とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

14-11

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kinsho_second

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だれでも歓迎! 編集
「やー、なーんか第一三学区方面が騒がしかったなー」
「そうだにゃー。俺の出番とかあってもおかしくなさそうな事が起きてた気がするぜい」
「やれやれ、バレンタインだというのにどうにも騒々しいのが居て困るな」


 第一三学区の騒乱が終った頃、常盤台中学に居る土御門、木山、真昼は第一三学区方面に視線を向けていた。
 ただ向けているのでは無い、彼らは一様に現実逃避をしているのだ。


「3人とも現実から目を背けないで下さーーいっ! 特に真昼ちゃん! 言いたいことをズバズバ言っちゃダメだってあれほど言ったじゃないですかーっ!」
「いや~、つい……。でも小萌先生、俺、やっぱり嘘はいけないって思うんすよ」
「真昼の言う通りです、月詠先生。真昼はただ、見えたベクトルのままに言っただけです。悪いのはむしろ彼らの方ですよ」
「だからって……だからって浮気や不倫してることを言って良いことにはならないですよーーーーーーーーー!」


 真昼のシステムスキャンの内容、それは常盤台側が用意した年齢にギャップがある男女のペア4組。
 そのペアの関係を真昼の『感情のベクトル』で見て、的中させることがシステムスキャンの内容で結果は見事に全組的中、ここまでは良かったのだ。


―ところでさ、そこのオッサンとお姉さんってもしかして不倫してるのか?
―それと俺の前に居る綺麗な女の人って教師だよな? そっちが用意した見た目が幼いけど20超えてる兄ちゃんと恋人だったりするのか?


 真昼はいつもの感じで、バカ正直に見えた『感情のベクトル』から複雑な人間関係を的中、そして暴露してしまう。
 まあ、問題が全て真昼にあるわけではなく、そんな複雑な人間関係を作れるようなペアを連れて来た方にも落ち度は多少なりともあるのかも知れないが。


「で、でも小萌先生。おかげでみんな腹を割って話せて良かったじゃないですか。スッキリした人も居ましたし」
「スッキリしたの意味が違うじゃないですか、白雪ちゃん。スッキリ別れたカップルが出来ちゃったんですよーーっ!」
「うちの真昼さんが迷惑かけて本当にすみません! 後で真昼さんには言って聞かせますから!」
「私からも謝ります! 真昼ちゃんには私が家に帰ってからお説教しますから! 今日のところはもう許してあげて下さい!」


 真昼にたっぷり説教したかった小萌だが、彼女を上手く手懐けている真夜と赤音の謝罪を受けて二人に任せることにした。


「……真夜と赤音に謝らせちまったな。後で二人に謝っておくか」
「井ノ原姉、他の人にも素直に謝ろうって気持ちを少しは持った方がいいぜよ……」


 真昼のシステムスキャンの後、残るは真夜と赤音だが次は赤音の番である。
 赤音のシステムスキャンの内容は『衝撃波の威力測定、ならびに音程による衝撃波のバリエーション』を視ることだ。


「さて、事態もようやく収拾しましたし、赤音のシステムスキャンに行きましょう。確かグラウンドですよね?」
「ええ。彼女の先ほど見せたあの凄い音圧を含んだ大声、実に楽しみです。ですがグラウンドが荒れ地になることは無いでしょう」
「だといいんですが」


 グラウンドに移動中、常盤台の教師は先ほど見せた真夜の擁護ならびに惚気で見せたあの大声に楽しみを増していたのだが過小評価をしていた。
 そしてそれが大きな過ちだと思い知る、伊達に月夜の親友をやっていない赤音の【鼓膜破砕(ボイスシャット)】による衝撃波の破壊力を目の当たりにすることで。



「じゃあまずはこれから行こう。真夜、頼む」
「はい。行くよ赤音さん、3つだから」


 木山に指示されて真夜は20m離れた所から赤音目掛けて3個の煉瓦を放り投げる……ではなく、投擲する。
 土白、小萌もこれにはギョッとするが赤音は慌てる様子も無く、息を吸い込んでから、


「ワッ! ワッ! ワッ!」


 【鼓膜破砕(ボイスシャット)】による小型の衝撃波、正しくは衝撃弾と呼べるものを3発撃ち、全ての煉瓦を破壊する。
 次に用意したのは常盤台サイドが木山に頼まれて持ってきた鉄板、それを赤音の50m離れた場所に設置する。


「キャァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」


 高音の叫び声を上げた赤音からは地面を裂き、鉄板をも切り裂こうとする刃のような衝撃波、さしずめ衝撃刃が発せられる。
 しかし“ガキィンッ!!”という大きな音が鳴っただけで鉄板が裁たれることは無かった、やや大きめの傷は付いたが。


「やはりまだまだのようだな。茜川、喉の調子はどうだ? 後2回、やってもらうわけだが」
「2回なら大丈夫です、続けて下さい」


 木山は赤音の元気っぷりを確認した後で、常盤台サイドに人間の5倍の大きさの巨大な岩を出してもらう。
 置かれた場所は先程の鉄板と同様に50m、赤音は咳を何度かした後で能力を発動させる。


「おおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」


 今度は低音で衝撃波を放つと、岩には大きめのクレーターとヒビが形成される、しかしこれも破壊には至らない。
 岩を破壊できなかったことなど気にも留めず、木山は最後の指示を彼女に飛ばす。


「茜川、次でラストだ。いつもの全力の衝撃波を撃つんだ、いいな?」
「それはいいんですけど、みんなに離れてもらうようにしてもらいますか? 巻き添え喰らったら大変ですし」


 赤音に言われて、木山は見学者全員を彼女から遠ざける(井ノ原ツインズはすでに避難済み)。
 皆の避難が終わったのを確認した赤音は今までとは違い、大きく息を吸うとさっきまでとは比べ物にならない大きな叫び声を張り上げる。


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」


 赤音の高音と低音が入り混じった耳を劈くような叫び声に見学者全員、耳栓を与えられているにも関わらず、たまらず耳を塞ぐ。
 その衝撃波はまたも常盤台校舎の窓ガラスを音圧で震わせ、校舎内に居た者にさえウルサイと思わせるほどの効果を見せる。


「ハァ、ハァ、ハァ…………。せ、先生~、お、終りました~、ゲホゲホッ!」


 衝撃波を発生させた赤音は終了の合図と共に苦しそうに喉を押さえながら咳き込む。
 赤音が苦しそうにしてるのを見た真夜は彼女の所まで駆け寄ると、のど飴を赤音の口に放り込む。


「お疲れ様、赤音さん。喉、まだ痛いならもう一個舐める?」
「ん~、真夜君が口移しでくれるなら♪」
「じゃ、じゃあ無くてもいいね……」


 システムスキャン終了後にも関わらずいちゃつく(?)真夜と赤音に見学者達は呆れる……余裕は無く、赤音の衝撃波の爪痕に唖然としていた(木山と真昼以外)。
 赤音の前方200m、地面は所々抉れ、裂かれ、常盤台の整備されたグラウンドは彼女が衝撃波を発した軌道上の部分のみ小規模の戦闘があったかのように荒れ果てていた。


「にゃー……。流石は月夜の親友なだけはあるって褒めた方がいいのかにゃー?」
「そ、そうなのかな? わ、私も正直すっごくビックリしてるよ……」
「茜川ちゃん、いつの間にこんなデンジャラスな子に……」


 土白、小萌はまだ言葉を発する余裕があるが常盤台サイドの教師達はグラウンドをメチャクチャにされたことに言葉を失う。
 しかしここまでとは思っていなかった目測の誤りが原因なので、彼女達に文句など言えるはずもないわけで。


「さて、残るは先ほど見事な救出劇を見せてくれた少年か。君、彼のシステムスキャンはどのようにするつもりかね?」
「真夜は肉体強化能力です。運動測定を能力使用前と能力使用後で行い、その変化を見せようかと」


 赤音のシステムスキャンを驚く事無く、興味深そうに眺めていた貝積は木山に次の真夜のシステムスキャンの内容を尋ねる。
 それを聞いた貝積は、真夜が月夜を助けた時に見せた打たれ強さ、回復力、状況判断の早さがそれでは見られないと思い、とんでもない提案を持ちかける。


「それでは彼の全てを知ることにはならないだろう。どうかな? 彼とレベルの高い能力者で模擬戦をやらせてみては。ただし、私が納得する能力者を用意するように」



「ならそれでいきましょう。で、高位能力者はどこから選ぶんですか?」
「ちょうど常盤台にいるんだから、常盤台の生徒から選ぶのはどうかな。」
「分かりました。それでは常盤台の教師に頼んでみましょう。」


