると推測するがすぐに打ち止めが否定する。


「あなたの思ってる人じゃないよってミサカはミサカは即答してみるけどこっちの王女様の方が危険かもって不安に思ったり」
「ま、何でもいいじゃんかアクセラ。俺達はここで待ってりゃ良さそうだからさ」


 誰が来てるのか一方通行には予測出来なかったが、浜面の言う通りと思い、荷物番と打ち止めのボディーガードに専念することに。





 場所は変わって当麻VSミサワ(番外固体)だが、こちらは当麻が防戦一方、それどころか手すら出せない状況に。
 それでもミサワの電撃は悉く打ち消しているので膠着状態なわけだが、ミサワはつまんなさそうに当麻を見つめる。


「なーんだ。やっぱりミサカの顔をした人間、正確にはオリジナルの顔をした人間は殴れないって本当だったんだ。つまんない人」
「言ってろ……(くっ! 神裂やシェリーやキャーリサは殴れたのに……)」


 実は当麻、美琴とは出会って以来、一度たりとも彼女に手を上げたことは無いのだ(記憶喪失前含め)。
 ミサワは美琴とは別人と頭では分かっていても、身に付いた習性が簡単に抜けることは無かったのだ。


「そんなつまんない人と戦ってるほどミサカも暇じゃないの。悪いけどさっさと死んでくれるかな♪」


 当麻が考え事をしてる間にミサワが音速の速度で撃ち出した鉄釘が襲い掛かる。
 鉄釘が当麻に命中するかと思われたその時、一つの綺麗な剣閃が鉄釘を見事に切り裂く。


「よー上条当麻。相変わらず愉快なことに巻き込まれやすいよーだな♪ ほら、これはお前にやるよ」
「わわっ! ……ってキャーリサ! 何でここに! しかもレッサーも一緒かよ! それに今何投げたんだ!」
「あー、質問の多い奴だなー。取りあえず説明してやるから少し待ってろ。レッサー、チビっ子二人の加勢に向かえ。油断だけはしないよーに」
「ハッ! 上条さん、また後で」


 突然現れたキャーリサとレッサーに驚く当麻だったが、二人は慌てた様子も無く迅速に動き始める。
 邪魔されたミサワは若干のイラつきを覚えながら、キャーリサへと電撃を以って襲い掛かろうとしたが、


「悪いが今から上条当麻と話があるんだ。少しの間、あっちの方で休んでてもらおーか」


 キャーリサの一閃がミサワに炸裂、遠くへとミサワを吹き飛ばす。
 当麻はキャーリサの持っている剣に見覚えがあることに気付く。


「キャ、キャーリサ? その手に持っている剣、もしかしなくても騎士団長の剣では?」
「ああ、あいつのフルンティングを借りたんだ、無断で。まあこれが無くてもあいつは大丈夫だろーしな」
「それを世間様じゃ窃盗って言うんだよ! 相変わらず無茶苦茶する王女様だな!」
「あー、もーうるさいなー。いーんだよ別に。私の物は私の物、騎士派の物も私の物だからな。日本にはこーゆー諺があるんだろ?」


 それ漫画の世界ですから! ……とは言えなかったので話題を変える為にキャーリサに来日の目的を尋ねる。
  当麻に美琴の元へ送り出すと、キャーリサは騎士団長から拝借してきたフルンティングを構える。


「ミサカは知ってるよ。あなた英国の第二王女様でしょ? 全英大陸なら強いのは知ってるけどここは日本だよ? それなのにミサカと戦うなんて頭大丈夫なの?」
「ふぅ、口の利き方がなっていない小娘のよーだな。上条当麻の恋人にそっくりとかまあ、そんなことはどーでもいいか。上条当麻への恩を返すにはいー機会だ」
「……ホント、ミサカの邪魔ばっかりしてくれるんだから。ミサカには第一位をモノにするって大事な用事があるのに。さっさと殺してあげるね」
「(第一位? ……誰だ?)私に対していー度胸してるな、お前。かかって来い、格の違いってーのを教えてやる」


 第一位=一方通行なのだが、キャーリサは彼のことを『小さな花嫁の白い花婿』としか認識していないのでミサワの目的を今ひとつ理解していなかった。
 しかしキャーリサにとってそんなことはどうでもいい、あくまで当麻への恩を返すためにミサワと相対する。
 『軍事』のキャーリサVS一方通行への歪んだ想いに囚われたミサワ、二人の熾烈な戦いの火蓋が切って落とされる。





 キャーリサに言われて美琴の元に駆けつけた当麻だが、麦野に押されてボロボロの美琴に息を呑む。



「おい美琴、大丈夫か。」
「大丈夫よ。はぁ、はぁ、電撃を使い過ぎたから疲れているだけだから。はぁ、はぁ、」


当麻は今の美琴を見ていられずこう言った。


「どう見ても大丈夫じゃねぇーだろ!!こっからは俺が戦うからお前は隅で休んでろ!!」
「分かった。」


いつもの美琴なら『まだ戦えるわよ。』っと言うはずだが、相手が第四位の麦野沈利なのでおとなしく自分から引いたのだ。


「こっから先は俺が相手してやる!!」
「あら、もう交代?もっと私を楽しませてくれよ!!」


麦野は相手が変わっても気にせず、光線を放つのだった。
だが当麻の右手の『幻想殺し』によって打ち消された。


「ッ!?なぜ私の『原子崩し』が効かない!?」
「そんな事、教えると思うか?」


当麻は美琴を傷つけたことに相当殺気が立っていた。
そして当麻は麦野に近づいていた。


(仕方ない、どういう能力か分からないなら私が知るまで攻撃するのみね!!)


麦野はどうして『原子崩し』が消えたのか調べるために光線を放った。


「何度やっても同じことだ!!」


当麻は再度右手を光線に触れ、『原子崩し』を打ち消した。


(右手だけで打ち消した?まさかこいつは『幻想殺し』か!!)


麦野は二回目の光線を放っただけで当麻の能力が分かった。


(よりによって厄介な人物に会ってしまったな。でも、『幻想殺し』の範囲は右手のみ!!それ以外を狙えば大丈夫なはず!!)
「おい、さっきからお前は何を考えているんだ?」


「ちょっとね。でも、こんなすごい人物に会うなんて思わなかったよ『幻想殺し』!!」
「ッ!!」


当麻は自分が何者か当てられて少し動揺した。


「『幻想殺し』と分かればこっちのもんよ!!」


麦野はまず当麻に向かって光線を放った。
もちろん当麻は右手で打ち消したが、光線を放ったところに麦野は居なかった。


「当麻、後ろ!!」
「しまっt「もう遅い!!」


当麻が後ろを向いた時には麦野が光線を放っていた。
麦野は勝ったっと思った。
だが、


「あ、あぶねー。ほんとギリギリだったぜ。」


普通なら右手は間に合ってなく間違えなく当たっていただろう攻撃が右手で打ち消されていたのだ。


「ど、どうやってあの状況で右手が間に合うの!!」


麦野は右手が間に合うのか気になっていた。



「あいにくと自分の武器がこの右手ってことは俺が一番理解してんだ。だから右手の死角からの攻撃の対処なんてのはな、体が覚えちまってんだよ」
「くそがっ! 伊達に一方通行を倒したわけじゃないってことか。……だったらさ、こうゆうのはどうかしら?」


 死角からの攻撃を防がれたことで苛立つ麦野だったが、美琴を見てあることを閃く。
 麦野は当麻に対してニヤリと笑うと左腕の閃光のアームを見せつけ、それを勢い良く振り上げる。


(殺った! いくら幻想殺しでもこのアームを消すことなんて出来やしない! グズグズに溶けちまいな!)