貝積は木山の提案に賛成し、常盤台の生徒に頼みに言った。


「にしても茜川もここまで出来るとはな。私もさすがにちょっとは驚いたな。」


木山も土白、小萌よりは驚いていなかったが、赤音の能力による衝撃波の影響がここまで凄いとは思っていなかったのだ。


「真夜君もう大丈夫だからしなくても良いよ。」
「本当にもう大丈夫か?」


「大丈夫だから。それにこれ以上すると真昼ちゃんに怒ると思うから。現に真昼ちゃん、すねちゃっているし。」
「あ、真昼さんごめん!!赤音さんばっかしちゃって。」


「じゃあ今、私にもしてくれるか?」
「もちろんしてあげるよ。」


そういうと真夜は真昼にもキスをした。



「はーい、真夜ちゃんもいちゃつくのはそこまでですよー。木山先生が戻ってくる間に本来のシステムスキャンもやっちゃいましょー」


 小萌の呼びかけに応じた真夜は真昼と赤音を置いて、先に小萌達の所へと戻る。
 戻ってきた真夜の顔はこれでもかと言う程に赤く、それを土白につっこまれる。


「井ノ原弟、そんなに恥ずかしいならしなくてもいいような気がするぜよ」
「それはそうなんだけどさ、二人が求めることなら大抵のことは応えたいんだ。いやまあ、恥ずかしくて気絶しそうなんだけど……」
「気絶しそうなら止めてもいいと思うよ、私。あまり二人を甘やかすのもどうかと思うし」
「……甘やかしてるつもりは無いんだけどなぁ。でも周りからそう見られてるなら少し考えないといけないかな?」


 真夜は土白から言われたことでようやく甘やかしてることに気付くが、真昼と赤音に惚れた弱みというやつですぐに改善は無理だと判断してしまう。
 気を取り直し、真夜は小萌立会いの下で能力使用前と使用後の比較データを取る為の身体測定を開始する。





「……真夜ちゃん、真夜ちゃんは人間ですよね?」
「小萌先生、それすっごく傷付きますよ! あくまで能力を使用したらそうなっただけですから!」
「でもなぁ、能力未使用状態で100m走12秒、重量挙げ80kg、垂直跳び70cmが井ノ原弟のデータぜよ。でもって……」


 システムスキャンで視たのは100m走、重量挙げ、垂直跳びの3つとシンプルなものだったので時間もそれほど掛からなかったりする。
 その結果に小萌、土白、常盤台サイドの教師は本人に悪いと思いながらも、人を見るような視線を送ってはいなかった。


「能力使用後の100m走2秒、重量挙げは無理だったから別の650kg相当の物体を持ち上げて、垂直跳びは6mだよ……。能力使ってるって分かってるけどね……」
「分かってるって目じゃないよ白雪さん! ……もういいよ。初めての人って大体そんな反応するし。でも80ずつの強化でもちゃんと全部反映されるわけじゃないのは悔しいかな?」
「なぁ井ノ原弟、そのさっきから言ってる80とかの数字ってどうゆう意味ぜよ? 俺達にも分かりやすく説明して欲しいにゃー」


 ここで真夜の能力【瞬間超人(リーンフォースセレクション)】についての説明を始めさせてもらう。
 真夜の言う数字は20から始まり、20とは人の感覚で言うのなら2倍ということになるのだ。
 ただし、20で強化するとしたら真夜本人の強化箇所が二倍になるわけではなく『本人の元々の力に二倍の力を加算する』ということなのだ。


「つまり私たちの感覚で言うのなら真夜ちゃんの元々の力を1として、強化した数字分を足すということ……なんですか?」
「そう、なるんでしょうね。だから80強化したなら俺の力が8倍になるんじゃなくて、俺の元々の力にその強化分を足すってことで九倍になってる……と思いますよ?」
「まあ、疑問形にする気持ちも分かる気がするぜよ。その理論で言うなら全部の数値が九倍になってないとおかしいからにゃー」
「木山先生が言うにはさ、まだまだ使い切れてないらしいんだ。まあ俺の基本能力が上がれば能力使用時に大きく反映されるから完全になるのはまだまだだって話だよ」