 麦野は自分の異形の左腕を忌み嫌ってはいたが、戦いにおいては絶対の自信を持っていた。
 これで確実に目の前の少年を殺した、そう思っていたが当麻は驚くことに自分のアームを受け止めていたのだ。


「そんなバカな! 私のアームを喰らってどうして生きてんのよ!」
「クッ……! け、消し切れねぇ! 受け止めるのが精一杯って何て力だ! だったら……!」


 自分の『幻想殺し』では麦野のアームを消すのに時間が掛かると思った当麻は力任せに振りほどいて距離を取る。
 目の前の障害にますます苛立つ麦野だが、浜面への歪んだ愛がすぐに頭を冷やさせる。


「ホント、その能力って厄介よね! だったらさぁ、こうゆう場合はどうするのかなぁ?」


 そう言うや否や、麦野はアームを鞭のようにしならせてそれを美琴へと奔らせる。
 慌てて当麻が美琴を庇うように右手で守るが、僅かに出遅れたのか攻撃を少し喰らってしまい膝を付く。


「当麻っ!」
「だ、大丈夫か、美琴……?」
「バカッ! 私の心配より自分の心配しなさいよ!」
「アハハハハハハハッ! ホントにバカな奴よねぇ! あんたみたいなのと恋人なのもそう! そんなあんたを守ることもそう! 底なしのバカよ!」


 美琴は当麻が身を挺して庇ってくれたことを嬉しく思うわけが無く、自分を顧みずに守ってくれたことが切なかった。
 そこに入ってきた麦野の嘲笑、これが美琴の怒りに火を点ける切っ掛けとなる。


「……今、何て言った?」
「はぁ? 常盤台の超電磁砲は頭も耳も悪いのかよ? ならもう一回言ってやるよ。てめぇのような自分のクローンを見殺しにしてきた人でなしを守るそいつが救いようのねぇバカって言ったんだよ!」
「……そんなのはね、私が一番分かってるのよ。でもあいつは、当麻はそんな私を受け入れ、そして愛してくれたの! あいつをバカにするのだけは絶対に許せない!」
「許せないから何? それでてめぇが私に勝てることにはならねぇんだよ! そうだ、アンタを半殺しにした後、そこのバカを裸にひん剥いてあの女共の群れに放り込んであげるわ。面白いものが見られそうだから♪」


 美琴は感じた、自分がここまで怒ったことは無い、しかし頭は驚くほど冷静になっていることに。
 麦野は美琴の雰囲気の変わりようにゾッとするが、それでも自分が負けることは微塵も思っていなかった。


「おいババア。お前なんて二発あれば充分よ。当麻にしようとしたことを悔いるなら考えてあげる」
「考える? 二発で充分? 笑わせんじゃないわよ! 超電磁砲二発でどうにかなるとか思ってんじゃねぇぞ!」


 美琴は無言でコインを宙へと弾くと、いつもの『超電磁砲』を麦野目掛けて撃ち放つ。
 しかし麦野のアームが輝きを増し、『超電磁砲』を受け止める。


「言っただろぉ! そんなモンでどうにかなるわけねぇってな!」
「分かってるわよそんなこと。当麻のはじめてと私のはじめてを奪おうとか抜かしたアンタへの最後の一撃はね、コレよ。吹き飛びなさい!」


 美琴はそう言うと、足元にあるサッカーボール大の瓦礫を『超電磁砲』の要領で思いっ切り麦野へと蹴り飛ばした。



「し、しまった!!」


麦野はすぐに『超電磁砲』(正確にはサッカーボール大の瓦礫を『超電磁砲』の要領で蹴ったんだが)が来ると思っていなかったので逃げるのも能力で回避する事もできず、直撃した。
そしてそのまま気絶した。
また、美琴も倒れた。


「おい美琴!!どうした!!」
「電池切れで動けない。」


美琴は二回目の電撃に相当能力を入れたので電池切れを起こした。


「おいおい、そんなに電撃を使ったのかよ。仕方ねーな。」


当麻は美琴が動けないのでお姫様抱っこをした。


「ちょ、ちょっと当麻!!なんでこんな広いところでお姫様抱っこなの!?」
「だってお前が動けないならおんぶもできないじゃねーか。」


「そうだけど、やっぱり恥ずかしいよ///」
「大丈夫だ。今は身近の人たちしかいねーからよ。」


当麻がそういうと美琴は少し落ち着いた。





その頃、ミサワと戦っているキャーリサはというと以外にも激戦だった。



「ほーらどーした?もう限界か?ずいぶんと粘った方だが……もー終わるのか?」
「これはミサカも予想外……何そのぶつぶつの剣、気持ち悪いんだけど?」
「価値がわからない者に教えてやるどーりは無い」


そういうと『武具重量』を使い剣を振るう。そしてミサワが紙袋の様に吹き飛んでいった。
『軍事』に特化した第二王女キャーリサはどうやら圧倒的なバトルスタイルがお好みらしい。
だがミサワも負けておらず、空気を電気で爆発させ衝撃を緩和する。


「………でも驚いた、まさか第二王女が外の能力者だったなんて……」
「ん?これにはちょっと仕掛けがあるだけだ。まー、あながち能力とも否定できないけどなー?」


すると今度はミサワが鉄釘を飛ばす。それをキャーリサは『耐久硬度』で弾き飛ばす。
だが、キャーリサは歯を食いしばっている。


「……へぇ、使えるは使えるけど、使い慣れてないから何かと反動でも来るんだ。何だ、以外にたいしたこと無いやオバサン」
「まだピッチピチの二十代だし。ほーら、肌がこんなに弾けてるぞ?」
「でももうすぐ三十のオバサンでしょ?そんなオバサンがなんで高校生に恋心持ってるのかな?」


ピタリ、キャーリサの動きが止まった。



「……待て。誰が誰に恋してるって?」
「だからオバサンがオリジナルの恋人に。ミサカ見てたよ、あなたが彼にチョコ渡したの。それって本命チョコって言うんでしょ?」
「あいつにはクーデターの時に大きな借りがある、それだけだ。まー、好意が無いって言えば嘘になるがそれでも愛とかってー感情は無いからな」


 キャーリサにとって当麻はクーデターの時に命を賭けて戦った敵、しかしフィアンマから助けてくれた恩人でもある。
 確かに好意は寄せてはいる、しかしそれは恋愛感情にまで発展するものではなくあくまで友情を感じるものなのだ。
 ミサワはそんなキャーリサを理解出来ない風に見つめると、自分の恋愛観を語り始める、それが致命的とも気付かずに。


「ふーん、そうなんだ。ま、いいけどね。それよりもミサカは第一位を殺すっていう大事な用事があるからもう終らせるね。そしてミサカはあの人をモノにするの♪」
「殺してモノにする、か。やれやれ、とんでもない大バカ者を相手にしていたよーだな、私は」


 キャーリサはそう言うと『切断威力』で近くにある大きめの街灯を簡単に切断してみせる。
 ミサワはギョッとすると同時にある一つのことに思い当たり、キャーリサに対して激昂する。


「何よそれ! 今まではミサカに対して手を抜いていたってこと? バカにしないでよ!」
「手は抜いていない、あくまで殺さないよーに配慮してたってーことだ。けど安心しろ、殺す手前までやってやるから」
「それでも殺さないってことでしょ? やっぱりミサカをバカにしてる! もう許さない! 絶対にあなたを殺しグアッ!」


 冷静さを欠いたミサワにキャーリサは『武具重量』を込めた一撃を見舞い、ミサワをビルの壁へと叩きつける。
 その間にキャーリサは携帯を取り出し、連絡を取り始める。


「レッサー、そっちはもー終ったよな? だったら今すぐこっちに来い。今から一人、重傷人を作る」
『えっ? あ、あのキャーリサ様、確かにこっちは終りましたけど重傷人を作るって、もしかして私に回復魔術を使えと?』
「なんだ、察しがいーじゃないか。分かったらさっさと来い。ダッシュだ、急げ。間に合わなかったらヴィリアンに密告るからそのつもりでいるよーに」


 キャーリサの恐ろしさを知っているレッサーは返事をするのも忘れて電話を切ると、大急ぎでキャーリサの所へと向かう。
 携帯をしまったキャーリサはミサワが起き上がってくるのを感じ取り、彼女へと視線を移す。


「待っててくれるなんて余裕じゃない。その余裕、死んでから後悔することね。じゃあね♪」


 無防備状態のキャーリサにミサワは鉄釘を撃ち出そうとした、しかし音速で撃ち出されることなく地面へ落下する。
 何が起こったのか分からないミサワは何度も鉄釘を撃ち出そうとしたが結果は同じだった。