 とまあ、分かりづらいかもしれないがこれが真夜の【瞬間超人(リーンフォースセレクション)】の説明である。





 そこへ月夜と真夜に謝りに来た泡浮と湾内がやって来た。


「つ、月夜お姉さま、それに月夜お姉さまを助けてくれた殿方様。先ほどは本当に申し訳ございませんでした!」
「湾内さんも悪気があってしたことでは無いのです。ですから怒らないでやって下さいな」
「それなら全然気にして無いから。白雪さんも無事だったんだから、それでいいと思うよ、俺は」
「私も怒ってないから安心して二人とも。ちょっと絹保ちゃんの発言にはビックリしたけど、これで耐性付いたと思えばいいだけだしね」


 月夜と真夜が怒っていないことに心から安心した泡浮と湾内に、何気なく小萌から提案が成されるがそれが切っ掛けで真夜が傷付くことになる。


「お二人とも、もし良かったら真夜ちゃんの能力を視るためにも模擬戦の相手をしてくれませんか?」
「「そ、それはちょっと…………」」


 月夜救出劇で真夜が見せた異常とも呼べる打たれ強さと回復力に、泡浮も湾内も相手をすることは怖いらしい。
 その反応にショックでうな垂れてる真夜を真昼と赤音が慰めてる所に木山が戻って来た、真夜が一番苦手な相手を連れて。



「ほーっほっほっほっ! この婚后光子の宿命のライバルの一人、井ノ原真夜さん! ようやく決着を付ける時が来ましたわね!」
「良かったな真夜。こんなに乗り気な少女が相手をしてくれて」
「すみません、チェンジお願いします」


 木山が連れて来たのは婚后で、罰ゲーム上映会の一件以来真夜のことを一方的にライバルとし、会う度に勝負を挑んでいるのだ。
 その度に逃げる、スルー、断っているので、真夜も不思議と婚后に対する扱いはぞんざいになっていた、彼には珍しく。


「ちょ、ちょっとお待ち下さいな! 今度こそ逃げずに勝負してもらいますわよ! 一回戦った時も【空力使い(エアロハンド)】を喰らってすぐに帰られましたし!」
「……毎回毎回、偶然デート中に現れて勝負挑まれたらさすがに、ね……。確かに婚后さんの【空力使い(エアロハンド)】は強力だよ、すっごく痛かったし」
「でしたら何の問題もありませんわね! さぁ、今日こそこの婚后光子と雌雄を決する時ですわ!」
「俺のスピードに付いてこられるようになったらね。現に一回も俺のこと、まともに捉えたこと無いし……」


 真夜が婚后を相手にしたくない理由、それはデートを幾度と無く台無しにしてくれたことである(婚后にその気は無い)。
 それに強化された真夜の肉体の動く速度に婚后では付いてこれず、システムスキャンには向かないというのも理由である。


「半蔵と郭さんが能力者だったら問題なかったんだけどなぁ……。あの二人同時ならシステムスキャンに最適なのに」
(まあ、服部と郭相手が同時でも今の真夜なら60ずつの強化で互角にやれるしな)
(でも真夜君、知ってるのかな? 服部君と郭ちゃん、訓練に付き合う時間、短くして欲しいって言ってること……)


 能力者限定じゃなかったら半蔵と郭を相手にしたかった真夜、そんな半郭を思い出す真昼と赤音だった。
 婚后を相手するのを断る真夜、それを跳ね除けて尚も真夜との戦いを求める婚后、そこに湾内が思いついたことを口にする。


「でしたら月夜お姉さまと模擬戦をされてはどうでしょう? 婚后さんも月夜お姉さまの実力はご存知ですし、きっと納得して下さいますわ」



 湾内の思いつきに肯定気味なのは月夜と真昼。


「井ノ原くんとバトルかー、ちょっと面白そうだね。井ノ原さん、井ノ原くんって女性に攻撃できる?」
「それなら心配いらねーぞ。ちゃーんと俺が教育してきたからな♪」


 猛反対したのは土御門、赤音、真夜とバトルがしたい婚后。


「冗談じゃないぜよ! 井ノ原弟の化け物じみた攻撃喰らって月夜が大変なことになったらどうするつもりにゃー!」
「いくら真夜君が強くなってるっていっても月夜ちゃんじゃあ相手が悪いよ! というか死ぬかもしれないじゃない!」
「確かに白雪さんの実力は理解してますわ。ですが! 真夜さんの永遠のライバルたるこの婚后光子を差し置いてなどとは認められませんわ!」