「諦めろ。その釘はもー使えない。それがお前の武器だって認識した以上、それはもー役には立たない」
「ミサカに一体何をしたの!」
「敵であるお前にそれを教えるわけないだろーが。それに説明はさっきした、後は自分で考えるよーに」


 キャーリサはミサワの鉄釘が厄介だと判断し、『ソーロルムの術式』でミサワの鉄釘を『武器として認証』し、無効化させたのだ。
 しかし騎士団長のように効果時間は10分も得られず、およそ6分ほどだがそれでもキャーリサにとってはお釣りがくるほどの時間である。
 怒り心頭のミサワは持っていた鉄釘全てを投げ捨てると、特大の電撃をキャーリサ目掛けて放った。


「はは、あははっ! 電撃は使えるんじゃない! 結局ミサカに殺されることには変わりなかった! やっぱりオバサンなんてそんなものね」」
「ほー、そんな思考状態の中よく気付いたな、褒めてやろう。しかしまだまだ甘いな」


 電撃を確かにキャーリサに当てた、ミサワはそう確信していた、しかしキャーリサの健在を意味する声は彼女の後方から聞こえてきた。
 キャーリサは慌てることなく『移動速度』を発動、ミサワの背後に回り込み喋り終えた後でミサワの脇腹にフルンティングを突き刺す。


「うああああああああああああああああっ!」
「そー喚くな。今すぐ楽にしてやるから。説教とかは後でたっぷりしてやるから心の準備はしておくよーにっ!」


 脇腹に奔る激痛に苦しみながらミサワが見たもの、それはキャーリサが清清しいまでの笑顔で自分に振り下ろす左ストレートだった。
 キャーリサの左ストレートをまともに喰らったミサワは3メートルほど吹っ飛び、そのまま意識を失うのだった。



「ふー、『的確精度』が使えなくて本当に良かった。使えてたら急所に一撃、殺しかねなかったからな」


 ミサワを殴った左手をプラプラさせながらキャーリサが物騒なことを呟いていると、彼女の命令通りにレッサーが駆けつけた。


「キャーリサ様、レッサーただ今参りました! キャーリサ様もご無事のようで何よブフォッ!」
「そんなことはどーでもいいからお前はあの子を治療を始めろ。モタモタしないよーにな」
「あの子……ってええっ! ちょ、キャーリサ様! あの人、脇腹にえぐい傷跡があってそこから血が流れてるんですけど! いくらキャーリサ様でゲフッ!」
「モタモタするなって言ったばかりだろーが。説明は後でしてやるからレッサー、お前はその子の治療に専念しろ。次、口答えしたら蹴り飛ばすからな」


 理不尽に殴られた痛みに耐えつつ、ミサワの治療を始めたレッサーは心の底から思った、ヴィリアン様の直属で本当に良かったと。
 レッサーが治療を始めたの見たキャーリサは携帯を取り出すと、買い物中に電話番号を交換した絹旗へと連絡を取る。


「絹旗、私だ。そっちはもー終ったんだよな?」
『はい。超大変でしたけど、白井さんやレッサーのお陰で何とかなりました」
「そーかご苦労だったな。では今すぐにその場を離れろ。アンチスキルとやらに巻き込まれるのはゴメンだからな。集合場所まで避難するよーに。上条当麻達の回収も忘れずにな」
『了解しました。……ところでお兄ちゃん達の中にその、麦野は超含めますか?』


 絹旗の遠慮がちな声に何かあると思ったキャーリサだが、深く聞く理由も無かったので少し迷った後で決断を下す。


「それはお前の判断に任せる。まー、その言い方だと連れて行きたいんだろ? だったら連れて行けばいい。それに上条当麻達と戦ってるんだ、抵抗する力はもー無いはずだしな」
『あ、ありがとうございますっ!』


 キャーリサは絹旗のお礼の言葉を聞いた後で電話を切ると、今度は当麻に電話をかける。


「あー上条当麻。お前のことだから勝ったんだろーけど一応聞ーとく。無事か?」
『あ、はい。こっちは無事とは言いがたいですけど生きてはいますです、ハイ。あ、美琴、もう少し上に持っていってくれるか?』
『これくらい?』
『ああ、それくらいだな。えっとキャーリサ、用件は?』


 こんな時にでもいちゃついてる(と思っている)上琴にキャーリサは呆れつつも、自分の言いたいことを二人に告げる。


「今から迎えがやってくるからお前達はそこで待機するよーに。移動はその迎えに任せれば問題は無いから」
『分かった。いやー、それにしても助かったよ。これからどうやってアンチスキルに言い訳しようか考えてたからさ。それに疲れてて、上条さんはあまり動きたくなかったので』
「じゃあお前達は迎えが来るまでイチャイチャしてるよーに♪ あまり羽目を外すなよ。それ関連だったら私はお前達を見捨てるからな」
『『羽目なんて外しませんっ!!!!』』


 上琴が顔を真っ赤にさせて怒ってる姿を想像しながらキャーリサは電話を切った後で、レッサーとミサワの方へと視線を移すと丁度治療が終った所だった。


「レッサー、その子の治療は?」
「傷跡も塞ぎましたし、止血も済ませました。ただ頭部、というか顔面のダメージのせいか意識は戻っていません」
「そーか。じゃあその子はお前が運んで来い。私達もすぐに移動するぞ、アンチスキルとやらに捕まるのは面倒だし」
「そ、そんなっ! 300人もの相手、それに治療魔術を使ってもうヘトヘトなんですよ! 集合場所ならそう遠くないですしキャーリサ様がヘブッ! す、すびばぜんでひた……」


 疲労困憊の自分にミサワを運ばせるキャーリサにレッサーもたまらず抗議するが、キャーリサにぶん殴られて素直に従うことに。
 そして二人は集合場所、すなわち一打、浜面がいる荷物置き場へと向かうのだった。





 その頃、上琴は気絶から目を覚ました麦野の気配を感じ取り、彼女の方へと歩み寄る。
 全身傷だらけ、左手のアームが消失してるのを見た上琴はもはや麦野に戦う力は無いことを確認するのだった。



「ねえ生きてる? あんたのことだから死んでるってことは無いと思うけど」
「生きてるわよ、ちくしょう……。ったく、あんな滅茶苦茶な攻撃しやがって……」


 麦野の言う滅茶苦茶な攻撃とは蹴りでの超電磁砲のことで、その威力は彼女の閃光のアームを蹴散らすほどだ。
 人間の脚力は腕力の3倍と言われており、今までの指で弾く、拳で撃ち出す超電磁砲よりも単純計算でも威力は高い。


「それにしても……噂は本当だったんだねぇ。第三位が幻想殺しにベタ惚れってのは」
「言っとくけど当麻に惚れても無駄なんだからね。当麻は私のことを愛してるし、私も当麻のことを愛してるから♪ あんたの入り込む余地なんて無いんだからね」
「ハッ、頼まれたって惚れたりするもんかよ……。私は浜面しか殺してでもモノにしたいとは思わないよ。そこらにいる男共なんざ有象無象としか見ちゃいないさ」


 そこに『空間移動』で現れた黒子と絹旗が現れる。
 上琴は二人が来たことに驚かなかったが、麦野だけは二人、正確には絹旗が居ることに驚きを隠せなかった。


「き、絹旗……! 何であんたがこいつらと一緒に……?」
「超お久しぶりですね麦野。随分といい格好になってますけど、相変わらずそうで超何よりです」
「言ってくれるねぇ……。で、どうしてあんたがこいつらと一緒なのか、説明しろ」
「ホント、超相変わらず偉そうですね。その辺は後で超説明しますから今は少し待ってて下さい」


 麦野から視線を外した絹旗はこの場を離れる為の準備に入る。


「じゃあお兄ちゃんから先に超行ってもらいます。大晦日の時のように超投げ飛ばしますけど平気ですよね? あ、お姉ちゃんは降ろしてからで超お願いします」
「お、おう……。美琴は降ろしたぞ、最愛。じゃあ早速始めて……あの~最愛さん? どうして前みたいに左手じゃなくて襟を掴んでるのでせうか?」
「その方が超やりやすいことに気付いたからですよ。ではお兄ちゃん、お先に超飛んで下さーーーーーーいっ!」