 教師陣が貝積と協議してる中、真夜は思索していた。


(白雪さんと模擬戦……面白そうなんだけど、土御門がどう出るか分かんないもんなぁ。それに俺だって無事に帰って真昼さんと赤音さんとバレンタイン過ごしたいし)
(要は貝積統括理事が納得するようなことを見せればいいんだよな。打たれ強さ、回復力、状況判断力……そうだ! 痛いのは我慢するとしてこれで問題クリアーだ!)


 真夜は何かを思いつくと、真昼と赤音を呼び出して内緒話をし、それを聞いた真昼と赤音は納得したように頷く。
 そして真夜は貝積にこんなことを尋ねる。


「貝積統括理事、どんな形でも俺の打たれ強さ、回復力、状況判断力が分かればいいんですよね?」
「ああ、そうじゃな」
「分かりました。じゃあ婚后さん、俺と勝負だ! 全力の【空力使い(エアロハンド)】で俺を倒すんだ!」


 貝積の了承を得た真夜は婚后に勝負を挑み、【空力使い(エアロハンド)】で攻撃するように仕向ける。
 婚后は真夜に勝負を挑まれたことにご機嫌になり、彼の元へと駆け出すと、


「良い心掛けですわ! この婚后光子の全身全霊をかけたこの一撃、受けてご覧なさい!」


 真夜の体に【空力使い(エアロハンド)】を叩き込み、真夜を吹っ飛ばした。
 何度も何度も地面をバウンドして、ようやく真夜中は止まった、飛距離は300m。


「真夜ーーーーっ! 待ってろよーーーーッ! 俺がすぐ行って人工呼吸してやっからなーーーっ!」
「真昼ちゃんずるい! 真夜君に人工呼吸するのは私なんだからね♪」


 吹っ飛ばされた真夜の元へと駆け出す真昼と赤音、何故か真夜の分の荷物を持って、しかも真夜が吹き飛ばされる前に。
 それを見た木山はやってくれたという表情を、貝積は納得した表情で眺めていた。


「……ゲホッゲホッ! いたた……。よし、ダメージも殆ど回復したしこれなら問題ないかな」
「お待たせ真夜君♪ 体の方は大丈夫?」
「問題ないよ。じゃあ帰ろうか」
「そうだな。俺がおんぶで赤音が抱っこな」


 合流した真昼をおんぶし、赤音をお姫様抱っこで抱えると、真夜は離れた所に居る見学者達に丁寧に頭を下げると、踵を返して走り出す。
 土御門を連れて来た時のように疾駆し、飛び跳ねながら去っていくトライアングルカップルはあっという間に見えなくなってしまった。


「……やってくれたな、あの三人。貝積統括理事、申し訳ございません。ですが、これで納得のいくものを見せられたと思いますが?」
「そうじゃのう。あれだけの攻撃を喰らってピンピンしとったし、ダメージもすぐさま回復。行動に迅速に移れる状況判断の早さ。いやはや良いものを見せてもらった」


 木山と貝積は真昼と赤音が駆け出した時点でトライアングルカップルの出方が分かっていたので、驚きはしなかったが他の者達は呆然としていた、土白を除いて。
 去って行ったトライアングルカップルを見た土御門はすぐさま月夜に耳打ちし、雪の翼を展開させると彼女に捕まり空へと浮かぶ。


「こらーーーーーーっ! 土御門ちゃんも白雪ちゃんも逃げちゃダメですよーーーーっ!」
「いやいや、井ノ原弟のシステムスキャンも無事終了。ここに居ても意味はもう無いぜよ。というわけで俺達も退散させてもらうぜい♪」
「小萌先生、システムスキャンの結果は後で聞きますから。じゃあ私達もこれで失礼します♪」


 そして土白も常盤台中学を空を飛んで後にした、土御門の住んでいる寮へと向かって。
 色々な者達が置き去りにされる中、月夜とトライアングルカップルのシステムスキャンは無事に(?)終わりを迎えるのだった。
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