 絹旗は集合場所に上手く落下するように加減をした上で当麻を投げ飛ばした。
 その光景に慣れていない麦野は呆然とするが美琴、黒子、絹旗は慣れているので全く気にしていない。


「ではお姉様は黒子が運びます。申し訳ありませんがお二人は後ということで」
「あ、それなら超大丈夫です。私が麦野を超運びますから。白井さんはお姉ちゃんを運び終えたら超手筈通りにアンチスキルと連絡、合流をお願いします」
「分かりましたの。お姉様、わたくしに掴まって……お姉様?」
「ゴメン、少し待って。悪いんだけど黒子、私を第四位の所まで連れて行って」


 フラフラの美琴は黒子に麦野の所まで運んでもらうと、真面目な表情で麦野に告げる。


「いい? もし最愛に妙な真似したらこんなもんじゃ済まさないからね。私と当麻の大事な妹に手を出して死にたいなら話は別だけど。……行きましょ黒子」


 美琴に促されて黒子は『空間移動』でその場を離脱する、内心であそこまで心配された絹旗を羨ましいと思いながらも。
 絹旗は美琴たちが移動した後で麦野の傍まで歩み寄ると、彼女の近くでしゃがみ込む。


「なぁ、第三位の言ってた妹ってどうゆう意味よ……?」
「麦野の居ない間に私も超変わったんですよ。あ、妹といっても義理ですし後二人、同じ義妹がいますから」
「ホント、訳分かんないわよ、ったく……。ちょ、てめぇ絹旗! 勝手に私を担ぐんじゃないわよ!」

 『妹』についての説明を終えた絹旗が自分のことを抱えたことに驚く麦野だったが、まともに体を動かせない状態なのでされるがままである。
 おんぶの態勢で麦野を背負うと、絹旗が思いもしないことを提案した。

「麦野、浜面と超話し合ってください。こんな力任せな方法じゃなくて、ちゃんと自分達の気持ちを超打ち明けるんです」
「出来るんならとっくにやってるわよ……。けど今の私はこんな姿だし、浜面がちゃんと話に応じてくれるかどうか……」
「そんな弱気な麦野、超らしくありませんよ。それに浜面なら超おバカですから心配する方が無駄です。あいつなら麦野がどんな姿でも超向き合いますよ」
「……分かった。元アイテムの仲間のよしみで聞いてやるよ。それにしてもさ、あんたが話し合いって言うなんて変わったじゃない。誰の影響よ?」

 麦野が自分の提案を受け入れてくれたことを嬉しく思った後で、自分を変えてくれた人達のことを思い浮かべる。
 思い浮かべたのは兄&姉と慕う上琴、義妹にして親友の初春と佐天の顔だった。

「大好きなお兄ちゃんとお姉ちゃん、義妹で超大切な親友二人のお陰です」
「(多分、影響が大きかったのは親友二人の方だろうね。一度見てみたいもんだわ)あっそ。じゃあさっさと運びなさいよ。あんたの『窒素装甲』ならすぐに着くんでしょ?」
「(その超偉そうな態度だけは変わっても良かったかも……)分かりました。着くまでに言いたいことを超考えておいて下さいよ」


 麦野が根本的な部分で変わっていなくて安心した絹旗だったが、少しくらいは謙虚になって欲しいと願わずにはいられなかった。
 集合場所へ駆け、跳びながら向かってる最中、麦野が絹旗をゾッとさせるようなことを言い放つ。


「なあ絹旗。せっかく浜面と話し合うんだからさ、滝壺も呼んだらどう?」
「なっ、なんて超恐ろしいことを口にするんですか! ドロッドロの三角な超修羅場なんて見たくないですよ私!」
「なーんだ残念。ドサクサに滝壺の目の前で浜面寝取ってゲットしてやろうかと思ったのになー」
「ホント、超勘弁してくださいよ、まったく(まあ滝壺さんがあそこに現れるなんて超ミラクルな展開にはならないから心配は無用かもしれませんけど)」

 しかし絹旗は知らない、集合場所に滝壺が現れて浜面、滝壺、麦野の世にも恐ろしい修羅場が展開されようとは。

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